2024年2月10日、那覇のクルーズ船ターミナルで、海上保安庁の測量船「光洋」を一般公開するとの情報をえたので、私は行ってきた。問題意識は①海上保安庁は、海洋の自然を守る、海洋の安全を守るとか言いながら、要は治安機関だ。その最たる物は、沖縄における新基地建設の推進・弾圧部隊となって丸10年が経ってしまった。残念なことだ。➁その治安機関は一方で、領海(周辺)を含む「国益」を守るとも位置づけられている。2022年に閣議決定されてしまった「安保3文書」にも自衛隊と海保の関係が取り上げられている。グレーゾーン事態の際に海の警察として、鎮圧に頑張れ、有事になれば自衛隊の指揮下で動けと言われているのだ。気の毒なことに、平時はしずしずと情報を集め、有事になれば、武力も含めて戦えという危なっかしい役割が期待されている。③測量とは何を何のために測量するのか? 測量といっても、領海内外の周辺の国益に関わり、けっこうエグいのではあるまいか。④測量機器を知ることは他の軍・民の調査・測量船の機能を知るためにも役立つだろうと考えた。
事前勉強が不足で、充分な結果に至らなかったが、若干報告したい。
【測量船「光洋」一般公開
海保のHP特設ページに曰く「最新鋭かつ海上保安庁最大の測量船をお披露目」とある。一般公開は全国で初めてのようだ。何故沖縄が優先されるのか?
このHPにも、あるいは公開の場で直接聞いたが、明快な答えは返ってこなかった。「たまたま」みたいな答えだった。本当かいな? 沖縄・琉球諸島は海洋国だ。そこに火山島が出現すれば、領土・領海が増えることもある。また琉球諸島の海底には少なからぬ資源があるとも言われている。海保は資源探査を行なっているわけではないようだが、そのための基礎データを収集しているのではないか。
彼らにとって沖縄での公開は、海上保安庁が治安機関から軍事機関になりかねない今、「測量調査」の善意を誇示し、「国民的な海保」だと沖縄県民にもご理解願いたいと言うことだろうか。海上保安官応募のコーナーもありました。
問い合わせ先は、第11管区海上保安本部海洋情報管理課だった。
前方は泊大橋。私は会場へ、ここから左折。13:44
あれが「光洋」です。13:46
お車での来場も多い。適度な混み具合でした。
「海上保安庁海洋情報部 測量船光洋 一般公開」とありました。13:48
この中に入っていきます。
どこから入るのか間があり、うろうろ。ご案内いただきました。入場受付で、注意事項(足下に注意などと、立ち入り禁止・撮影禁止などの場もあるので、係員の指示に従ってくださいなど)と簡単な検問を受けました。爆発物・危険物などおもちじゃないよねということでしょう。久しぶりだったので、一瞬戸惑いましたが、「カメラです」と。
岸壁に入り、船首側へ。13:55
JCGとは文字通り海上保安庁。「HL」とは「Hydrographic survey vessel Large」(水路測量船/大型)
「光洋」は「HL」型で2番めにできた船。同型のHL11は「平洋」
因みに海保HPによれば、2021年3月16日就役しています。総トン数は約4000トン。全長:約103m。幅約16m。そこそこの大きさです。
船首側から一枚。記念写真。13:56
先ほどの階段から上がります。案外急で揺れる。
船首側甲板。14:02
係留ロープが太い。直径5cmぐらいあるか。
順路に沿って歩きます。要所要所に誘導・説明員がいます。皆さん丁寧に対応してくださいました。
三菱造船横浜造船所 2021年引き渡し(三菱造船から海保に)14:02
私は三菱で造ったんだと反応してしまい、撮りました。
マスト。軍監と違いすっきりしている。怪しげなレーダーなど、ありません。14:04
普段軍艦を見慣れているので、シンプルさにひと安心。
艦橋も入りましたが、撮影禁止とか。無理することないのでパス。
またコンピュータの機材が所狭しと並べられている部屋がありました。20台ぐらいあったかな。各種調査機材の運用管理をしているそうです。
私は思わず聞きました。何人で操作しているのかと。ひとりだそうです。24時間3交替制。大変だ。もっとも同時に使う機材は限られており、その場での調査目的によって使い分けるそうです。理系の人たちの独壇場ですね。
無人調査機の5分の1のモデル。電源は太陽光(パネル)。14:17
地殻構造調査の図。14:23
要約すると船尾に取り付けたエアガンで音響を放出し、その反射音波をストリーマーケーブル(受波器)で受信し、海底下の地殻構造を調査するそうです。私にはそうなんだとしかわかりませんが、地殻の構造調査をするようです。
これがストリーマーケーブル(音波探査装置)。14:23
3000mあるそうです。これを引っぱる。最後部に大きな黄色の浮きをつける。
これを海底に垂らして調査することもあるようです。
科学の目みたいな好奇心で言えば、おもしろそうです。
観測機器のパネル。色々あるようです。14:27
この船は測量調査船。このために根本的に重要なことは船の位置の固定です。これができないと、風や潮流に流されてしまい、「俺はどこに居るのだ」になってしまい、正確な調査ができません。これを防ぐのが、アジマスラスター。舵とスクリューが一体に動きます。定点を保つ機構です。その上で、防振・防音のための低速進行を可能とする電気推進の採用です。
マルチビーム測深器、音波探査装置、採泥器などが使われています。
海には小型の巡視艇がいました。14:28
対テロ対策の警戒に着いています。こちらの船を狙う奴がいるのか? 警戒して居るぞとの威嚇でしょうか。
後部甲板に置かれていた機材。14:31
私は無事に下船。14:39
船尾側から。先ほどのオレンジのストリーマーケーブルを引き出し、船尾にあるクレーンのリング(左側)に挟んで垂れ流す。
お疲れ様でした。
ところで海保の21年1月20日の「光洋就役」のHPをみると、2016年12月に「海上保安体制強化に関する方針」によって、この船ができたそうです。22年12月16日に改定されました。周辺海域での緊張が深まっており、厳しくなった状況の中で海上保安能力の強化が重要だと説かれており、海底調査もそこに焦点が移っているようです。政治的緊張の中で科学が利用されているのでしょうか。
きちんと分析しないとなりませんが、そうした文書を読むと、海底の測量等も領海・公海を巡る政治に振り回されているようです。思えば、かっての戦争は「満州」・満鉄などの利権が大きくなり、戦争に火がつきました。もっと一般的に言っても利権政治に引きずり込まれた挙げ句に、戦争の扉が開きかねません。海上保安レポート(海上保安庁編著)や先に示した政府の文書などを読み直し、私は考えを深めていきます。