天津ドーナツ

みんなで力を合わせて、天津の日本語教育を楽しく、元気にしましょう。ご意見・ご要望は左下の「メッセージ」からどうぞ。

「体ことば」 口、唇、舌、喉の巻 その②…もとNHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2011-12-04 17:50:59 | ドーナツの宝
* 
(月の巡りの速いこと、速いこと。もう12月でありますね。そうなりゃ、このデタラメな年なんぞ早く蹴飛ばして、新年に期待することに致しますか。“ざっくばらん”の口馴らし・・・例によって◎印は初心者向けです)

◎ 口は出口か入り口か、“災いは口から出で 病(やまい)は口より入る”、“唇滅びて歯寒し”、“食いつぶす 奴に限って歯をみがき”、口汚いは告げ口・悪口・罵詈雑言(ばりぞうごん)、歯に衣(きぬ)着せず語るなら 金口木舌(もくぜつ)社会の木鐸(ぼくたく)。(最後の一句は中国の古諺)

* ノドから手が出た どんな手だ、爪があったらノド痛めるぞ、何処から出るのか口の奥、それとも喉元・喉仏、喉笛ならば掻き切るところ、要心召されよ・吸い口・傷口・未來口・大川口に登り口。日蓮さまは龍ノ口。

*「舌頭に千転させよ」と芭蕉言い。「音は幻にして、声音(こわね)を富とせよ」と幸田露伴は口にした。『口の虎は身を破る。舌の剣は命を絶つ。口をして鼻のごとくにすれば、のち過つことなし』とは昔の格言。いまじゃ漢字王国日本では、「ついつい口が滑って、酒が言わせた戯れ口」の局長閣下が首になり、「言ってはならぬ心の内を、漏らさぬ要心、箝口令(かんこうれい)」。口を塞がせ口裏あわせて、後口わるい口移し答弁、蛇心仏口、口が荒れますぞ。

* 筆舌に尽くしがたきは自然の美、湿舌襲来・秋口長雨、咽を湿し咽馴らし、酒は別口、猪口(チョコ)に熱燗、呑み口のいい奴を、口にするならクイクイッと、鬼一口に流し込みたいもんだね。

* 舌が長いは口福モノ、舌の廻らぬ飲ん兵衛どの、舌が足りなきゃ説明不足、発声練習ウオアエイ、奥歯にものが挟まったなら、鼠の銀歯、鬼の金歯と取り替えろ、舌打ちしながら舌鼓、打てば響くか突破口、衆口・経口・利口・小利口、異口同音のおちょぼ口。

* 売れ口よいのは商い口、就職口なら窓口叩け、働き口は勤め口、門口(かどぐち)で奏でる笛の歌口に、そっと口づける乙女の唇。
(参考:唇(くちびる)の語源:「くちへり」(口縁)あるいは「くちへら」(口縁)。唇は震える意味で「貝殻からふるえるやわらい貝の足。奈良時代の仏典に「久知比流」の訓がある。なお歌口は、横笛の吹き口のこと)

* 無口な人と、口の堅さが売り物だったが、攻め口・焚き口・裏口からの巧みな口添えに、肩口叩かれ糸口つけば、重い口から口を割る。口火を切ったら鯉口切って、水口・湯口・電話口でも口挟み、軽口・はけ口、とばっ口から舌の根も、乾かぬほどに小口に切ったり、演舌したり、手口は序の口・鬼の口、果ては地口・広口・おどけ口と、ちょうちょうなんなん喋りの火口。

* 鳶口を担いだ新口の火消しが玄関口で、「おーい火の手が勝手口に回ったぞ」、仲間の火消しが口々に「戸口が先だ換気口から煙だぜ」と喚き立て、ついでに庭口で口を揃えて「逃げ口を探しとけ」って怒鳴ってた・・・ちと苦しかったかな。

 ♪♪
* ”口説き上手は口上手、口説き文句は殺しの文句、昔も今も 女心に火をつける”


ドーナツとスポンサー

2011-10-28 07:54:36 | ドーナツの宝
このポスターは、11月5日のスピーチコンテストのものです。

今までのコンテストのポスターと違う点は、
スポンサーが加わっているということです。

そこで、ドーナツがスポンサーとどのような関係を作ろうと
しているのか、ここで確認しておきたいと思います。


1.日本料理店:
(1)お店に足を運び、設備・スタッフなどの「場」を体験する
(2)写真でしか見たことのない料理を食べてみる

2.日本人経営のパン屋さん
(1)パンにもいろいろな種類・作り方・味があることを知る
(2)作ったその日に売れ残ったら、全て捨ててしまうというやり方の意味を知る

3.衣料品店
(1)実際に店に行って選ぶことで、商品の並べ方やスタッフの対応など、サービスマインドを体験する
(2)身につけるものを選ぶ方法を、店長などのアドバイスを通して勉強する

4.日本メーカーのお菓子セット
(1)人に物を贈る際の気の配り方(組み合わせ・包装)を知る
(2)中国人と日本人の味覚の違いを知る


上記のように、
「文字だけでは学べない日本語・日本を学ぶ」という目的を達成するためのスポンサーです。

もちろん、イベントの費用を出すという組織もないわけではないのですが、ドーナツではイベントは人をつなぐための手段だと考えています。

今回のコンテストを通じて、どんな人とどんなつながりが作れるのか、
これからのイベントでどんな人と出会えるのか、そういうことを考えながら、
スポンサーを探していきたいと思います。

ことば”のスケッチ・ブック 2 …もとNHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2011-10-23 09:19:34 | ドーナツの宝
先週につづいて、肩の凝らないスケッチ・ブックは、「読めない日本語の固有名詞」をとりあげましょう。
 私がNHKのアナウンサーになったころ、先輩に言われたことで、未だに忘れられないのは、「名前は“だろう"で読んではいけない。どんな優しい名前でも“確かめること"だ」という言葉でしたね。
 英語なら「Jack」と書いてあれば、「ジャック」と読めば、先ず間違いはない。だが、日本語はそうはいかない。
 “確かめなければ発音できない"言葉なのだ。また、そう思わなければ、放送で恥をかく。そう言い聞かされたものだ。
 
 先月、中山道(ナカセンドウ)をナカヤマミチと読み、下手人をシタテニンと読んだ、タレントさんの話を書いた。また別の日に、聞き間違いと読み間違いでは、圧倒的に“聞き間違い"が多いとも書いた。
 すると、ある方からメールを頂いた。
 「NHKでもアナウンサーが、よく間違えるではないか。先日、北海道の古い道のことを“ゴキブリ山道"と言っていたが、そんな道があるはずはなかろう。何かの勘違いか、読み間違いに違いない」
 そういうご主旨だった。
 そこで、少し調べてみた。
 どうやら“ゴキビル・サンドウ"と読んだのを、“ゴキブリ・サンドウ"と、聞き間違えられたと判明した。母音の“i ”と“u”が入れ違ったらしい。
 ご本人にメールをすると、「あのときは、ゴキブリ退治をしていたので・・・私の聞き間違えでしょう」と、笑い話になった。
 だが、この文字を皆さん、はたして読めるだろうか。
 「濃昼山道」<ゴキビル・サンドウ>
 :ちなみに、この山道、今は忘れ去られ、クマザサが生い茂り、幾つかの石垣が残っているだけの、古い道だそうですね。
 こうした名前は、間違いなく“調べなければ読めない"固有名詞の分類に入るでしょう。なにしろ普通では読めないのですから。
 
 勿論、軽率に間違えるアナウンサーがいない訳ではありませんね。
 私なども、新人の頃は鳥取放送局に赴任して、さんざ読み間違えをして、ご迷惑を掛けました。
 鳥取市の傍を流れる川は千代川(センダイガワ)川、その川の畔の町は、用瀬(モチガセ)に郡家(コウゲ)、少し離れた若桜郡(ワカサ)・・・それに、市内に聳える城趾の山は久松山(キュウショウザン)だし、中部の駅は上井(アゲイ)・・・誤読の種はどっさりありましたからね、いま改めてお詫びしmます・・・
 
放送で読み違えるときは、むしろ、普通に読める名前であって、違う読みをする場合でしょうね。
 佐藤さんという人で、サフジさんを知っていますし、田田と書いてタダと読みますと名刺を受け取ったこともある。
 有財さんという名詞を貰い、恐る恐る聞きました。あのユウザイさんですか?すると彼は「いや無罪なのですが、ウザイ奴だとお思い下さい」という。付き合ってみると、まったく「ウザクないサッパリした人」でしたね。
 こんな例は、それこそ、そこら中にゴロゴロ転がっているのが日本語です。
 新潟の五十嵐川はイカラン川ですし、東北の能代川にはノウダイ川もある・・・こうした、意外や意外という名前にぶつかれば、ご本人か、ご当地の人に聞かなければ分かりません。そこで、固有名詞とは、“確かめなければ発音できない言葉"と言うわけです・・・
 
 全く、持って、日本の漢字というのは、発音となると、肩の凝る、恐ろしいものでございますわ。

* 50音図の落とし穴・・・さまよえる“フ”? 元NHKアナウンサー塚越恒爾さんのブログから

2011-10-09 10:33:33 | ドーナツの宝
ここ数日、富士山周辺の、ときならぬ“湧水”が話題になっていますね。“富士五湖”も、新しく誕生した“赤池”を加えて、“富士六湖”になったとか? ま、いつまで続くか判らないけれど・・・
 さて、この日本の象徴“富士山・フジサン”を、あなたはどのように発音しているだろうか。早い話が、ローマ字記号で書いて“hujisan”か、“phujisan”か、どっちらでしょうかという問題です。
  
 50音図のローマ字表記には、大まかに言って二つありますね。“訓令式”と“ヘボン式”です。文科省は“訓令式”を正式な音の表記としていますから、小学校で教えているのは“訓令式”が殆どですが、実際に社会一般で通用するのは“ヘボン式”が圧倒的で、パスポートなどは“ヘボン式”でなければ認めて貰えません。要するに、“訓令式”は、ほとんど使われていないので、念のため。(この二つの表については、後日とりあげましょう)
 ハ行について言えば訓令式では「ha hi hu he ho」で、“ヘボン式”は「ha hi fu he ho」と“フ”だけは“f”を使っています。本来、“f”は下唇を前歯で噛んで出す音で“ph”とは異なるのですが、アメリカ式の発音だと“f”と“ph”は似ているので、こうなったのでしょう。
 ここでは実際の発音について語りたいので、“hujisan”か、“phujisan”を発音して貰いたいし、どう違うかを感じて欲しいのです。
 念のために、発音の仕方を再度、確認しておきます。
 “h”の音は口の奥(舌の付け根と軟口蓋の間・便宜上ここでは喉音と言います)に隙間を空けて、息を通す音であり、“ph”の音は両唇の間に隙間を空けて通す音です。言い換えれば、口の中の最も奥で出す子音と、口の最前列の子音です。
 さあ、どうですか。あなたのフジサンはどっちだろう?
 “h”か“ph”か。
 
 実は以前、100人の東京育ちの人に発音して貰った結果があります。私的な結果ですが、なんと100人が100人とも唇の音“ph”でしたね!“hujisan”は一人もいなかったのです。
 では、「夫婦二人で・・・」と言ってみてください。ここには三つの“フ”がありますが、みんな同じ出し方をしているでしょうか。
 ゆっくり「夫婦二人で・・・」と言い、自分で、音を確かめてください。
 さあ、どうです?
 
 実は、これも同じ100人の人に発音して貰ったデータがあります。
 “夫婦”の最初の“フ”は、78%が唇音で圧倒的、二番目の“フ”は唇音44%:喉音46%で、やや喉音が優勢ながら伯仲し、三番目の“二人”の“フ”では86%と圧倒的に唇音でした。
 要するに、語頭に“フ”が来た場合には、圧倒的に唇音で、語中の音はバラバラ、同じ人でも、前後の音の関係によって、まちまちな使い方をしているのが実態です。まさに、「ハ行大移動」に取り残された音の象徴が、宙ぶらりんの“フ”音なのです。勿論、現在でも混乱したままなのです。
 納得できない方は、何度かご自分の“フ”を点検してみるとよいでしょう。もっとも、何回か繰り返しているうちに、かえって、こんがらがってくるかもしれませんがね・・・
 
 それにしても、富士山となると、100%が“ph”だったのには刮目すべきモノがありましたね。ある説によると、富士山をいにしえの日本人は、「フッジサン」と入声(にゅうしょう)で呼んでいたという話もありますから、自然なのかなとも思います。
 別の言い方をすれば、語頭にくる音が、“hu”では「頼りない音」だし、“聞き手”にとっても、聞き漏らしかねない音であることは、間違いのないところです。
 ともかく、ヘップバーンさんら外国人の耳には、ハ行のうち「ハヒヘホ」は喉の音と捉えましたが、“フ”だけは唇の音に聞こえたので、“f”で表記したことは確かですね。