中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

反物の仕上げ

2010年05月01日 | 制作工程





個展のプレビュー(5月8日・都内にて)に間に合うよう頑張って織っていた
桜染めのグレーの着尺が、無事織り上がりました。
今日は反物の仕上げをしました。

まず湯に浸けて、糸につけた糊を洗い落とします。
軽く脱水をして、庭で伸子張りをします。
乾き具合の程よいところで伸子をはずします。
次に室内の竿にかけ、布の収縮が自然になるよう糸に空気を含ませます。

それから長さを確認し、織り上げたときの長さとの兼ね合いを見ます。
そして砧打ちをするのですが、縦方向に打つか横方向に打つかを決めて打っていきます。
砧打ちをすることで柔らかさとなめらかさが増し、更に風合いがよくなります。
砧打ちを終えてもう一度長さを確認して、必要な長さに切り離します。

ネップの多い糸(紬糸・節糸)を使っていますので、
検反をしながら余分なネップを取り除いて、全体の景色を見ていきます。
水をくぐり、日の光と空気を含み、蚕が吐き出した糸の形が戻ってきます。
布に立体感が出ます。

本来の絹糸はピカピカツルツルしたものではなく、鈍い光を放つものです。
光線が乱反射して、布の奥の方から見えてくる色があります。
その見え方は、時間により、天候により、季節によって違っています。
変化し続ける布です。

藍の絣糸をほんの少ししのばせた縞にしました。水を表したつもりです。
「春の雨」と題しました。

やわらかな春の雨は大地をうるおし、木々を芽吹かせ、穀物を始めとする農作物を育てます。
山に降った雨は地下水となり、川に流れ込みます。
循環する恵みの雨です。


糸のこと植物の色のこと着物のこと、自然が持つごく当たり前の美しさについて
みまさまと個展で語り合えたらと思っております。
是非ご高覧ください。





コメント
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