中野みどりの紬きもの塾

染織家中野みどりの「紬きもの塾」。その記録を中心に紬織り、着物、工芸、自然を綴ります。

「中野みどり紬のきもの展」プレビューから

2010年05月09日 | 個展・展示会
昨日の東京・銀座での、可喜庵に先がけてのプレビューにおこしくださいましたみなさま、ありがとうございました。
8畳間の狭い空間で、着尺と帯合わせて15点ほどをご覧いただきました。
3時半から5時にかけては混み合ってしまい、ご迷惑をおかけしました。

しかし4時を過ぎましたあたりから、私はバタバタとして応対させていただいておりましたが、
やわらかな静かな雨が部屋のなかに降ったように思いました。
それは大地をうるおし、地中深くに滲み込んでいく「春の雨」(前回記事参照)でした。
日ごろ現代美術を扱っておられる銀座の画廊の方が、展示している着物の一点を見つめて、
「これはアートですねえ」と言われたのです。

そのとき会場には初対面同士の人たちが座り込んで、お互いに言葉を交わしたり、
自分で着尺を体に当てて表情を明るく変えていたり、
その姿に周りの人が言葉をかけたりしていました。
そして人々の気持ちの高まりの気が立ちこめてきて、一体になったように感じられました。
その全体のシーンがまるで雨上がりのもやのなかに融け込んでいるように見えたのですが、
私はそういうことを含めて「これはアートですねえ」という言葉に同意したい気持ちです。
アートは個人の自己表現だけにとどまるものではないと思います。

それにしても春の雨を降らせてくれたのは、今は天の人となった立松和平さんだったのでしょうか。
ご来場くださったみなさんの中にもなんらかの恵みの雨がありましたら、この上ない喜びです。



「春の雨」(桜染グレー着尺)


とり急ぎお礼まで。
企画をしていただいたかたち21の笹山さんは写真を撮る間もなく、
画像を添えてご報告できないのがちょっと残念ですが‥‥。





コメント
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