先日、叔父宅でお盆宴会飲みをしてると、
誰かが玄関の網戸に顔をくっつけて、こちらを覗き込んでいた。
リビング?茶の間?、
そのどちらとも言える構造の部屋の様子が、
夜なら灯で外から見えるのだろう。
だいたい、玄関は網戸だし、戸は開けてある。
怪しいシルエットが身をかがめたり伸びたりしている。
誰か来たよ。
誰も来ないだろ! それともタカシか?
叔父宅の真ん前は、叔母の実家、我が母の実家。
(叔母は、真ん前の家の同級生と結婚した = 叔父)
真ん前の家でもイトコ達がお盆飲みをしてるから、
そこから1人流れて来たのか、と叔父は思った。
タカシ叔父さんが途中から加わるはずだったから、
タカシか?と言ったんだろうけど、
タカシ叔父さんが、なんで玄関で屈伸運動をする?
なんで入りにくそうに中を覗く?
誰か客人だってば。
はーい! どなた様?
私が出て行く。
ここんちのイトコやその嫁は腰が重い。
あれぇ? 誰ぇ?
私も酔っている。
見たことあるようなないような。
わかんない人だわ、誰だろ?
はーい!
続いて足腰の悪い叔母が出てくる。
あらま!
叔母は一目でわかったようだ。
ねっ! 早く早く!
叔父の方を向いて叔母がせかす。
ドタドタ勢いつけて叔父が出てくる。
おー! 早く上がれ上がれ!
宴会後半で遠慮がちに?怪しくやって来たのは、
昔むかーしの叔父のチラリ知り合い。
相手はなぜか今も叔父を慕っているらしき。。
あ、あの人か。
リビング?まで来た彼の顔を見て、やっと分かった。
去年の11月のいつぞや、
叔母と2人でいる夕方、彼は来た。
玄関に立つ見知らぬ男に、
どなたさんでしょう?
叔母が問いかけたが、
あれこれ喋るわりに、何やら非常に聞き取りにくい。
しかし、叔父を訪ねて来たのだとは分かった。
男は50後半とも60過ぎとも見える。
カタギじゃないな。
何なの、この、勢いのあり過ぎる物言いは。
初めて来た家の玄関で、
ガラガラ声でコブシを効かせたような抑揚で、
ぐわんぐわんとタメ口で話す人を初めて見た。
服装もおかしな組み合わせ。
派手なような、時代遅れのような、黒と柄物の奇妙な重ね着。
ダサいとかセンスが悪いのと次元が違う。
目つきが鋭い。
鋭いけど、世を忍ぶような、暗さがある。
顔色が、悪いというのか、黒いというのか、異様にダークだ。
叔父は、出かけてますけど〜
ええ! 出かけてんのか! チッ!
いつなら、いる?
彼は確かに舌打ちをした。
横柄な奴だ。
そんなもん、知らないわよ。
いや、どうでしょう、1時間したら戻るかな。
叔父は、じっとしていられない性格だから、
ちょっとでも時間があると、あちこち行っちゃう。
どこに行ったか。何時に戻るか、5分後なのか、2時間後なのか、
そんなのが分かるくらいなら、苦労はせん。
お急ぎなら、連絡を取りますが。
チッ! あー! いい、いい。また来る!
また舌打ちしたわ。何よ、感じ悪い。
バシッと音がするくらいの勢いで身を翻し、
男は玄関から出て行った。
近くに止めた車の運転席には若い男が座っていた。
その若いのも、ふつーの人には見えなかった。
男が乗り込むと、車はススーと滑らかに走り去った。
イイ車乗ってんじゃん。
男の服装に似合わぬセンスのいい白い外車だった。
叔母と顔を、見合わせて、
あの人、知ってる?
と聞くも、
ぜんぜん知らない。見たことない。
普通の人じゃないね。
うん、どういう知り合いだろ。
叔父が30分もたたないうちに帰宅し、
名前を言わなかったけど、
こんなでこんなで、こんな感じの男、と伝えると、
あ〜、あ〜、あ〜、
何度も首をひねり、唸り続けてから、突然叫んだ。
あ、ミヤタだ!
出てきたんだ!
それが、
玄関の前で、家の中を伺ってかがんだり伸びたりしていた、
怪しくも遠慮がちでもあるお盆客だった。
つづく たぶん
誰かが玄関の網戸に顔をくっつけて、こちらを覗き込んでいた。
リビング?茶の間?、
そのどちらとも言える構造の部屋の様子が、
夜なら灯で外から見えるのだろう。
だいたい、玄関は網戸だし、戸は開けてある。
怪しいシルエットが身をかがめたり伸びたりしている。
誰か来たよ。
誰も来ないだろ! それともタカシか?
叔父宅の真ん前は、叔母の実家、我が母の実家。
(叔母は、真ん前の家の同級生と結婚した = 叔父)
真ん前の家でもイトコ達がお盆飲みをしてるから、
そこから1人流れて来たのか、と叔父は思った。
タカシ叔父さんが途中から加わるはずだったから、
タカシか?と言ったんだろうけど、
タカシ叔父さんが、なんで玄関で屈伸運動をする?
なんで入りにくそうに中を覗く?
誰か客人だってば。
はーい! どなた様?
私が出て行く。
ここんちのイトコやその嫁は腰が重い。
あれぇ? 誰ぇ?
私も酔っている。
見たことあるようなないような。
わかんない人だわ、誰だろ?
はーい!
続いて足腰の悪い叔母が出てくる。
あらま!
叔母は一目でわかったようだ。
ねっ! 早く早く!
叔父の方を向いて叔母がせかす。
ドタドタ勢いつけて叔父が出てくる。
おー! 早く上がれ上がれ!
宴会後半で遠慮がちに?怪しくやって来たのは、
昔むかーしの叔父のチラリ知り合い。
相手はなぜか今も叔父を慕っているらしき。。
あ、あの人か。
リビング?まで来た彼の顔を見て、やっと分かった。
去年の11月のいつぞや、
叔母と2人でいる夕方、彼は来た。
玄関に立つ見知らぬ男に、
どなたさんでしょう?
叔母が問いかけたが、
あれこれ喋るわりに、何やら非常に聞き取りにくい。
しかし、叔父を訪ねて来たのだとは分かった。
男は50後半とも60過ぎとも見える。
カタギじゃないな。
何なの、この、勢いのあり過ぎる物言いは。
初めて来た家の玄関で、
ガラガラ声でコブシを効かせたような抑揚で、
ぐわんぐわんとタメ口で話す人を初めて見た。
服装もおかしな組み合わせ。
派手なような、時代遅れのような、黒と柄物の奇妙な重ね着。
ダサいとかセンスが悪いのと次元が違う。
目つきが鋭い。
鋭いけど、世を忍ぶような、暗さがある。
顔色が、悪いというのか、黒いというのか、異様にダークだ。
叔父は、出かけてますけど〜
ええ! 出かけてんのか! チッ!
いつなら、いる?
彼は確かに舌打ちをした。
横柄な奴だ。
そんなもん、知らないわよ。
いや、どうでしょう、1時間したら戻るかな。
叔父は、じっとしていられない性格だから、
ちょっとでも時間があると、あちこち行っちゃう。
どこに行ったか。何時に戻るか、5分後なのか、2時間後なのか、
そんなのが分かるくらいなら、苦労はせん。
お急ぎなら、連絡を取りますが。
チッ! あー! いい、いい。また来る!
また舌打ちしたわ。何よ、感じ悪い。
バシッと音がするくらいの勢いで身を翻し、
男は玄関から出て行った。
近くに止めた車の運転席には若い男が座っていた。
その若いのも、ふつーの人には見えなかった。
男が乗り込むと、車はススーと滑らかに走り去った。
イイ車乗ってんじゃん。
男の服装に似合わぬセンスのいい白い外車だった。
叔母と顔を、見合わせて、
あの人、知ってる?
と聞くも、
ぜんぜん知らない。見たことない。
普通の人じゃないね。
うん、どういう知り合いだろ。
叔父が30分もたたないうちに帰宅し、
名前を言わなかったけど、
こんなでこんなで、こんな感じの男、と伝えると、
あ〜、あ〜、あ〜、
何度も首をひねり、唸り続けてから、突然叫んだ。
あ、ミヤタだ!
出てきたんだ!
それが、
玄関の前で、家の中を伺ってかがんだり伸びたりしていた、
怪しくも遠慮がちでもあるお盆客だった。
つづく たぶん