40代で資産10億円以上なのに、住んでいるのは家賃10万円のアパート…元エンジニア「シン富裕層」が抱える「不安」
写真提供: 現代ビジネス
「シン富裕層」と呼ばれる人たちは、ふだん何を考えているのか。
前編記事『銀行や証券会社を嫌い、ロレックスやベンツとも無縁…「日本のシン富裕層」が一代にして巨万の富を築いた理由』に続き、投資ビザ申請や海外生活設計のアドバイザー業務に携わる「株式会社アエルワールド」代表の大森健史氏が、知られざる彼らの「本音」に迫る。
【マンガ】マイホームは「持ち家」か?「賃貸」か? ついにその「答え」がわかった…
「間違ってないかな、俺」
photo by istock
チャンスを掴んだ「シン富裕層」の方たちは、自分からどのようにして資産を築いたか、あまり言いません。なぜなら、みんなそれぞれ「俺って正しいのかな」と疑心暗鬼に陥っているからです。
「これって本当に、いいの?」「間違ってないかな、俺」と。
先日も仮想通貨で運用している40代の男性が相談にいらっしゃいました。いま仮想通貨は下落していますが、仮想通貨が下がっても「レンディング」といって、配当みたいなものが1日10万円程度入ってくるそうです。
「いまは10億円以上の仮想通貨資産を持っていて、何もしなくても年収2000万円くらいあります」
そうおっしゃるので、「素晴らしいですね。それでは生活も安心だから海外に行かれるんですか?」と尋ねると、こう言ったのです
「本当に行っていいのでしょうか? いまやっていることが正しいのか、本当に現実なのか、わからないのです」
そこで私はこう伝えました。
「そこまで資産を築いたノウハウは、正直、私にはわかりません。でも、あなたはそのしくみがわかっていて、リスクも管理しているわけです。それって、株式やFXをやっているのと何が違うんですか?」
誰もが成功する法則はない
photo by istock
そう返すと、「ああ、そうなんですね」と、どこかホッとしたような表情を見せていました。
「シン富裕層」になるための、誰もが成功する法則はありません。ところが、みなさんは「こうあるべきだ」「こうなるはずだ」と成功の法則があると思い込んでいます。
日本人の多くの若者は「富裕層」という言葉を勘違いしています。富裕層という層があり、その特権階級の人たちが情報を独り占めし、美味しい蜜を吸っているというイメージを持っている若者が多いようです。
しかし、これまで多くの富裕層と接してきた私からみると、全員、試行錯誤を重ねています。失敗もしています。この社会のどこかに「特権階級のクラブ」みたいなものが存在し、そこからいい情報をもらっているという人はほぼいません。そのことをみなさんに知っていただきたいと思います。
一例を挙げますと、前編記事で述べたように、スマホひとつさえあれば、実際に人と会わなくでもなんでもできるようになりました。NFT(非代替性トークン)などの新しい技術も出てきました。
それに対して、これまで「エスタブリッシュメント」とされてきた従来の銀行マンや証券マンたちは、そうしたものをどちらかというと下に見て触ろうとしません。
しかしいまや、いろいろな要素がグジャグジャとなってカオスと化した現況下において、若者たちが「面白い」と思ったことをそれぞれ発信していけば、現在の本業プラスアルファで、十分に暮らしていける収入はとれると思いますし、場合によっては「シン富裕層」になれる可能性を秘めています。
それをみなさんはもっと知るべきだし、実際にそれをやっている人たちの真似をしてほしい。もちろんそのまま真似するのではなく、その仕組みを知ってアレンジして、自分が好きなことを発信していけばいいのです。
従来の常識にこだわりすぎる人たち
photo by istock
あなたがミニカーのコレクションにすごく詳しかったら、高額なミニカーを集めている投資家のコンサルができるでしょう。noteに記したその情報の価値が高いと評価されれば、記事は高額で売れるかもしれません。
アニメ作品でやってもいいでしょう。以前なら「アニオタ」と呼ばれたかもしれません。でも、いまや世界の「ANIME」となって、評価が高くなっています。女の子のアニメのセルロイドなどを持っていたら、かつては学校で「キモい」とか言われましたが、いまは「かわいい」「私もそれ好きなの」に一変しました。
とにかく、いろいろなものがコンテンツ化しているので、自分の好きな分野でやってみればいいんです。一人に1000万円で売るのは難しくとも、一人から1万円もらうのであれば1000人に売れればいい。もちろん1000円から始めてもいい。
いずれにしても、そうやってどんどんお金を動かして、価値を生み出していかなくては何も始まりません。若者たちの、いろいろなノウハウ、思い、アイデアが、もしかしたら、次の大きなものに生まれ変わるかもしれない。
いまは大企業の影響力が落ち、個人のインフルエンサーのほうが強かったりする時代になってきています。すごいコンピュータや巨大な組織がなくても、スマホひとつで情報発信ができ、何万人もそれを目にすることができる。
そんな時代が来ているのに、なぜか就職をしてそこだけ頑張っていかなくちゃいけないのか。もっと違うヒーローが出てきてもおかしくないのではないか。そういう「シン富裕層」がいっぱいいるということは、声を大にして言いたいと思います。
自分では「価値がない」と思っている知識や経験には、じつは大きな価値があって、欲しい人がいっぱいいるかもしれない。そして、それをちゃんとおカネにできるしくみがいまはあるということを、私は拙著『日本のシン富裕層』(朝日新書)で伝えたかったのです。
家賃10万円のアパートに住む理由
photo by istock
冒頭で紹介した、仮想通貨を運用している40代男性の話に戻ります。
彼は以前、エンジニアだったのですが、仮想通貨にハマってしまった結果、長く付き合っていた婚約者とはそれが理由で別れたそうです。彼女としては、「なにをしているの、あなたは。そんな怪しいことをやっていないで、ちゃんと仕事をして」ということで、揉めたというのです。
その方は私が見る限り、すごく知的で穏やかな方で、自分のやっていることが本当に正しいのか疑問に思っていらっしゃいました
そこで「シンプルな話、毎日10万円程度の配当があって、換金できるということは、それって株と何が違うんですか、FXと何が違うんですか、一緒じゃないですか。失敗したら自分の資産が減るかもしれませんが、それも一緒じゃないですか」と伝えました。
すると、「たしかにそうですね。これって別に悪いことではないんですね。そのことが聞けてよかったです」とおっしゃっていたものの、結果的に私生活では婚約者と別れてしまいました。
結婚したら、郊外の見晴らしのいい新築マンションを購入して一緒に住もうと考えていたそうで、二人で新築マンションのモデルルームにも足繫く通っており、ほとんど契約直前まで話が進んでいたと言います。しかし婚約破棄後の現在は家賃10万円のアパートに住んでいます。
おカネは基本的に使わないそうです。「使うのが怖い」と言っていました。いつなくなるかわからないから、毎月10万円のアパートに住んでいる、と。
見た目は「フツーのおじさん」
photo by istock
ホント、見た目ではそんな資産家だなんてわかりません。フツーのおじさんというか、お兄さん。服装も本当にフツー。唯一マックのいいパソコンだけは持っていましたが、それ以外はいたってフツーです。毎日10万円も収入を得ているようには見えません。
日本人の特徴なのかもしれませんが、自分の周りの誰もやっていないことを自分がやっていると不安なんです。そしてその人が資産を増やした方法というのもまた、私が説明を受けた限り、「そんな方法、聞いたことがない」という最先端に近いような話でした。
これまでに私が聞いたことがない例として、私の知人に、高級マンションがめちゃくちゃ好きな人がいます。自分が高級マンションを買い、リノベーションをしたりして、買ったときよりも高く売っています。こと高級マンションに関して、この知人は不動産屋以上に詳しい。
単なる不動産好きなら他にもいるかもしれませんが、彼はちょっと違います。
平日お医者さんとしてバリバリ働いているのですが、それだけじゃ面白くない、自分の好きなことをどんどんやっていこうよ、という人。本業は医師なのに、noteに高級マンションのレポートを書き、それを売り出して会員を募ったりしているのです。
繰り返しになりますが、彼は不動産屋さんではありません。趣味として不動産が好きなので、高級マンションのレポートをまとめたり、「こことここでは、こっちの部屋ほうがいい」などと書いたりしている。その情報がとても有益なので、じつは私も会員になっています。
もともと勉強が得意な人のケースでは、勉強のノウハウをまとめたものを売り出し、コンテンツ販売サイト経由で5000万円以上稼いでいる税理士さんもいます。驚いたことに、税理士としての業務はほとんどやっておらず、税理士という肩書きのみ活用されています。その方はまだ始めたばかりですが、急激にフォロワーを増やしています。
「面白い」からやっている
ただし、彼ら「シン富裕層」は、「お金を稼ぎたい」と思ってやっているわけではありません。面白いからやっているだけの話です。そこがポイントなのです。
大人になると、人は「面白がる」ことを忘れていきます。得か、損かしか考えなくなって、やがて「面白い」という感覚を多くの人は忘れてしまう。ところが、「シン富裕層」と呼ばれる層にカテゴライズされる人たちは、みんな好きでやっている。
こうした事例を私たちが知らないだけで、世界はものすごいスピードでいま、変わっている。「シン富裕層」と呼ばれる方々と話すたび、私はそう痛感します。
大森 健史(株式会社アエルワールド代表)