元ライターの小説家への道

僕もまだ本気を出していません。

黒い雨を読んだ

2011年02月22日 22時31分37秒 | アレコレ鑑賞
「アンチッチ引退 弁護士目指す」

 誰だか全然わからん。そういう時はスポーツ選手ということにすればあってると思う。

---

 井伏鱒二の「黒い雨」を読んだ。広島の原爆被害者の実話を基にした作られた小説。

 僕が小学一年生の頃、なぜか学校で執拗に原爆のことを学ばされた。原爆の酷さを教えられたのはもちろん、被害者の写真をスライドで見せられたり劇までやらされたりした。それは日本人だから当たり前のことであって、全国どこの小学生でもやっているのだろうと中学生の頃まで思っていた。

 そして小学一年生の時の友達が、長崎で原爆被害にあった人の子供だった。原爆被害にあったのはお母さんなのだが、その人はなんともないのだが、その子供は親指が少しだけひん曲がっていた。それは原爆被害の影響らしかった。いま思うとその子がいたから、先生が生徒に教えたのだと思う。そんなことがあって、僕は原爆や戦争に嫌悪感を抱いていた。しかしそれは子供の頃。

 戦争が嫌なのは大きくなってからも変わらなかったが、色々な歴史や意見を聞くうちに、単純に戦争が悪い。原爆はイケナイ。という考えが変わってきた。ロシアに攻められる前に、こっちからやる日露戦争は正しかったのではなかろうか。人類は一度、原爆を身をもって体験する必要があったのではなかろうか。アメリカが日本の敗北を早めるためには、原爆が有効だったのではなかろうか。それらの意見に一理あるなと、子供の頃に教わった頃を忘れて一理の意見に傾いていた。

 しかし黒い雨を読んで、考えが変わった。最初に書いたが、この作品は実際に原爆被害にあった人の手記を基に書かれた小説だ。原爆の被害を表した作品は少なくない。マンガのスタイルをとったはだしのゲンや、つい先日亡くなったようだが絵を描いた人もいる。作品ではないが黒焦げになった人々の写真なども数多く残っている。だが文章というスタイルをとった黒い雨という作品が今までで一番のインパクトがあった。

 全身大火傷の人が大量の大便の上に座り込んでいる死んでいる光景。収容された病院で夜中に呻く人々。やがて呻き声は消えていくのだが、それは次々に息絶えているということ。原爆が炸裂した時の閃光などが目に浮かんだ。あたり一面に漂う死臭まで鼻に届きそうだった。

 原爆の是非の問題がある。立場によっては落とすべきだったという人もいるかもしれない。けど日本人という以外に大した立場もない僕は、原爆は悪だったと強く思えるようになった。色々な人に読んでほしい作品だけど、暗いやキモイの一言で片付けられてしまうと悲しく思う。


黒い雨 (新潮文庫)
井伏 鱒二
新潮社
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする