2012年10月3日(水)
先日は、ダンナとの41回目の結婚記念日だった。そこで、久しぶりにダンナのエッセイを・・。
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年末に急死した夫の机の引き出しを整理する気持ちになったのは、もう早春の気配が
しだした頃だった。亡くなる一年半前に退職した夫は、「そのうち整理するよ」と言った
まま、とうとう手をつけずじまいだったのだ。開けてみると、引き出しには、夥しい
枚数の写真が書類の間などに無造作に放り込まれていた。写真のほとんどが、
職場の方々と撮ったものだった。子供の写真や家族旅行の写真は、私がアルバムに
貼っていたのだが、夫が貰ってくる写真は、見た後の管理がいつしかルーズになり、
こんなところに溜まっていたのかと、今更ながらに気がついた。
写真を纏めてから、一枚一枚見ていく。慰安旅行でのドテラ姿の夫。
どなたかの送別会で、挨拶をしている夫。職場のサークルで、謡を謡っている夫。
何人もの同僚に囲まれて、夫は楽しそうに笑っている。
職場で写した一枚の写真が出てきた。四十代と思しき背広姿の夫が、職場の机の前に
座り、斜めに体をずらせてカメラのほうを向いている。まだパソコン導入前だったようで、
夫の机は、書類の山となっている。その夫のなんと若々しいことだろう。
記憶が蘇ってきた。二十年程前だったか、ある日、夫が、その写真を持って帰って来た。
同僚の方だったか、当時の部下の方だったか、出張で使った後のフィルムが一枚余っている
からと、写真をとってくださったのだそうだ。
「職場での写真ってあんまり無いんだよ」
職場にいる夫は、落ち着いて頼もしそうだった。私は、仕事で帰りの遅い父親の働く姿を
見せる良い機会だとばかり、子供三人を呼んだ。
「ほら、みんな見てごらん、お父さん、こんな大きな机でお仕事してるのよ。偉いんだね」
子供たちも、珍しそうに職場の父親の様子を覗き込んだ。
三十年余り勤めた職場で、一人で写っていたものは、その写真一枚だけだった。
二十年以上前のある日ある時の夫の姿が、私の元に戻って来た。私の知らない世界の夫を
居間の飾り棚の中に飾ると、私よりはるかに若い夫は、そこから静かにこちらを見ている。
夫のように勤め人になった息子たちに見せると、
「こんな写真があったんだ」
と、感慨深そうに言うが、
「見たことあるでしょう」
と、言っても、あの時、私が力んで見せたわりには、見たかどうか、記憶は定かではなさそうだった。
撮ってくださったご当人も覚えているかどうか分からない、気まぐれのような好意のおかげ
で、この写真が、今ここにある。私は、見る度にその縁の不思議を思うが、今ではもう誰と
もわからない方へのお礼の言葉は、伝える術もない。
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今は、ウィステはダンナの写真に元気にご挨拶しては、ダンスに出かける日々です。
今日も、行ってきま~す。(^^)
先日は、ダンナとの41回目の結婚記念日だった。そこで、久しぶりにダンナのエッセイを・・。
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年末に急死した夫の机の引き出しを整理する気持ちになったのは、もう早春の気配が
しだした頃だった。亡くなる一年半前に退職した夫は、「そのうち整理するよ」と言った
まま、とうとう手をつけずじまいだったのだ。開けてみると、引き出しには、夥しい
枚数の写真が書類の間などに無造作に放り込まれていた。写真のほとんどが、
職場の方々と撮ったものだった。子供の写真や家族旅行の写真は、私がアルバムに
貼っていたのだが、夫が貰ってくる写真は、見た後の管理がいつしかルーズになり、
こんなところに溜まっていたのかと、今更ながらに気がついた。
写真を纏めてから、一枚一枚見ていく。慰安旅行でのドテラ姿の夫。
どなたかの送別会で、挨拶をしている夫。職場のサークルで、謡を謡っている夫。
何人もの同僚に囲まれて、夫は楽しそうに笑っている。
職場で写した一枚の写真が出てきた。四十代と思しき背広姿の夫が、職場の机の前に
座り、斜めに体をずらせてカメラのほうを向いている。まだパソコン導入前だったようで、
夫の机は、書類の山となっている。その夫のなんと若々しいことだろう。
記憶が蘇ってきた。二十年程前だったか、ある日、夫が、その写真を持って帰って来た。
同僚の方だったか、当時の部下の方だったか、出張で使った後のフィルムが一枚余っている
からと、写真をとってくださったのだそうだ。
「職場での写真ってあんまり無いんだよ」
職場にいる夫は、落ち着いて頼もしそうだった。私は、仕事で帰りの遅い父親の働く姿を
見せる良い機会だとばかり、子供三人を呼んだ。
「ほら、みんな見てごらん、お父さん、こんな大きな机でお仕事してるのよ。偉いんだね」
子供たちも、珍しそうに職場の父親の様子を覗き込んだ。
三十年余り勤めた職場で、一人で写っていたものは、その写真一枚だけだった。
二十年以上前のある日ある時の夫の姿が、私の元に戻って来た。私の知らない世界の夫を
居間の飾り棚の中に飾ると、私よりはるかに若い夫は、そこから静かにこちらを見ている。
夫のように勤め人になった息子たちに見せると、
「こんな写真があったんだ」
と、感慨深そうに言うが、
「見たことあるでしょう」
と、言っても、あの時、私が力んで見せたわりには、見たかどうか、記憶は定かではなさそうだった。
撮ってくださったご当人も覚えているかどうか分からない、気まぐれのような好意のおかげ
で、この写真が、今ここにある。私は、見る度にその縁の不思議を思うが、今ではもう誰と
もわからない方へのお礼の言葉は、伝える術もない。
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今は、ウィステはダンナの写真に元気にご挨拶しては、ダンスに出かける日々です。
今日も、行ってきま~す。(^^)