原作の『SLAM DUNK(スラムダンク)』(1990-1996 週刊少年ジャンプ)も読んでいないし、アニメ(1993-1996 テレビ朝日)も見ていないので、どうしようかなあと思っていたが、解禁されたという予告を見たら俄然見たくなってきて、昨日とうとう見に行った。
とは言え超絶人気マンガだったからか、実はぼんやり知っていたみたい。知っていることを忘れていたけど、YouTubeで予習をしたら思い出した。
予習した動画はこちら↓
【スラムダンク①】史上最高のバスケットボール漫画〜魂の授業〜
【スラムダンク②】激突!湘北vs山王工業
中田あっちゃんの熱い授業にはほんと感謝感嘆するばかり。これが面白くて満足しちゃって、そのまま年を越したのだった。
その後、熱いスラダンファンの旦那(映画は既に鑑賞済)が、実家から漫画の入った古い段ボールを持ってきたり、義弟が熱く推しているのを見ているうちに、先の予告動画がチラッと目に入った。
時は来たり。(?)
予習は万全だ。しかも実は、自分でも驚くが、中学時代はバスケ部だったのである。
平日のレイトショーで、ガラガラという訳でもなく、満席という訳でもない。丁度良いあんばいの観客数だった。
・・・いやあ、面白かったなぁ。
何が凄いって、試合シーンの臨場感が凄かった。
宮城リョータの、コンマ何秒のフェイントが分かる。
速すぎて目では捉えられないけど、感じられるのだ。人物達の肉感やボールの重さ、スピード感。視界。ぶつかり合って押し合っている時の、相手の骨と筋肉の硬さ。抗力。これに息づかいまで加わって、実写でもこのリアルさを感じさせることは出来ないんじゃないか。そう思ってしまった。
総時間一時間弱の一つの試合と、ポイントガード宮城リョータの回想が、この作品の中身である。
“__もう一回『SLAMDUNK』をやるからには新しい視点でやりたかったし、リョータは連載中に、もっと描きたいキャラクターでもありました。3年生はゴリが中心にいて、三井にもドラマがあるし、桜木と流川は1年生のライバル同士。2年生のリョータは間に挟まれていた。そこで今回はリョータを描くことにしました。”
(同作品パンフレット・監督インタビューより抜粋)
“__(略)その中で、自分が歳を重ねるにつれてキャラクターたちをとらえる視点の数も少しずつ増えていく。
こいつはこんなヤツだったのか、こんなことがあったのかと、いろいろな視点が浮かんで、その度にメモが少しずつ増えていきました。更新されてきました。昔、30年前には見えなかった視点もあれば、連載中からあったけどその時には描けなかった視点もあります。”
(井上雄彦「つれづれの記/2022.10.20 THE FIRST」より抜粋) https://itplanning.co.jp/inoue/i221020/
試合シーンの濃密さに比べ、回想シーンは台詞も少なめで、淡々と描かれた印象だった。
その分、劇中、観客の焦点は無闇にブレることがない。ボールを運ぶ、人物達の一瞬一瞬の動作や判断が無言で切り開かれていくような、まるで流れる解剖学のような、重層的な絵を見ているような気分になった。
アニメというとSFファンタジーが多い中、内容はとても土くさいアニメだ。
またコメディ部門は花道くん一人が担う形。
程よく埋まった座席で鑑賞していたら、同点ゴールの後、数秒の空白の時間に、前の方から声が聞こえた。
「入った……!」
劇場を出てから、思わず声を漏らしたんだね、と隣で二回目の鑑賞をしていた旦那に言うと、「ガッツポーズもしていたよ」とのこと!
音楽や音の緩急も、スクリーンを盛り上げ夢中にさせてくれた。
これが日本の3DCG、スポーツアニメーションの最高峰。世界中の人に体感してほしいと、何だかそう思った。原作を知らない人も、知ってる人も、私のような半端に知ってしまった人も、これだけ夢中に楽しませることが出来る作品はそうないことだと思う。ストーリーの秒読みの緊迫感、作画の技巧、アニメーション技術の動きの力強さ。そして、刹那的な透明感が素晴らしい。
『THE FIRST SLAMDUNK』、井上雄彦監督、原作、脚本。2022年、124分。東映アニメーション、ダンデライオンアニメーションスタジオ。