私は、1990年代のなかば、25歳の時に、神奈川から岩手に越してきました。
まったくあてのない転居で、怖いもの知らずだったのだと思います。
自治体の仕事をしていましたが、体調を崩し、神奈川に戻る気にもならず、
大船渡でフラフラしていたところを、地元書店の社長に助けてもらいました。
5年間、大船渡で暮らしました。
港に近い、野野田の二階建ての借家が住まいでした。
二階の窓からいつもウミネコが見え、横を流れる須崎川のヤマメも見えました。
体調を整え、結婚し、シーズン中は盛川・気仙川を釣り、
フライロッドを作り、1999年には起業しました。
私の「今」は大船渡の野野田から始まった、と思います。
今でも、野野田の潮を含んだ空気を思い出せます。
その後、地の利を求めて西根町(現八幡平市)に転居しました。
津波で、野野田はなくなりました。直後の写真では、なくなった、というより、
瓦礫の山に、変わりました。
無事だった人、無事ではなかった人。
私は、ずっと、苦しいです。ずっと。