と、狙っている人間の正面に向き合おうとしたのか、二人の青騎士が、左右に分かれた。向き合った青騎士をそれぞれが目で追いつつ、しかし残った三人目の青騎士の姿を見たとたん、誰もがその姿をもう一度見直してしまった。
最後にやって来た三人目の青騎士の鎧は、青一色ではなかった。森の木々に揺れる日差しを受けたその姿は、ほかの青騎士と同様、青い色をしているものとばかり思いこんでいた。しかし、その姿をはっきりと見せた青騎士の鎧は、なぜか青色ではなかった。
グレイ達三人を狙って、左右に分かれた青騎士の後からやって来た青騎士は、赤いペンキを頭から不用意に被ってしまったような、まだらな青色と赤色の二色の鎧を纏っていた。
勝敗は、しかし一瞬で決まってしまった。
グレイに大剣を振りかぶった青騎士は、するりと後ろに回りこんだグレイに担ぎ上げられ、軽々と遠くの木に向かって、放り投げられた。
ガシャシャン――。
と、青騎士の一人が堅い木の幹に叩きつけられ、音を立てて崩れ落ちた。
自分が狙われているとわかったアオは、サオリから離れて器用に枝に止まると、大剣を振りおろそうと構える青騎士と向かい合った。
アオは、木刀に見立てた木片を翼の間から抜き取ると、青騎士に向かって身構え、微動だにしなかった。
鎧の下は空っぽとはいえ、グレイが指摘したとおり、どこにそんな力があるのか、頭上高く振り上げられた重々しい大剣を、青騎士は風を切る鋭い音を立てながら、アオに振りおろした。
切られた、と思わせるほど、アオは同じ枝先に止まったまま、ほとんど微動だにせず、青騎士の一撃をかわしていた。
乱暴に切り落とされた木の枝が、サワサワと悲しげな葉音をさせながら、地面に落ちていった。
アオは、くちばしに咥えた木刀を水平に払いながら、青騎士の背後にすり抜けた。
大剣の一撃を避けられた青騎士は、前によろめきながらも再び大剣を振り上げ、後ろを振り向きざま、アオを切ろうとした。
ガシャシャン――。
アオが振るった木刀を、すり抜けざまに打ちこまれていた青騎士は、後ろを振り向いたとたん、ばらばらになって地面に崩れ落ちた。アオは、木刀をさっと羽根の下にしまうと、翼をひるがえし、サオリの肩の上にちょこんと乗っかった。
先に青騎士を倒したグレイも、ジローも、サオリを背中に、正面を向いて盾になっているマコトも、サオリの肩に止まっているアオも、揃って最後に残った一人の青騎士と対峙していた。
「なんかコイツ、ほかの青騎士と違わない?」と、マコトは震える声で囁くように言った。