「俄とは、仮装、物真似などの笑いを目的としたパフォーマンス」だと述べた。
そこで、〈にわか〉という言葉がどこから派生したのかインターネットで調べると、
――素人が即興で行う俄(にわか)から――
思わず「それを調べとんねん!」
古語に「にはかなり」という形容動詞がある。源氏物語には「野分(のわき=嵐)たちて、にはかに肌寒き夕暮れ」とあり、「突然、一時的に」の意味で使われている。これが語源であることは容易に想像がつく。しかし、語頭の「にはか」だけで使っている例は古語にはない。当然、「にはか雨」という言葉もない。
古語では俄雨のことを、「肘笠雨(ひじかさあめ=思わず肘をかざして笠にする雨)」とか、「群雨・村雨(むらさめ=旅人が村を出る頃にはやんでいる群(ムラ)のある雨)」などと言っている。
なかなか情緒のある言葉だ。などと感心している場合ではない。
かくなるうえは、こじつけるしかない。
鎌倉時代以降、文語(古典の言葉=知識人の言葉)が、口語(現代語=庶民の言葉)へと移り変わっていく。
「にはかなる雨」「にはかなる病(やまい)」という文語が、「にわか雨」「にわか病」と語句が省略される。
やがて「にわか」という三字に「突然で一時的」という意味が与えられた。
「突然で一時的」なのだから、人前で変なパフォーマンスをしても「もの知らずが、突然で一時的にやった戯れ(たわむれ)、撃錆びですんでお許しを」と言い訳がたつ。今の大阪人の「洒落でんがな」と同様の責任回避にもなる。
そこで、人前でする、突然で一時的な仮装、物真似などの笑いを目的とした戯れ、遊びを〈にわか〉と言うようになった。
そして「にわか」という単語を使った「にわか雨・にわか侍・にわかファン」という言葉が作られていった。
そう考えると、最初に挙げた「素人が即興で行う俄から」は当たっていなくはない。
上の絵は幕末の浮世絵師の歌川国芳の絵。題名「にわかあめんぼう」。
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