婚活サイトで知り合い「麻薬の運び屋」にされた、27歳OLの悲劇
ネットやSNSに潜む魔の手
私は、約40年間、麻薬取締部(通称「マトリ」)で、薬物犯罪の捜査を続け、違法薬物の撲滅を目指してきた。約300人の「マトリ」や関係捜査機関が全国で摘発や捜査を展開しているが、それでも薬物犯罪は後を絶たない。
芸能人が「クスリとセックス」に溺れるまでの全真相
日本国内で、大麻事犯の検挙者数は年間3,700人を超え、覚醒剤事犯のそれは1万人を超えている(2018年度統計)。潜在的にはさらに広がっているだろう。こうした違法薬物の拡散には、今や、ネットやSNSが頻繁に使われている。
今や、サイトやSNSなどを通じた結婚は、3人に1人と増えているというアメリカでの調査統計もある。
しかも、ITの上では相手を一方的に信じ込み、自分の情報を与えやすいという事情がある。そこにつけ入ってくるのである。
薬物犯罪は、「時代を映す鏡」という特性があるのだ。
密輸組織や密売人たちは、特に、女性の恋心を利用することが多い。ネットやSNSを通じて日本人女性と知り合い、言葉巧みに「恋人気分」に浸らせ、薬物を隠匿した国際荷物(郵便・宅配便)を受け取らせて、女性を知らぬ間に「運び屋」を仕立てるのである。
マトリでは、この手法を「ラブコネクション」と呼び、捜査を展開している。ネットやSNSにはこの魔の手がはびこっているのだ。
次に、私が実際に捜査した「ラブコネクション」を挙げてみよう。
芸能人が「クスリとセックス」に溺れるまでの全真相
日本国内で、大麻事犯の検挙者数は年間3,700人を超え、覚醒剤事犯のそれは1万人を超えている(2018年度統計)。潜在的にはさらに広がっているだろう。こうした違法薬物の拡散には、今や、ネットやSNSが頻繁に使われている。
今や、サイトやSNSなどを通じた結婚は、3人に1人と増えているというアメリカでの調査統計もある。
しかも、ITの上では相手を一方的に信じ込み、自分の情報を与えやすいという事情がある。そこにつけ入ってくるのである。
薬物犯罪は、「時代を映す鏡」という特性があるのだ。
密輸組織や密売人たちは、特に、女性の恋心を利用することが多い。ネットやSNSを通じて日本人女性と知り合い、言葉巧みに「恋人気分」に浸らせ、薬物を隠匿した国際荷物(郵便・宅配便)を受け取らせて、女性を知らぬ間に「運び屋」を仕立てるのである。
マトリでは、この手法を「ラブコネクション」と呼び、捜査を展開している。ネットやSNSにはこの魔の手がはびこっているのだ。
次に、私が実際に捜査した「ラブコネクション」を挙げてみよう。
Image by iStock
海外婚活サイトでの出会い
2016年夏、27歳だったアキ(仮名)という日本人女性は、インターネットの海外婚活サイトでアメリカ人を自称するジョンと知り合った。
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〈12月には日本に行く。君とクリスマス・イブを過ごしたいんだ。君に会いたい〉
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などと、ジョンは甘い言葉を繰り返しメールで送ってきた。アキは未だ見ぬジョンに淡い恋心を抱くようになった。
ある日、ジョンから、
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〈アジアを旅行中のマイクという親友が、来週、東京へ行くんだ。彼に荷物を送りたいんだけど、バックパッカーで安宿を転々としているから受け取れない。悪いけど代わりに受け取って、渡してくれないか。彼が最寄りの駅まで取りに行くから〉
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この時、すでにジョンを信じ切っていたアキは、〈ええ、いいわ〉と、二つ返事で引き受けてしまった。
まもなく、マトリに情報が寄せられた。関係機関から通報が入ったのは11月初旬。タイ国からの国際スピード郵便(EMS)の中に、菓子箱などに分散して覚醒剤が隠匿されていたのだ。総量は1キロと大量で、末端価格は6,000万円を下らない。個人が使用する量の手配ではなく、明らかに大規模な密輸組織が関与していることが推測できた。
私たちは「泳がせ捜査」、なかでも中身を無害物にすり替えて追跡する「CCD(クリーン・コントロールド・デリバリー)捜査」に踏み切ることにした。
捜査員はまず名宛人である「アキ」の周辺捜査を進めた。判明したのは、アキがごく普通のOLということだった。前科の類はなく、住居はさいたま市内の小ぎれいなワンルームマンション。地域の環境も良く、暴力団や半グレ集団のような連中との付き合いもない。
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〈12月には日本に行く。君とクリスマス・イブを過ごしたいんだ。君に会いたい〉
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などと、ジョンは甘い言葉を繰り返しメールで送ってきた。アキは未だ見ぬジョンに淡い恋心を抱くようになった。
ある日、ジョンから、
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〈アジアを旅行中のマイクという親友が、来週、東京へ行くんだ。彼に荷物を送りたいんだけど、バックパッカーで安宿を転々としているから受け取れない。悪いけど代わりに受け取って、渡してくれないか。彼が最寄りの駅まで取りに行くから〉
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この時、すでにジョンを信じ切っていたアキは、〈ええ、いいわ〉と、二つ返事で引き受けてしまった。
まもなく、マトリに情報が寄せられた。関係機関から通報が入ったのは11月初旬。タイ国からの国際スピード郵便(EMS)の中に、菓子箱などに分散して覚醒剤が隠匿されていたのだ。総量は1キロと大量で、末端価格は6,000万円を下らない。個人が使用する量の手配ではなく、明らかに大規模な密輸組織が関与していることが推測できた。
私たちは「泳がせ捜査」、なかでも中身を無害物にすり替えて追跡する「CCD(クリーン・コントロールド・デリバリー)捜査」に踏み切ることにした。
捜査員はまず名宛人である「アキ」の周辺捜査を進めた。判明したのは、アキがごく普通のOLということだった。前科の類はなく、住居はさいたま市内の小ぎれいなワンルームマンション。地域の環境も良く、暴力団や半グレ集団のような連中との付き合いもない。