ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「良縁祈願」

2013-03-08 | エッセイ
2013年3月8日(金)

毎朝、ウィステは、ゆ~ちゃんの保育園のHPを見ている。
今日も、ゆ~ちゃんがお散歩している写真を見つけたよ。
パパとママはお仕事、ゆ~ちゃんは保育園と、みんな頑張っているね。(^^)
さて、今日は、ゆ~ちゃんが生まれる前のエッセイ・・。
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「良縁祈願」
                       
 夫の三回忌の法事の宴席で「娘が犬を飼う」という話をすると、夫の兄と弟は、
「ダメだ、ダメだ。縁遠くなるぞ」と声をあげた。娘本人は、
「もう保健所に行って、貰って来ちゃったんですよ」と、屈託が無い。夫の兄弟は、
娘が犬との生活に気持ちが取られ、結婚する気が無くなるのではと心配してくれたのだ。
夫が亡くなって二年の間は娘の結婚にまで気が回らなかったが、娘ももう三十に手が届く。
これは、母親の私がぼやぼやしてはいられないと気を引き締めた。
 夫の三回忌が過ぎると心の季節が変わり、娘の結婚に向けて私は動きだした。娘に、
「職場で誰か良い人はいないの」と、電話して聞いても、
「男の人は既婚者ばかりよ」と言うばかりで、これはいよいよ母親の出番と、周りの友人たちに
声をかけてみた。
「娘が結婚しないのよ」と話を振ってみると、
「うちの息子も」と答える人は多い。しかし、当人同士がお見合いをした後、「お断りする」
「お断りされる」気まずさに考えが及ぶと、
「こういうお話は友達の友達くらいの間柄が良いのにね」と互いに腰が引けて、話は進まない。
今の時代は間を取り持って下さる方もなかなか見つからず、しかも娘の場合は犬ごと受け入れて
くれる相手に限られるからこちら側の条件も難しい。なんとかならないかしらと、私はもっぱら仏壇に、
「娘に良縁がありますように」と手を合わせ、夫の加護を待っていた。
 そんな中、古くからの友人からやっとお見合いの話をいただいたのだが、娘は私が速達で送った
写真を見ただけで、
「フィーリングが合わないみたい」と断ってきた。結婚してからごたつくよりはましだけれど、
三十近くてそんなに強気で良いのかと思う。私たちの娘時代には、「クリスマスケーキ」の値段に
擬えられたりして、「二十四歳までには結婚を」という空気が私たちを取り巻いていた。
つくづく時代が変わったと感じる。結婚してからは夫婦喧嘩も数多乗り越え、夫に先立たれもしたが、
それでもパートナーのいる人生を歩んで良かったと私は思う。だから、娘にもそろそろパートナーを
見つけて欲しいと思うのだが、肝心の娘はワン(仮名)と名づけたごつくて黒い雑種の中型犬の世話を
するために仕事が終わるとさっさと家に帰り、休日には女性の友人たちとワンを連れて旅行に行ったりで、
「親の心、子知らず」と、親ばかりが空回りしているありさまだ。
 最近では、娘がこちらの家に戻ってくるときにはワンを車で連れて来るので、私もいそいそと
ワンを迎えるようになった。娘はワンに優しい声をかけて落ち着かせたり、散歩、食事の世話と、
すっかり「ワンのお母さん」になってしまっている。その姿を私は目を細めて見てはいるけれど、
犬のお母さんになっているだけで良いのかとの思いもちらりと走る。
 夜、ソファーに横になっている娘の靴下の足裏に黒いワンの毛がたくさん付いていた。
「どうしたのこれ」と、言うと、
「あれ、靴の中に入っていたのかな。散歩に出るとき、ワンが先に玄関で待っているんだけれど、
靴の上にでも座ったかしら」と、暢気な返事が返ってきた。
「しょうがないわね」と、言いながら私は娘の靴下の毛を取ってやる。ワンは小さいほうのソファーの
肘当てに鼻を乗せ、ふ~っと満足そうなため息をついている。
〈娘と二人の気兼ねないこんなひとときが続くのも悪くない。孫みたいなワンもいるし〉
 私としたことが、ついそんなことを思ってしまった。いや、いけない。私はそんな思いをすぐ
頭から追い出した。翌朝、私はいつものように夫の位牌とご本尊様に、
「娘に良縁がありますように」と、よくお願いした。
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まあ、その後、ムスメは、犬好きのムコ君と出会い、今では、ゆ~ちゃんのママに
なったけれどね。(^^)
ワンちゃんは、もう中年。あちらのおじいちゃんにお散歩してもらったり、おやつをもらったり・・。
床でゴロリとしていると、ゆ~ちゃんは、ワンちゃんに気をつけて、踏まないよう
周りをそ~っと歩いています。(^^) 

 

コメント
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