走る営業公務員、奮闘記!!

地方分権が進展する中での地方からみた木っ端役人の奮闘記です。

支局長からの手紙:伝えたい /愛媛

2010年01月13日 18時49分20秒 | 夢紙芝居事業
 毎日新聞松山支局長の小泉健一さんが次のような記事を書いてくれましたので紹介します。ありがとうございました。


支局長からの手紙:伝えたい /愛媛

 松山出身の俳人、正岡子規(1867~1902)の紙芝居を見ました。郷土の偉人の子規を子どもたちにもわかりやすく伝えたい。その思いで集まった松山市西長戸町の佐伯(さいき)美与子さんらが、手作りしたものです。没後100年の2002年に勉強会から始めました。市立子規記念博物館の元館長や児童文学者らの意見も入れ、事実に忠実な内容にしています。市内の学校や老人会などで演じ、感想を基に手直しをしました。

 上演を重ねるごとに「貸してほしい」と評判を呼び昨年春、松山市の「坂の上の雲」フィールドミュージアム活動支援事業になりました。500部印刷し市内の小中学校などに配りました。

 生涯を12枚にまとめています。最も興味深かったのは、亡くなる約1年前の1901年9月28日の食事内容です。3食分の絵が画面に並んでいます。

 【朝食】ご飯、ハゼの佃煮(つくだに)、なら漬け、牛乳、菓子パン【昼食】マグロの刺し身、おかゆ、みそ汁、アミの佃煮、エビの佃煮、ナシ、ブドウ20粒【おやつ】牛乳、菓子パン、せんべい、パインの缶詰、リンゴ1個【夕食】カレイ1匹、おかゆ、焼きナス、アミの佃煮、ブドウ1房、焼き芋。

 「生きることは食べることだとでもいうように」と佐伯さんが書いた脚本にうなずきました。死期が迫る弱々しい印象とは、別人のようです。

 佐伯さんたちは昨年9月、えひめ紙芝居研究会のぼーるを設立しました。野球好きだった子規のペンネーム、野球(のぼーる)にちなみます。今後は民話などを紙芝居にしたり、各施設で演じられる読み手の育成などに取り組みます。来年8月に松山市で開く紙芝居の全国大会の準備も進めています。

 活動の一環として今月18日、松山市築山町の市青少年センターで講演会「紙芝居の魅力とひろがり」と題する講演会を開きます。講師は滋賀県守山市の児童文学作家、今関信子さん。毎日新聞の連載童話で「プレゼント猫」を掲載したほか、福祉イベントを題材にした「命をつなぐ250キロメートル」(童心社)などの作品を発表しています。私には約30年前に初任地で出会った懐かしい人です。

 今関さんは地元で10年前から、55~80歳を対象に紙芝居作りの講習会の講師をしています。地域の自然や歴史、祭りなどを調べ、それぞれが紙芝居にします。学校や老人クラブ、認知症のデイケア施設などに出掛け、作者が自ら上演します。絵の裏の脚本をただ読むだけではありません。反応を見ながらストーリーを変えたり即興で歌や踊りも入れ、聞き手も踊り出したり合唱して盛り上がることもあります。講習会の卒業生が多くなるにつれ、自主的な活動機会も増えています。

 「本の読み聞かせと違い演じる要素も入るので、読み手と聞き手が一緒に会場の空気を作り、仲間と感じられる劇場的魅力があります」と今関さんは解説します。「紙芝居は伝えたいことを伝えやすい方法です。そのために、第二次世界大戦中は戦意高揚のために利用されたこともあります。でも今は地元の文化を大事に伝え、地域を元気にする手段としてどんどん活用してほしい」と呼び掛けています。

 松山での講演会は午前10時~正午。定員120人。入場無料。事前申し込みは不要です。問い合わせは佐伯さん(089・922・1908)。

 新年が始まりました。今年もいろいろな出会いが楽しみです。
                       【松山支局長・小泉健一】

 koizumi‐ke@mainichi.co.jp

 毎日新聞 2010年1月12日 地方版