日向(ヒナタ)で新聞を読んでいた。
カミサンが、キヌサヤをザルに入れて持ってきた。
筋取りをしてくれという。
拙者、新聞をたたみ、チラシ広告を二枚ほどテーブルに広げた。
その上にザルを置き、おもむろに筋取りを始める。
プチッとヘタを折り、スイーと静かに背中の筋を引く。
筋を取るとき慌てて引くと、途中で切れる。
一旦切れると、ツメで糸口を探さなければならぬ。
筋を取り残せば、茹でたあとも口にさわる。
〜 ヘタをプチッ、そのまま静かにスイー 〜
この〜 プチッ、スイー〜 のリズムがいいね。
筋の取れたキヌサヤを別のザルに入れ、ヘタと筋はチラシ広告の上に捨てる。
〜ヘタをプチッ、静かにスイー、筋をポイ〜
次第に動作にリズムが出てくる。
無心にやっている内に、ふと思った。
今は、格別急ぐ必要はない。時間もタップリある。
それなのに、手の動きは、いつの間にか“効率よく”やろうとしているらしい。
頭の中では“効率的”にやろうなどとは思っていないのだが、手順とか手配りが、自然にそうなって行く。
〜ヘタをプチッ、静かにスイー、筋をポイ〜
リズムは次第に早くなる。
これが、もし「請負仕事」だとしたら、もっと効率を考えるのだろうな。「全部終えたらなんぼ」となれば、もっと工夫する。ザルの置き場所、ヘタの捨て方・・・改良の余地は充分にある。
「時間給」なら、どうする。
「時間なんぼ」となったら、ゆっくり丁寧に、時間をかけたほうが、良い金になる。
しかしそれも、ほどほどで、あまり時間を掛けすぎると、次の仕事が来なくなるかもしれぬぞ。
そこんとこの兼ね合いがむずかしいだろうし、また、そんなときに「人間が素見される」だろうよ。
じゃあさ、料理屋の板前ならどうするかね。
まず、ヘタの「プチン」からして、見た目を気にするだろう。
料理人の心って奴が、首をもたげるぜ。
少しの汚れも許せないし、痛んだものがあれば、断固ハネる。
でも、手慣れてくればまた別かな。
・・・
だが今は、誰が食うのでもない、拙者が喰らうのだ。
・・・
ああ、無心でいるなんてことは、我ら凡人には出来ないこった。
筋は取り終えた。
チラシ広告でヘタを包んでゴミ箱に捨てる。
キヌサヤを水で洗うと、緑色が一気に冴える。
熱湯に一つまみの塩。
さっと茹でる。
この緑色の爽やかさが身上なのだ。
手早くザルに上げ、冷水にくぐらせる。
ひとつだけ摘んで、口に放り込む。
軽い歯ごたえの 緑色。
・・・・・・・
カミサンが、キヌサヤをザルに入れて持ってきた。
筋取りをしてくれという。
拙者、新聞をたたみ、チラシ広告を二枚ほどテーブルに広げた。
その上にザルを置き、おもむろに筋取りを始める。
プチッとヘタを折り、スイーと静かに背中の筋を引く。
筋を取るとき慌てて引くと、途中で切れる。
一旦切れると、ツメで糸口を探さなければならぬ。
筋を取り残せば、茹でたあとも口にさわる。
〜 ヘタをプチッ、そのまま静かにスイー 〜
この〜 プチッ、スイー〜 のリズムがいいね。
筋の取れたキヌサヤを別のザルに入れ、ヘタと筋はチラシ広告の上に捨てる。
〜ヘタをプチッ、静かにスイー、筋をポイ〜
次第に動作にリズムが出てくる。
無心にやっている内に、ふと思った。
今は、格別急ぐ必要はない。時間もタップリある。
それなのに、手の動きは、いつの間にか“効率よく”やろうとしているらしい。
頭の中では“効率的”にやろうなどとは思っていないのだが、手順とか手配りが、自然にそうなって行く。
〜ヘタをプチッ、静かにスイー、筋をポイ〜
リズムは次第に早くなる。
これが、もし「請負仕事」だとしたら、もっと効率を考えるのだろうな。「全部終えたらなんぼ」となれば、もっと工夫する。ザルの置き場所、ヘタの捨て方・・・改良の余地は充分にある。
「時間給」なら、どうする。
「時間なんぼ」となったら、ゆっくり丁寧に、時間をかけたほうが、良い金になる。
しかしそれも、ほどほどで、あまり時間を掛けすぎると、次の仕事が来なくなるかもしれぬぞ。
そこんとこの兼ね合いがむずかしいだろうし、また、そんなときに「人間が素見される」だろうよ。
じゃあさ、料理屋の板前ならどうするかね。
まず、ヘタの「プチン」からして、見た目を気にするだろう。
料理人の心って奴が、首をもたげるぜ。
少しの汚れも許せないし、痛んだものがあれば、断固ハネる。
でも、手慣れてくればまた別かな。
・・・
だが今は、誰が食うのでもない、拙者が喰らうのだ。
・・・
ああ、無心でいるなんてことは、我ら凡人には出来ないこった。
筋は取り終えた。
チラシ広告でヘタを包んでゴミ箱に捨てる。
キヌサヤを水で洗うと、緑色が一気に冴える。
熱湯に一つまみの塩。
さっと茹でる。
この緑色の爽やかさが身上なのだ。
手早くザルに上げ、冷水にくぐらせる。
ひとつだけ摘んで、口に放り込む。
軽い歯ごたえの 緑色。
・・・・・・・