異教の地「日本」 ~二つの愛する”J”のために!

言論宗教の自由が保障され、ひとりひとりの人権が尊ばれ、共に生きることを喜ぶ、愛すべき日本の地であることを願う。

NGO活動を攻撃し、AV強要対応に反対した、杉田水脈議員の国会質問に抗議します。2018.3.28 -人権は国境を越えて-弁護士伊藤和子のダイアリー

2018-04-01 07:10:25 | 命 人権 差別

人権は国境を越えて-弁護士伊藤和子のダイアリー

・・・・・・・・・・・女性弁護士として、国境を越えた人権活動に取り組むNGOの事務局長として、日々遭遇する出来事・論考・お勧めイベントなどをご紹介します。  日本でも世界でも、私がなくしたいことは、最も深刻な人権侵害、それは、罪なき人々の命が犠牲になること、女性が暴力の犠牲になること、子どもが売られて、搾取されること。


http://worldhumanrights.cocolog-nifty.com/blog/2018/03/post-f430.html

2018年3月28日 (水)

NGO活動を攻撃し、AV強要対応に反対した、杉田水脈議員の国会質問に抗議します。

2018年3月9日の衆議院内閣委員会において、杉田水脈衆議院議員が質疑に立ち、
NGOヒューマンライツ・ナウの活動や取り組んでいる課題に触れた質問をしました。
この内容は以下、「衆議院インターネット審議中継」にて確認することができます。
http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=47874&media_type=fp


その内容は驚くほど攻撃的で、議員としての見識を疑うものです。
要するにHRNは反日団体であり、AV強要の被害など疑わしいし、大した件数もないので、政府が取り組みをすることに強く反対する、という内容でした。
最近の報道では警察庁がAV強要関連で100人以上を検挙したとの報道があり、改めて被害の深刻さを政治が認識し、弱い立場に置かれた女性たちのために尽力してほしいし、心ある政治家は党派を超えて取り組んでいただいているのに本当に遺憾です。
杉田議員の質問・指摘には下記のとおり重大な問題が含まれており、看過できないと考え、抗議を行うことにしました。

1 事実と異なる言及について

(1)  杉田衆議院議員は質疑で、ヒューマンライツ・ナウ(以下HRN)について「日本軍が慰安婦というのが性奴隷であったとかといったことを国連などを通じて世界に捏造をばらまくということをすごく熱心にやっている団体がこのヒューマンライツ・ナウなんですね。」と発言しています。
  「捏造」とは実際になかったことを故意に事実のように仕立て上げることですが、当団体は「捏造」に該当する行動を行ったことはありません。
  HRNはいわゆる「従軍慰安婦問題」に関し、見解の表明を行っていることは事実ですが、その前提となっている事実関係は、河野談話、日本の政府関与のもと設立されたアジア女性基金が残した「デジタル記念館 慰安婦問題とアジア女性基金」に記載された事実 、国連人権機関からの各種勧告、レポートです。
HRNは2006年に設立された国際人権NGOであり、設立時には既に上記談話、アジア女性基金等の研究結果、国連人権機関からの勧告、レポートの多くは公表されていました。当団体は、国際人権NGOとして、これら、日本政府や関係機関が調査した事実に依拠して国際法に基づく解決を求めた各種提言を行ってきたものです。
HRN独自に新たな事実を公表したり、まして仕立て上げたことはありません。
杉田議員が当団体について国会の審議にあたり、「捏造」という言葉で誹謗中傷したことは極めて遺憾と言わざるを得ません。

(2)  また杉田議員は、質疑のなかで、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言していますが、当団体は相談支援事業を行っておらず、事実に反する発言と言わざるを得ません。

(3)  以上のような当団体に対する事実と異なる言及は、当団体に対する名誉失墜・業務妨害につながるものです。
事実、杉田議員の質問を聞いたとして、HRNに対し、「天罰が下ります」等と予告する脅迫的メールが届いており、軽視することはできません。

2 HRNないし支援団体に対する事実に反する不当なレッテル貼りについて

杉田衆議院議員は、「JKビジネスとかAVの出演強要とかはあってはならない」としつつ、「先ほども言ったように、日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たちが明らかにいて、その人たちの言うことを聞いてこれは書いてますよね」と述べており、この言及に先立ち当団体について指摘されていることから見れば、杉田議員はHRNを「日本をおとしめるプロパガンダに使おうとする人たち」と指摘したものと受け取れます。
また、杉田議員は、「AV女優の強要とかJKビジネスとかはこんなに日本で問題になっているから、だから防止月間をやらなければならないということが、これが海外には、だから、昔日本は慰安婦という性奴隷を持っていたんだと言われてもおかしくないです。まさしく、その意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」と指摘しています。これはこの言及に先立ち団体名を指摘された、HRNないし「ポルノ被害と性暴力を考える会」(PAPS)を指摘したものと受け取れます。

さらに杉田議員は「反日のプロパガンダに対して、どのような手立てをとっていただけるのか」とも指摘しています。
しかし、HRNないしPAPSが「日本をおとしれるプロパガンダ」「反日のプロパガンダ」をしているというのは明らかに事実に反する言いがかりであり、何らの根拠もないものであって強く抗議します。
そして、HRNやPAPS、人身取引被害者サポートセンターライトハウスがAV出演強要被害問題について取り組んでいるのは、この問題が女性に対する極めて深刻な被害をもたらす人権侵害であり、若年女性を被害から防止・救済することが急務だからにほかならず、「反日のプロパガンダ」に利用する「意図を持ってこの団体はこういうふうなことをやっている」等というのは明らかに事実に反するものです。

国会という場において、何の証拠にも基づかず、民間団体を名指しして、レッテル貼りをして攻撃することが果たして許されるでしょうか。
若年女性に日々発生し、深刻な相談が相次いでいる出演強要被害を救済するために日々奔走し、尽力している当団体や支援団体の活動を何らの根拠もなく愚弄するこのような発言は到底許されません。
 そもそも、国会議員が民間団体に対し、「反日」などとレッテルを張って攻撃すること自体が異常であり、現に慎むべきことです。

3 AV出演強要被害と従軍慰安婦問題に関する言及について

杉田議員は、HRNの調査報告書に基づいて政府がAV出演被害に対する対策を行うのは問題である、日本を貶めるプロパガンダ活動のためにAV出演強要問題を利用している、等と主張していますが、明らかに誤解があります。
AV出演強要被害は現在、日本の若年女性の間で被害が広がっている、深刻な女性に対する暴力であり、HRNおよび民間の支援団体は、被害者の声と深刻な被害の実相を真摯に受け止め、政府に対し対応を求めてまいりました。
こうした被害の根絶を求める民間団体の活動は、従軍慰安婦問題とは何らの関係もなく、日本を貶めるプロパガンダでもないことは明らかです。
AV出演強要被害については、国会の場でも審議がされ、2016年6月には内閣府が調査を閣議決定、2017年3月に政府の緊急対策策定、2017年5月に政府方針の決定がなされています。

HRNは2017年3月にニューヨークにおいて、AV出演強要被害問題に関して、国連女性の地位委員会パラレルイベントを開催いたしましたが、日本政府ニューヨーク国連代表部大使(当時)をパネリストとしてお呼びし、被害根絶について有意義な討議が行われています。
現在、日本政府は被害防止のために強力な取り組みを推進されており、私たちはこうした政府の動きを歓迎し、被害根絶への一層の取り組みを求め、政府各機関と協力する姿勢で取り組んでいます。
こうしたなかにあって、被害根絶に関する民間の取り組みを貶めようとする杉田議員の発言は極めて遺憾です。

4 被害者に対するセカンドレイプにつながりかねない言及について

杉田議員は前述のとおり、AV強要をされたと嘘をついた女性が「相談に行ったのがヒューマンライツ・ナウだった。こういうことがすごくたくさんある」と発言し、あたかも当団体が把握した被害の実態が信用できないかのような印象を与える結果となっています。
しかし、議員発言の根拠となる産経新聞ウェブ版の杉田水脈氏のコラムによれば、その女性が「嘘をついた」とするのは、一人の関係者からの一方的な情報に過ぎないことが認められます。
 
当該記事では、「男性の話がすべて事実なのかどうかは分かりません。女性の方は「だまされてAV撮影を強要された」などと全く違う説明をしています。」と記載していたにも関わらず、国会質問では「嘘をついた」と断定しています。かつ、当該記事では一人の関係者との会話とされていることが、国会質問では「こういうことがすごくたくさんある」と断定されています。

  AV出演強要問題を巡っては、勇気を出して声をあげた女性に対するセカンドレイプ的な誹謗中傷や、被害がなかったかのような非難が巻き起こり、そのことが被害者である若年女性らが被害を申告しにくく、被害が闇に葬られがちな現状を生んでいます。

  およそ国会質問において、明確な根拠もない一方的な会話に基づき、AV出演強要被害が被害者のでっちあげにより作出されたものであるかのように、「こういうことがすごくたくさんある」と言及することは、深刻な人権侵害である出演強要被害を過小評価する結果につながりかねず、極めて不見識と言わざるを得ません。

5 AV出演強要被害を過小評価ないし疑問視する一連の発言について
 
 杉田議員はAV出演強要被害に関する相談件数が少ないことを繰り返し指摘し、AV出演強要防止月間を「絶対にやめるべきだ」「デメリットがあまりにも大きい」「デメリットのほうが絶対に大きくないですか」と質問しています。
   さらに、「この職業につきたいという女性はすごく多いんですよ、引く手あまたで。すごく狭き門なんだそうです。」「わざわざ嫌がる女の子を無理やり出して、そんなことをすると、必ずその業者は潰れるわけで」「やっているようなところはすごく少さいので、それよりは、というようなところの事例のほうがすごくたくさんあるんですね」「だから、必ずしも相談件数が、全部が全部本当にだまされて、それに出さされて、すごいひどい被害にあった子たちばかりではない」等と指摘しており、あたかも支援団体へ相談件数の多くが、実際には出演強要の被害ではないかのような指摘を繰り返しされています。

  しかしながら、AV出演強要の被害の標的となるのは、抵抗力の弱い、若年女性たちです。性被害のなかでもとりわけ深刻なAV出演強要被害において、被害にあった女性たちは自らを責め、PTSDに苦しみ、なかなか声をあげることが困難な状況にあり、その状況は社会問題化した今日も続いています。
  杉田議員の発言は、こうした被害者が声をあげたり相談に臨むことが容易ではないことへの理解に著しく欠けています。さらに、公的機関による相談対応が始まったばかりであり、かつ若年女性が公的機関に訪れるのはハードルが高いことへの理解にも欠けています。

  こうした一方で、支援団体には近年、多数の相談が被害者から寄せられ、相談件数は数百件に及んでいます。また、多くの若年女性が意に反する性的撮影の被害にあっていることは、内閣府男女共同参画局が実施した調査からも明らかです。
  杉田議員の質問に対し野田聖子大臣が的確に答弁されたとおり、政府はAV出演強要被害に対し、深刻な女性に対する暴力と位置付け、政府一丸となった対応をとられています。
  こうしたなか、政権与党の議員からこのような被害者、被害実態への理解に欠ける心無い質問が出ることは極めて遺憾です。

6 NGOの国連に対する活動への報復や抑制について

  杉田議員が民間人権団体の名前を名指しして攻撃したことは、民間団体が慰安婦問題をはじめとする国内の人権課題について国連等国際社会に訴える活動自体への攻撃というべきものです。政権与党の一員である国会議員が正式な内閣委員会の質疑でこのような発言をしたことは重大です。

  まず、杉田議員は、複数の団体やイベント名を具体的に指摘して、慰安婦問題に関する取り組みについてすべてがあたかも「捏造」「反日」であると決めつけるような質問を行っています。しかし、従軍慰安婦問題が歴史的事実として存在したことは否定できない歴史の事実であり、河野談話でも確認され、その基本的立場は歴代内閣においても承継されています。慰安婦制度そのものが「捏造」でないことは明確です。

  にも関わらず、女性の権利に関心を寄せる民間団体が、慰安婦問題についてイベントを開催したり、イベントに参加すること自体を敵視し、慰安婦問題に関する民間の諸活動そのものを「捏造」「プロパガンダ」「反日」であるかのように指摘・攻撃する杉田議員の質問は、重大な誤解を与え、国民の正当な言論活動を委縮・沈黙させる危険性をはらむものであり、今後繰り返されてはならないと考えます。
  加えて、民間団体がNGOとして国連の人権機関に対して情報提供を行うことは広く推奨される活動であり、そのことを理由に民間の団体・個人が不利益を受けることは国連で報復(Reprisal)として問題視され、許されないこととされています。

  国連人権理事会24会期の決議24(A/HRC/RES/24/24) は、人権分野で国連に協力した団体・個人に対するいかなる報復措置(Reprisal)や脅迫(intimidation)を許さないとして、国連加盟国に対し、こうした事態の発生を防止する適切な措置を講ずるよう求めています。
同決議は日本政府を含む賛成多数により国連人権理事会で可決されており、政権与党として、この決議の趣旨に反する国会での言動を放置すべきではありません。

また、杉田議員の「NGOの国際的な表現活動を抑え込む必要があるのではないか」との質問も表現の自 由に対する重大な脅威というべきものです。この点について政府側答弁者は、表現の自由として保障されるとの適切な答弁をされましたが、与党席からこれに抗議するヤジがあったとも報告されており、こうした事態は深刻といわざるを得ません。

 こうした院内の発言を放置することは、民間団体・NGOの活動の自由への萎縮効果をもたらし、エスカレートする危険性をはらむものであり、到底t看過することはできません。
 

そこで、HRNは文書で正式に自由民主党および衆議院内閣委員会に抗議を送りました。
適切な対応がなされることを期待します。

  






不妊手術強制 「私の人生を返して」~厚生労働省、被害の実態調査を行う予定。当時、国が積極的に手術を行うよう指示していた。 2018.3.29 日テレNEWS24

2018-03-30 21:18:54 | 命 人権 差別

 

強制不妊手術の女性「私の人生を返して」|日テレNEWS24

 

http://www.news24.jp/articles/2018/03/29/07389231.html

2018年3月29日 21:23

旧優生保護法のもと、障害者らに強制的に不妊手術が行われていた問題で、超党派の議員連盟は、同意なく手術を受けさせられた女性から初めて話を聞いた。

強制不妊手術を受けさせられた女性(70代)「親から子どもを生めなくされたという話を聞いて、それから苦しみが始まりました。できれば本当に私の人生を返してもらいたい。毎日苦しみなので」

救済について協議する議連で初めて当時の状況や今の思いを話した宮城県の女性はこのように話し、手術に関する資料がない人も含めて、早く救済して欲しいと訴えた。議連は、実態を把握し、救済するための議員立法を提出したい考え。

一方、厚生労働省は、28日付で各都道府県などに対して、旧優生保護法のもとに行われた不妊手術に関して残された関係資料を保全するよう要請し、今後、全国的に被害の実態調査を行う予定。

 

 

不妊手術強制 70代男性「人生を返して」|日テレNEWS24

 
旧優生保護法のもと、強制的に不妊手術を受けさせられたとして、国を相手に裁判を起こす予定の男性が会見を開き、「人生を返してほしい」と訴えた。

都内在住の男性(70代)「なんでこんな手術をされなきゃならないのか。今はだいぶ苦しんでいて、自分の人生を返してください」

東京都内に住む70代の男性は、中学2年生の時、当時、住んでいた宮城県内の養護施設から病院に連れて行かれ、強制的に不妊手術を受けさせられたという。

旧優生保護法では、障害などを理由に本人の同意なく強制的に不妊手術を行うことが認められていたが、男性には障害がなく、代理人の弁護士は「いいかげんに進められていたのが実態だ」と指摘した。

男性は結婚後、子どもを持てず苦しんだと訴えた。

都内在住の男性(70代)「女房が他の子どもをあやしている時、つらかった。自分でもう情けないくらい」

男性は、来月中に国を相手取り、損害賠償を求める裁判を起こす予定。

 

 

「不妊手術」国が手術件数増やすよう指示|日テレNEWS24

 

旧優生保護法のもと、障害者らに強制的に不妊手術が行われていた問題で、当時、国が自治体に向けて、積極的に手術を行うよう指示していたことがわかった。

この問題は、かつての優生保護法で「不良な子孫の出生を防止する」として、知的障害者らに、強制的に不妊手術が行われていたもので、厚労省によると、本人の同意なく手術を受けた人は1万6500人に上る。

このたび、府立京都学・歴彩館に残されているのが見つかったのは、1957年4月に旧厚生省から各都道府県に出された通知書。

通知書では、手術の実施件数が「予算上の件数を下回っている」とあり、国が自治体に、手術件数を増やすよう指示している。

また、「各府県別に実施件数を比較してみると、極めて不均衡」などと、自治体間で件数を競わせる形で、国が不妊手術を推進したことがうかがわれる

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■優生保護法の2つの目的

 優生保護法は、2つの目的をもった法律でした。一つは「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」--病気や障害をもつ子どもが生まれてこないようにする、という意味。もう一つは「母性の生命健康を保護する」--女性の、妊娠・出産する機能を保護するという意味です。この2つの目的のために、不妊手術と人工妊娠中絶を行う条件と、避妊具の販売・指導についてを定めたのが、優生保護法なのです。
(引用元 http://www.soshiren.org/yuseihogo_toha.html

 

 

 

 

 


弱者敵視、あおる社会 生活保護受給者、ホームレス、障害者標的に 2018.3.22 毎日新聞 …安倍政権になってから一段とひどくなってきた

2018-03-23 16:42:35 | 命 人権 差別
※福祉政策削減、弱者無視、人権無視…安倍政権になってから一段とひどくなってきた。

 

弱者敵視、あおる社会 生活保護受給者、ホームレス、障害者標的に

 
在日コリアンらの排斥などを訴えるヘイトスピーチには生活保護受給者ら弱者を敵視する心理と共通性がある、との指摘がある=東京都港区で2015年10月、後藤由耶撮影

 

 生活保護受給者やホームレスなど、社会で弱い立場にいる人への攻撃的な空気が広がってきたのはいつごろからだろう。格差社会のもと、経済成長を遮二無二追求する中で、「生産性が低い」ことなどを理由に、排除しようという心理が見え隠れする。【井田純】

 昨年7月の刊行以来、じわじわ売れ続けている翻訳本がある。英国の若手コラムニスト、オーウェン・ジョーンズ氏(33)の「チャヴ 弱者を敵視する社会」だ。今年に入っても版を重ね、すでに5刷。出版した「海と月社」の松井義弘社長は「硬い内容で400ページ近いボリュームにもかかわらず、多くの人に読んでもらえている」と手応えを語る。

 「チャヴ」とは貧困層に対する英国での蔑称で、「粗野」「怠惰」など否定的なイメージをまとった言葉という。同書は、サッチャー政権以後の英国の変化を分析、格差・不平等を正当化しようとする社会を告発する。

 「読者の反応で目立つのは、『とても英国の話とは思えない』『そのまま今の日本だ』という声です」と松井さん。「生活保護」たたき、社会問題を自己責任論で片付けようとする空気、同調するメディア、規制緩和の恩恵が為政者周辺に流れる仕組み--。なるほど他国の話に聞こえない。

 翻って日本。最近の東京都の調査で、アパートを借りられず、ネットカフェなどで寝泊まりする人たちが約4000人に及ぶことが明らかになった。今年2月、この調査を取り上げたテレビのバラエティー番組では、タレントが「(彼らも)ちゃんと働いてほしい」と「自己責任論」を展開した。しかし、都によると、9割近くが働き、中には正社員も含まれており、「自己責任論」に根拠はない。

 昨年末には生活保護受給者を尾行したり、自宅を張り込んだりするテレビ番組が放送されている。タイトルには「ずるい奴(やつ)ら」などの文字も。取り上げられたのは体調を崩して生活保護を受け、回復してまた働き始めた「不正受給者」らだった。

 貧困層を支援するNPO法人、自立生活サポートセンター・もやい(東京都新宿区)の大西連理事長の目には、この番組が「人権感覚上問題がある」と映った。行政側も詐欺罪で告訴しない悪質性の低いケースであるにもかかわらず、自治体担当者とともに、生活保護受給者を追いかけた。

 「弱者敵視」をあおるようなメディアの姿勢について、大西さんは「視聴者に受ける、という判断があるようです。ワーキングプアが社会問題化してきた十数年前は『報道』が扱うテーマだった貧困問題が、今は『バラエティー』のトピックになり、専門家ではなくタレントがコメントする話題になった」とみる。取材を受ける立場でもある大西さんの実感だ。

 大西さんは、こうした社会・メディアの変化と政策の方向性に共通するものを感じる。昨年12月には、政府が生活保護受給額のうち食費や光熱費などを今年10月から3年かけて年160億円(約1・8%)削減する方針を発表した。「安倍晋三政権の弱者へのまなざしには、根本的に冷たいものを感じます。雇用を伸ばし、経済成長を図る考えには賛成ですが、生活保護費の削減はこれに逆行する。弱い立場の権利を守るのではなく、強いものに投資するという考えで、『自己責任論』と親和性が高い」

「強い国」目指し効率優先

 「これまで建前で抑えてきたものが、こういう空気の中で噴き出してきたのではないでしょうか」。そう話すのは、横浜市で障害者の作業所などを運営する渋谷治巳さん。渋谷さんも脳性まひ者で、介助を受けながら生活している。

 渋谷さんが思い出すのは、一昨年7月に相模原市で起きた「やまゆり園事件」だ。知的障害者福祉施設で元施設職員の男が入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた。捜査の過程で、被告は事件前に「障害者を安楽死させるための法制」を訴える手紙を安倍首相に渡そうとしていたことが明らかになっている。

 「新自由主義が目指す『強くなっていく国』では、弱い者は生きづらい。生産性の高い人間を育てたいという社会では、異質なものはいない方が効率がいいという考えが出てくるでしょう。戦時中、養護学校の生徒が学童疎開の対象外になったのは『戦力』にならないからでした。軍事、経済の違いはあっても、ある物差しで命の価値を分けるという点で共通している」

 事件から1年半以上が経過した今、渋谷さんはこんなことを考えている。「もちろん、彼の犯した罪は絶対に許せません。ですが、彼自身もこの社会での強者ではなかった。弱い者が自分で自分を追い込んでいるように映ります」

 2月末、政府の働き方改革関連法案に反対する東京・新宿でのデモでは、こんな話を聞いた。主催団体「AEQUITAS(エキタス)」のメンバーの一人は、街頭で最低賃金の引き上げを訴えていたとき、「給料を上げたら会社がもたなくなる、と言い返された」と振り返る。「給料をもらう側の人が、経営者を代弁するようなことを言うんです」。格差が広がるほど「助けを求めるな、甘えるな」という声が強まるように感じることもある、という。

 若者の労働環境や不登校、引きこもりなどの実態に詳しい関東学院大の中西新太郎教授(社会学)の分析はこうだ。

 「誰かが主張する権利を『特権』に読み替えて攻撃し、自分を正義だと感じる。ヘイトスピーチとも共通する心理です。同時に、弱者を敵視することで『自分は弱者ではない』と思える、という構造があります」。貧困問題に限らず、保育園が足りないと声を上げる人を「産んだ親の責任」と攻撃する人たちが出てくるのも、同様のメカニズムだとみる。

 そんな社会でいいのか。中西さんは「実際には、圧倒的大多数は、富裕層の仲間入りをするより貧困に陥る方がはるかに可能性が高い。正社員でも会社の業績悪化や病気・事故、震災のような自然災害、親の介護など、ちょっとしたきっかけで生活基盤が崩れかねない。弱者をたたくことで秩序を維持しようとする社会はきわめて脆弱(ぜいじゃく)です」。

 今月7日の国会前。森友学園問題の公文書改ざん発覚を受けた安倍内閣への抗議デモの場で、こんなスピーチに共感の声が上がった。「弱い者がさらに弱い者をたたく社会にしてしまったことが許せない」。ごく一部の特別な人たちを除けば、みな弱い立場にあるという事実に多くの人が気づき始めているのかもしれない。

 
政府が成立を目指す働き方改革関連法案などに抗議するデモ。最低賃金の引き上げなど格差縮小を求める声が上がった=東京都新宿区で2018年2月25日、井田純撮影
 
 
 
【関連記事】

<「嫌いな人を助けられるかどうか」が社会の質を決める>

<生活保護費「どんどん下げられると、やっていけない」>

<生活保護は恥…?「生活保護をもらうなら死んだ方がマシ」>

<生活保護申請で「すみません」と頭を下げ続ける24歳>

<生活保護受給者への医療扶助削減「健康管理強化」は誰のための政策?>

 
 
 
 
 
 
 

伊藤詩織さん「#WeToo にしたらどうだろう」あらゆる暴力、皆で許さない社会を #metoo 2018.2.23 弁護士ドットコムニュース

2018-02-27 13:55:02 | 命 人権 差別

 

伊藤詩織さん「#WeToo にしたらどうだろう」あらゆる暴力、皆で許さない社会を #metoo

https://www.bengo4.com/internet/n_7488/

2018年02月23日 22時08分

伊藤詩織さん「#WeToo にしたらどうだろう」あらゆる暴力、皆で許さない社会を #metoo伊藤詩織さん

世界に広がる「MeToo」ムーブメント。しかし、日本では下火の印象すら受ける。どうやって性暴力に反対する社会をつくれば良いのか。2月23日、都内のイベントに登壇したジャーナリストの伊藤詩織さんは「WeTooならどうだろう」と会場に呼びかけた。

なぜ、日本でMeTooが十分に広がらなかったのか。詩織さんはこう分析する。

「私も今まで誰かを傷つけたことはたくさんあると思うし、意識していない中でしてしまった行動だってある。自分の胸に手を当てると、みんな何かしら思い当たるものがある。それが、MeTooと言っている人と距離を置いたり、批判してしまったりすることにつながっていると感じています」

しかし、詩織さんは過去ではなく、未来を見て欲しいのだと言う。

「(MeTooは)これからの未来の話だと思っています。性暴力、セクハラ、パワハラ、どんな形の暴力も絶対に許してはいけない。見た人は無視してもいけないということにして欲しい。いつどこで自分や大切な人に起こるか分からないから。(暴力が残る社会を)これからみんなで一緒に変えていくのが、このMeTooの運動だと思っています」

日本に限らず、「MeToo」には勇気がいる。時にはバッシングやフラッシュバックなどの危険性も伴う。だから詩織さんは言う。

「(MeTooが無理なら)『WeToo』にしたらどうなんだろうって思うんです。私たちは『全体』でこういうことは許しませんとは言えないでしょうか」「MeTooできなかった人も一緒にWeTooと言ってくれたら嬉しい」

●英国拠点に「加害者」の取材を開始「背景や構造知ることが性暴力をなくす鍵」

詩織さんは現在イギリスを拠点に「新しい取材」を始めているという。それは「加害者」のこと。

「加害は1人で始まるわけではないと思う。その人を排除しても意味がない。どういう背景や構造で、そういう行動を起こしてしまったのかを知ることが、性暴力をなくす大きなキーになる」

その上では、何をもって「加害」と言うのかという認識も重要になる。昨年「厳罰化」された改正刑法(性犯罪規定)には、付則で2020年の見直し規定がついた。「法律の見直しも今後は重要なキーワードになると思います」

発言は、NPO法人ヒューマンライツ・ナウ主催のイベント「#Me Too からChangeへ  私たちの声をどう生かすか」でのもの。

(弁護士ドットコムニュース)

 

 

 

 


自衛官の人権をめぐる闘いの歴史と現在 小西誠 2018.2.23

2018-02-25 20:42:23 | 命 人権 差別
 
自衛官の人権をめぐる闘いの歴史と現在
本稿は、2018年3月12日発行(約50年ぶりの復刊)の拙著『反戦自衛官』の解説文です。

朝日新聞掲載の小熊英二氏の「自衛官の人権状況」論の批判ために、事前に公開します。全体の内容については、復刊される書籍(オンデマンド版はすでに発売)をお読み下さい(写真は、自衛隊に「沖縄派兵中止」「自衛官の言論活動の自由」などの「10項目要求」を求める6人の自衛官ら。1972年4月27日、防衛庁近くで記者会見)。
 
『反戦自衛官ー権力をゆるがす青年空曹の造反』(本体1800円・社会批評社)https://www.amazon.co.jp/反戦自�...
 
 
解説 二度の無罪判決と小西以後の闘い
 
 ほぼ半世紀前の、稚拙な自分の文章を再読すると恥ずかしい思いがするが、読者にはこれもあの時代の激しい闘いの息吹の中で執筆したものとして了解していただきたい。
 本稿は、校閲・校正箇所を除いて初稿の原文をそのまま掲載している。ただし、初稿にはなかったが、本文中に当時の状況が理解しやすいように写真を多く掲載するようにした(このため、原文の最首悟氏との対談は、原稿文量を超えるので割愛した)。

 第一回裁判以後

 さて、本書は、一九七〇年七月の第一回裁判開始直前の記述で終えている。第一回裁判は――。
 「七〇年七月二三日、新潟の街は小西裁判一色に包まれた。 町並みの至るところにビラ、ステッカーがはられている。宣伝カーはボリューム一杯に一日中鳴り響いた。
 裁判所周辺の緊迫は一段と激しい。路地の至るところに完全武装した機動隊と私服刑事が潜んでいる。警察はこの裁判のため、新潟の機動隊だけでは足りず、関東管区からも機動隊の応援を求めたという。
 権力のこうした態勢と呼応して右翼もまた、大動員し市内を走り廻っている。『売国奴! 小西元三曹の裁判を厳重監視しよう』、こう書かれたステッカーが裁判支援のステッカー以上に街中に氾濫している。
 予想される右翼の妨害に対し、小西裁判支援のため全国から集まってきた人々は、現地新潟の人々と共に、すでに第一回公判の五日前から裁判所横の路上にテントを張って座り込んでいる。

 機動隊に包囲された裁判所。その構内に入ると「立入禁止」の看板が目につく。裁判所は、小西裁判に備えて、すべての法廷を閉廷した。この厳戒態勢の中を私は、四〇名の弁護団と一緒に法廷に入った。いよいよこれから裁判が始まる」(拙著『小西反軍裁判』三一書房)
 さて、足かけ一一年間にわたる刑事裁判は、第一審判決が一九七五年二月「検察側の証明不十分にして被告は無罪」、検察側の控訴による控訴審判決が、一九七七年一月「新潟地裁差し戻し」、そして、差し戻し後の新潟地裁では、一九八一年三月「小西の行為は言論の自由の範囲内」として再び無罪判決が下された。検察側が控訴を諦めたため、この無罪判決は確定した。

 
 自衛官の初めての人権裁判 

 ところで、七〇年代初頭のこの時代は、長沼自衛隊違憲訴訟、百里自衛隊違憲訴訟が同時に争われており、いわゆる小西裁判も、この自衛隊違憲訴訟の一つとして争われることで注目を集めていた。実際、裁判は「自衛隊法違反適用」事件として、被告・弁護団とも、裁判開始直後から自衛隊・自衛隊法の違憲性を正面から争うものとして展開された。このために、被告・弁護側は、公判当初から自衛隊関係の多数の証人・証拠の提出を求めるとともに、二度にわたる公訴棄却を申し立てた(自衛隊法は、全面的に憲法違反であるから「小西起訴」自体が違憲)。
 それにもまして、小西裁判がもう一つの自衛隊違憲訴訟として、正面から争われることになったのは、この時代の政府・自衛隊の政治判断であった。当時、防衛庁長官であった中曽根康弘は、「七五年までに長沼、小西裁判で憲法の再確認(自衛隊合憲)を求める」と発言していたが(七一年五月アジア調査会での講演)、この政治目的は、第四次防衛力整備計画で一挙に軍拡を推し進める自衛隊の、国民的認知を確定することにあった。
 しかし、このような自衛隊違憲訴訟とともに、いやそれ以上に重要な小西裁判の争点は、逮捕・起訴理由に挙げられている、自衛官の政治的行為、言論活動の自由――自衛官の人権をめぐる問題であった。
 
 本文の記述のように私は、佐渡基地内で、チラシ、ステッカーを大量に配布し、全隊員の前で「治安訓練拒否」を宣言した。検察側は、最終的にこれらの行為を自衛隊法第六四条違反の「怠業および怠業的行為の煽動罪」として処罰を求めてきたが(逮捕時の第六一条「政治的行為の禁止」は適用せず)、この「煽動罪適用」こそは、憲法第九条下の自衛官を巡る人権状況を見事に表していた。
 検察側の判断は、すでに現実的に国家公務員の政治的行為への刑事罰の適用ができなくなりつつある中、憲法下、とりわけ自衛隊の違憲性が問われる九条下では、「政治的行為禁止」条項では自衛官といえども刑事罰を求めることはできないということであった。後述するように、以後の自衛隊内での闘いの中で、自衛隊法の政治的行為の禁止という刑事罰の適用は事実上、無効化された。
 そして、小西裁判による二度の裁判所の判決で明らかになったのは、この政治的行為の禁止に代わって言論活動を封殺する煽動罪による刑事罰の適用問題であった。この「煽動罪」は、日本では破防法・爆発物取締法以外に法的規定がないことから、自衛官のみに適用される治安法とも言えよう。つまり、軍法会議がない自衛隊という軍隊における、唯一の「軍法」と言えるかもしれない。

 結論すれば、小西裁判で真っ向から問われ、闘われたものは、自衛官(兵士)の人権――言論の自由、政治活動の自由ということであり、憲法第九条下では自衛官(兵士)の言論活動について、一切の刑事罰を下すことはできないということである。
 この意味で日本の軍隊史上、初めて勝ちとられ、認められた兵士の人権である(なお、国家公務員の政治的行為の処罰については、猿払事件の最高裁判決を始め、最近の国家公務員の政治的行為を巡る判決においても刑事罰が下され始めている。つまり、憲法九条の改悪下では、このような自衛官の言論活動も再び刑事罰の対象になるということだ)。
 
 自衛官の人権を求める「一〇項目要求」の提出

 この小西裁判による、自衛隊法第六一条の無効化を実践的に示したものこそ、一九七二年、反戦六自衛官による防衛庁長官への「一〇項目要求」である。 
 一九七二年四月二七日、現職の陸上自衛官・与那嶺均一士以下の陸空の自衛官たちは、防衛庁正門前で「自衛隊の沖縄派兵中止、自衛隊員の表現活動の自由」などの、下級兵士たちの一〇項目を防衛庁長官に「請願」した。そして翌日、東京芝公園の「沖縄デー」集会の壇上から制服を着用してその正当性を訴えたのだ(左、表紙カバー写真)。以下がその要求である。
 要求項目 
 一、われわれは、侵略のせん兵とならない。沖縄派兵を即時中止せよ。
 二、われわれは、労働者、農民に銃を向けない。立川基地への治安配備を直ちにやめよ。
 三、われわれに、生活、訓練、勤務の条件の決定に参加する権利、団結権を認めよ。 
 四、われわれに、集会、出版の自由など、あらゆる表現の自由を認めよ。
 五、われわれは、不当な命令には従わない。命令拒否権を確定せよ。
 六、幹部、曹、士の一切の差別をなくせ。
 七、勤務時間以外のあらゆる拘束を廃止せよ。
 八、私物点検、上官による貯金の管理などの一切の人権侵害をやめよ。
 九、小西三曹の懲戒免職を取り消し、直ちに原隊に復帰させよ。
 十、われわれは、自衛官であると同時に労働者、市民である。労働者、市民としてのすべての権   利を要求する。
 
 一九七二年四月二七日
 陸上自衛隊第三二普通科連隊第一中隊(市ヶ谷駐屯地)     一等陸士 与那嶺 均
 陸上自衛隊第四五普通科連隊第一中隊(京都大久保駐屯地)   一等陸士 福井 茂之
 陸上自衛隊富士学校偵察教導隊(富士駐屯地)         一等陸士 内藤 克久
 陸上自衛隊第二特科群第一一〇特科大隊本部中隊(仙台駐屯地) 一等陸士 河鰭 定男
航空自衛隊第二高射群第五高射隊射統小隊(芦屋基地)     一等空士 小多 基実夫
航空自衛隊第四六警戒群通信電子隊(佐渡基地)         三等空曹 小西 誠
                          (行政不服申し立て係争中)
 防衛庁長官 江崎真澄殿

 
 この彼らの行動に対して、自衛隊警務隊は、一応「逮捕態勢」に入ったが、集まった民衆の力でそれは阻止された。しかし、数日後、彼ら全員が「隊員としてふさわしくない行為」(自衛隊法第四六条)として懲戒免職処分に付された。
 ここで明らかになったのは、もはや、自衛隊はこのような公然たる制服着用による政治活動に対しても、第六一条違反での刑事罰を下せなくなったということだ。つまり、小西裁判で実証されたことが、この六自衛官の行動で確定したのだ。
 これらのことから言えることは、自衛隊創設以来、政府・自衛隊はもちろんのこと、この日本社会が想像もしていなかった自衛官の権利=軍隊内の兵士の権利が、確実にその兵士たちの手で勝ち取られつつある時代が始まったということである。

 
 卑劣な弾圧手段に乗り出す

 さて、自衛隊法による刑事的弾圧手段を裁判闘争や世論の力で封じ込められた自衛隊は、このあと、ますます卑劣な手段を駆使して隊内の「反戦兵士狩り」に乗り出す。
 この一つが、一九七五年の戸坂陸士長への集団リンチによる退職強要事件であり(陸自市ヶ谷駐とん地。東京地裁において「退職承認処分」取り消しの判決確定)、七八年の町田陸士長への再任用拒否事件である(同市ヶ谷駐とん地。東京高裁で原告の訴えは却下。 八七年には陸自練馬駐とん地においても、宮崎陸士長の再任拒否事件が起こった)。
 そして、任期制隊員ではない陸曹らに対しては、「配置転換」という労働争議で見られる手段を行使し始めた。
 一九七二年の六人の自衛官らの「一〇項目要求」以後、全国に広がった自衛隊の兵士運動は、特に首都東京のど真ん中、市ヶ谷駐とん地で深く広く浸透していった。 七五年には、駐とん地内に「不屈の旗」という自衛官自身による機関紙(写真参照)が発行され、 ついに八〇年には、 その中に「市ヶ谷兵士委員会」という自衛官たちの非公然の自立組織が誕生したのだ。
 この市ヶ谷兵士委員会は、一九八〇年代半ばに至ると、同駐とん地の第三二普通科連隊第四中隊を中心に、隊内に大きな影響力を持ち始めた。一時期当局は、第四中隊の「解隊」を目論んでいたぐらいである。そして、この当局による最終的弾圧手段が、同中隊の兵士委員会の中心メンバーと見做された、古参の陸曹ら(下士官)の配置転換だった。
 一九八九年、同連隊第四中隊の片岡顕二二曹は、突如として北海道へ、また同部隊所属の佐藤備三二曹もまた同様に、習志野部隊への配置転換を命ぜられた。これらの不当弾圧に対し、二人とも配置転換を拒否し「苦情処理申し立て」を始めとする、あらゆる法的手段を行使して闘ったが、当局は直ちに命令違反による懲戒免職処分を下した(原告らの処分取り消し訴訟は、東京高裁、札幌高裁で却下)。

 
 掃海艇派兵の中止要求

 一九九〇年代は、戦後自衛隊にとってエポックとなった年だ。戦後初めての海外派兵が、九一年四月に海自掃海艇のペルシャ湾への派兵として、また、九二年九月には陸自がカンボジアへ国連PKOとして派兵された。以後、自衛隊の海外派兵は、常態化していくことになる。
 この戦後自衛隊の歴史的大転換に対し、誰よりも先頭で闘ったのが、八九年から再び活性化した陸自・市ヶ谷駐屯地に結集する反戦自衛官たちであった。当時の多くの反戦運動が停滞する中で、彼らはこの困難な自衛隊の海外出動に隊内から対峙した。
 一九九一年四月二五日、前夜の掃海艇のペルシャ湾派兵の閣議決定、そして翌日の掃海艇部隊の出動という日を目前にして、陸自・市ヶ谷駐とん地に属する、片岡顕二二曹、吉本守人三曹、藤尾靖之陸士長は、その派兵に抗すべく六本木の防衛庁長官室(当時)の前に到着した。
 彼らは「掃海艇派兵の中止」を求める「意見具申書および請願書」を取り出し、長官室のドアをノックした。
 そのノックを終える間もなく、彼らは、長官のSP三人に取り押さえられ、その後逮捕された(以後、藤尾士長は再任拒否、吉本三曹は懲戒免職)。以下が彼らの意見具申書などである。

 意見具申書および請願書

 私たちは、憲法および自衛隊法を公然とふみにじる海上自衛隊・掃海艇部隊の中東派兵を即時中止するよう陸上自衛隊服務規則第二〇条に基づき意見具申するとともに、請願法第五条の定めにより一市民として請願する。
 自衛隊の任務および行動は、自衛隊法第三条が定めたように、日本の領海に限定したものである。しかるに、今回の「機雷除去」を口実にした自衛隊の海外出動は、この任務を大きく逸脱した違憲・違法の出動であり、私たちは断じてこれを黙認できない。
 今回の「日の丸」をつけ、武装した艦隊の海外出動は、アジア・中東諸国への軍事的威嚇であり、戦闘行動――武力行使以外のなにものでもない。
 もしも、このような自衛隊海外派兵の第一歩を許したとすれば、もはや戦後憲法は破壊され、日本が再び戦争への道へいきつくことは明らかである。
 今や、中東・アジア諸国の人々はこうした自衛隊海外派兵に強い危惧を抱いており、国内でも多くの民衆が懸念を表明している。
 
以上の立場に立ち私たちは、一自衛官として、あるいは一市民として次の点を意見具申し、請願する。
 一、違憲・違法の海上自衛隊掃海艇部隊の海外出動を即時中止すること。
 二、自衛官に思想および言論の自由などの民主的権利、命令拒否権を与えること。
 三、藤尾靖之陸士長への思想弾圧に基づく、再任用拒否の通告をただちにとりやめること。
 四、吉本守人三曹への思想弾圧に基づく、人権侵害を深く反省し、是正すること。
 五、片岡顕二・佐藤備三二曹の思想弾圧による転任および懲戒免職処分を公正審査会はただちに   取り消すこと。
 一九九一年四月二五日
        陸上自衛隊第三二普通科連隊第二中隊  陸士長  藤尾靖之   拇印
        陸上自衛隊第三二普通科連隊重迫中隊 三等陸曹 吉本守人  拇印
        陸上自衛隊第三二普通科連隊第四中隊 二等陸曹  片岡顕二  拇印
防衛庁長官 池田行彦殿

 九〇年代から現在へ 

 この勇気ある三自衛官の闘い以後、市ヶ谷駐とん地内では、反戦自衛官らへの凄まじい弾圧が吹き荒れ始めた。当局は自ら手を下すのでなく、右翼・当局派の下士官らを使嗾して、「反戦派狩り」を推し進め始めたのだ。隊内では、彼らへの暴力事件、リンチ事件が頻発・横行する。もちろん、これらの暴力事件に対して、当局は形式上の処分はするのだが、実際は奨励していたのだ。
 こういう厳しい弾圧を経過して、二〇〇四年の自衛隊のイラク派兵という本格的海外派兵の始まりの中で、「自衛官人権ホットライン」運動が始まった。この自衛隊内の、初めての隊員たちの相談機関であるホットラインには、発足以来すでに一五〇〇件を優に超える自衛官とその家族からの相談が寄せられている。隊内で孤立し、苦悩する隊員たちとその家族らには、この救済組織が事実上、唯一つの「駆け込み寺」となっているのだ。
 そしてまた、このような歴史的闘いの経験と継承が、現在始まっている現職自衛官らの国・自衛隊を相手にした裁判である。只今現在、「安保法=戦争法」の違憲裁判を含め三人の現職自衛官たちが、自衛隊当局を相手に行政裁判を行っている。この現職自衛官らが「現職」のままで、当局の不当な取り扱いに抗議の声を挙げ始めたということは重大だ。しかも彼らは、幹部や上級の曹である。ここには、自衛隊がもはや旧日本軍の伝統を継承した軍隊(「命令への絶対服従」などの軍紀)としては存立し得ない、社会的・政治的根源が生じていると言えよう。
 同様に、自衛隊内のいじめ・パワハラ・自殺事件などをめぐって、この一〇数年来、自衛官およびその家族からの訴えによる二〇数件にものぼる裁判が行われていることも重大だ(裁判終了を含む)。しかも、これらの自衛隊を相手にした裁判は、ほとんどが国・自衛隊の敗訴として終わっているのだ。
 このような状況を見ると、もはや自衛隊は、自衛官らに「絶対服従」を強いて忠実さだけを求める「軍隊」として存立することはできないということである。つまり、日本の軍隊=自衛隊もまた、北欧諸国の軍隊と同様、民主主義・人権を尊重した組織として「脱皮」(変革)するほかはないし、そうしない限り組織としては生き残れないのだ。
 言い換えれば、先進国の軍隊は、この人権・民主主義・生命の尊重(そして少子化)という重大なテーマを克服しない限り、その存立の危機に立たされる時代に入っているのだ。
 反戦自衛官らの、およそ半世紀にわたる闘いが提示したのは、まさしく、この戦争と軍隊の問題、根源的な平和社会を、この世界にどのように実現するかをめぐる運動であったとも言えよう
                          (二〇一八年二月二〇日)
 
 
 ●小西裁判・自衛官の人権関連資料 
 *『自衛隊その銃口は誰に』(小西反軍裁判支援委員会編、現代評論社) 
  小田実・小田切秀雄・山辺健太郎・藤井治夫・江橋崇・竹内芳郎、そして小西誠ら、各界の論客が語る叛軍の論理
 *『裁く――民衆が日本の軍国主義を』(小田実編、合同出版)
  ・小田実・山辺健太郎・星野安三郎らが、今法廷で裁かれようとしている小西の立場から権力を裁く「民衆法廷」を開催。その全記録
 *『小西反軍裁判』(小西誠編著・三一書房)
  ・小西刑事裁判の記録とドキュメント、第一審・控訴審・差し戻し審の判決全文収録
 *『自衛隊の兵士運動』(小西誠著・三一新書)
  ・七〇年代前半の自衛隊内の反戦運動の詳細を記録
 *『自衛隊の海外派兵』(小西誠・星野安三郎共著・社会批評社)
  ・九〇年代の海外派兵に向かう自衛隊内部の諸問題を記述
 *『隊友よ、侵略の銃はとるな』(小西誠著・社会批評社)
  ・七〇年代から八〇年代の自衛隊内の緊迫する闘いを描く
 *『海外派兵』(片岡顕二著・社会批評社)
  ・掃海艇のペルシャ湾派兵に反対した市ヶ谷自衛官たちのドキュメント
 *『自衛隊 そのトランスフォーメーション』(小西誠著・社会批評社)
  ・二〇〇〇年代に歴史的再編に向かう自衛隊とその内部の問題を喝破
 *『自衛隊 この国営ブラック企業』(小西誠著・社会批評社)
  ・現在の大再編される自衛隊内の隊員らの意識・苦闘を描く
 *『マルクス主義軍事論入門――マルクス主義軍事論第一巻』(小西誠著・社会批評社)
  ・クラウゼヴィッツ、マルクス、エンゲルス、レーニン、トロツキーなどの軍事理論を体系的に分析した革命の軍事理論
 *『現代革命と軍隊――マルクス主義軍事論第二巻』(小西誠著・社会批評社)
  ・パリ・コンミューン、ドイツ・ロシア革命、チリ・クーデタ、日本の戦前の兵士運動など、世界革命史の中の軍隊と革命をめぐる歴史と理論、兵士運動を分析