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『モリコーネ 映画が恋した音楽家』…モリコーネ映画史

2023-01-17 02:17:59 | 映画-ま行

 作曲家エンニオ・モリコーネを知っていますか。

 正直、私は良く知らなかった。

 1950年代末頃から映画音楽の作曲、編曲を手掛け始め、生涯で500本以上の映画に携わる。1987年、『アンタッチャブル』(ブライアン・デ・パルマ監督)でグラミー賞受賞。2007年、アカデミー賞名誉賞受賞。2016年、『ヘイトフル・エイト』(クエンティン・タランティーノ監督)でアカデミー賞作曲賞受賞。

  1928年11月10日、ローマで生まれ、2020年7月6日、ローマにて逝去。 

 

 1989年の『ニュー・シネマ・パラダイス』から長く、深く親交を結んだトルナトーレ監督が、生涯の仕事、そしてモリコーネという人を描き出した。

 

 身振り手振りを交え、饒舌に語るインタヴューで、モリコーネは「絶対音楽と応用音楽(映画音楽のような)」の狭間における葛藤を語っていた。正統で伝統的な音楽を学んできた彼が、映画やテレビの仕事をするようになったきっかけは、生活の為だったかもしれない。同僚に馬鹿にもされたし、師を裏切っているのではないかと悩むこともあった、と言っていた。音楽の世界は良く分からないが、音楽はそれだけで完結する芸術である、という誇りというか、言い分は分からないでもない。

 

 それとは別に、「映画的なウソ」というものがある。

 「ウソ」というと一般的にネガティブな感じがするが、「映画的な」が付くと、途端にそれは一転する。それは、観る者の心を震わせる為の演出であり、希望であり、真実であり、美しさ、正確さ、慈しみ、喜びと恍惚の源にもなり得る。

 巨匠モリコーネは、いわゆる「映画的なウソ」のようなものに巧みだったんじゃないか。 

 

 新しいものを恐れず、自身の音楽も進化し変化させ続けた気質は、脚本や登場人物の醸し出す世界観に、新しい旋律、新しい音、もう一つ音楽的な「ウソ」を付け加えるという冒険を楽しむことが出来た。

 何にせよ、脚本にインスパイアされて音を作り出すということにおいて、脳内の回路が何の抵抗もなく開かれている。それが天才というなら、そうなんだと思う。

 

 もう一つ、イタリアというのは、どんな国なんだろうか。それも気になった。

 1960年代のマカロニ・ウエスタンも、もっと観たくなった。若かりし日のクリント・イーストウッドを拝みに行こう(笑)

 それから、そうだ、若かりし日のロバート・デ・ニーロも拝みに行こう。

 

 

 『モリコーネ 映画が恋した音楽家』、ジュゼッペ・トルナトーレ監督、2021年、伊、157分。原題は、『Ennio』。

 

エンニオ(左)とトルナトーレ監督。↓シーン1のテイク1。ドキュメンタリーの撮影開始。

作曲風景。↓楽器を使わない脳内スタイルです。