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12/22 中山・有馬記念
圧巻リスグラシュー、有終V!!G1馬11頭が集結した豪華グランプリ「第64回有馬記念」が22日、中山競馬場で行われた。2番人気リスグラシュー(ファン投票2位)が豪快に突き抜け、5馬身差圧勝。G1・3連勝、牝馬初のグランプリ春秋制覇でラストランを飾り、総獲得賞金(海外含む)は12億円を超えた。騎乗したダミアン・レーン(25=豪州)、管理する矢作芳人師(58)はともに有馬記念初挑戦で初制覇。一方、単勝1・5倍の断然人気に推されたアーモンドアイはまさかの9着大敗。最初で最後の“女王対決”は明暗が分かれた。 【レース結果】
歓声と悲鳴が交錯した最後の直線。先に動いたアーモンドアイがなぜか伸びない。逆に一瞬で外に出したリスグラシューだけ火が付いた。中山名物の急坂を瞬間移動で駆け上がり、最後は独り舞台。2着サートゥルナーリアに5馬身差。G1馬11頭の豪華決戦の余韻を楽しむように、悠々とゴールを駆け抜けた。
9万大観衆を前にしたレーンの顔は紅潮していた。
「偉大な馬です。コックスプレートも勝って、成長を感じていたので自信を持って乗った。でも、今は2つの気持ちが入り交じっている。確かにハッピーなんです。ただ勝ったら次の競馬をすぐ考えるけど…。これまで乗ってきた馬では一番強い。世界一を狙えるかもしれないので残念です」
ラストランは分かっていた。特例で認められた1日限定免許。だから、悔いのない騎乗を…。逃げたアエロリットが前半5F58秒5のオーバーペースと見るや、中団インで脚をためた。「スタートは出たけど、速いと思って自分のペースを守った。4コーナー?あまりに手応えが良くて外に出した。(自国の)豪州でも1週間通してこれだけ盛り上がるレースはない。素晴らしい有馬記念に乗せていただいたことを感謝しています」
表彰台で照明を浴びた矢作師は感激に震えていた。
「感無量ですね」
開業15年目にして初の有馬記念挑戦。5歳になって、令和に元号が変わり、宝塚記念→コックスプレートと急成長を見せた愛馬で大仕事を成し遂げた。「有馬記念は競馬ファンにとって一年の集大成。特別な思いがあるし、言葉では言い表せないものがあります」
輸送減に悩んだのは昔話。この日はデビュー以来最高の468キロ。筋肉ムチムチの堂々たるボディーに変貌を遂げていた。指揮官は「豪州遠征の後、有馬に向かう過程でまた一段と成長した。だから、悔いのないようにしっかり仕上げたんです」と目を細めた。
牝馬による同一年の春秋グランプリ制覇は史上初の快挙。今年G13勝。年度代表馬の座も狙える快進撃で、22戦の華麗な競走生活に終止符を打った。師は「素晴らしい、ありがとう。史上まれに見る名牝だと思う」と愛馬に最大の賛辞を贈った。
年明けの1月19日、エリザベス女王杯を制した思い出の京都競馬場で引退式が行われる予定。初めての花婿はロードカナロアが候補に挙がっている。香港、豪州も走り抜き、国内も世界も制圧した遅咲きの名牝。小雨降る師走の中山で「優美な百合」は見事に咲き誇った。
◆リスグラシュー 父ハーツクライ 母リリサイド(母の父アメリカンポスト) 牝5歳 栗東・矢作厩舎所属 馬主・キャロットファーム 生産者・北海道安平町ノーザンファーム 戦績22戦7勝(うち海外3戦1勝) 総獲得賞金12億1720万100円。
まさか。単勝1・5倍(支持率50・95%)の圧倒的1番人気アーモンドアイは直線で馬群に沈み9着。56日前、府中の天皇賞・秋で見せた衝撃的な強さは中山では見られなかった。「これも競馬」。ルメールは肩を落として検量室の中へ消えた。
敗因は?鞍上と国枝師の見解は一致した。状態は申し分なし。ゲートも無難に出て、すぐにフィエールマンの直後につけた。しかし、“打倒アーモンド”を掲げるライバルたちも好位置を求めて殺到。激しいポジション争いで隊列が入れ替わり、アーモンドアイは馬群の外へ。前の壁がなくなり平静さを失った女傑は、スタンド前の大歓声にさらにエキサイトした。「1周目でリラックスできなかった。ハミをずっとかんでいた。2500メートルと距離が長いので冷静に走れなければ、いくらアーモンドアイでも最後は疲れてしまう」(ルメール)。道中でスタミナを消費し、直線では全く見せ場なし。指揮官も「いつもの走りが見せられなかった。前に壁がつくれず1周目でスイッチが入ってしまった。最後はガス欠。残念です」と振り返った。
熱発で香港遠征を中止してのグランプリ電撃参戦。ノーザンファームの吉田勝己代表は「やはり熱発の影響もあったかもしれない。初めての距離もどうだったのか」。今後のプランは白紙。国枝師は「今のところレース後の馬の状態は大丈夫。今後についてはまだ決まっていない。ぼう然自失なので」と話すにとどめた。
ファン投票ではただ1頭、10万超え(10万9885票)の熱い支持を集めた“競馬ファンでなくとも名前を知っている馬”。16通りある単勝馬券では、2人に1人がアーモンドアイを応援した。今年のグランプリを盛り上げたのは間違いなくアーモンドアイだった。
有馬記念の売得金は468億8971万4600円で前年比107.4%と大幅にアップ。空前の豪華メンバーで購買意欲が上がったと考えられる。一方、22日の中山競馬場の入場人員は雨予報が響いたのか、9万374人で前年比90.2%と大幅にダウンした。
アンカツ(安藤勝己)
22日、中山競馬場で行われた第64回有馬記念(3歳上・GI・芝2500m・1着賞金3億円)は、中団後方でレースを進めたD.レーン騎手騎乗の2番人気リスグラシュー(牝5、栗東・矢作芳人厩舎)が、直線で一旦は先頭に立った3番人気サートゥルナーリア(牡3、栗東・角居勝彦厩舎)の外から脚を伸ばして一気に突き抜け、最後はこれに5馬身差をつけ優勝した。勝ちタイムは2分30秒5(良)。
さらにクビ差の3着に4番人気ワールドプレミア(牡3、栗東・友道康夫厩舎)が入った。なお、1番人気アーモンドアイ(牝4、美浦・国枝栄厩舎)は直線で伸びを欠き9着に終わった。
勝ったリスグラシューは、父ハーツクライ、母リリサイド、その父American Postという血統。D.レーン騎手とのコンビで宝塚記念、コックスプレート(豪)、そしてこのラストランの有馬記念を見事制覇し、GI・3連勝で有終の美を飾った。また、本馬を管理する矢作芳人調教師は有馬記念初出走で優勝を果たした。
【D.レーン騎手のコメント】
相手が強いことは分かっていましたが、宝塚記念からコックスプレートの間で馬は強くなり、そしてこの有馬記念までにも強くなっていると矢作先生に伺っていましたから自信を持って乗りました。
ペースが向きましたし、ラチ沿いの良いポジションも取れました。スペースが空いてからは非常に強い勝ち方をしてくれました。
2019年12月22日(日曜) 5回中山8日 発走時刻:15時25分 天候 曇 芝 良 11レース ウインファイブ5レース目 第64回 有馬記念GⅠ 3歳以上 オープン (国際)(指定) 定量 コース:2,500メートル(芝・右)
本賞金(万円)
1着30,000 2着12,000 3着7,500 4着4,500 5着3,000
付加賞(万円)
1着340.2 2着97.2 3着48.6
1 枠3赤 6 リスグラシュー 牝5 55.0 D.レーン 2:30.5 10 10 11 9 34.7 468(前計不) 矢作 芳人 2
2 枠5黄 10 サートゥルナーリア 牡3 55.0 C.スミヨン 2:31.3 5 13 13 11 7 35.4 504(+2) 角居 勝彦 3
3 枠4青 7 ワールドプレミア 牡3 55.0 武 豊 2:31.4 クビ 15 16 16 16 35.0 492(+8) 友道 康夫 4
4 枠3赤 5 フィエールマン 牡4 57.0 池添 謙一 2:31.6 1 1/2 10 10 9 4 36.0 482(前計不) 手塚 貴久 6
5 枠6緑 11 キセキ 牡5 57.0 R.ムーア 2:31.6 クビ 12 12 11 9 35.8 506(前計不) 角居 勝彦 7
6 枠8桃 16 シュヴァルグラン 牡7 57.0 福永 祐一 2:31.9 1 3/4 14 14 14 13 35.8 470(+6) 友道 康夫 14
7 枠4青 8 レイデオロ ブリンカー 牡5 57.0 三浦 皇成 2:32.1 1 1/4 15 14 14 13 36.0 494(+8) 藤沢 和雄 9
8 枠7橙 14 ヴェロックス 牡3 55.0 川田 将雅 2:32.3 1 8 8 9 9 36.7 494(+4) 中内田 充正 8
9 枠5黄 9 アーモンドアイ 牝4 55.0 C.ルメール 2:32.3 ハナ 8 8 7 4 36.9 486(+6) 国枝 栄 1
10 枠2黒 3 エタリオウ ブリンカー 牡4 57.0 横山 典弘 2:32.4 クビ 5 5 5 4 37.2 462(0) 友道 康夫 10
11 枠7橙 13 アルアイン 牡5 57.0 松山 弘平 2:32.8 2 1/2 4 4 3 3 38.0 526(0) 池江 泰寿 15
12 枠1白 2 スワーヴリチャード 牡5 57.0 O.マーフィー 2:33.6 5 6 6 6 7 38.3 526(+10) 庄野 靖志 5
13 枠2黒 4 スティッフェリオ 牡5 57.0 丸山 元気 2:34.0 2 1/2 2 2 2 2 39.9 456(+8) 音無 秀孝 13
14 枠8桃 15 アエロリット 牝5 55.0 津村 明秀 2:35.0 6 1 1 1 1 42.1 514(-2) 菊沢 隆徳 12
15 枠1白 1 スカーレットカラー 牝4 55.0 岩田 康誠 2:35.3 1 3/4 7 6 7 13 39.8 474(-12) 高橋 亮 11
16 枠6緑 12 クロコスミア 牝6 55.0 藤岡 佑介 2:35.3 クビ 2 3 3 12 40.6 444(-4) 西浦 勝一 16
コーナー通過順位
1コーナー 15=(4,12)13,3,2,1(14,9)(6,5)11,10-16(7,8)
2コーナー 15=4,12,13,3(1,2)(14,9)(6,5)11,10-(16,8)7
3コーナー 15=4-(12,13)-3,2(1,9)(14,5)(6,11,10)(16,8)7
4コーナー 15,4-13-(3,9,5)(2,10)(6,14,11)12(1,16,8)7
ラップタイム
100m 300m 500m 700m 900m 1100m 1300m 1500m 1700m 1900m 2100m 2300m 2500m
6.9 18.0 29.4 40.8 52.3 1:04.5 1:16.8 1:28.9 1:40.6 1:52.9 2:06.3 2:18.5 2:30.5
6.9 11.1 11.4 11.4 11.5 12.2 12.3 12.1 11.7 12.3 13.4 12.2 12.0
上り 4F 49.9 - 3F 37.6
払戻金
単勝
6 670円 2番人気
複勝
6 210円 2番人気
10 270円 3番人気
7 390円 5番人気
枠連
3-5 300円 1番人気
ワイド
6-10 850円 8番人気
6-7 1,450円 13番人気
7-10 2,000円 19番人気
馬連
6-10 2,990円 8番人気
馬単
6-10 6,130円 16番人気
3連複
6-7-10 10,750円 29番人気
3連単
6-10-7 57,860円 151番人気
・6 リスグラシュー・・・終始、これが最初で最後の対決となった、アーモンドアイを見ながらの競馬。向正面ではハス向かいにアーモンドを見ながら内目を通り、4角手前で外に持ち出すと、直線で一気に弾け、終わってみれば、2着に5馬身の差をつける圧勝。9着と大敗したアーモンドアイとは対照的な成績となった。また、宝塚記念と有馬記念の同一年制覇馬は史上10頭目だが、牝馬はリスグラシューが初めて。
4歳でエリザベス女王杯を制する前までのリスグラシューは、「万年2着」馬だった。阪神ジュベナイルフィリーズ、桜花賞、秋華賞、ヴィクトリアマイルにおいてすべて2着。その内容は決まって差し届かず、というパターンであり、典型的な「勝ち味に遅い馬」だった。
昨年のエリザベス女王杯では、逃げるクロコスミアをわずかにクビ差捕らえ、悲願のGI初制覇。その後、2度の香港遠征を挟んだ後挑んだ宝塚記念で、大方の予想を裏切る策に打って出た。ハナを切ると予想されたキセキが出遅れたこともあったが、果敢にハナを奪いに行った。結局、出遅れながらも先手が取りたかったキセキに先頭を譲るも、その番手をキープ。直線に入ってキセキを差し、メンバー中、唯一の牝馬ながらも春のグランプリホースとあいまった。
その後、豪州遠征のコックスプレートも勝ち、GIを連勝。今回の有馬記念は、戦前より引退レースと告知されていたが、見事に掉尾を飾った。
アーモンドアイを破ったばかりか、圧勝劇だったため、まだ現役でやってほしい、という声は少なくないだろうが、現在5歳牝馬、ということを考えると、ここが潮時、ということもいえる。今後はいい仔を世に送り出してもらいたい。
・10 サートゥルナーリア・・・後方に待機し、勝負どころの3~4角で一気に番手を押し上げる競馬。リスグラシューにはかなわず、また、右回りコース初黒星を喫したが、2着を確保できた点は来年につながる走りだった。
・7 ワールドプレミア・・・3歳のこの時期にして、キ甲が抜けていないという、「若馬」風情の馬だが、後方待機ながらも、直線だけで3着に追い込んできた脚は秀逸。来年の古馬戦線は、ひょっとしたら、この馬が中心になるかもしれない。
・5 フィエールマン・・・4角で前団にとりつき、直線入り口では先頭をうかがう勢いだったが、その後は思ったほど伸びきれなかった。まだ、凱旋門賞帰りの疲れが取れていなかったかもしれない。
・11 キセキ・・・凱旋門賞同様に、後方からの競馬となったが、徐々に漸進しながら入着を果たした。来年は本格的に差す競馬に転じるかもしれない。
・9 アーモンドアイ・・・直線でまさかの後退。ある意味衝撃的なシーンだった。中身を紐解くと、初手から興奮気味で、ハミを強く噛んでいた。また、1周目のホームスタンド前では行きたがるそぶりを見せてしまった。この地点は、「抑える」ことが有馬記念では『鉄則』。その後は外目を通り、直線で追い出しにかかるも、もう、その時点で脚は残っていなかった。
秋の天皇賞快勝後、当初は香港カップへの出走予定だったものの、熱発が出たため遠征回避。その後は休養に充てるか、ここに出るか、なかなか結論が出なかった様子だったが、ファン投票第一位で選出されたこともあり、出走を決意。だが、常に万全の体勢でなければベストパフォーマンスを発揮できないという、「誤魔化しの利かない馬」であることが、この一戦で露呈した。もちろん、万全の体勢であれば、引き続き、現役最強の競走を披露することだろう。