追い越すまでの妄想劇

2006-01-26 00:30:31 | 日記・エッセイ・コラム

土日に降り積もった雪はまだ消えていない。路肩に積もった雪は氷のような固まりになっており見るだけで寒い。一部透明にちかいところもあったりする。


夜、駅から家までの帰り道。
前を歩く唯一の人影はその路肩の氷を足でゴシゴシこすりながらゆっくりと歩いていた。仕草は子供なのだが、追いつくにつれ、どうやら中年サラリーマンのようだとわかった。まるで学校から帰宅する小学生が、雪の凍った固まりで遊びながら帰っているかのようだ。そんな風景をおっさんが凍てつく夜に一人演じていた。


徐々に近づくと様子が一変した。猫背なうつむき加減の影。闇を背負って寂しそうにしか見えない。きっと家に帰りたくないんだなぁ。




おそらくこのおっさんの家庭は崩壊寸前だ。厚化粧になった奥さんは朝帰りもしばしば、二十歳前の子供たちとはもう何日も会話がない。。。
息子が口をきいたと思えば、「こづかいくれ」。
いや言葉ならまだいい。
娘には置き手紙で催促され、その手紙の横に5千円を置いた。妻の顔を見たのはいつだったか。仕事もうまくいかない、人間関係は常になやみがつきまとう。5年前、無趣味から脱却しようとはじめたゴルフ。あのゴルフクラブを最後に握ったのは・・・
ああ思い出せない。
そういえば最近笑ったっけ?



そんな妄想劇は
寂しげな影を追い越し、視界からきえるまでふくらんでいた。



コメント
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