香港問題で中国政府をまともに批判できない安倍首相と自民党の二枚舌! 中国を攻撃してきたネトウヨも香港市民受け入れは拒否 2020.07.06 01:30 https://t.co/tC4lM7JS1H @litera_webより
— 佐野 直哉 (@pxbrqnaZJT1917W) July 6, 2020
中国政府が香港を統制・弾圧する「国家安全維持法」が制定、1日から香港で施行された。政治活動や言論の自由を奪い中国の直接支配を強行しようとするこの制度は、「香港の高度な自治」「一国二制度」を崩壊させるものであり、香港の人々の人権を著しく弾圧するものだ。
さっそく1日に、香港独立と書かれた旗を持った男性が逮捕されたほか、デモ参加者が大量に拘束された。戦前の大日本帝国の「治安維持法」を彷彿とさせる、許されない暴挙である。
この中国政府の横暴には、当然ながら国際社会から非難の声が上がっており、カナダが香港との間の犯罪人引渡し条約を停止したり、イギリスが香港市民に対し英国市民権取得の道を示したり、オーストラリアが香港住民の受け入れを検討する方針を示すなど、単なる対抗措置にとどまらず、香港市民に対する支援・救済策を打ち出す国も相次いでいる。
一方、日本政府はといえば、菅義偉官房長官や茂木敏充外相が6月30日の会見で、国家安全維持法可決を受け「仮に報じられている通り可決されたのであれば、遺憾だ」「国際社会の一国二制度の原則に対する信頼を損ねるもの」と表明。また同じ30日、国連人権理事会で、同法を施行した中国政府に対して懸念を示す27カ国の共同声明にを、イギリス、フランス、ドイツなどとともに加わったくらい。とくにイギリスやオーストラリア、台湾のような、香港市民に対する救済や支援については、何も動いている形跡がない。
政権支持層でもある反中右派と国際社会の顔色を伺い最低限の声明は出しているが、香港で起きている事態を考えれば安倍政権の対応はあまりに鈍すぎると言わざるを得ない。
たとえば「遺憾」表明について、国内各紙は「これまでより強い表現で批判した」「制定方針決定時の「深い憂慮」から表現を強めた」などと評価していたが、事態の深刻さを考えればあまりに弱すぎるだろう。
日本の外交における抗議や批判の表現は、上から「断固として非難する」「非難する」「極めて遺憾」「遺憾」「深く憂慮」「憂慮」「強く懸念」「懸念」とされており、「遺憾」は上から4番目にすぎない。
実際、この少し前、6月2日に輸出規制をめぐって韓国がWTOでの手続きを再開したことについては、「極めて遺憾」と表明している。詳細は別稿に譲るが、もともと安倍政権の嫌韓感情の発露にすぎない輸出規制については、GSOMIA延長時に韓国側の「WTO提訴中断」と引き換えに規制解除の構えを日本政府は見せていたにもかかわらず、半年以上放置していたのだから手続きを再開されても無理はない。それ以前に、WTOへの提訴じたい、国際社会のルールを逸脱するものでも、ましてや人道にもとる行為でもなんでもない。
国際機関へのルールに則った手続きが「極めて遺憾」で、香港市民の人権を著しく弾圧する「国家安全維持法」がなぜ「深く憂慮」や「遺憾」なのか。安倍外交は、事の軽重の判断が狂っているとしか言いようがない。
韓国に対する差別的政策の酷さもさることながら、いかに安倍政権が中国に対しては弱腰かがよくわかる。
しかし、ここ数年の安倍政権の中国政府に対する姿勢を見ていれば、この弱腰も当然なのかもしれない。
支持層向けの反中ポーズに騙されて右派・左派ともに勘違いしているかもしれないが、ここ数年の安倍政権は、表向き反中ポーズをとりつつ、実際は経済重視で中国政府には媚びまくり、とりわけ香港やウイグルに対する中国政府の暴挙に対して、この間、一貫して腰の引けた対応を取ってきた。
安倍政権の香港問題へのあまりに腰が引けた対応! 当初の共同声明参加拒否も事実
象徴的なのが、6月上旬に明らかになった、香港国家安全維持法導入をめぐり中国政府を批判するアメリカ、イギリスなどによる共同声明への参加を拒否した問題だ。
これは共同通信が6月7日に報じたもので、〈複数の関係国当局者〉が明らかにした情報として、〈香港への国家安全法制の導入を巡り、中国を厳しく批判する米国や英国などの共同声明に日本政府も参加を打診されたが、拒否していた〉〈中国と関係改善を目指す日本側は欧米諸国に追随しないことで配慮を示した〉という。
だが、この共同通信の記事に安倍自民党のネトウヨ議員が次々と噛みつき、記事内容を全否定。この共同電を配信していた産経新聞が記事を削除したことから、「共同通信のデマ記事」だと決めつけた。
さらに、翌8日には時事通信が「日本の対応「米英も評価」 中国の国家安全法導入方針で―菅官房長官」というタイトルで記事を配信すると、ネトウヨたちは「デマ記事確定」扱いをした。
しかし、本サイトが当時報じたとおり(https://lite-ra.com/2020/06/post-5467.html)、この報道はデマなどではない。菅官房長官はすでに日本単独で「憂慮を表明した」ことを持ち出したり、「米英は日本の対応を評価している」と繰り返しただけで、「共同声明の打診はあったのかどうか、そしてそれを拒否したのかどうか」という問題には一切答えず、明確に否定しなかった。また、共同通信も記事を訂正することなく、ロイターなど海外メディアも後追い報道している。
この騒動直後の6月10日に、安倍首相が国会で「日本がG7で共同声明の発出をリードしたい」旨を発言し、中国から抗議を受けているが、この発言も声明拒否報道の打ち消しのためのアピールでしかないだろう。実際、その約1週間後に出されたG7外相声明について国内メディアは「日本が提案した」などと報じているが、英ガーディアン紙によれば、中国と曖昧な関係にある日本をイギリスが説得したとある。さらに、その後「国家安全維持法」導入が現実になっても、結局、前述したように「遺憾」としか表明していない。
しかも、中国の暴挙に対して日本が明確に批判をしないのはこれが初めてではなかった。
昨年夏、容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」をめぐって香港で抗議デモが広がり各国が中国政府を批判するなか、「大きな関心を持って注視している」「香港が『一国二制度』の下で自由で開かれた体制を維持し、民主的に力強く発展するよう期待する」などと明確な批判には踏み込まなかった。
やはり香港やウイグルでの人権弾圧が問題になっている最中の昨年12月にも、中国・成都で安倍首相が、習近平国家主席や李克強首相と会談した際には、香港について「自制と早期収拾」、ウイグルについて「透明性をもった説明」を望むと述べるなど、最低限言及しただけ。それどころか、嵐を「日中親善大使」に起用することを習主席と李首相に直々に伝えるなど、今年4月に予定されていた習主席の訪日に向けてご機嫌をとる始末だった。
共産党と立憲、国民が「香港国家安全維持法」に抗議声明出しても自民党は出さず
そして、これは政府だけでなく、自民党も同じだ。日本共産党が「『香港国家安全維持法』制定に厳しく抗議し、撤回を求める」と強い抗議声明を出したほか、立憲民主党、国民民主党などの野党が次々に声明・談話を出したのに対し、自民党はいまだになんの声明も出していない。党内では、1日に右派議員を中心に党としての抗議声明を出すよう岸田文雄政調会長に要請したが、いまだに声明は出されていない。また、延期となっている習近平主席国賓来日の中止要請を官邸に申し入れをおこなう動きがあるが、それもいまだ不透明だ。
こうした安倍政権の中国への曖昧な態度の背景にあるのは、影の総理といわれる今井尚哉首相補佐官の存在が大きい。
「今井補佐官は経済目的で中国との関係を強めたい経産省の意向を受けて、中国の一帯一路構想やAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加にも積極的。2017年に二階俊博幹事長が訪中した際には、親米タカ派の谷内正太郎国家安全保障局長(当時)が担当した安倍首相の親書を書き換えるよう指示したとされるほどです」(全国紙政治部記者)
ようするに、安倍首相の香港問題に対する弱腰姿勢もこうした経産省支配の延長線上にあるもので、経済的利益を優先して、人権侵害などは二の次、という方針がモロに出ているといっていいだろう。
実は、こうした安倍首相のあまりの弱腰ぶりに対して、最近は安倍応援団の間からも批判の声が出始めている。安倍首相の支持者である右派、ネトウヨ層はもともと排外主義、人権軽視の思想の持ち主が多いが、そんな連中も、中国に対しては、ウイグルや香港の人権問題を持ち出して徹底攻撃してきた。
その延長線上で、香港問題で弱腰な対応を続ける安倍政権に不満が向かいつつあるのだ。
「安倍首相も右派の動向はかなり意識しています。コロナ問題でも、中国からの渡航制限をしなかったことで右派から批判を浴び、支持率を落とした。下手をしたら右派が離反し、政権の命取りになりかねない。しかし、経済政策や今井補佐官の存在を考えると、対中姿勢の根本的な転換はないだろう。だから、安倍首相はいま、必死で右派のご機嫌取りをしている状況です。中国への声明がやや強めになったのもそうですし、7月2日、東京都の新規感染者が5月以来100人を超えたと報じられるなか極右雑誌『月刊Hanada』のインタビューを受けていたことが批判されましたが、これも支持基盤である右派からの批判封じ込めが目的でしょう」(政治評論家)
香港問題で中国を批判してきたネトウヨが香港市民受け入れ問題では差別性丸出し
もっとも、中国の香港介入を糾弾する右派やネトウヨ連中が本気で安倍首相にプレッシャーをかけ、政権の姿勢を根本的に転換させるよう動くとは、とても思えない。
それが露呈したのが、迫害された香港市民の受け入れに対する反応だ。1日、在日香港市民の団体が日本ジャーナリスト協会で会見。迫害された香港人の移住先、亡命先として日本が選択肢となる可能性に触れ、日本政府に対し移住条件の緩和など対応を求めた。
このニュースに対し、中国を激しく批判し香港にエールを送っていたはずのネトウヨたちが、一斉に受け入れに反対しているのだ。
〈香港の過激派な行動は怖いです。〉
〈あの騒ぎを扇動した方々を受け入れるのは嫌です〉
〈胡散臭い連中が後ろにいそうな主張。〉
〈正直言うと…無理な相談だな。親中派や大陸の人間がスパイとして入り込んで来たら一発でアウトだし。〉
〈日本への移民は絶対に反対です。どうやって選別するのですか?〉
〈本当に日本に愛国心を持ち骨を埋める気持ちがある人ばかりだといいのですが、安易に受け入れたらドサクサに紛れて工作員が多数入り込むと思われます。〉
〈生活保護が増えるだけ〉
〈イギリスで受け入れるべき案件!〉
〈台湾に行け。〉
〈移住はちょっと・・・〉
〈テロリストはお断り〉
あまりに醜悪な手のひら返し。ようするに、連中は嫌中感情、中国差別の発露として香港弾圧を批判しているにすぎず、香港の民主主義や香港市民の人権や生活などどうでもいいのだ。
ウイグル自治区における人権弾圧問題にしても、同じだ。ネトウヨ連中は、国内での在日差別などに反対する声に対し、きまって「だったらウイグルは」などと言ってきたが(黒人差別に抗議の声をあげる大坂なおみ選手にまでそう絡んでいた)、典型的な「whataboutism」で論点ずらしに利用してきたにすぎず、本気で人権問題など考えていない(賭けてもいいが、いま威勢よく中国批判を叫んでいるネトウヨや安倍応援団の連中は、もし日本が中国政府に支配されることになったら、真っ先に中国政府の手先なって、民主派市民を攻撃することだろう)。
そして、こうしたダブルスタンダードは、逆に親中路線をとっている安倍首相も同じだ。それは単に経済目当てで中国政府に気を遣っているというだけで、中国に対する蔑視感情は右派連中のそれと変わらない。
本来は、個々の中国の一般市民に対する差別はせず、中国政府の人権抑圧や武力行使については断固として抗議するというのが、まともな民主主義国家の対応だと思うが、安倍政権はそのまったく逆。コロナ問題でもそうだったように中国人に対する差別は野放しにしながら、中国政府の民主主義や人権を侵害する行為にはまともな批判ができないのだ。
中国政府の香港弾圧にあらためて強く抗議するとともに、安倍政権やその支持層であるネトウヨ連中のグロテスクな二枚舌を徹底的に批判していく必要があるだろう。
(編集部)
最終更新:2020.07.06 01:34