5年ぶりに伊那の出先に異動して、再び「西天竜」にすこしばかり触れている。ところが今年西天竜のエリアを久しぶりに外観してみて、かつてと少し違う印象を受ける。ようは水のついている田んぼが少ないのである。このエリアは転作率が4割と言われた時代にあっても、意外に水稲耕作が多かった。考えてみれば西天竜の水を頂いている人たちは、ただでこの水を頂いているわけではない。受益者として賦課金を支払っている。したがって高い賦課金を支払っているのに、水を利用しないような転作は不合理だ。最も水を使うのは水稲だから、当然水稲を耕作するのが見合っているとも言える。そんな理由があるから転作が少なかったというわけではないだろうが、理屈は通っている。もちろん水利を無料で得られる事例などほとんど無いと言って良いから、どこにでも共通したことではあるが。
聞くところによると、担い手が多くの面積を耕作するとなると「一気」というわけにはいかないため、代掻きの時期がズレていくとも。また今は飼料米を作る農家も多く、そうした飼料米にあってはそもそも植え付けが遅い。そんなこともあってかこの時期になっても水がついていない田んぼが目立つというわけである。西天竜エリアの水田は面積が小さいため(1反程度)、たくさん耕作している人にとっても効率的ではないだろう。
さてそんななか、西天竜の水路をのぞくと、水路天端まで波波と水が流れている。危険というほどではないが、知らないひと、あるいは周辺に暮らす人にとっては不安なのではないかと思うほど満杯に水が流れている。長年西天竜の幹線水路を見てきたが、これほど満杯に流れている姿は見たことがない。改良区でも驚いて取水量を減らすように指示したというが、取水量がいつもより多かったといわけではないという。いつも通りなのに、ある区間では満杯になって、いつもとは違う水位を示す。改良区でもその理由ははっきりしないという。実は少し前までは代掻き時期だったこともあって、今以上に水を流していたという。今は年間を通してみれば少ない取水量なのに、溢れそうな水位になる。冬季間は幹線水路の末端にある西天竜発電所が稼働するため、今よりは毎秒0.5m3ほど多く流れるというのに、冬季にこんな光景を見ることはないという。聞けば冬季間は流速が早いとも。その理由について、幹線水路内の堰上げが非かんがい期には行われないためではないかという。幹線水路には例えば大泉に堰揚げのゲートがあったりする。しかし、溢れそうなほど波波流れる場所からは10キロ以上下流のこと。それほど影響することなのかどうか、これまであまり考えたこともなかった。見た感じでも「流速が違う」というほどだから、この堰上げが大きく関わっているのかもしれない。機会があったら流速を測ってみようと思っている。
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