くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

王様の扉(62)

2023-11-26 00:00:00 | 「王様の扉」

 と、狙っている人間の正面に向き合おうとしたのか、二人の青騎士が、左右に分かれた。向き合った青騎士をそれぞれが目で追いつつ、しかし残った三人目の青騎士の姿を見たとたん、誰もがその姿をもう一度見直してしまった。
 最後にやって来た三人目の青騎士の鎧は、青一色ではなかった。森の木々に揺れる日差しを受けたその姿は、ほかの青騎士と同様、青い色をしているものとばかり思いこんでいた。しかし、その姿をはっきりと見せた青騎士の鎧は、なぜか青色ではなかった。
 グレイ達三人を狙って、左右に分かれた青騎士の後からやって来た青騎士は、赤いペンキを頭から不用意に被ってしまったような、まだらな青色と赤色の二色の鎧を纏っていた。

 勝敗は、しかし一瞬で決まってしまった。

 グレイに大剣を振りかぶった青騎士は、するりと後ろに回りこんだグレイに担ぎ上げられ、軽々と遠くの木に向かって、放り投げられた。

 ガシャシャン――。

 と、青騎士の一人が堅い木の幹に叩きつけられ、音を立てて崩れ落ちた。
 自分が狙われているとわかったアオは、サオリから離れて器用に枝に止まると、大剣を振りおろそうと構える青騎士と向かい合った。
 アオは、木刀に見立てた木片を翼の間から抜き取ると、青騎士に向かって身構え、微動だにしなかった。
 鎧の下は空っぽとはいえ、グレイが指摘したとおり、どこにそんな力があるのか、頭上高く振り上げられた重々しい大剣を、青騎士は風を切る鋭い音を立てながら、アオに振りおろした。
 切られた、と思わせるほど、アオは同じ枝先に止まったまま、ほとんど微動だにせず、青騎士の一撃をかわしていた。
 乱暴に切り落とされた木の枝が、サワサワと悲しげな葉音をさせながら、地面に落ちていった。
 アオは、くちばしに咥えた木刀を水平に払いながら、青騎士の背後にすり抜けた。
 大剣の一撃を避けられた青騎士は、前によろめきながらも再び大剣を振り上げ、後ろを振り向きざま、アオを切ろうとした。

 ガシャシャン――。

 アオが振るった木刀を、すり抜けざまに打ちこまれていた青騎士は、後ろを振り向いたとたん、ばらばらになって地面に崩れ落ちた。アオは、木刀をさっと羽根の下にしまうと、翼をひるがえし、サオリの肩の上にちょこんと乗っかった。
 先に青騎士を倒したグレイも、ジローも、サオリを背中に、正面を向いて盾になっているマコトも、サオリの肩に止まっているアオも、揃って最後に残った一人の青騎士と対峙していた。
「なんかコイツ、ほかの青騎士と違わない?」と、マコトは震える声で囁くように言った。

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王様の扉(61)

2023-11-26 00:00:00 | 「王様の扉」


「三人だ」

 と、グレイはすぐに木を下りてきて言った。「思ったとおり。青騎士が三人、こっちに向かってきてる。あの様子なら、ぼく達が町に到着するより早く、追いつかれそうだよ」
「おれ達が倒した青騎士が、また復活したんだだろうか?」と、ジローは訊いた。
「違うと思う」と、グレイはすぐに答えた。「復活してきたにしては、ぜんぜん傷ついていないもの。――それとも、違いなんてないのかもしれない。まるで双子みたいにそっくりで、青騎士同士、見た目の違いはぜんぜんないんだもの。大剣を帯びたまま、一定の歩幅でずんずん近づいてきてる」
「見た目がどれも同じじゃ話にならないが、どの青騎士が誰を狙っているか、あらかじめわかっていれば、守り方もいろいろ考えられるんだがな」と、ジローは大きく息を吐きながら言った。「直前にならなきゃわからないってのは、気が気じゃないぞ」
「ぼく達三人で、なんとかやっつけるしかなさそうだね」と、グレイは言った。
「さっきは距離を取っていたが、今回は一箇所に集まって、青騎士をまとめてやっつけた方がいいかもな」と、ジローは言った。
「――うん。それがいいと思うよ」と、グレイが言うと、アオも小さくうなずいた。
 五人は、森の中の広場になったような場所を見つけて、マコトとサオリを真ん中に、青騎士がやって来るのを待った。
「ほんとに来るのかな」と、マコトが心細そうに言った。
「しっかりしろ。戦う前から、弱気になっちゃだめだ。逃げる時は、沙織の手を離しちゃだめだからな」と、マコトの前に立ったジローが、きびしい顔をして言った。
「次に狙われるとすれば、ぼくとアオと、サオリに違いないよ」と、グレイは確かめるように言った。「だから、ぼく達が戦ってる間は、サオリを守ってあげてね」
「知らないだろうけど」と、マコトはグレイに言った。「逃げ足だけは速いんだ」
「そうこなくっちゃ」と、グレイとジローは、くすりと笑った。
 と、鉄の鎧が打ち合う音が、だんだんと近づいてきた。
 三人の青騎士の鎧が、耳障りな音を一定のリズムで奏でていた。

 ガシャッ、コ。ガシャッ、コン。ガシャシャッ、コ……
 ガシャッ、ン。ガシャッ、ンコ。ガシャッンコ…… 
 カシャッ、ンコ。カシャッ、コ。カシャシャンコン……

 三人の青騎士が、姿を現した。
 森の中に射しこむ木漏れ日を縫ってやって来た三人の青騎士は、どれもまったく同じ青色の鎧を身に纏っているようだった。
 前をやって来る二人の青騎士は、待ち構える五人の姿を認めると、腰に下げていた大剣をするりと手に取った。
「気をつけろ」と、ジローは言った。「どうやら、それぞれの目標に狙いをつけたようだ」
 たっぷりと上空に張り繁った枝の影を抜け、歩幅を変えずに近づいてくる青騎士は、予想どおり、グレイとアオ、サオリに狙いをつけているようだった。

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