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性教育 いま必要なこと

2017年07月30日 | 健康・病気

性教育 いま必要なこと

毎日新聞オピニオン 2017年5月22日 大阪朝刊

   スマートフォンや自室のパソコンで、性を巡る膨大な情報に容易に触れることができる時代。子どもに正確な知識や、他者との関係性、自分の体との付き合い方などを教える性教育の重要性は高まっている。教育、医療、宗教、それぞれの立場で取り組む専門家に「いま必要なこと」を聞いた。【聞き手・中本泰代】

 自粛ムード、ゆがみも 関口久志・京都教育大教授

  京都の府立高校で保健体育の教諭を25年務めた。最初に勤務した夜間定時制では、今でいうデートDVや予期せぬ妊娠も多かった。目の前にいる生徒の悩みに対応するために性教育に取り組み始めた。「教科書にないから教えられない」では話にならない。

  日本では1992年、小学5年の教科書で「生命の誕生」などが扱われたのを機に性教育ブームが起き、熱意のある学校や教員が取り組み始めた。当時の文部省も99年には「学校における性教育の考え方、進め方」という手引を出し、性教育に前向きだった。

  その巻き返しが2002~03年の性教育バッシングだ。保守右派を中心に「行き過ぎている」と批判の声が上がり、中でも東京都立七生養護学校(現七生特別支援学校)では、都教委が教材を没収し教員らを厳重注意とする事件が起きた。全国の学校現場は萎縮し、一気に性教育が停滞した。自粛ムードは今も続いている。

 世界的には人権に基づいた性教育がスタンダードとなっている。人間関係▽価値観・態度・スキル▽文化・社会・人権▽人間の発達▽性行動▽性と生殖の健康--の6領域を理解度に応じて教える。一方、日本の学校での性教育は非常に時間が少ないうえ、内容は多くの場合、体の変化、生命の誕生、避妊、性感染症予防にとどまる。性愛についての教育を「子どもに必要ないもの」と遠ざけているのが特徴で、現行の学習指導要領は「中学生には性交を教えない」という前提で成り立っている。

  こうした状況は若者にゆがみをもたらしている。日本性教育協会による青少年の性行動調査の最新データ(11年)では、全体的に性行動が不活発になり、性に対するイメージもネガティブになった。私自身、近年は高校で性について講演すると「自分には関係ない」「リアルな恋愛はいらない」といった感想を書く男子が目に付く。一方、女子は貧困(経済的▽人間関係▽知識の三つがある)を背景に、性の商品化や性暴力にさらされる子が増えているように思う。

  男子も女子も課題の根は一緒で、性的な存在として他者と安心できる関係を築けない。人間関係や性のポジティブな面を教える大人が育っていないことが問題だ。「教わっていないから教えられない」という再生産が続いている。

  ネットの影響も大きい。玉石混交の性情報をお手本のように受け取る子は、教員を目指す学生にもいる。付き合うことや理想のセックスにこだわり、それらが完璧にできないといけないように思ってしまう。「焦らず、自分のペースでいい」と言ってあげないとわからない。ただ、彼らは教えれば変わる。月経痛に苦しむ彼女をいたわるようになったり、彼氏に「嫌なことは嫌」と言えるようになったりする学生たちを見てきた。

  私は、性教育とは豊かで心地よい人間関係をつくるための教育だと考える。一人一人に「私はこの形が幸せだ」というものをつかんでもらいたい。いま、旧来の性別役割や結婚のあり方、セクシュアリティーが揺らいでいる。どんな社会であるべきか、どんな教育が必要かを考え直すことが重要だ。

 知識提供の場が重要 田口奈緒・産婦人科医

  2013年開設の「性暴力被害者支援センター・ひょうご」の代表を務めている。性暴力の被害者を医療、法律、心理面など総合的に支える窓口だ。活動を始めて、小学校高学年から中学生くらいの子どもの相談が多いことがわかった。出会い系サイトで知り合った相手や、部活の先輩などから被害に遭うケースが少なくない。

   センターの事業の一つに、学校への性教育の講師派遣がある。私は性教育とは、子どもを性暴力の被害者にも加害者にもしないために、自尊心を育み、人と関わり合うルールや正確な知識を教えるものと位置づけている。本来なら発達段階に応じて包括的に教えるべきだが、講演の依頼は中学3年生対象で1回だけという形式が多い。中には、生徒の3分の1が進学しない中学もあり、そうしたところでは先生から「社会に出る前に必要最低限の知識を伝えてほしい」と頼まれる。

  私が必要最低限と考えるのは、まず外性器の名称。センターに連れてこられた被害女児が「あそこに(何かが)入った」と表現することがある。自分の体のことを知らないと、異変が起きた時や、性暴力に遭った時に他人に伝えられない。

  月経と妊娠の仕組み、避妊法、性感染症の話も必須だ。子どもたちは雑誌やインターネットで断片的な情報を得ていても、体系的に理解したり自分と結びつけたりはしていない。学校側から「性交の話はしないで」「コンドームの付け方の実演もだめ。使ってみたくなるから」と言われることもあるが、大人になれば絶対に必要となる知識。性をタブー視せず、どこかの時点で誰かがきちんと話さなければならない。

  講演ではまた、「デートDVとはどういうことか」や、性暴力に遭わないために気をつけるべきことも話す。緊急避妊ピルの情報は必ず伝える。講演を聞いた後、彼氏と無防備なセックスをしてしまい、お年玉を握りしめて病院に来た中学生もいた。

  以前に勤務していた病院で、中絶手術を受けた50人にアンケートをとったところ、正しく避妊していた人は1人しかいなかった。診察室で予期せぬ妊娠を知り「コンドームを使っていたのに」と泣き崩れる人もいるが、コンドームは避妊法としては不確実だ。中絶自体はネガティブな体験ではないけれど、女性の心身を傷つけることは確か。中絶に至る前に、適切な避妊法を伝えなければならない。

  被害相談や診療に訪れる人たちの話を聞いていて感じるのは、あふれる情報に振り回されて、体と気持ちと考えがバラバラになっている人が多いということ。自立している女性でも、性に関する場面になると「自分がこうしたい」ではなく「付き合って3カ月たったらセックスする」「35歳までに出産しなければならない」などと「あるべき姿」に翻弄(ほんろう)されている。そういう意味では、大人にも性教育が必要ではないか。

  改めて、性について語る場、知識を提供する場の重要性を感じている。人間にとって性は、食べる、寝る、排せつすることと同じように大事なことだと伝えたい。

 相談相手の存在示せ 古川潤哉・浄土真宗本願寺派僧侶

  佐賀県の中学や高校で、性教育の一環として「生と性と死を考える」という授業を行っている。きっかけは、2001年ごろからホスピスでボランティアを始め、医師らの勧めでエイズの現状と課題を学び、患者と交流を持ったこと。医師や学生らと一緒に、若者が集まるクラブやライブハウスで性感染症防止の啓発活動を始めた。

  彼らは性に関する悩みをいっぱい抱えている。私がお坊さんの姿でカウンターにいると、「中絶したけど水子の霊ってあるの? どうしたらいいの?」などと次々に聞いてきた(ちなみに浄土真宗に水子霊の概念はない)。気付いたのは、彼らはこうした性の悩みや失敗談を誰に聞いてもらえばいいのかわからないということ。そして、クラブに来るような積極性のある子は意思疎通が上手で、本当の意味では性のハイリスク層ではなさそうだということ。こうしたところに来ない内向きの子の方が、悩みを誰にも打ち明けきれず苦しんでいる可能性がある。

  その頃、医療、行政、教育などの専門家が連携し、若者の性行動についてちゃんと教育しようというグループができた。佐賀県DV総合対策センターが始めた中学向けDV予防プログラムの「エイズを通していのちを考える」という性教育枠で、私も講師に加わるご縁を得た。

  伝えたいことは大きく3点。まず、性について。性はいやらしいことだけを指すのではない。性の話は生の話である。次に「いのち」について。いのちとは、ただ生まれてから死ぬまでのことではなく、過去から未来へのつながりや周囲との関係性の中に存在する。生と死は対義語ではなくワンセットである。そして最後に、いろんな人がいていいということ。

 若者と関わっていて、「自分はだめな人間だ」と思っている子が大勢いるのが気になっていた。学校やメディアによる「正しさ」の押しつけが問題のように思う。自分がその枠から外れてしまった場合、どうしたらいいのか。頑張ってもうまくいかないことはあり、しかし精いっぱい生きるしかない。「それはそれで大丈夫だ」と誰かが肯定しないといけない。

  浄土真宗で阿弥陀(あみだ)仏は「何があってもあなたを救う」とおっしゃっている。先の3点も、日本で長い間大切にされてきたこの考え方を、中学生にも伝わるように表現したものだ。

  授業では、例えば性自認について「世の中には男と女しかいないわけじゃない。自分をどう思おうが自由だし、選べるものでもない」と、わかっている人間がいることを強調する。また、思春期特有のモヤモヤについては「生命をつなぐために体が勝手に準備を始める。この違和感がいつまでも続くわけじゃない」と話す。苦しんでいる最中の中高生に「永遠に変わらないものなどない」と伝えるだけで、だいぶ楽になれる。

   性については、自分ではどうにもならないことや、後悔することもいっぱいある。まずは子どもに「何を話しても大丈夫な相手がいる」と示すことが大事だ。私たち宗教者をはじめ、できる立場の人が、できることをやればいい。

 性行動全国調査

  日本性教育協会が6年ごとに実施する「青少年の性行動全国調査」の2011年のデータによると、性交経験率は中学男子3.7%▽中学女子4.7%▽高校男子14.6%▽高校女子22.5%。性に関して「学校で教わった覚えがある」と高校生が回答した主な項目は、HIV・エイズ92%▽妊娠の仕組み90%▽避妊の方法81%▽性感染症68%--だった。一方、性交については57%、恋愛は32%、性的マイノリティーは18%にとどまった。

 せきぐち・ひさし
 1954年、兵庫県生まれ。専門は性教育、ジェンダー教育。2003年から千葉大、横浜国立大などで非常勤講師を歴任。全国の学校や自治体で講演を続ける。“人間と性”教育研究協議会幹事。

 たぐち・なお
 1969年、神戸市生まれ。信州大医学部卒業。2013年4月、神戸市内で性暴力被害者支援センターを設立し、現在は兵庫県立尼崎総合医療センターを拠点に活動する。

 ふるかわ・じゅんや
 1976年、佐賀県伊万里市生まれ。同市の浄誓寺僧侶。浄土真宗本願寺派が昨年度主催した、若者の悩みに寄り添う僧侶を育成する研修会の企画、運営に携わった。


 ご無沙汰してしまいました。札幌にいる2人の子どもが珍しく一緒に乗り合わせてやってきた。子どもの部活などで、なかなか時間が取れず、かろうじて空いた日ができたといって孫を連れてやってきた。下の子は、友人の結婚式で来たという。
 30日はわたしの兄弟4人が旭川のお墓に集まり、掃除とお参りをしてきた。兄弟で昼食をとり、夕食は子どもと孫と回転ずしを食べに行って、そこで別れて帰ってきた。10皿も食べられなかった孫が今日は15皿も食べていた。