2023年5月1日(月)
風が強くて、ベランダのハト避けのトゲトゲシートが剝がれかかっている。
なんとか、ガムテープで止め直したけれど、大丈夫かなあ。
ベランダに洗濯物なんて干せないよ。
さて、今日は、ベランダ繋がりで、ベランダに関係のあるエッセイを・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「血しぶき」
朝、洗濯物を干そうとベランダに出てみると、マンションの左隣の部屋のベランダとの境に
仕切り板があるのだが、その近くの手すりの土台のコンクリートに、赤紫の一円玉くらいの円形の
何かが付いていた。一年がかりのマンションの大規模補修もようやく終わり、塗装されたばかりの
グレーのペンキの上で、その円形は、とても目立った。近寄ってみて、驚いた。
これは、血・・・?
さらに、周りを見回してみると、なんと、手すりと向き合うリビング側の白い壁の下の方には、
赤紫の点々が広がっているではないか。
まさか、これは、血しぶき・・・!
その辺りの床の上には、鳥の糞らしいものも少し落ちている。
羽根は落ちていなかったが、一瞬、猫が鳥を襲ったかと思った。
だが、ここはペット禁止のマンション、やはり、トンビか何かが、渡り鳥か雀かを襲ったに違いない。
渡り鳥としたなら、秋晴れの日本の千葉までやっとたどり着いたというのに、
そこで敵にかち合うとは、自然は、なんと厳しい世界であることか。
惨劇は、昨日なのだろうか?
昨日は、洗濯物を干さなかったから気付かなかったのだろうか?
一昨日の水曜日、ダンスサークルへ行くまえに洗濯物を取り込んだから、その後、昨日までの間で、
この生死の戦いがあったのだろう。
血だけが残されている。
トンビが獲物を持っていったのか、死骸が残されていなかったことに、少しほっとした。
いや、そうとは限らない。襲われた鳥は、なんとか逃げ延びたかもしれない。
そう思いを巡らせたが、現実問題、血があちこちに点々と付いているのは見過ごせない。
病原菌などもあるかもしれず、急いで掃除しなくてはと、バケツに水、それと、箒を持って、私は、
朝から壁や床をごしごし擦り、血の跡を流さなくてはならなかった。
まったく降ってわいたような厄介ごとだ。若い頃なら、
「お父さん、大変、来て~」
と、声を上げて助けを求めれば、きっと、
「何だ、何だ」
と、顔を出してくれたであろう夫を亡くしてもう二十年近くになる。
一人暮らしでは誰がやってくれる訳でもない。
自分でやるしかないと、しゃがみ込んで、いらいらと手を動かしたが、まあ、取れにくいこと。
こんな大雑把なやり方ではだめだと、古くて掃除用に下ろした歯ブラシを使い捨ての手袋で掴んで、
ごしごし、ごしごし。
やっとこせっとこ鳥のものらしい血を含んでいる水を排水管に流し込んだ。
これで一段落。ようやく洗濯物を干せると物干し竿に近づくと、それにも赤紫の血が
跳んでいるではないか。
なんと五か所もある。
本当に大量の血が飛び散ったのだ。
しかも、こちらの血は、ぼってりと固まって歯ブラシでは取れない。
私は、キッチンに戻り、消毒剤の泡ハイターをキッチンペーパーに吹き付け、そして、
右手のハサミの刃でこびり付いた血を削り取っては、そのキッチンペーパーで拭き取っていった。
そんな力業で血を拭い、使ったハサミや箒は消毒し、なんとか洗濯物を干したのだった。
いやはや、こんなことがあるなんてと、気が緩んだ時、私は、はっと気づいた。
血を処理する間、右手は、ポリエチレンの手袋で覆ったけれど、左手は、素手のまま
キッチンペーパーを掴んでいた。
手袋をしなかったなんて、とんでもないポカだ。
鳥インフルエンザとかもあるかも!
人間にうつるんだっけ、どうだったっけ?
もう、鳥の命が……なんて言っていられず、私は、大慌てで洗面所に駆け込んだ。
そして、石鹸でごしごしと手を洗い、本当に本当に綺麗になったか、掌をじっと見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このエッセイは、新しい文章クラブの先生に提出してみたんだ。
先生からは、
「血は残るんです。ルミノール反応が・・・」とか、予想外の指摘があって、
そういう意見もあるのかと、びっくりした。
でも、せっせと消毒剤で拭いたので、何も見えないんですが・・・。
もう半年たっているし、大丈夫、気にしないことにしようと、
お天気のベランダにある物干しざおを見て、思いましたよ
。
風が強くて、ベランダのハト避けのトゲトゲシートが剝がれかかっている。
なんとか、ガムテープで止め直したけれど、大丈夫かなあ。
ベランダに洗濯物なんて干せないよ。
さて、今日は、ベランダ繋がりで、ベランダに関係のあるエッセイを・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「血しぶき」
朝、洗濯物を干そうとベランダに出てみると、マンションの左隣の部屋のベランダとの境に
仕切り板があるのだが、その近くの手すりの土台のコンクリートに、赤紫の一円玉くらいの円形の
何かが付いていた。一年がかりのマンションの大規模補修もようやく終わり、塗装されたばかりの
グレーのペンキの上で、その円形は、とても目立った。近寄ってみて、驚いた。
これは、血・・・?
さらに、周りを見回してみると、なんと、手すりと向き合うリビング側の白い壁の下の方には、
赤紫の点々が広がっているではないか。
まさか、これは、血しぶき・・・!
その辺りの床の上には、鳥の糞らしいものも少し落ちている。
羽根は落ちていなかったが、一瞬、猫が鳥を襲ったかと思った。
だが、ここはペット禁止のマンション、やはり、トンビか何かが、渡り鳥か雀かを襲ったに違いない。
渡り鳥としたなら、秋晴れの日本の千葉までやっとたどり着いたというのに、
そこで敵にかち合うとは、自然は、なんと厳しい世界であることか。
惨劇は、昨日なのだろうか?
昨日は、洗濯物を干さなかったから気付かなかったのだろうか?
一昨日の水曜日、ダンスサークルへ行くまえに洗濯物を取り込んだから、その後、昨日までの間で、
この生死の戦いがあったのだろう。
血だけが残されている。
トンビが獲物を持っていったのか、死骸が残されていなかったことに、少しほっとした。
いや、そうとは限らない。襲われた鳥は、なんとか逃げ延びたかもしれない。
そう思いを巡らせたが、現実問題、血があちこちに点々と付いているのは見過ごせない。
病原菌などもあるかもしれず、急いで掃除しなくてはと、バケツに水、それと、箒を持って、私は、
朝から壁や床をごしごし擦り、血の跡を流さなくてはならなかった。
まったく降ってわいたような厄介ごとだ。若い頃なら、
「お父さん、大変、来て~」
と、声を上げて助けを求めれば、きっと、
「何だ、何だ」
と、顔を出してくれたであろう夫を亡くしてもう二十年近くになる。
一人暮らしでは誰がやってくれる訳でもない。
自分でやるしかないと、しゃがみ込んで、いらいらと手を動かしたが、まあ、取れにくいこと。
こんな大雑把なやり方ではだめだと、古くて掃除用に下ろした歯ブラシを使い捨ての手袋で掴んで、
ごしごし、ごしごし。
やっとこせっとこ鳥のものらしい血を含んでいる水を排水管に流し込んだ。
これで一段落。ようやく洗濯物を干せると物干し竿に近づくと、それにも赤紫の血が
跳んでいるではないか。
なんと五か所もある。
本当に大量の血が飛び散ったのだ。
しかも、こちらの血は、ぼってりと固まって歯ブラシでは取れない。
私は、キッチンに戻り、消毒剤の泡ハイターをキッチンペーパーに吹き付け、そして、
右手のハサミの刃でこびり付いた血を削り取っては、そのキッチンペーパーで拭き取っていった。
そんな力業で血を拭い、使ったハサミや箒は消毒し、なんとか洗濯物を干したのだった。
いやはや、こんなことがあるなんてと、気が緩んだ時、私は、はっと気づいた。
血を処理する間、右手は、ポリエチレンの手袋で覆ったけれど、左手は、素手のまま
キッチンペーパーを掴んでいた。
手袋をしなかったなんて、とんでもないポカだ。
鳥インフルエンザとかもあるかも!
人間にうつるんだっけ、どうだったっけ?
もう、鳥の命が……なんて言っていられず、私は、大慌てで洗面所に駆け込んだ。
そして、石鹸でごしごしと手を洗い、本当に本当に綺麗になったか、掌をじっと見つめた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このエッセイは、新しい文章クラブの先生に提出してみたんだ。
先生からは、
「血は残るんです。ルミノール反応が・・・」とか、予想外の指摘があって、
そういう意見もあるのかと、びっくりした。
でも、せっせと消毒剤で拭いたので、何も見えないんですが・・・。
もう半年たっているし、大丈夫、気にしないことにしようと、
お天気のベランダにある物干しざおを見て、思いましたよ
。