くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

王様の扉(64)

2023-11-27 00:00:00 | 「王様の扉」

 青騎士の首を落としたアオは、木刀を咥えたまま、グレイの肩に止まって、正面に見える青騎士を見据えていた。
 ――首を落とされた青騎士は、振りおろした剣を片手に持ったまま、地面に落ちた頭を手探りで探し始めた。
 首を探している青騎士が身をかがめると、目が覚めたようにサオリが意志を取り戻し、心配して覗きこむジローの首に抱きついた。
「こわい。あの騎士がこっちを見てる」
 と、ジローの胸に顔を埋めたままサオリが言うと、ジローは優しく抱きしめ、「心配しなくて大丈夫だ」と、元気づけさせるように言った。
 自分の首を拾った青騎士は、なにをしようとしているのか、自分の頭を首に戻そうとしつつも、考え直したように胸の前で抱えるように持つと、片手で持っていた大剣の柄を離し、兜の前に下ろされた格子状の面繋を持ち上げていった。

「気をつけろ。なにか飛び出してくるかもしれないぞ――」

 ジローは、マコトとサオリを守りつつ、青騎士の動きを見守っていた。

 カシャリ――。と、乾いた鉄の音をさせ、兜の面繋が開けられた。
 思わず腰を低く構えたグレイは、兜の奥に、ただ暗い空間が広がっているだけなのを、はっきりと確認していた。
 青騎士がなにをしようとしたのか、中身が空っぽな兜を、ただこちらに向けた青騎士は、目が覚めたように兜を足元に放り出し、大剣を拾って構え直した。
 と、赤色と青色が混じったような鎧の色が、みるみるうちに青色に変わっていった。
 アオがグレイの肩を離れ、サオリの肩の上に木刀を構えたまま飛び移った。
 アオが飛び上がったとたん、グレイも高く飛び上がった。
 サオリを守るように背中を見せていたジローは、ゆっくりと立ちあがり、大剣を構えて近づこうとした青騎士と、まっすぐに向かい合った。
 青騎士の後ろに音もなく降り立ったグレイが、青騎士の鎧に手を掛けようとした時だった。
 青騎士が、サッと身を翻して大剣を振るった。
 グレイは頭を低く落とし、間一髪で大剣の一撃を避けたものの、返す大剣で切られないよう、素早く後ろに下がって、遠い間合いを取るしかなかった。

 ドンッ――。

 青騎士がサオリに向き直ろうとした所で、ジローが首のない青騎士の胸を狙い、拳を打ちこんだ。
 鉄の板がボコッとひしゃげる音を立て、大きく鎧をへこませた青騎士が、尻もちをつくようにひっくり返った。倒れた青騎士は、立ちあがることなく、そのまま地面に溶けるように消え去った。
「大丈夫か?」と、ジローはやって来たグレイに言った。「急に強くなったな」

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王様の扉(63)

2023-11-27 00:00:00 | 「王様の扉」

「鎧の色のことを言ってるんなら、ぼくもそう思うよ」と、グレイはマコトを守るように足を進めながら、つぶやくように言った。「木の上から見た時は、青い鎧に梢の影がちらちら映ってるんだと思ったんだ」
「鎧の色がほかと違うからって、同じ青騎士であることに違いはないはずだ」と、ジローは青騎士を見ながら言った。
「――そうだといいんだけど」と、グレイは不安そうに言った。「ほかの青騎士なら、狙った者以外の人が目の前に立って邪魔すれば、すぐに大剣を振りおろすのに、最後の一人は、大剣を胸の前で構えたまま、黙ってこっちの様子をうかがっているみたいだ」
「確かに妙だな」と、両手の拳を固く握って構えたジローは、言った。「こっちが動きだすのを待っているように、身動きしないぞ」
 と、マコトが、サオリの様子が変なことに気がついて言った。

「――どうしたの、サオリ」

 ジローがわずかに振り向くと、青騎士を見上げたサオリが、パッチリと目を見開いたまま、心ここにあらずといった放心状態で、身じろぎもせず立ちつくしていた。
「どうした、沙織」と、ジローは一歩下がると、サオリの前に膝を突いて様子をうかがった。
 なにかを感じたのか、サオリの肩に止まっていたアオが、木刀を嘴に咥えながら、青騎士に向かって行った。
 グレイは、青騎士に背中を向けたジローの後ろに移動しつつ、アオの行く手を見守っていた。

 さくっ――。

 と、金属が鋭利な刃物で切られたような、低い音が聞こえた。
 グレイは、目を見張っていた。
 青騎士に向かって飛んでいったアオが、大剣を構える青騎士の腕を巧みに避けながら、その首元を狙って、目にも止まらぬ早さで、木刀の一撃を加えていた。
 木刀に撃たれた青騎士は、なんの抵抗もできないまま、固い鎧の首を断たれていた。
 どうして、鎧が木に切られてしまうのか? グレイは、アオの体術と、振るわれた木刀の一撃に、奇妙な違和感を感じていた。

「みんな下がって、なんかおかしい」

 グレイが言うと、ジローはサオリとマコトを抱え持ち、軽々と高く飛び上がって、青騎士との距離を大きく広げて地面に下りた。
 そのすぐ後ろから、グレイが青騎士の方を向いたまま、ジローのすぐ後ろの地面に降り立った。

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王様の扉(62)

2023-11-26 00:00:00 | 「王様の扉」

 と、狙っている人間の正面に向き合おうとしたのか、二人の青騎士が、左右に分かれた。向き合った青騎士をそれぞれが目で追いつつ、しかし残った三人目の青騎士の姿を見たとたん、誰もがその姿をもう一度見直してしまった。
 最後にやって来た三人目の青騎士の鎧は、青一色ではなかった。森の木々に揺れる日差しを受けたその姿は、ほかの青騎士と同様、青い色をしているものとばかり思いこんでいた。しかし、その姿をはっきりと見せた青騎士の鎧は、なぜか青色ではなかった。
 グレイ達三人を狙って、左右に分かれた青騎士の後からやって来た青騎士は、赤いペンキを頭から不用意に被ってしまったような、まだらな青色と赤色の二色の鎧を纏っていた。

 勝敗は、しかし一瞬で決まってしまった。

 グレイに大剣を振りかぶった青騎士は、するりと後ろに回りこんだグレイに担ぎ上げられ、軽々と遠くの木に向かって、放り投げられた。

 ガシャシャン――。

 と、青騎士の一人が堅い木の幹に叩きつけられ、音を立てて崩れ落ちた。
 自分が狙われているとわかったアオは、サオリから離れて器用に枝に止まると、大剣を振りおろそうと構える青騎士と向かい合った。
 アオは、木刀に見立てた木片を翼の間から抜き取ると、青騎士に向かって身構え、微動だにしなかった。
 鎧の下は空っぽとはいえ、グレイが指摘したとおり、どこにそんな力があるのか、頭上高く振り上げられた重々しい大剣を、青騎士は風を切る鋭い音を立てながら、アオに振りおろした。
 切られた、と思わせるほど、アオは同じ枝先に止まったまま、ほとんど微動だにせず、青騎士の一撃をかわしていた。
 乱暴に切り落とされた木の枝が、サワサワと悲しげな葉音をさせながら、地面に落ちていった。
 アオは、くちばしに咥えた木刀を水平に払いながら、青騎士の背後にすり抜けた。
 大剣の一撃を避けられた青騎士は、前によろめきながらも再び大剣を振り上げ、後ろを振り向きざま、アオを切ろうとした。

 ガシャシャン――。

 アオが振るった木刀を、すり抜けざまに打ちこまれていた青騎士は、後ろを振り向いたとたん、ばらばらになって地面に崩れ落ちた。アオは、木刀をさっと羽根の下にしまうと、翼をひるがえし、サオリの肩の上にちょこんと乗っかった。
 先に青騎士を倒したグレイも、ジローも、サオリを背中に、正面を向いて盾になっているマコトも、サオリの肩に止まっているアオも、揃って最後に残った一人の青騎士と対峙していた。
「なんかコイツ、ほかの青騎士と違わない?」と、マコトは震える声で囁くように言った。

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王様の扉(61)

2023-11-26 00:00:00 | 「王様の扉」


「三人だ」

 と、グレイはすぐに木を下りてきて言った。「思ったとおり。青騎士が三人、こっちに向かってきてる。あの様子なら、ぼく達が町に到着するより早く、追いつかれそうだよ」
「おれ達が倒した青騎士が、また復活したんだだろうか?」と、ジローは訊いた。
「違うと思う」と、グレイはすぐに答えた。「復活してきたにしては、ぜんぜん傷ついていないもの。――それとも、違いなんてないのかもしれない。まるで双子みたいにそっくりで、青騎士同士、見た目の違いはぜんぜんないんだもの。大剣を帯びたまま、一定の歩幅でずんずん近づいてきてる」
「見た目がどれも同じじゃ話にならないが、どの青騎士が誰を狙っているか、あらかじめわかっていれば、守り方もいろいろ考えられるんだがな」と、ジローは大きく息を吐きながら言った。「直前にならなきゃわからないってのは、気が気じゃないぞ」
「ぼく達三人で、なんとかやっつけるしかなさそうだね」と、グレイは言った。
「さっきは距離を取っていたが、今回は一箇所に集まって、青騎士をまとめてやっつけた方がいいかもな」と、ジローは言った。
「――うん。それがいいと思うよ」と、グレイが言うと、アオも小さくうなずいた。
 五人は、森の中の広場になったような場所を見つけて、マコトとサオリを真ん中に、青騎士がやって来るのを待った。
「ほんとに来るのかな」と、マコトが心細そうに言った。
「しっかりしろ。戦う前から、弱気になっちゃだめだ。逃げる時は、沙織の手を離しちゃだめだからな」と、マコトの前に立ったジローが、きびしい顔をして言った。
「次に狙われるとすれば、ぼくとアオと、サオリに違いないよ」と、グレイは確かめるように言った。「だから、ぼく達が戦ってる間は、サオリを守ってあげてね」
「知らないだろうけど」と、マコトはグレイに言った。「逃げ足だけは速いんだ」
「そうこなくっちゃ」と、グレイとジローは、くすりと笑った。
 と、鉄の鎧が打ち合う音が、だんだんと近づいてきた。
 三人の青騎士の鎧が、耳障りな音を一定のリズムで奏でていた。

 ガシャッ、コ。ガシャッ、コン。ガシャシャッ、コ……
 ガシャッ、ン。ガシャッ、ンコ。ガシャッンコ…… 
 カシャッ、ンコ。カシャッ、コ。カシャシャンコン……

 三人の青騎士が、姿を現した。
 森の中に射しこむ木漏れ日を縫ってやって来た三人の青騎士は、どれもまったく同じ青色の鎧を身に纏っているようだった。
 前をやって来る二人の青騎士は、待ち構える五人の姿を認めると、腰に下げていた大剣をするりと手に取った。
「気をつけろ」と、ジローは言った。「どうやら、それぞれの目標に狙いをつけたようだ」
 たっぷりと上空に張り繁った枝の影を抜け、歩幅を変えずに近づいてくる青騎士は、予想どおり、グレイとアオ、サオリに狙いをつけているようだった。

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よもよも

2023-11-25 07:49:54 | Weblog

やれほれ。

昨日は助かったけど、

今日は朝からボロクソだわXXX

10cmは積もっとったで。。

外はふわふわ中びっしょくそな雪だもん

腰砕けそうになったけど、

面積こなさなかったらだめだから

やらんきゃなんらん所根性決めて雪はねしたけどさ

手は豆できそうになるし、雪ははねるどころかべったり

じょんばに貼り付いてさ

鉄じゃない鉄アレイでエクササイズしてるようなもんだ・・・。

はぁ。

神様ヘルプ。。

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王様の扉(60)

2023-11-25 00:00:00 | 「王様の扉」

「ぼくなら、大丈夫だと思うけど……」と、グレイはジローの表情をうかがいながら言った。
「追いかけてきてる青騎士の早さなら、その考えも可能と思う」と、ジローは言った。「けど、自分達の体力じゃあ、思ったよりも早く追いつかれてしまうかもしれない。それに、なかなか日が暮れないが、だからといっていつまでも明るいわけじゃない。先を急ぎすぎて、青騎士に夜襲をかけられれば、誰かが犠牲になってしまう恐れもある。日が暮れる前に青騎士を迎え撃つしか、いい作戦はないと思う」
「夜も、青騎士は襲ってくるのかな……」と、マコトは心配そうに言った。
「人だったなら、目が利かない夜は追いかけてこないと思うが、隠れている相手にもまっすぐ向かってくるんだから、見えようが見えまいが、青騎士は関係なく襲いかかってくると思った方がいい」と、ジローは言った。
「じゃあ、ぼく達が町に到着しちゃったら、町の人達も襲われるかもしれないってことだよね」と、グレイは言った。「十七号を追いかけてきた青騎士は、目の前に立って通せんぼしようとしたぼくを、切ろうとした。町の人が、もしも青騎士の邪魔をしたなら、同じように襲いかかってくるはずだよ」
「関係ない人が襲われるなんて、かわいそうだよ」と、マコトは言った。「――ちぇっ。町に到着したら、隠れられる場所がたくさんあると思ったのに」
「マコトの考えも間違っちゃいないよ」と、ジローは言った。「人が住んでいる町なら、どこかしら隠れる場所はあるはずだ。ただ、うまく隠れれば隠れるほど、青騎士はおれ達を捜し回って、邪魔をする人がいたなら、有無を言わさず大剣を振りおろすと思う」

「――」

 と、それぞれはうなずいた
 五人の勇気を奮い立たせるような曲が、ラジオから流れ始めた。
「さぁ、戦える場所を探しながら、前に進もう」と、ジローが先頭に立って言った。
 ――――   

「町に着く前に、あと何回くらい青騎士が出てくるかな」と、マコトは歩きながら言った。
「倒された青騎士が、どのくらいの早さで復活してくるか。まだ予想もつかないな」と、ジローは言うと、一番後ろからやって来るグレイの様子を、ちらりとうかがった。
「次に狙われてるのは、グレイかアオか、サオリだよね」と、マコトは言いにくそうに言った。
「沙織は大丈夫だよ」と、サオリは元気よく言った。「だって、青が守ってくれるから」
「はっはっ。強いなぁ、沙織は。そのとおりだよ」と、ジローは笑いながら言った。
「――みんな」と、グレイが足を止めて言った。「ちょっと見てくるね」
 言うと、グレイは手近な木に飛び移り、スルスルと器用に先端まで登って、やって来た道の向こうに目を凝らした。

 

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王様の扉(59)

2023-11-25 00:00:00 | 「王様の扉」

「青騎士の狙いは、おれとマコトだったみたいだな」
「ぼくが正面に立った時、一瞬戸惑ったように動きが止まったのは、十七号じゃなかったからだったのかな」と、グレイは首を傾げた。
「マコトには悪いことをしたが、青騎士がどんな動きを見せるか、少し様子をうかがっていたんだ」と、ジローは言った。「間違いなく、青騎士達は、おれとマコトを狙って、剣で切ろうとしていた」
「冗談じゃないよ」と、マコトは胸をなで下ろしたように言った。「もう少しで心臓が止まりそうだったんだからね」
「――悪かったよ」と、ジローは頭を掻き掻き言った。「隠れていたマコトに真っ直ぐ向かって行くなんて、思いもしなかったんだ。なにを感じ取って追いかけて来るのか、よくわからないが、姿を隠していても居場所がわかるってことは、どうやら間違いないらしいな」
「そうだね」と、グレイがうなずいて言った。「マコトと十七号に真っ直ぐ向かって行っものね。――ってことは、残りはぼく達ってことかな」
「えっ、グレイも、サオリも、もしかしてアオも、青騎士に狙われるってこと?」と、マコトは心配そうに言った。
「――今みたいのが、あと三人出てくるはずだよ」と、グレイが考えるように言った。「それにしても、鎧の中身は空っぽだったし、妙に歯ごたえがなかったね」
「ああ」と、ジローは言った。「嫌にあっけなかったが、聞いたとおりなら、これがはじまりらしい」
 見ると、木の根元に転がっていた青騎士の残骸は、跡形もなく消え去っていた。
「消えてる」と、サオリは驚いたように言った。
「ほんとだ……」と、グレイとマコトが、同じように言った。
「中身が空っぽなら、ぼくだって戦えるかもしれない」と、マコトは思いついたように言った。
「いいや、そんなに弱くなかったよ」と、グレイは首を振って言った。「あんなに大きな剣を、軽々と振っていたんだよ。すぐにやっつけちゃったけど、力は確かにあったから、真人とサオリは、手を出さない方がいい」
 マコトが肩をすくめてうなずくと、サオリの肩にアオが飛び移り、小さく鳴いた。
「サオリは、ぼくが守ってあげるって」と、グレイはサオリに言った。
「ありがと、青」と、サオリはアオに言った。
 アオがキキッ――と小さく鳴くと、マコトの持っているラジオから、また放送が聞こえてきた。

“気をつけて、また別の青騎士が、迷い人のみんなを追いかけてきてる。今度もまた、現れたばかりの青騎士だけれど、油断はだめ。大剣に切られてしまったら、たとえかすり傷でも、死の砂漠に落とされてしまうから……”

「青騎士に追いつかれるより早く、町に着いちゃえばいいんじゃない」と、マコトはひらめいたように言った。

 

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ほっ。

2023-11-24 06:08:27 | Weblog

やれほれ。

目が冷めたら白一色になってるかと覆ったけど

この時間はまだ雪積もってなかった。。

雪の積もらない地方の人は、

このほっとした気持ちって、

わかんないんだろうなぁ・・・。

くそっ、

うらやましいXXX

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王様の扉(58)

2023-11-24 00:00:00 | 「王様の扉」


 ガシャッ、コ。ガシャッ、コン。ガシャシャッ、コ…… 
 ガシャッ、ン。ガシャッ、ンコ。ガシャッンコ…… 

 ゆっくりと、その音の主が姿を現した。木の陰から見え隠れするその姿は、氷のような青い色の鎧を身につけた、二人の騎士だった。
「恐い……」と、マコトの後ろに隠れたサオリが、目をつむりながら言った。
「――しっ」と、木の陰から覗いていたマコトが、頭を引っこめて言った。「17号達にまかせておけば、大丈夫だって。しっかり手を繋いで、離すんじゃないよ」
 こわごわ目を開けたサオリは、小さくうなずいた。
 と、マコトが再び青騎士の様子をうかがおうとすると、どこに行ったのか、つい今まで姿の見えていた青騎士が、姿を隠してしまっていた。
 どこに行ったんだ? と、マコトのポケットに入っていたラジオから、悲鳴にも似たエスの声が聞こえた。

“後ろ――。早く、逃げて”

 びくりとして振り返ると、マコトの正面にいるサオリの背後から、聳えるように立つ青騎士が、鈍く光る大剣を振りかぶり、いまにも打ち下ろそうとしていた。
「ごめんなさい……」
 と、マコトはぎゅっと目をつむって頭を抱え、思わず叫んでいた。

「――」

 と、頭を抱えて膝を突いていたマコトは、何事もないのに気がつき、おそるおそる目を開けた。マコトと同じように、サオリも凍りついたように動かないまま、顔を上げていた。
 見ると、頭上高く青騎士を持ち上げたジローが、いとも軽々と、青騎士を遠くに投げ飛ばしてしまった。
 抵抗もできず、太い木の幹に叩きつけられた青騎士は、鉄が激しくぶつかり合う音を立て、ばらばらになって崩れ落ちた。
「大丈夫か、二人とも」と、ジローは振り返って言った。
 あっけない光景に、マコトとサオリは、ただ目を丸くしているだけだった。

 ガシャシャン――。

 と、鉄がぶつかりあって壊れる音が、また聞こえてきた。
 びくり、として首をすくめていたマコトとサオリの前に、音もなくグレイが降り立った。
「アオって強いんだね」と、グレイは、遅れて肩に止まったアオに言った。「あんな大きな剣を、木の棒で叩き落としちゃうなんて」
「キキッ」と、グレイの肩に止まったアオが、自慢げに鳴いた。
 と、みんなの無事な様子を見て、ジローは言った。

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王様の扉(57)

2023-11-24 00:00:00 | 「王様の扉」

「マコトも沙織も、心配しなくていい」と、ジローは落ち着かせるように言った。「おれとグレイがいれば、なんとかやり過ごせると思う」
 と、アオが「――キキッ」と、小さな鳴き声を上げた。
「ぼくもいるぞ。だって――」と、グレイは言った。
「そうだ。アオだっているんだ」と、ジローはうなずきながら言った。「やつらが来たら、マコトと沙織は木の陰に隠れているんだ。無茶をして立ち向かわなくたっていい。おれ達にまかせておけ」
「わかった」と、マコトはサオリを見て、こくりとうなずいて見せた。
「――後ろに気をつけながら、できるだけ先に進もう」と、ジローは言うと、先頭に立って歩き始めた。
 グレイをしんがりにしながら、五人は道を進んでいった。
 後ろを気にしつつ、それでも歩いている間は、ラジオから落ち着いた曲ばかりが聞こえてきた。しかし、わずかでも足を止めると、とたんに速いリズムの曲が、アラームのように聞こえてきた。

 そして、とうとう青い鎧の騎士が、姿を現した。

 見つけたのは、グレイだった。列の一番後ろからやって来ていたグレイは、ほかの誰にも聞き取れないわずかな音を聞きつけ、素早くそばにあった木に登ると、言った。

「青い鎧の騎士が、こっちに向かって来てる」

 すぐに足を止めると、ジローは確かめるように訊いた。「そこから見えるのか?」
 と、木から飛び降りたグレイが、うなずきながら言った。
「まだ小さかったけど、あれは間違いなく、ぼく達を追いかけてきてる」
「――そうか」と、ジローはマコトとサオリを見ながら、言った。「少しでも目的の町に近づきたいが、このまま進んで自分達が不利な場所で青騎士と鉢合わせるより、木に囲まれているこの場所で、青騎士を迎え撃った方がいいかもしれない」
「木の上から見た限りでは、この先まだ延々と森は続いていたよ」と、グレイは言った。「でも、迎え撃つなら、追いつかれた場所よりも、待ち構えている場所の方が、戦いやすいと思う」
「――」と、ジローはうなずいた。「ここで、戦おう」
 ジローが言うと、円陣を組むようにみんなが集まり、やって来る青騎士に立ち向かう意志を確かめた。
 ――――    

 ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ…… 
 ガシャッ、ガシャッ、ガシャッ…… 

 と、鉄の打ち合う二つの音が、しんとした森の中に高らかに響き渡った。

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