ほんわか亭日記

ダンスとエッセイが好きな主婦のおしゃべり横町です♪

「忘れられた巨人」

2016-09-21 | 読書
2016年9月21日(水)

今日は、読書会の日。みんなで、お菓子を持ち寄って♪
本は、カズオ・イシグロの「忘れられた巨人」なんだけれど、
みなさん、「大分前に読んだんで、中味は、え~っと・・」
という感じだったので、推薦したウィステがご説明しました。

舞台は、6,7世紀のイギリス。
イギリスを表す言葉に、ブリティッシュとアングロサクソンという言葉がある。
それは、イギリスの先住民族のケルト系ブリトン人と、
ゲルマン民族の大移動でやってきたゲルマン系のアングル人とサクソン人に由来するんだ。
イギリスにおける少数民族である日系イギリス人のカズオ・イシグロが描いたのは、
そのブリトン人とサクソン人の戦いと平和、そして、その平和の終わりの物語・・・。

物語の時代の30年ほど前、イングランドは、ブリトン人の王、アーサー王によって統一された。
まだ少数民族だったサクソン人への民族虐殺、ジェノサイドを下敷きにした平和を
受け入れられなかった主人公の騎士アクセルは、宮廷を去り、妻と田舎の農夫となって暮らしていた。
アーサー王は、平和の維持のために、魔法で、竜の口から忘却の霧を噴出させ、国土を覆う。
おかげで、民衆は、ジェノサイドの過去を忘れ、両民族は平和に交流できたが、
同時に、人々は、日常生活のなんでもかんでも、すぐ忘れてしまうようになった。
その平和は、2方向から脅かされるようになる。
1つは、老人となったアクセルが、自分たちには息子がいたはずだと思い出し、夫婦で
息子を探しに旅立ったこと。過去を追い求めることは、過去を忘れる前提の平和を
脅かし、竜の秘密へ近づくことだった・・・。
もう1つは、今は、多数派となったサクソン人。隣国にサクソン人の王国を作るまでになり、
そのサクソン人の王が、イングランドを狙い、サクソン人の騎士を潜入させたこと。
アクセルとサクソン人の騎士を繋ぐのは、竜に噛まれたサクソン人の少年。
竜に噛まれることは、サクソン人のタブーに触れ、呪われた存在となる。
サクソン人の集落では生きていけなくなった少年は、そのようなタブーの無い
ブリトン人の村で生きるよう、アクセルに託された。
そして、旅の途中のブリトン人の修道院で、事件は起きる。
そこは、昔、サクソン人の砦であり、そこで、サクソン人が虐殺された場所だった。
その過去は忘れられ、そこにブリトン人が修道院を建てていた。
サクソン人が赤ん坊まで虐殺される描写は、やがて、ブリトン人が虐殺される未来の場面の
先取りのようで、重く、苦しい・・。
虐殺の過去を忘れていないサクソン人の騎士は、ここで、ブリトン人の兵士たちを
虐殺し、竜を殺しに走る。
そして、竜は殺された。
霧が晴れると、忘れられた巨人、すなわち復讐の神が立ちあがり、サクソン人に
よるブリトン人の虐殺の時代が始まるのだろう。
サクソン人の騎士を追った少年は、サクソン人の中で生きることを選び、騎士によって
次代の虐殺者に育てられていくのだろうが、呪われた存在である彼に幸せな人生が開ける
とも思えない・・。
物語は、息子が死んだことを思い出したアクセルが、桃源郷のようなカルト宗教組織
(←ただし、家族は、夫も妻も、一人ひとり、切り離される)の誘いに背を向け、
おそらく、ブリトン人の戦士として死ぬ道を選んだような姿で幕を下した。

作者は、ユーゴ紛争に触発されてこの作品を書いたそうだが、その後も、状況は厳しい。
難民問題、イスラム過激派、テロ、国境への脅威、・・。
解き放たれた復讐の神の暴威の先には、何があるのだろう?
家族の絆を再生させたい思いは、その中を生き抜く力になるのだろうか?
復讐以外の道を見つけないと、未来は大変なことになってしまう、恐ろしい。
そんな提言のある作品を、ファンタジーとして表し、赤ん坊まで虐殺される場面を、
過去の事、未来の事として描いた作者の配慮、力量のおかげで、
そういう場面も読みとりやすく、読者として助かりました。
21世紀の重い問題を、ぐぐっと、読者の頭に押さえつけてくるような作品でした。

と、こんな感じの説明で、みなさん、そうだった、そうだったと思い出していただけました。
ウィステは、賞味期限が明日までというお饅頭を頂いて、ふ~・・。
すると、「今日は、早めに終わりましょう」と。
集会所の和室をウィステたちは使っていて、隣のホールは、水曜日の
ラウンドダンスのサークルが、使用中。
いつも、彼女たちが、先に来て、鍵を開けてくれている。
鍵を役員さん宅に返すのは、遅く終わる、ウィステたち。
そこで、ウィステたちが、先に帰れば、終わりも、あちらが鍵を閉めて、役員さん宅に戻して貰えると、
閃いたTさんの提案にみんなで乗ったのでした。
うしし・・。(^^;)

帰り道、Tさんが、
「ウィステさんのおじいちゃんの家の土地に、もう新しい家が建てられているし、
ウィステさんが、こっちに住んでいた跡が無くなってしまったね。
もう、ウィステさんは、マンションの住民って、感じね」
と、言われ、少し寂しくなったけれど、マンションの新しい暮らしにも
納得しているし、こうして古くからの友達ともつながっていられるし、
これで良かったんだわ・・。(^^)











コメント
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