米移民 新型コロナ受診ためらう>>強制送還される」「永住権取れなくなる
新型コロナウイルスの感染者が急増する米国で、検査や治療をためらう声が移民の間に広がっている。不法滞在が発覚したり、政府の新たな移民規制策により永住権の取得などが難しくなったりするのを心配しているからだ。トランプ政権の強硬な移民制策が、感染拡大のリスク要因の一つに浮上している。
【日本国内の感染状況】
「病院に行き不法滞在だと知られたら強制送還されないか」「感染して治療を受けると永住権を取れなくなるのではないか」
西部カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で移民の法律相談に応じる支援組織「TODEC」には、トランプ大統領が国家非常事態を宣言した3月13日以降、中南米系移民らからこうした相談が相次ぐ。
不法移民は医療施設でビザ(査証)や在留証明を提示できないため、摘発を担当する移民・関税執行局(ICE)への通報などを恐れて受診しない傾向が強い。
また、2月に施行されたトランプ政権の移民規制策は、永住権(グリーンカード)の申請者が政府の医療支援などを受けた場合、申請が却下される可能性があるとしている。
米国の不法移民は推計で1100万人以上。また、グリーンカード申請者のうち約38万人が新たな規制の影響を受けるとされる。
東部ニューヨーク州やカリフォルニア州など移民人口が多い地域で新型コロナウイルスの感染者が特に目立ち、当局は移民の受診控えによる感染者の増加を懸念する。
ICEは3月18日、感染拡大防止策が続く間は「医療施設やその周辺で摘発はしない」との声明を発表。移民局もグリーンカード申請について「コロナウイルスに関わる医療サービスを受けても影響はない」として、症状があれば積極的に受診するよう呼びかける。
しかし、TODECの責任者、ルース・ガレゴス氏は「トランプ大統領は言うことがころころ変わるため、多くの移民は本当に受診が不利益にならないのか疑心暗鬼になっている」と話す。
また、ガレゴス氏は「飲食店などが一時閉鎖されて解雇され、治療費を請求されても払えないという移民も増えている」と指摘する。
米紙ニューヨーク・タイムズによると、感染者の治療費は症状によっては2万ドル(約222万円)を超える可能性があるという。所得が低く無保険の移民は多く、高額な費用負担を恐れて受診に消極的な人もいるとみられる。【ロサンゼルス福永方人】