青騎士の首を落としたアオは、木刀を咥えたまま、グレイの肩に止まって、正面に見える青騎士を見据えていた。
――首を落とされた青騎士は、振りおろした剣を片手に持ったまま、地面に落ちた頭を手探りで探し始めた。
首を探している青騎士が身をかがめると、目が覚めたようにサオリが意志を取り戻し、心配して覗きこむジローの首に抱きついた。
「こわい。あの騎士がこっちを見てる」
と、ジローの胸に顔を埋めたままサオリが言うと、ジローは優しく抱きしめ、「心配しなくて大丈夫だ」と、元気づけさせるように言った。
自分の首を拾った青騎士は、なにをしようとしているのか、自分の頭を首に戻そうとしつつも、考え直したように胸の前で抱えるように持つと、片手で持っていた大剣の柄を離し、兜の前に下ろされた格子状の面繋を持ち上げていった。
「気をつけろ。なにか飛び出してくるかもしれないぞ――」
ジローは、マコトとサオリを守りつつ、青騎士の動きを見守っていた。
カシャリ――。と、乾いた鉄の音をさせ、兜の面繋が開けられた。
思わず腰を低く構えたグレイは、兜の奥に、ただ暗い空間が広がっているだけなのを、はっきりと確認していた。
青騎士がなにをしようとしたのか、中身が空っぽな兜を、ただこちらに向けた青騎士は、目が覚めたように兜を足元に放り出し、大剣を拾って構え直した。
と、赤色と青色が混じったような鎧の色が、みるみるうちに青色に変わっていった。
アオがグレイの肩を離れ、サオリの肩の上に木刀を構えたまま飛び移った。
アオが飛び上がったとたん、グレイも高く飛び上がった。
サオリを守るように背中を見せていたジローは、ゆっくりと立ちあがり、大剣を構えて近づこうとした青騎士と、まっすぐに向かい合った。
青騎士の後ろに音もなく降り立ったグレイが、青騎士の鎧に手を掛けようとした時だった。
青騎士が、サッと身を翻して大剣を振るった。
グレイは頭を低く落とし、間一髪で大剣の一撃を避けたものの、返す大剣で切られないよう、素早く後ろに下がって、遠い間合いを取るしかなかった。
ドンッ――。
青騎士がサオリに向き直ろうとした所で、ジローが首のない青騎士の胸を狙い、拳を打ちこんだ。
鉄の板がボコッとひしゃげる音を立て、大きく鎧をへこませた青騎士が、尻もちをつくようにひっくり返った。倒れた青騎士は、立ちあがることなく、そのまま地面に溶けるように消え去った。
「大丈夫か?」と、ジローはやって来たグレイに言った。「急に強くなったな」