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コロナ禍の自殺 30代以下の女性が7割も増加した4つの事情

2020年10月08日 | 社会・経済

人生100年時代の歩き方

日刊ゲンダイDIGITAL 2020/10/08 

 先月、女優の竹内結子さん(享年40)と芦名星さん(同36)が急逝した。いずれも自死とみられている。最新の発表でも、子育て中や働き盛りの女性の自殺が増えているが、なぜなのか――。

■派遣雇い止めが経済を直撃

 警察庁によると8月に自殺した人は全国1854人で、昨年同月比16%増加した。とくに女性が急増し、男性は同6%増だったが、女性は40%増。さらに30代以下の女性に限れば、107人から189人へと76%も増えた。

 厚労省は、新型コロナウイルス感染拡大に関連した解雇や雇い止めが、6万439人(9月23日時点)になったと発表。8月には5万人を超え、急速な増加を続けている。

 2019年の女性の就業者数は2992万人。うち、非正規雇用者の割合は56・4%に上り、1687万人は契約・派遣社員ということになる。男性の非正規雇用者は22・3%だから、派遣の雇い止めは女性に大きな影響を与えたといえる。

「もともと男性の自殺者が多いのは、仕事の人間関係や責任、家計を支えるための経済問題を理由にしているケースが大きかったからです。しかし、30代の独身女性や共働きが中心世帯になっており、生活の責任を負うことにプレッシャーを感じる女性が増えています。ここにきての派遣切りは精神的なダメージが大きい。通常時に比べてコロナ禍で再就職先の見通しを立てられなくなったわけですから……」(精神科医の和田秀樹氏)

また、派遣社員は派遣会社とのつながりは薄く、派遣先とも契約を切られてしまえば、会社員のように仕事の悩みを上司や同僚に伝えることも難しい。不安だけが残り、孤立する。そして、自分自身を追い詰めてしまうという。

■自粛生活で会話ができないストレス

 リモートワークを推進する企業が増えて、自宅にこもる時間が長くなった。仕事のやりとりも友人とのコミュニケーションも、ZoomやLINEが中心となった。

「表情を読み取れる距離でのコミュニケーションができなくなりました。『つらい』と言っても、相手には深刻な様子を察するのが難しい。とくに女性は男性よりも、会話によって心理的不安を緩和させる特徴が強く、気軽な雑談ができないのもストレスになります。

 さらに30代女性の独身の割合も増えました。彼女らは中堅社員として仕事のストレスもあり、結婚など将来の不安も募る上、自宅にいる時間が増えて話し相手がいないことで、社会的孤立を感じやすくなっているといえます。

 また心理学的に、自殺するときは、その瞬間まで『誰かが止めてくれるのではないか』という意識がよぎっていると考えられています。日常であれば周囲が駆け付けたり、異変を察知して飲みに誘ったり、救うことができる場合でも、コロナ自粛で機会は激減しました。コロナによって、『誰も助けてくれない』とネガティブに陥りやすい環境になってしまったのです」(明大講師の関修氏=心理学)

「いのちの電話」も第三者に悩みを話すことで“気休め”にはなるが、とりわけ女性には、根本的な解決にはならないと指摘する。

「男性は、知り合いに悩みを知られたくないと考える傾向が強い。そのため、パブリック空間の相談も解決につながりやすいですが、女性は身近な人に個人的に心配されることで、不安感を取り除くことができるケースが多いと考えられています」(前出の関修氏)

 そもそも、本気で自殺を決意している人はパブリックな相談窓口に電話すらかけられない状態にある。女性には身近な声掛けが大事だという。

史上最多の猛暑日による「季節性うつ」

 気候変動と自殺には相関関係がある。米スタンフォード大学のマーシャル・バーク博士らの研究チームによる論文(2018年)では、〈月間平均気温が上昇すると自殺率が増加する〉という。米国とメキシコで採取したデータを分析し、月間平均気温が1度上昇すると自殺率は米国で0・7%、メキシコでは2・1%増加することが分かった。

 また、カリフォルニア大学バークリー校の研究者タマ・カールトン氏の論文(17年)は〈インドの過去30年の6万人の自殺者に気候変動が影響した〉と結論付けている。20度を超える気温では、1日の気温が1度上昇すると平均70件の自殺が増えるという。

 日本でも今年は全国的に猛暑日が長引き、東京都心で35度以上の日数は観測史上最多を更新した。

「気圧の変化によってうつ病を引き起こす『季節性うつ』が自殺率を上昇させることは多くの文献で証明されています。生理学的に女性ホルモンに作用し、女性の方が太陽の光や温度による影響を繊細に受けやすいことも分かっています」(前出の関修氏)

 季節性うつには「夏季うつ」と「冬季うつ」があり、前者は女性が男性の3倍、後者も1・5倍の患者がいるというデータもある。この夏の猛暑によって心身の不調に悩まされた女性が増えた可能性はある。

外出ができず病院敬遠

 厚労省の「自殺対策白書」によると、19年の自殺者数は、男性が1万4826人、女性は6495人だったが、自殺者の自殺未遂歴の有無でみると男性が14・5%に対し、女性は29・6%と2倍の多さだ。

女性はホルモンバランスの乱れで、気分の落ち込みや衝動的な気持ちの変化が起きやすい。ただし、男性よりもSOSを出しやすいので周囲のサポートや病院で薬を処方してもらうなど処置も受けた分、最悪の事態にならないケースが多かったというが……。

「政府のコロナ対策にも問題があると思います。“感染しないことだけ”を意識した対策で、外に出ないことや外食などは避けて他人となるべく話さないことを要請してきました。これらはメンタルには悪いことですが、女性の方がリスク管理が高く、周囲(近所)の目も意識しがちなので、自粛に厳格に従っている人が多かったと考えられます。自殺未遂(希死念慮)の患者さんは女性が圧倒的に多いですが、この自粛下で感染予防のために精神科の病院にかかることができなかったのです。

たとえば、竹内結子さんは出産後8カ月のお子さんがいて、産後の不安も原因ではないかという報道がありました。実際、うつはセロトニンの低下が原因ですので、ホルモンバランスを整える薬を処方します。薬でかなり症状が治まるので、病院に来ることをすすめていますが、現状では外出を我慢してつらい思いを抱えて過ごしている女性は多いでしょう」(前出の和田秀樹氏)

妻の異変に気付くには「食欲の低下」「睡眠不足(夜中に何度も起きているなど眠りが浅い)」「涙目のときが多い」などの症状がないかを気を付けてみること。また、遠方の一人暮らしの娘には、こまめに連絡を取って声を聞くことが大事だという。

【相談窓口】

■日本いのちの電話連盟

ナビダイヤル 0570・783・556

  午前10:00~午後10:00

フリーダイヤル 0120・783・556

  毎日:午後4:00~午後9:00

  毎月10日:午前8:00~翌日午前8:00