里の家ファーム

無農薬・無化学肥料・不耕起の甘いミニトマトがメインです。
園地を開放しております。
自然の中に身を置いてみませんか?

「私は真実が知りたい」“森友”自殺財務省職員の妻・赤木雅子さんの意見陳述全文

2020年07月15日 | 事件

「週刊文春」編集部

    source : 週刊文春 2020年7月23日号

 森友学園との国有地取引をめぐって財務省の上司に公文書の改ざんを強いられ、それを苦にした財務省近畿財務局の上席国有財産管理官・赤木俊夫さん(享年54)は、2018年3月7日、自ら命を絶った。

 赤木さんの妻・雅子さんは「真実が知りたい」として、国と佐川宣寿元財務省理財局長を相手取った損害賠償請求訴訟を起こした。7月15日、この裁判の第1回口頭弁論が大阪地裁で行われた。雅子さんが法廷で行った意見陳述の全文を公開する。

◆ ◆ ◆

 私の夫、赤木俊夫は決裁文書を改ざんしたことを悔やみ、自ら人生の終止符を打ちました。2018年3月7日のことです。

 夫は震える手で遺書や手記を残してくれました。

 私は夫の死後2年経過した2020年3月18日、やっと遺書や手記を公表しました。

 そして、同じ日に、夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにし、夫と同じように国家公務員が死に追い詰められることがないようにするため、そして、事実を公的な場所で説明したかったという夫の遺志を継ぐため、国と佐川さんを訴えるところまで進みました。

 以下、この訴訟に対する私の思いを陳述させて頂きます。

 夫は、亡くなるおよそ1年前である2017年2月26日(日曜日)、私と神戸市内の梅林公園にいた時、近畿財務局の上司である池田靖さんに呼び出され、森友学園への国有地払い下げに関する決裁文書を改ざんしました。

 決裁文書を書き換えることは犯罪です。

 夫は「私の雇い主は日本国民。国民のために仕事ができる国家公務員に誇りを持っています」と生前知人に話していた程国家公務員の仕事に誇りを持っていました。

 そのような夫が決裁文書の書き換えという犯罪を強制されたのです。夫の残した手記によると、夫は改ざんを指示された際に「抵抗した」とあります。また、私は、夫の死後、池田さんからも、夫は改ざんに最初から反対していたと聞きました。

 夫が決裁文書の改ざんによって受けた心の痛みはどれだけのものだったでしょうか。国家公務員としての誇りを失ったでしょうし、強い自責の念に襲われたと思います。

 夫は手記や遺書に「この事実を知り、抵抗したとはいえ関わった者としての責任をどう取るか、ずっと考えてきました。 事実を、公的な場所でしっかりと説明することができません。今の健康状態と体力ではこの方法をとるしかありませんでした。(55才の春を迎えることができない儚さと怖さ)」、「現場として相当抵抗し、最終的には小西次長が修正に応じ、修正前の調書に合わせて自ら、チェックマークを入れてを整えました。事実を知っている者として責任を取ります。」と書いています。

 夫は改ざんしたことを犯罪を犯したのだと受け止め、国民の皆さんに死んでお詫びすることにしたんだと思います。夫の残した手記は日本国民の皆さんに残した謝罪文だと思います。

 国は、夫の自死の真相が知りたいという私の思いを裏切り続けて来ました。

(1)財務省は、夫が亡くなった5日後の2018年3月12日に改ざんしたことを認め、3か月後の6月4日に調査報告書を発表しました。

 しかし、この調査報告書の中には、誰のどのような指示に基づいて夫が改ざんを強制されたのか記されていません。夫が自死したことすら記載されていません。夫の手記についても、提出を求められていないので当然ですが、一切触れていません。

 池田さんは、夫が亡くなってから1年後、自宅で私に「赤木さんはきっちりしているから、文書の修正、改ざんについて、ファイルにして、きちっと整理していたんです。」、「パラッと見たら、めっちゃきれいに整理してある。全部書いてある。どこがどうで、何がどういう本省の指示かって。修正前と修正後、何回かやり取りしたような奴がファイリングされていて、パッと見ただけでわかるように整理されている。これを見たら我々がどういう過程で改ざんをやったのかというのが全部わかる」と仰っていました。でも、調査報告書にはこのファイルについても記載がありません。

(2)私は、夫の自死が公務災害となった理由を知るため、人事院に対して情報開示請求をしました。しかし、人事院の開示した文書は70ページのほとんどが黒塗りで、夫がなぜ自ら死を選び悩み苦しんだのか、私の知りたいことは何一つわかりません。

 そこで、私は、2020年4月13日に近畿財務局に対して情報開示請求をしました。しかし、1か月後の5月13日に開示されたのは、年金の金額や支払日などが書かれたたった10頁の文書でした。残りの文書については、新型コロナによる緊急事態宣言に伴う処理可能作業量の減少などを理由に、1年後の2021年5月14日までに開示決定をするそうです。国はこの裁判でも同じような態度をとるのでしょうか?これではこの裁判でも真実には近づけません。

(3)私は夫が自死に追い詰められた真相を明らかにするため第三者委員会による再調査を求める電子署名を始めました。電子署名には35万人を超える方々から賛同の署名を頂きました。

 

 電子署名は2020年6月15日に安倍首相や麻生財務大臣へ提出しました。しかし、安倍首相も、麻生財務大臣も、すでに検察の捜査も済んでいるので調査しないと夫のことを切り捨てました。でも検察の捜査は刑事処分のためのもので、真相解明の調査とは別の物です。

 国は国民にも夫にも向き合わず、あるものを出さずズルズル先延ばしにして逃げています。再調査を実施して、正直に全て明らかにしてください。再調査の結果はこの訴訟でも役に立つと思います。

 安倍首相は、2017年2月17日の国会で、安倍首相や安倍昭恵さんが森友学園の国有地払い下げにかかわっていたら総理大臣も国会議員も辞めると発言しました。

 財務省秘書課長だった伊藤豊さんは、2018年10月、私に対して、「この首相の発言によって野党が理財局に対して資料請求するなど炎上したため理財局は改ざん前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改ざんは関係がないとはいえない。」と言いました。

 安倍首相は、自分の発言が改ざんの発端になっていることから逃げているのではないでしょうか。安倍首相は自分の発言と改ざんには関係があることを認め、真相解明に協力して欲しいと思います。安倍昭恵さんも森友学園への国有地売却の関係を明らかにしてほしいと思います。

 池田さんも、池田さんの前任者の前西勇人さんも「裁判になれば本当のことを話します」と私にはっきりと言いました。この裁判では、前西さんには安倍昭恵さんと籠池夫妻のいわゆるスリーショット写真がどのように国有地の取引に影響したのかを、池田さんには国有地値引きと決裁文書改ざんをめぐり近畿財務局の中で何が行われたのかを話して頂きたいと思います。

 また、佐川さんをはじめとする理財局の幹部の人達や、美並局長をはじめとする近畿財務局の幹部の人達も、事実をありのままに話して欲しいと思います。

 もしこれらの人達が裁判に来なかったり、裁判に来ても事実を話さなかったとしたら、国が本当にあったことを国民から隠し、全てなかったことにするために止めたのだと思います。

 

 安倍首相、麻生大臣 私は真実が知りたいです。

 

 夫は亡くなった日の朝、私に「ありがとう。」と言ってくれました。

 最期の夫の顔は「絶望」に満ち溢れ、泣いているように見えました。決して生き残らないように電気コードは首にきつく二重にくくりつけていました。怖がりだった夫がこんなことをしなければならないなんて。

 真面目に働いていた職場で何があったのか、何をさせられたのか私は知りたいと思います。

 

 最後に、裁判官の皆様にお願いがあります。

 

 私は、訴状でも書いてありますが、3つの目的のために訴訟を始めました。その中でも一番重視しているのは1つ目の夫が自ら命を絶った原因と経緯を明らかにすることです。

 訴訟の手続は私には難しくて分かりませんが、是非とも夫が自ら命を絶った原因と経緯が明らかになるように訴訟を進めてください。夫が作成したファイルを含めてできるだけ沢山の資料を集め、できるだけ沢山の人の尋問を行って事実を明らかにしてください。そしてその上で、公正な判決を下してください。宜しくお願い致します。

 

私は真実が知りたい 夫が遺書で告発「森友」改ざんはなぜ?

赤木 雅子 ,相澤 冬樹

文藝春秋

2020年7月15日 発売


本当にGoToキャンペーンやりますか? 地方の高齢者の命を犠牲にして経済活動をしますか?

2020年07月14日 | 社会・経済

 藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授

Yahooニュース(個人)7/14(火) 

 

頑なに推進するGoToキャンペーン

もうすぐ夏休みの時期が訪れる。

 政府は落ち込んだ飲食、宿泊、観光業を盛り立てるために、いわゆる「GoToキャンペーン」という観光推進政策を実施する。

 22日から始まる観光支援策「Go To トラベル」について、赤羽一嘉国土交通相は14日の閣議後会見で、参加する業者に宿泊客への検温などの感染対策を義務づけることを明らかにした。

 新型コロナウイルスの感染が東京を中心に再び拡大している中で、全国一律に事業を始めることに批判があがっており、対策をとった形だ。

 国交省によると、受け付けに仕切り板をつける▽宿泊客全員に検温する▽風呂や食堂などの共用施設では人数制限や時間制限をする▽ビュッフェ形式の食事は個別提供するなどの感染防止策を義務づけ、国交省が確認して宿泊業者を認める。

 認定されていない施設に泊まっても、旅行補助は受けられない。17日に詳細を発表するという。

 赤羽氏は「各地の感染状況を注視しつつ、感染症の専門家のご意見ご指導や、政府全体の方針なども踏まえながら柔軟に運用したい」と話した。

 出典:GoTo業者に感染対策を義務づけ 検温や仕切り板設置 朝日新聞

 生存のためのコロナ対策ネットワークでは、5月から相談会を開催してきたが、飲食・宿泊・観光業に従事していた方達からの相談が目立った。

 休業補償がない、解雇や雇い止めに遭った、会社が倒産したという相談が新型コロナウイルス感染拡大と同時に顕著だった。

 特に、非正規雇用で働く女性労働者からの相談が多いわけだが、これらの産業の雇用形態を見れば、女性労働者に依存してきた構造が見えてくる。

 それゆえに、大打撃を受けている産業を盛り立てたいという気持ちも理解する。

観光客受け入れ先の地方から批判

 観光客が少しでも来てくれたら、飲食、宿泊、観光業を通じて、地域経済や雇用が再生していくのではないか、という期待もあると思う。

しかしながら、以下の通り、山形県知事も複雑な心境を吐露しているように、このまま観光推進、移動を加速させてよいのだろうか。

 山形県の吉村美栄子知事は14日の定例記者会見で、政府が22日に観光割引「Go To キャンペーン」を全国一律で始めることに関し「首都圏での新型コロナウイルス感染状況や各地での豪雨災害を踏まえると、この時期のスタートはいかがなものか」と批判した。

 経済対策としての有効性は認めた上で「手放しでは喜べない。第2波が来つつあるとの感じも受けるので、地域の実情に合ったやり方を地方に任せてほしい」と求めた。

 出典:山形知事GoTo一律開始を批判 コロナや各地で豪雨災害 共同通信

観光地周辺の高齢化率の高さが顕著で命のリスクに晒す可能性

 観光推進政策をとる上で、ほとんど議論されていないことは受け入れ先の地域の高齢化率である。

 首都圏や都市部に住んでいると、高齢化を意識することがない人もいるかもしれないが、日本は世界一の高齢者大国である。

 ただでさえ、地方は高齢化率が高く、高齢者は新型コロナウイルスの感染により、死亡率も高いと繰り返し報じられてきた。

 新型コロナウイルス 年代別感染者数・死亡率を見ても、当初より活動が活発な若年層に感染者が多いが、重傷者、死亡者は高齢者に多い。特に高齢者でも年齢が高いほど、リスクが高い。

 現在は地方の高齢者に爆発的な感染拡大が起こっていないが、このキャンペーンを契機に拡大しないか、不安で仕方がない。

もちろん、都市部よりも地方の医療、保健資源は量的に少なく、感染拡大を抑止できるか、資源面からも不安が尽きない。

 強調しておきたいことは、高齢者が新型コロナウイルスに感染すれば、命にかかわる問題につながるということだ。

 社会福祉にかかわってきた立場として、現状の経済活動最優先の政策、このタイミングでの政策実施は看過できない。

 前述の不安を吐露した山形県の高齢化率は32.9%であり、全国平均28.1%よりも5ポイントほど高い。

 例えば、山形県内屈指の観光地である銀山温泉がある尾花沢市は、39.7%であり、約4割が高齢者だ(総務省2018)。

高齢化が進んでいる山形県内でもさらに高齢化が顕著な地域である。

 観光関連業を通じて、周辺に感染者が拡大しないか懸念があって当然だろう。

もちろん、無症状でも新型コロナウイルスに感染している場合がある。

市中感染が今も指摘されているように、誰が感染していてもおかしくない状況である。

そして、東京都を中心に未だ感染拡大は収束していない。

このタイミングで、経済団体、業界団体の要望で、観光推進してよいのだろうか。

地方の高齢者を命の危険に晒していいのだろうか。

あと1週間、再考してほしいし、休業補償を徹底することで、移動を回避できないだろうか。

緊急時に政策を撤回することがあっても命を守ることを優先するなら批判は抑えられよう。英断に期待したい。


 経済も大事だが、それよりも人命を重視したい。もう少しの辛抱、もう少し明るい兆しが見えてきてからでいいように思う。

散歩道のオオウバユリ。


「日本製品」が海外で売れなくなった根本原因 中国に一度敗れた「メイド・イン・ジャパン」

2020年07月13日 | 社会・経済

東洋経済オンライン

  永井 竜之介 2020/07/13 

    かつて「安くて高品質」と、世界中から人気を集めていた「メイド・イン・ジャパン」は今や見る影もない。昭和、平成、令和に進むにつれ日本製品の魅力が衰退していった理由を、高千穂大学准教授・永井竜之介氏の新刊『リープ・マーケティング 中国ベンチャーに学ぶ新時代の「広め方」』より一部抜粋・再構成してお届けする。

    日本が誇る「メイド・イン・ジャパン」は、多くの分野において世界で通用しなくなっている。

もはや海外で「日本の家電」の姿は見られない

 日本メーカーが一時代を築いた家電では、中国のハイアールやグリー、韓国のLGやサムスンが世界の主役の座を奪っている。スマートスピーカーに代表されるスマート家電の分野では、前述のメーカー群に加え、アメリカのGAFA、中国のBATやシャオミなどが攻勢をかけている。

 ひとりの消費者として、海外へ行ったときに周りを意識して見てみれば、愕然とするほどにメイド・イン・ジャパンの存在が薄れていることに気づくはずだ。ホテルの客室でも、知人宅でも、家電売り場でも、日本の家電メーカーの姿はもうほとんど見られない。

 シャンプーや洗剤といった一般消費財の分野では、アメリカのP&GやJ&J、イギリスとオランダのユニリーバがしのぎを削り合っている。街中で目にする自動車ではさすがに日本も一矢を報いていて、トヨタや日産、ホンダも見かけられる。とはいえ、それも燃費性能の良さからUber、Lyft、DiDiなどのライドシェア・サービスに採用されたであろう中古車が目立つ印象だ。

 「安くて高品質」という日本製品のかつての評価は、いまやそっくりそのまま中国や韓国、アメリカのものになっている。その代わりに「余計な機能が多くて割高」「過剰品質」と揶揄され、苦境に立たされているのが現状だ。

 主な敗因は、日本のものづくりが変わってしまったと言うよりも、「変われなかった」点にある。日本のものづくりは、昔から変わらず今でも完璧主義で、妥協がない。しかし、追い求める「完璧さ」が世界のトレンドとズレてしまっているのだ。

 日本では、あらゆるビジネスにおいて「最初から完璧」が目指される。ただし、ここで目指されるのは「減点型の完璧さ」である。尖ったビジネスアイデアの、新しくておもしろいが、リスクや穴のある要素は、早期に取り除かれやすい。魅力的に発展しうる要素を切り捨て、安全・無難で、これまでの延長線上の少し先にあるような、小さくまとまった新商品に仕上げられていく。

 開発・プロモーション・販売も前例に基づき、慎重に、長い時間と労力をかけて完璧なプランで新商品をリリースしようとする。緻密なプランがあるがゆえに、最初の市場の反応が良くても悪くても、それが予想と異なっていたときにすばやい軌道修正を行うことは難しくなる。

 このように、おもしろいが危うく伸びそうな「価値の枝葉」を早期に取り除き、じっくり時間をかけて、きれいで小さなプロダクトへ磨き上げるのが日本の得意とする「減点型の完璧主義」だ。ここでは、完璧に完成された1つのプロダクトをつくって、広めることがビジネスのゴールとなる。これはかつてのメイド・イン・ジャパンを支えた強みだが、近年における世界のトレンドからは逆行するものになってしまった。

世界のトレンドは「加点型の完璧主義」

 いま世界で勝ち上がっているのは、「加点型の完璧主義」だ。こちらでは、おもしろいアイデアが出てきたら、できる限り早くMVP(Minimum Valuable Product)に仕上げてリリースする。

 MVPとは、「最低限の価値を持った商品」を意味する。それを一度リリースしてみて、まずは市場の反応を見る。そして販売と並行して、市場の反応がよかった要素をさらに伸ばし、悪かった要素は優先的に改善してバージョンアップしていく。このサイクルをライバルよりも高速で実現できるか否かが、勝負を分ける。だからシリコンバレーでは、「最初のプロダクトが恥ずかしいものでないなら、それはリリースが遅すぎた証拠」とまで言われる。

 実際、1995年にリリースされたAmazonの初期ホームページも、2007年の初期iPhoneも、いずれも粗削りだった。だが、MVPを市場に出してニーズを検証し、急速に水準を向上させ、ともに破壊的なイノベーションになったことは周知のとおりだ。

 「加点型の完璧主義」では、尖ったアイデアを加点で評価し、その枝葉を活かしてプロダクトの価値を最大限に高めることを目指す。まず、尖った要素を完璧に仕上げる理想形の「加点型の長期目標」が設定される。この長期目標は、プロセスに応じて、修正・更新ができるものだ。

 それとは別に、短サイクルで回す短期目標も設けられ、これに基づき、いち早くMVPをリリースしていく。そうして、市場の反応に対して迅速・柔軟に軌道修正を行いつつ、バージョンアップを重ねる。あるいは、初期の反応が悪ければMVPの段階で撤退することもできる。この段階ならばダメージは比較的小さく、手を引きやすい。「最も効果的な市場調査とは、実際にリリースしてみること」というわけだ。

 そして短サイクルに合わせ、開発とプロモーション、流通、販売、リサーチなどが連動していく。このサイクルを重ねた先に、理想として思い描く「完璧なプロダクト」が実現される。

 つまり、日本も世界のトレンドも「完璧」を目指してはいるが、完璧さの種類が異なるのだ。下の図のように、日本は、1つのプロダクトに時間をかけ、器の中の「盆栽」のように、減点型のミニマムな完璧をつくって広めようとする。

 それに対して世界のトレンドは、完璧を目指すまでに、いくつものプロダクトをつくり、高速に発売・改良・バージョンアップを繰り返し、大地に根を張る「大木」のように加点型のマキシマムな完璧をつくって広めようとする。

「ドローンシェアNo1」の企業は何をした?

 この加点型の完璧主義を実践することで飛躍を遂げた中国ベンチャーがいる。それが、ドローン市場で世界トップシェアを勝ち取っているDJI(大疆創新科技)だ。

 2006年に学生ベンチャーとして生まれたDJIは、2019年には世界のドローン市場のシェア70%以上を握るリーディングカンパニーへ飛躍を遂げた。同社の製造するドローンは、世界100カ国以上で販売され、総売り上げのうち、北米市場、欧州市場、中国国内を含むアジア市場からそれぞれ3割ずつ、残り1割を南米・アフリカ市場から得ている、真のグローバル企業だ。

 無人で遠隔操作・自動制御ができる航空ロボットのドローンは、撮影目的のほか、点検、農薬散布、セキュリティや救助など、用途の種類と需要を急拡大させている。民間だけでも市場規模は推定5500億円にのぼり、今後10年で3倍以上の拡大が見込まれる成長市場だ。

 その成長市場のグローバル・トップに立つDJIの創業者、汪滔(フランク・ワン)氏が掲げる社訓は、「激極尽志、求真品誠(極限まで志のために尽くし、真実を追求し、製品に嘘をつかない)」という完璧主義だ。

 フランク・ワン氏が大学院の同級生2名と創業したDJIが初めに製造・販売したのは、ドローンの中核となる飛行制御システムのフライトコントローラーだった。共同創業者と離別し、知人・恩師を招いてチームを再編し、資金調達を経て、2009年に初の自社製品となるフライトコントローラーシステム「XP3.1」をリリースした。その後は「ハードテックのシリコンバレー」と呼ばれる深圳に本拠地がある強みを活かし、ドローン全体の製造へ舵を切っていった。

iPhoneの次に「革新的なアイデア」

 そうして2013年に発売されたのが、ドローン「ファントム」だ。リーズナブルな価格、組み立て済みで届き受け取ったらすぐに空撮できる、という3つの強みを誇る白いボディのドローンである。ファントムは、ドローンとして一般利用できる最低限の性能を備え、当時として破格の679ドル(約67000円)でリリースされた。

 これは、それまで専門的な知識を持った業者やマニア向けだったドローンを、一般向けに大きく広げるヒット商品となった。そのインパクトは、アメリカ『Forbes』誌で「AppleのiPhoneを除けば、ファントムはもっとも人を感動させるプロダクトかもしれない」と評されたほどだ。

 DJIは2013年のうちに、空中でのブレを防止し、空撮の精度を高めた「ファントム2」を即座にリリース。2015年には、飛行の安定性を向上させた「ファントム3」。2016年には、障害物の回避、対象の追尾などの機能を備えた「ファントム4」を次々にリリースしていった。

 初代機のリリースからわずか3年の間に、「空撮を体験できるロボット」という初期段階からバージョンアップを繰り返し、「ドローン自体が情報処理を行うスマート・ロボット」へ急速に進化させた。さらに2016年には、折り畳み式で携帯可能な小型ドローン「マビック・プロ」をリリースし、ドローンをより広く、より手軽に、より便利に利用できるよう、市場を押し広げていった。

 DJIは、「完璧なドローン」という自社プロダクトの完成形・理想形を遥か先に掲げながら、まずは駆け出しのベンチャーとして生きていくために、できることから徐々に完璧を目指した。フライトコントローラーにはじまり、ドローンの製造・改良・進化を短サイクルで回し続けている。

 新規アイデアが出れば、すぐにプロトタイプをつくり、可能性を信じてMVPに仕上げ、量産し、高速でリリースする。その積み重ねによって、世界トップシェアを獲得するまでに至った。DJIの思い描く加点型の長期目標は、更新され続け、さらに先の未来へ置かれている。

世界で一度敗れたメイド・イン・ジャパン

 このように、「海外のものづくりは雑」「特に中国はいい加減」という認識は、短サイクルで回す加点型の短期目標の一部分を切り取った近視眼的な解釈にすぎない。大局で見れば、減点型では目指すことができない新しく大きな価値を、加点型は実現することができる。

 「中国は粗悪で速いだけだが、日本は緻密で慎重な完璧主義なんだ」と考え、それをよしとする認識は、もう改めなければならない。緻密で慎重な、減点型の完璧主義で、メイド・イン・ジャパンは世界で敗れているのだから。

 もちろん、製品ジャンルによってMVPとして求められる「最低限の価値」は異なるし、日本の得意とする減点型が強みとして有効な分野も存在している。しかし、家電も住宅もスマート化が急劇に進んでいる分野だ。

 自動車は、いずれ電気自動車が主流となり、同時にスマート化を進め、自動運転へ辿り着くだろう。そうしたなかで、日本のものづくりが世界で再び勝ち上がっていくためには、「加点型の完璧主義」を学び、取り入れ、組織とビジネスに大きな変革を起こす必要があるだろう。


ヘイケボタル

ピンボケごめん!
先ほど色々調べてみたのですが変な光を当てるのはまずいようです。街灯の光、車のライト、カメラのフラッシュ、等、氣を付けなければ!


地元議員ら100人「おとがめ無し」に疑問の声 河井夫妻事件で刑事処分見送りに波紋

2020年07月12日 | 社会・経済

「東京新聞」2020年7月12日 

 昨年7月の参院選を巡る買収事件で、前法相の河井克行被告(57)=衆院広島3区=夫妻から現金を受け取ったとされる地元議員ら100人について、東京地検特捜部が刑事処分を見送ったことが波紋を広げている。地元の有権者からは起訴されないことに疑問の声が上がり、検察への協力を求める見返りなのではとの臆測も出ている。 (山田雄之、山下葉月)

◆お金もらったの認めている人もいるのに

 「地元議員たちって、いずれ起訴されるんですよね。お金をもらったのを認めている人もいるわけだし。さすがにこのまま『おとがめ無し』っていうのは…」

 広島市のタクシー運転手神村彰さん(49)は、8日に克行前法相と妻で参院議員の案里被告(46)=広島選挙区=が起訴された後も、一向に地元議員らの処分がないことに違和感を感じる。

 「被買収」の地元政治家は40人で、1680万円を受け取ったとされる。うち辞職したのは首長と町議の計4人だけ。被買収罪で罰金以上の刑が確定すれば公民権が停止して失職する。だが、起訴されなければ職にとどまることも可能だ。

 克行前法相から30万円を受け取った広島県議には、河井夫妻が起訴された日の夜、特捜部の検事から事務連絡の電話がかかってきた。処分についての言及はなく、自ら「私はどうなるんですか」と恐る恐る尋ねると、「まだなんですよ」と言われたという。

◆起訴されたら辞めるつもりだったが、ホッと

 後日、特捜部が「起訴するべきものは起訴した」と説明したことを報道で知った県議は、「ホッとした。起訴されたら辞めるつもりだったが、議員を続けられそうだ」と喜ぶ。

 別の県議は「検察はきちんと処分してほしい」と求める。克行前法相が勝手に現金を置いていき、後日そのまま返したといい、「返金していない議員と自分が一緒の扱いというのは納得がいかない」とこぼす。

 買収事件では、受け取った側も起訴されるのが通例。2014年の青森県内の首長選を巡る事件では、返金した議員も起訴され、失職している。特捜部が今回、一律に被買収側の処分を見送った理由について、ある検察幹部は「夫妻から強引に現金を渡されていた面を重視した」とする。

 克行前法相は現金配布の大半を認めた上で、「買収の意図はなかった」と起訴内容を否認。公判では現金の趣旨を巡り、検察側と対立することが予想される。

◆刑事処分見送りは「無言の圧力」

 地元議員らの一部は、検察側の証人として出廷してもらう可能性を伝えられているといい、ある県議は「刑事処分の見送りは、裁判でも『現金は参院選の応援依頼の趣旨だと思った』と証言しろという無言の圧力のように感じる」と話す。

 甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)は「地元議員らの刑事処分を見送った裏には、公判への協力を求める事実上の『司法取引』があった疑いがある。疑念を払拭するためにも、検察は個々の刑事責任を明らかにすべきだ」と指摘した。


不条理な社会が延々と続いている。どこかで断ち切らねばならん。

 家横の蛍群生地、先日100匹?とか書いたが、そんなものではなかった。目を凝らすと光の弱いものが多数見受けられる。早い時間ではかなりの数が飛び回っているが遅い時間では、光ってはいるが飛び回るのはほとんどない。何とか保護したいものだ。役場にも相談してみようと思う。
 ビデオに撮って公開しようと思うのだが、なかなかいいのが撮れなくている。


GPIF運用、過去最大の赤字 株価優先政策 年金給付に傷 安心・確実な運用に戻れ

2020年07月11日 | 社会・経済

「しんぶん赤旗」」2020年7月11日

 「年金運用で過去最大17・7兆円赤字」に衝撃が走りました。厚生年金と国民年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が3日、2020年1~3月期の運用損益が四半期として過去最大となる17兆7072億円の赤字になったと発表したのです。この結果、19年度の運用損益は8兆2831億円の赤字に陥りました。

コロナ禍など要因

 GPIFの3月末時点の運用資産額は150兆6332億円。巨額な資産の多くが、リスクを伴う株式で運用されている結果、コロナ禍のような不測の要因があったときに、大きな損失を招くことになりました。

 今回の事態は、株式中心の運用が、将来の年金給付に傷を与える危険性も浮き彫りにしました。

 年金積立金を将来、実際の年金給付に充てるためには、保有する株式などを売却して、現金化する必要があります。しかし含み損を抱えたまま現金化すれば損失が生じます。

 そもそも、現金化するためにGPIFが保有する巨額の有価証券を大量に売却すれば株価は暴落するでしょう。売却が取りざたされた時点で、株価は下落し、利益を実現できなくなる可能性もあります。

アベノミクス演出

 新型コロナの感染拡大が深刻となるもとで日経平均株価は今年3月には1万6千円台まで下落し、6月上旬には2万3千円台まで回復しました。日本経済が苦境にあえぐもとでも、株価だけが2万台を維持し続けています。

 コロナによる経済の打撃に伴う株価の下落を、GPIFなどの年金基金部門と、日銀ETF(株価指数連動型上場投資信託)が、買い支えてきた結果です。

 安倍政権は、アベノミクスの成功を演出するために、巨額「公的マネー」を使って株価を買い支えてきました。これが、GPIFの巨額損失を招きました。

 アベノミクスの“成功演出”のために大切な年金の原資を使われた揚げ句、損失を出されるなどたまったものではありません。安倍政権の株価対策最優先政策を見直すとともに、リスクマネー中心の運用をやめ、安全で確実な資産による運用をすすめ将来の年金を守るべきです。

(山田英明)


 わたしは「株」をやっていないので、なんで我々の「年金」を減らしてまで「株価」を支えなければならないのか?という疑問が付きまとう。「年金」が主語ではなく、「株価」が主語なのだ。いろいろと問題のある「運用」方法である。

 


駐留経費4倍に 適切な要求とは言えぬ

2020年07月10日 | 社会・経済

 「東京新聞」社説 2020年7月10日 

 在日米軍駐留経費の日本側負担を、現在の四倍以上に当たる年間八十億ドルに増やすよう、トランプ米大統領が求めているという。適切な要求とはとても言えない。日本政府が拒否すべきは当然だ。

 二〇一六年度から五年間の在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)は総額九千四百六十五億円で年平均千八百九十三億円。日米安全保障条約上、日本側に義務のない負担であり、特別協定を結んで日本側が負担している。協定は来年三月に期限が切れる。今年十一月の米大統領選後、交渉が本格化する見通しだ。

 ボルトン前米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)の回顧録によると、昨年七月に訪日した際、谷内正太郎国家安全保障局長(当時)に、大統領がなぜ年間八十億ドル(約八千五百億円)を望んでいるかについて説明した、という。

 八十億ドルへの増額要求はこれまでも米外交誌「フォーリン・ポリシー」が報じていた。日本政府は否定していたが、米政権中枢の回顧録で裏付けられた形となる。安倍内閣はまず、米側との協議内容を国民に明らかにすべきだ。

 安保条約に基づく日米地位協定は、駐留米軍の基地や訓練場などの施設・区域の提供義務を日本側に課す一方、駐留に要する経費は米側負担と定めている。

 米側が本来負担すべき人件費や光熱水費などを日本側が代わって負担する思いやり予算は、円高や米国の財政赤字などを背景に一九七八年度から始まった。根拠を問われた当時の金丸信防衛庁長官が「思いやりをもって対処する」と答えたことにちなむ、そもそも日本側に義務のない負担だ。

 日本政府は思いやり予算以外にも、米軍施設の借料や基地周辺対策費、米軍再編費用などの駐留米軍関係経費を負担しており、その額は、防衛省以外が所管する基地交付金などを加えれば総額八千億円近くに達する。重い負担だ。

 前回協議でも、日本側は厳しい財政事情や自衛隊の任務拡大などを理由に減額を求めたが、米側は拒否した。財政事情は今回、コロナ禍もありより厳しい。条約上根拠のない財政負担の増額に国民の理解はとても得られまい。

 回顧録によると大統領は「米軍を撤収させると脅せば、非常に強力な交渉上の立場を得られる」と述べたという。事実なら日米安保体制を損ねる発言だ。

 日本政府は、米国追随と指摘される交渉態度を改め、毅然(きぜん)とした姿勢で協議に臨むべきである。


 さらにF35戦闘機爆買い、沖縄新基地建設に対する限り無い建設費用。今このようなものにお金を費やす時ではないと思うのだが、コロナ後の新しい社会を見据えることが大事だ。国民にも想いやりを!被災地にも想いやりを!

散歩道で

ノアサガオというらしい。


自然破壊が続くと新型コロナのような感染症が増える。国連が警告→「動物から人間に移ってきます」

2020年07月09日 | 健康・病気

新型コロナのような「ズーノーシス」と呼ばれる感染症、何が問題なのでしょうか

ハフポスト 2020年07月07日

   Satoko Yasuda 安田 聡子

自然破壊や気候変動が続けば、新型コロナウイルス感染症のような病気が増える――国連が7月6日に発表したレポートで警告した。 

 新型コロナウイルス感染症のような動物と人間との間で感染する病気は「動物由来感染症(ズーノーシス)」と呼ばれる。

国連のレポートは、ズーノーシスが自然環境と密接に結びついており、各国が一緒になって環境問題に取り組まなければ、再びパンデミックが起きるだろうと訴える。

感染症の増加、どんな原因が考えられるのだろう

 新型コロナウイルス感染症以外に、エボラ出血熱や中東呼吸器症候群(MERS)、HIV/エイズ、ウエストナイル熱といった近年人間を苦しめてきた感染症も、ズーノーシスに含まれる。

 レポートによると、これまでに確認されている感染症の60%、最近新しく認知された感染症の75%がズーノーシスだ。

 動物から人への感染症が増える要因として挙げられているのが、食肉の需要や、持続可能でない農業、野生生物の搾取や天然資源利用の増加だ。

 過去半世紀で食肉生産は260%増え、感染症の25%がダムや灌漑、工場式畜産業に関連している、とレポートは指摘する。

また旅行や移動の増加、食料供給の変化、気候危機なども問題視されている。

 国連環境計画(UNEP)エグゼクティブ・ディレクターのインガー・アンダーソン氏は次のように警告する。

「野生生物の搾取や生態系の破壊が続けば、数年後に感染症は動物から人間に移ってくると科学ははっきりと示しています」

「パンデミックは私たちの生活と経済を破壊します。最も苦しむのが貧しい人たちであることを、私たちはこの数カ月で目にしてきました」

「将来の流行を阻止するため、私たちはもっと意識的に自然環境保護に取り組まなければなりません」

犠牲になるのは弱い立場の人たち

 同じくUNEPのマーテン・カペレ氏は「1918〜19年のスペイン風邪パンデミックを振り返って、あのような大流行は1世紀に1度と思う人もいるかもしれません。しかしもはやそれは当てはまりません。自然界と人間の世界とのバランスを取らなければ、あのような大流行がまん延するでしょう」と警告する。

 新型コロナウイルスでは、これまでに世界で53万人以上が亡くなっているが、それ以外に毎年200万もの人たちが動物から人への感染症で亡くなっているという。そのほとんどが低所得、中間所得層の人だ。 

 動物の中でも特にげっ歯類やコウモリ、肉食動物、霊長類からの感染が起こりやすいという。家畜が病原体を野生生物から人間に運ぶケースも少なくない。

将来のパンデミックを防ぐために

ウイルスは国境を超えて広がる。

 獣医伝染病学者のダリア・グレース氏は「この問題は、国ごとでは解決できません。私たちは、人間の健康と動物の健康、そして生態系の健康を一緒になって考えなければいけない」と、国際的な取り組みを訴えている。

 国際的な取り組みと同時にUNEPが推奨するのが、公衆衛生と獣医学そして環境の専門家が力を合わせて流行に備える「One Heath(ワン・ヘルス)」という考え方だ。

 レポートは具体的な取り組みとして自然保護や食肉需要への対策、食の安全強化、テクノロジーへの投資、そして自然保護関連の人材の増加などを挙げている。

国連のグテーレス事務総長は、次のように述べる。

「将来の流行を防ぐため、各国が野生動植物の保護や、持続可能な農業の促進、食の安全基準の強化、市場の監視や規制、リスクを特定するための技術投資、そして違法な自然動植物取引の規制に取り組む必要があります」 


 江部乙に市の担当者が来て「クマが出ました。今回は形跡も確認しましたのでご注意ください」とチラシを置いていった。クマの出没はここだけの話ではなく、いたるところから聞こえてくる。これも人間が自然を破壊してきた結果なのかもしれない。

ヤマブドウ。

多肉。

アジサイ。


PCR検査=反日の原因分析 「おはよう日本」はNHKの希望だ

2020年07月08日 | 社会・経済

ファクトチェック・ニッポン!

PCR検査=反日の原因分析 「おはよう日本」はNHKの希望だ

日刊ゲンダイDIGITAL:2020/07/08

立岩陽一郎    ジャーナリスト、1967年生まれ。91年、一橋大学卒業後、NHK入局。テヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て2016年12月に退職。現在は調査報道を専門とする認定NPO運営「INFACT」編集長。アメリカン大学(米ワシントンDC)フェロー。毎日放送「ちちんぷいぷい」レギュラー。

 

このコラムではNHKの問題点を指摘しているが、もちろん、NHKにも良い番組はある。3日の「おはよう日本」に、特にその思いを強くした。その中で、PCR検査を拡充することの必要性を語った大谷義夫医師がネットで「反日」「反政府」と批判された状況が伝えられていた。ネットの解析から、そうした状況が生じた原因にまで迫っていた。

 地味だが大事なニュースだと思い、その内容をツイートしたところ、支持の声が鳴りやまず、翌日には「いいね」1・6万、リツイートも1万に迫っていた。特にフォロワーも多くない私のツイッターでは異例のことだ。

 実際、PCR検査の必要性を語るとネット上で攻撃される状況は今も変わっていない。以前から指摘しているように、PCR検査についての議論は実に不透明だ。検査を拡充すると医療崩壊が起きるので、クラスター(集団感染)に集中させたとされ、PCR検査の拡充を言おうものなら「医療崩壊の誘発者」と批判される状態もある。実際にはそうなっていない国もあるという冷静な議論はできていない。

そうした世論形成にくみしてきたのが、NHKをはじめとする主要メディアだった。例えば、新型コロナを巡るNHKスペシャルは、専門家会議の内部にカメラを入れ専門家会議の中心メンバーをスタジオに呼ぶのを売りにしているが、研究者らが頑張っているという点に焦点を当てるだけで、PCR検査の問題については、ほとんど取り上げていない。

 これには既視感がある。総理会見だ。政治記者は総理大臣が答えにくい質問を発しない。同じことが科学記者にも言えるということだ。科学記者は専門家会議を批判的に報じていない。NHKだけではない。新聞も同じだ。専門家会議に議事録がない問題は専門家会議にも責任があるはずだが、そういう指摘は書かれない。

 当然、専門家会議の記者会見でも、総理会見と同じように厳しい質問は出ない。5月4日、副座長だった尾身茂氏がPCR検査が拡充できなかった点について、歴史的、制度的に、「根深い問題」があったと語ったが、どの記者もその「根深い問題」を追及していない。こうした悪弊が、冒頭紹介した「おはよう日本」で伝えられた異様な状況を生んだと私は思っている。

そのニュースには余談がある。「おはよう日本」は曜日ごとに番組責任者が代わる。後から知ったのだが、その日の責任者は科学記者として知られた人物だった。

 つまり、全ての科学記者が魂を売っているわけではない。ニュースは志ある社会部の記者が志を同じくする「おはよう日本」の制作陣と組んで取材を進め、その責任者が担当する日での放送を目指した。その思いを責任者が受け止め、朝7時の最も注目される時間に放送したということだ。私のツイッターでの反応は、そのニュースが多くの人の心に刺さったことを物語っている。

巨大で影響力の極めて大きいNHKは常に批判的に検証する必要がある。このコラムでは、これからも批判的に検証していく。しかし、中には頑張っている人たちもいる。だから私はNHKに希望を持ち続けたい。


 わたしもそのように「期待」したのだがNHK側から断られてしまって、今はTVのない生活を送っている。経緯はこのブログでも書いたはずだ。

「みなさまのNHK」受信契約解除(2018.8.15)

ジデジ対応のため建てられたアンテナ支柱。11mの高さのところにアンテナが設置されています。ここは豪雪地帯、「数年で壊れてしまうよ」と申し上げたのだが聞く耳持たず。設置時の確認事項に「メンテナンスはお客様が行うこと」との一筆がある。1回くらい雪を落としてやればそれだけで済みそうなものだが、登ってゆく手段がない。電信柱についているような足場もないのだ。これでどうメンテナンスせよと?いちいち高所作業車をチャーターしなければならない。そんな出費はできない。

********

昨年挿し木で増やしたバラと庭の花たち。

散歩道

 


レジ袋有料化 脱使い捨てへの第一歩

2020年07月07日 | 社会・経済

 「東京新聞」社説 2020年7月7日 

 コンビニを含むすべての小売店で、レジ袋の無料配布が原則としてできなくなった。タダだからもらってしまう。つい使い捨てにしてしまう−。そんな「生活様式」を変えることができるだろうか。

 高度経済成長期後の一九七〇年代ごろ、レジ袋は日本で生まれて世界に広がった。日本では今、国民一人当たり年間四百枚近いレジ袋を“消費”しているという。

 便利、手軽、タダゆえに、多くは使い捨てにされて「ごみ」になる。かつてバングラデシュでは、ポイ捨てされたレジ袋が排水溝に詰まってしまい、首都が水浸しになるような事件も起きた。

 九〇年代に入ると、レジ袋を含む廃棄プラスチックの問題が深刻化、焼却の際に排出される温室効果ガスや、海に流出したものをクジラやウミガメがのみ込んで命を落とす海洋汚染が国際問題になっていく。

 欧州ではそのころからレジ袋有料化の機運が高まった。

 日本政府はかつて、コンビニ業界の強い抵抗もあり、有料化に及び腰だった。一方、スーパーや自治体の反応は国よりも早かった。

二〇〇七年に京都市で始まった、行政と市民団体、そしてスーパーがレジ袋の有料化を支持する協定を結んで削減に取り組む「京都方式」が成果を上げて、全国へ波及した。

 日本チェーンストア協会によると、レジ袋を有料化したスーパーは、全体の四分の一に当たる二千六百店以上に達し、辞退率(今年三月)は六割に近く、十年前の二倍以上になっている。

 京都府亀岡市ではこの三月、市内の小売店でレジ袋の無償提供を「全面禁止」する条例を制定した。観光資源である保津川の環境を守るため、素材によって例外を設けた国よりも一歩踏み込んだ。

 廃プラスチックの年間排出量は約九百万トン。レジ袋やトレー、ペットボトルなど使い捨ての容器包装類が四百万トンを占めている。

 このうちレジ袋は約二十万トンと推定され、全体の2%程度にすぎない。

 しかし、有料化の狙いは「使い捨て文化」からの脱却であり、身近なレジ袋は、その第一歩。「大量生産、大量消費のライフスタイルを見直していくことが重要」と環境省も訴える。

 小さなマイバッグを携行し「いりません」と言うだけで、ほんの少し暮らしが変わる。

 それが海を守ることにもつながっていく。


 九州地方の豪雨被害、深刻な状態です。心よりお見舞い申し上げます。これ以上の広がりがないよう願うばかりです。

蛍の群舞。

 かって見たのは小学低学年の頃だった。でも、そこは家からはかなり離れていたと思う。昨夜見たのは家のすぐ横。例年1匹しか見えず、いつも増えてほしいと願っていた。それが昨夜は一気に100匹余り。もう二度と見ることなどないだろうとあきらめていた。早速、除草剤などまかれないように看板をぶら下げてきた。

ジャガイモの花。


2020年アメリカ大統領選挙の行方を変える新しいムーブメントの兆し

2020年07月06日 | 社会・経済

Imidasオピニオン2020/07/06

  渡辺由佳里(エッセイスト、洋書レビュアー、翻訳家)

 

トランプ有利の風向きに変化が

 前年末にアメリカの下院本会議がドナルド・トランプ大統領の弾劾決議を可決し、上院議会でトランプ大統領の弾劾裁判が進んでいた2020年1月下旬、筆者は『弾劾されたトランプが大統領選に勝つ可能性が高い理由』というエッセイを書いた。その中で、マイノリティになりつつある白人(特に男性)が「自分にとって心地がよかった世界が変わることへの嫌悪と恐怖」を抱いていることや、そのような白人によってトランプが再選される可能性が高いことについて言及した。

 しかし、このエッセイを書いた後で、誰にも予想できなかったことが次々と起こった。最初は新型コロナウイルスの大流行だ。対応しきれない数の重症患者が押し寄せる医療機関がパニック状態になっている時ですら、トランプ大統領は「ただの風邪みたいなもの」「そのうち奇跡的に消える」「自分の功績を傷つけるためのリベラルの陰謀」などとパンデミックの現状を否定し続けた。ようやく対策のためのタスクフォースを作ってからも、記者会見のときに「漂白剤を注射する」といった自己流の治療法を進言して専門家の努力を台無しにした。また、自分自身がマスクを着用せず、着けないことをあたかも自由と勇気の象徴のように扱った。そのために、アメリカではマスク不着用とソーシャルディスタンスを取らないことが政治的な意思表明のようになり、6月になってからは共和党が強い南部や西部の州で感染者数が急増している。

全米に、世界に広がるBlack Lives Matterデモ

 パンデミックによる自宅待機が続いて人々がフラストレーションを覚え始めた頃に起こったのが、世界規模の#BlackLivesMatter(BLM、ブラックライブスマター、黒人の命も重要だ)抗議運動だ。そのきっかけは、アメリカのミネソタ州ミネアポリスで5月25日に起こった白人警官による黒人男性の殺害だった。偽の20ドル札でタバコを買った男がいるという食糧雑貨店からの通報でかけつけた警官らが、武器を持たず、抵抗もしていない容疑者のジョージ・フロイドの首を8分46秒にわたって膝で抑えつけて圧迫し、死亡させたのだ。複数の目撃者が「息ができないと言っている。やめなさい」と言っている中で警官らが冷酷に一人の人間を殺した映像は、多くの人に衝撃を与えた。

 これまでも、武器を持っていない黒人を白人の警官が殺す事件は何度も繰り返されてきた。そういった事件のたびにBLMの抗議デモは起こったが、フロイドの死の後にミネアポリスで始まった抗議デモは、今までとは異なった。単発のデモでは終わらずに全米に飛び火し、黒人やマイノリティだけでなく数多くの白人も加わり、世界中で賛同のデモが起こるようになった。

 これまでの大統領であれば、パンデミックとデモによる混乱を悪化させないために国民に団結を呼びかけることだろう。ところが、トランプはツイッターや記者会見で警察や軍による暴力をつかった鎮圧を示唆し、火に油を注ぐような人種差別的発言を繰り返した。

 さらに、パンデミックのさなかだというのに、トランプはオクラホマ州タルサで6月19日に大規模な選挙ラリー(政治集会)を行うことを決めた。6月19日は、『ジューンティーンス』というアメリカの黒人が奴隷制からの解放を祝う重要な記念日だ。また、タルサは1921年に白人優越主義者らが黒人の住民を大量虐殺した歴史がある地だ。黒人の商業地として栄えていた場所で起こった虐殺と破壊は「ブラック・ウォール街の虐殺」としても知られている。タルサの、しかもブラック・ウォール街のすぐ近くで『ジューンティーンス』に集会を行うというのは、黒人に対する故意の侮辱であり、BLMの抗議運動を行っている者たちへの挑発だ。多くの批判を浴びたためにトランプは日程を20日に変更したが、すでに多くの人が彼の意図を理解した後だった。

共和党員もトランプ批判を展開

 そんな大統領のリーダーシップに危機感を覚えているのはリベラルだけではない。古くからの著名な保守の論者や共和党員が公の場でトランプを批判するようになっている。その中でもソーシャルメディアで大きな影響力を持っている団体が、The Lincoln Project(リンカーンプロジェクト)とRepublican Voters Against Trump(RVAT)だ。

 スーパーPAC(特別政治行動委員会)であるリンカーンプロジェクトを運営しているのは、トランプの大統領顧問ケリーアン・コンウェイの夫であるジョージ・コンウェイ、ジョージ・W・ブッシュ元大統領や元大統領候補ジョン・マケインの側近だったスティーブ・シュミット、かつてニューハンプシャー州共和党の委員長だったジェニファー・ホーンなど長年の共和党員である(トランプが大統領になった後、党を離脱した者もいる)。このリンカーンプロジェクトは、トランプ批判と民主党指名候補ジョー・バイデン支持の政治広告ビデオを頻繁に作ってソーシャルメディアで流している。トランプの弱点をあざ笑うビデオが多く、怒ったトランプが反撃のツイートをするためにさらに注目を集めている。RVATを創始したのは、ネオコン(新保守主義)の政治アナリストとして有名なビル・クリストルだ。このグループは、トランプを支持できない共和党員、元共和党員、トランプに票を投じたことを悔いている元トランプ支持者の証言ビデオを作ってソーシャルメディアで広めている。

空席だらけのトランプ集会

 このような状況のなか、トランプは6月20日土曜日にタルサで政治集会を行った。その直前、トランプとキャンペーン・マネジャーは「チケットをリクエストしたのは100万人以上」とトランプの人気を自慢していた。会場は1万9000人を収容できる多目的屋内アリーナで、そこに収まらない支持者のために屋外にも会場が設置されていた。

多くの人は、大人数のトランプ支持者と、彼らに抗議するグループが衝突し、警察の出動で暴力的な事件にエスカレートすることを恐れていた。ところが、まったく予想もしなかったことが起こった。まず、会場近くで暴力的な衝突は起こらず、静かなものだった。何よりも驚きだったのは、会場が空席だらけだったことだ。消防署の報告では入場者はたったの6200人。外に残された支持者はおらず、屋外の会場は速やかに撤去された。

 トランプ陣営にとっては寝耳に水だったようだが、主流メディアにとっても驚きだった。次第にわかってきたのは、この驚くべき現象の背後に、ソーシャルメディアのTikTokのユーザーとK-POPのファン、そして「TikTokおばあちゃん」というニックネームをつけられた女性の存在があるということだ。ピート・ブーテジェッジ(注:民主党の候補として2020年の大統領予備選に出馬したが後に辞退)の選挙ボランティアを始めた1年前までは無所属だったというこの女性は、「トランプ集会のチケットをリクエストしたうえで行かない」という具体的な抗議運動の方法をTikTokで伝授した。このビデオが若者の間でシェアされて広まった。この方法を広めたもうひとつの意外なヒーローは、ARMYと呼ばれる団結力が強いK-POPのファンだという。以前からトランプに対し批判的だったK-POPファンによるチケットのリクエスト活動はさらにめざましいものだったようだ。

 偽のチケットリクエストで会場に空席を作るという戦略をトランプ陣営に嗅ぎつけられないために、彼らは自分の知り合いにアイディアをシェアしたら48時間以内にその投稿を消したらしい。これは、プロの政治ストラテジストも脱帽する策略だった。

 大統領選挙での最初の大規模集会で恥をかかされたトランプを、リンカーンプロジェクトは格好の笑い者にし、フォロワー100万人を達成した。RVATのフォロワーも10万人を越え、さらに多くの共和党員が「トランプを支持できない理由」の告白ビデオを提供している。

 ニューヨーク・タイムズ紙が選挙登録者を対象に6月17日から22日にかけて行った世論調査では、ジョー・バイデン支持が50%でトランプ支持は36%と、これまでで最も大きな差がついた。この世論調査で、白人(特に若者)の多くがパンデミックやBLMの抗議デモに対するトランプの対処に反感を覚えていることもわかった。

 世論が変わるにつれ、これまでトランプに反対したくても怖くてできなかった人たちが勇気を持つようになっている。2016年の共和党大統領予備選の候補だったカーリー・フィオリーナも6月25日に「バイデンに投票する」と発表した。

大統領選挙とムーブメント

 近年の大統領選挙では、必ず新しいムーブメントが起こった。2008年には、バラク・フセイン・オバマという風変わりな名前の若い黒人候補に、若者たちが「Change(変化)」を求める自分たちの理想を投影した。そんな若者たちが、まだあまり使われていなかったツイッターやフェイスブックを駆使してムーブメントを盛り上げた。筆者が知るマサチューセッツ在住の高校生は、高校生のボランティアを集めて激戦州であるニューハンプシャー州にバスで運び、戸別訪問で大人たちを説得した。投票権を持たない若者が大きな役割を果たしたのだ。

 2016年の大統領選では、筆者が訪問したニューハンプシャー州で「これまで選挙投票をしたことがない」という白人たちが「自分たちの考えていることを代言してくれる初めての候補」であるトランプに感激し、自主的に家族や隣人を説得する活動をしているのを目撃した。

 2008年も2016年も、これまで政治に関わったことのない人々が「自分の行動が選挙を変える。社会を変える」というパワーに目覚めて魅了され、大きなムーブメントを作った。2016年のヒラリー・クリントンに欠けていたのは、この新鮮な興奮とムーブメントだったと思う。

 2020年の民主党指名候補であるジョー・バイデンは、77歳と高齢であり、政治家歴が長い白人男性だ。彼に新鮮さはない。だが、筆者の取材では、リベラル寄りの有権者の多くが「副大統領候補に年下の女性(特に黒人女性)を選んでくれたらそれでいい」と答えた。「こんなことを言ってはいけないが」と遠慮しつつ「バイデンは副大統領に仕事を任せるだろうし、(高齢だから)もしかしたらその女性が大統領になる事態があるかもしれない」と付け加える人もいた。それに、今回の大統領選での新鮮なムーブメントは候補ではなく「トランプを権力の座から下ろす」という目標なのだ。その目標に向かって、これまで敵対していたグループが繋がり始めている。ツイッターで「トランプはアメリカ人を団結させる大統領だ。『アンチ』という意味で」というジョークも目にしたが、決して冗談ではなくなっている。

若い女性たちがアメリカの将来を変える

 もうひとつこれまでの大統領選と異なるのは、タルサでの集会で空席を作ってトランプに打撃を与えた戦略の中心にいたのがK-POPの熱狂的ファンである若い女性たちだったということだ(Brandwatchによるソーシャルメディアの調査では、人気バンドBTSのARMYの75%が女性だという)。そのうえ、彼らの活動は非常に平和的だ。以前から #WhiteLivesMatter(白人の命も大切だ)といった白人優越主義者によるハッシュタグがトレンド入りしそうになると、K-POPのファンがそのハッシュタグをつけてK-POPのミュージックビデオを大量に投稿するという抗議活動をしているのは知られていた。2016年の大統領選では、ハッシュタグをつけて陰謀説を流す者が多かったが、K-POPのファンはそれを無効にするパワーを持ちはじめている。

 これまでの大統領選では、党や候補にかかわらずムーブメントの中心にいたのは白人男性だった。だが、2015年にボルティモア市で若い黒人女性の投票を促す無党派の非営利組織Black Girls Voteを立ち上げたナイキ・ロビンソンのように、若い女性がムーブメントを作るようになっている。

 もし、タルサのトランプ集会を破滅させた若い女性たちが2020年の大統領選挙に影響を与える“パワーハウス”(原動力)になるとしたら、高齢の白人男性を中心にした政治が根こそぎ変わるかもしれない。そうなったら、アメリカの将来は本当に変わるかもしれない。


 日本も変えたい、でも東京は変わらなかった。と言ってしまえばそれまでだが「小池圧勝」を垂れ流すだけのマスコミには、いまさらながら失望あるのみだ。TV討論も避け、実績もないまま「知名度」選挙になってしまった。そんな中で2位は誰か、3位は誰が来るかと悪乗りする。しかし、SNSでは若者や芸能人、著名人名たちが「選挙に行こう」「投票に行こう」と呼びかけ、選挙戦最終盤で、投票率を押し上げたのではないだろうか。

 


「石炭火力発電9割休廃止方針」の欺瞞

2020年07月05日 | 社会・経済

  日刊ゲンダイDIGITAL 2020/07/04

    梶山弘志経済産業相は3日の記者会見で、二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電所の9割を休廃止し、脱炭素社会を目指すことを正式に発表した。2030年度までに非効率な石炭火力を9割程度、およそ100基分を休廃止させ、再生可能エネルギーの主力電源化を目指すという。

 小泉進次郎環境相が化石賞を受賞するなど、国際社会で強い批判を受けてきた日本の石炭火力発電の前のめりぶりが大幅に改善されたかのように報じられたが、専門家はどう見たのか。気候ネットワークの桃井貴子・東京事務所長は「100基休廃止するというのはインパクトのある数字だが、日本政府にとって石炭火力維持の既定路線の確認に過ぎなかった」と指摘する。

 「今回、経産省が言っているのは非効率の石炭火力発電所の9割を2030年までに休廃止するが、新規建設を止めるわけではないし、効率のいいものは維持するということなので問題だと思っています。実体的には高効率の26基の石炭火力発電を維持し、現在建設中の新規石炭火力16基も認めるということなので、2030年以降も3000万キロワット以上の運転を容認することになります 。本来であれば、パリ協定の目標である気温上昇を1.5度に抑えるためには先進国は遅くとも2030年までに石炭火力をゼロにしなければならないのですが、不十分です。また、2030年までどのように休廃止していくのか、その経路や手段について不明です。

そもそも、日本は温室効果ガス削減目標は甘いですし、いまのエネルギー基本計画でつくられている長期需給見通しや電源構成もパリ協定に整合していません。この100基休廃止という数字はインパクトがあり、いままで石炭火力をまったく放置しすぎていたので、既存の石炭火力発電をやめるというのは一定の評価はできます。しかし発電規模などを見れば、2030年の時点でだいたい石炭火力の電源構成は20~26%になると見込まれます。

 第五次エネルギー基本計画に示された、石炭の<高効率化・次世代化を推進するとともにクリーンなガス利用へのシフトと非効率石炭のフェードアウトに取り組む>という既定路線を具現化し、エネルギーミックス(電源構成)に示された石炭26%の達成に実態を近づけたものにすぎません。イギリスやカナダなど多くの先進国が掲げるように2030年までに石炭火力発電をゼロにするということが先進国としての責務ではないでしょうか」

 

 世界のトレンドになっているSDGs(持続可能な発展)に逆行する石炭火力発電の温存が、逆に日本経済にダメージを与える懸念がますます強まっている。


 向かいにあるハスカップ園が1日オープンした。今年も何回か行ってこようと思っている。「道の駅」で販売しているものより、自分で収穫する方がず~っと安いのだ。少しぐらい胃袋に入れても許されるし・・・


年金積立金が1~3月期で18兆円マイナス! 国民の年金を溶かした安倍政権の責任 コロナで国民の貴重な年金18兆円が泡と消えた! 年金積立金をリスクの高い株式に運用し始めた安倍政権の責任

2020年07月04日 | 社会・経済

リテラ2020.07.03

    一体、この失敗の責任を安倍首相はどう負うのか。本日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2020年1~3月期の公的年金積立金の運用実績を発表したが、なんと、過去最大の損失額となった2018年10~12月期の14兆8039億円をはるかに上回る、17兆7072億円の赤字となったのだ。

 さらに、2019年度の運用実績のほうも8兆2831億円の赤字となり、リーマン・ショックがあった2008年に9兆3481億円の損失を叩き出して以来、過去2番目の損失額を記録。こちらも2020年1~3月期の赤字が大きく響いた格好だ。

 無論、今回ここまでの赤字を叩き出したのは新型コロナの影響によって世界的に株価が値下がりしたことが原因だ。実際、すでに4月の段階から1~3月期の運用が17兆円前後になると民間エコノミストが試算し、厚労省も同様の試算を示していた。

 だが、今回約18兆円もの赤字を叩き出したことは、「新型コロナのせいなのだから仕方がない」などと済ませられるようなものではない。むしろ、国民が老後のために捻出してきた約18兆円もの年金を一気に溶かしてしまう、現在の運用システムの問題が浮き彫りになったというべきだ。

 そもそも、GPIFは国民が積み立てた年金を資産運用し、その金額は130〜160兆円にものぼることから「世界最大の機関投資家」「クジラ」とも呼ばれる。だが、以前は国民の年金を減らしてしまう危険性を考え、株式などリスクのある投資を直接的にはほとんどしていなかった。

 しかし、第二次安倍政権下の2014年10月に基本ポートフォリオを大幅に変更し、株式への投資を全体の半分にまで増やすことを決定。これは、GPIFに大量に株を買わせれば株価が上がり、景気が回復したという印象を与えることができるという安倍政権の計算があったためだ。

 ようするに、国民の大事な年金を世論操作と政権維持に利用したわけだが、基本ポートフォリオを大幅変更したあとの2015年度には5兆3098億円の運用損を叩き出す結果となったのだ。

 そして、2019年度は約8兆円もの赤字──。このように書くと、安倍政権支持者は「ほかの年は黒字だ」と騒ぐが、2015〜2019年度の黒字額は6兆8039億円だ。2020年1~3月期の約18兆円という損失額を見てもわかるように、今後も世界の新型コロナの感染拡大状況によって同じように株価市場に大きな影響が出る可能性は十分考えられる。株式投資割合を増やすという「大博打」後の黒字は一気に吹き飛び、それどころか赤字に転落することもありうるのである。

 しかも、この年金を使った「大博打」による失敗のツケを払うのは、言うまでもなく国民だ。

安倍首相は自分がリスクの高い運用を始めながら「年金運用の影響は給付で調整するしかない」

 実際、安倍首相は国会でこう明言している。

「基本的に、年金につきましては、年金の積立金を運用しているわけでございますので、想定の利益が出ないということになってくればそれは当然支払いに影響してくる」

「給付にたえるという状況にない場合は当然給付において調整するしか道がないということ」(2016年2月15日衆院予算委員会)

 それでなくても株式の投資割合を半分にまで上げたこと自体が高リスクの大博打状態なのに、世界経済は今後、新型コロナの行方に左右されつづけることは間違いない。そして、このまま高リスクの投資に年金が注ぎ込まれつづければ、安倍首相が明言したように、わたしたちの年金給付額が減ってゆく事態になりかねないのだ。

 安倍政権が「新型コロナの影響」と言えば国民は納得すると高を括っているのだろうが、問題の本質は、こうした危機の影響をモロに受け、一気に約18兆円もの年金を溶かしてしまう運用のあり方そのものにある。決して騙されてはいけない。

(編集部)


 熊本、鹿児島の豪雨に見舞われた方お見舞い申し上げます。

 今日はすっきりと晴れるのかと思ったら「曇り一時晴れ」の状態だった。明日も一応晴れマークになっているのだが・・・・気温もようやく25℃超えか?

 携帯を置いて出かけてしまった。だから、今日は写真も万歩計もなし。

明日は東京都知事選挙投票日。「マスコミ」は小池圧勝ばかり垂れ流し、いまさら投票に行く氣もしなくなるような報道ぶり。自己責任より連帯の社会を望みます。


国家安全法可決 香港の自由葬る暴挙だ

2020年07月03日 | 社会・経済

「東京新聞」社説 2020年7月1日 

 中国が香港の統制を強める国家安全維持法を可決した。英国からの返還記念日の七月一日を前に施行される。中国は「五十年不変」と国際公約した香港の高度な自治を自ら葬ったと批判されよう。

 中国の全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会は六月三十日、同法を可決した。常務委員会は六月中に二回開催されるという異例のスピード審議だった。

 香港返還二十三周年にあたる一日に合わせて同法を施行し、中国が完全に香港の主権を回復したことをアピールする狙いがあるのかもしれない。しかし、中国の思惑とは裏腹に、国際社会は七月一日を中国が香港の自由を死なせた日として記憶するだろう。

 同法は、国家分裂、中央政府転覆、テロ行為、外国勢力との結託による国家への危害−の四つを犯罪と規定。今後は中国政府が香港に新設する国家安全維持公署が香港政府を監督し、香港住民に直接法執行できるようになる。

 中国政府は「取り締まりの対象はごく一部で、香港は何も変わらない」と説明するが、これは事実と大きく異なる。

 同法施行により、反政府活動の摘発では中国政府が主導権を握り、罪を裁く裁判官も中国政府が操る香港行政長官が選ぶという。

 「一国二制度」の下で、まがりなりにも保たれていた高度な自治や司法の独立は香港から完全に失われる。香港は大陸の都市と同様に、一党独裁の中国が「人治」によって恣意(しい)的に統治する一つの港湾都市になってしまうだろう。

 日米欧の先進七カ国(G7)外相は六月、「重大な懸念」を表明した。中国政府は「内政干渉だ」と反発し、警告に耳を貸さないどころか、米国などが香港の民主化運動を扇動しているとして、同法を強引に早期可決した。

 香港では、行政長官選の民主化を求める雨傘運動や逃亡犯条例反対に端を発した抗議デモが続いてきた。これは、返還後の香港では国防と外交を除く「港人治港」を守るとした国際公約を、中国が踏みにじったことへの抵抗である。

 中国は二〇一二年、香港で愛国主義教育を必修化しようとしたが、若者らの反対デモで撤回に追い込まれた。香港人が心の底から中国と一緒になろうという気持ちになれない原因は、外国の干渉ではなく中国自身のふるまいにあるのだ。

 同法施行で中国は強引に香港を取り込もうとするが、香港人の心は確実に中国から離反する。


岩の上で越冬する多肉、今日咲きました。




雨宮処凛がゆく! 第526回:「死ね、と言っているのと同じ」〜生活保護基準引き下げ違憲訴訟、名古屋地裁判決とこれまでの自民党議員による生活保護バッシング。

2020年07月02日 | 社会・経済

マガジン9  2020年7月1日

  https://maga9.jp/200701-1/

 

 「死ね、と言っているのと同じです」

 原告の女性は、「とても残念です」と繰り返しながらそう言った。

 6月25日午後。この日、名古屋地裁である裁判の判決が下された。生活保護基準引き下げ違憲訴訟、通称「いのちのとりで裁判」である。現在、全国29都道府県で1000人以上が原告となり、進んでいる裁判だ。2013年から始まった生活保護基準の引き下げが憲法違反だとして、生活保護利用者が原告となって起こしたのだ。

 ことの発端は、第二次安倍政権の発足まで遡る。

 12年12月に発足した安倍政権が、まず始めに手をつけたこと。それは「生活保護基準の引き下げ」だった。なぜ、このようなことが強行されたのか。それは自民党が政権に返り咲いた選挙において、選挙公約に「生活保護費の1割削減」と明記されていたからだ。

 その背景にあったのは、08年のリーマンショックからの流れである。

 これによって国内には派遣切りの嵐が吹き荒れ、08年末から09年明けにかけて、「年越し派遣村」が開催された。年末年始、寒空に職も住む場所も所持金も失った500人が集まり、連日炊き出しに並ぶ光景は、この国に静かに広がっていた「貧困」を嫌というほど可視化するものだった。そうして09年夏の選挙において、それまで散々「自己責任」を強調してきた自民党は政権の座を追われ、民主党政権が誕生する。政権交代の原動力のひとつになったのが、「年越し派遣村」とも言われている。

 一方、派遣村以前から多くの悲劇は起きていた。例えば北九州市では、05年から07年の間、3年連続で餓死事件が発生。いずれも生活保護を利用できなかったり、利用できていたのに辞退させられたりした果てに起きた悲劇だった。餓死した男性が残した「おにぎり食べたい」というメモの言葉を覚えている人も多いだろう。

 09年からの民主党政権では生活保護利用者は増え、11年には過去最高となって200万人を突破。この「増えた」という事実のみを聞いて眉をひそめる人もいるかもしれないが、もともとこの国の生活保護の捕捉率(利用すべき人がどれだけ利用しているか)は、2〜3割と言われている。本当は利用する資格があるのに利用していない人が膨大に存在するのだ。よって、利用者が増えるのはいいことなのである。

 「でも、不正受給者が多いって聞くけど」という人もいるだろう。が、不正受給率は全体のわずか2%ほど。圧倒的多数が適正受給なのである。ちなみに、生活保護の利用は確実に自殺者や餓死者を減らしている。それだけではない。生活保護制度がない社会は、「一文無しになった人が生きるために手段を選ばない社会」だ。窃盗などが横行し、それは確実に治安にも跳ね返るだろう。最後のセーフティネットは、このような機能も果たしているのである。

 しかし、「生活保護利用者が増えている」ことを問題視したのが、当時野党だった自民党。そうして12年春、彼らにとって絶好の「攻撃対象」が現れる。

 あるお笑い芸人の母親が、生活保護を受けていることが報じられたのだ。通常であれば芸能人のちょっとしたスキャンダルで済むはずだったこの話を、自民党の片山さつき氏が大きく取り上げ、厚労省に調査を依頼。「一芸人の家族のこと」が一気に政治問題のトップに踊り出し、当人は大変なバッシングに晒された。

 が、ここで強調しておきたいのは、成功した芸人の家族が生活保護を受けていたとしても、それは「不正受給」でもなんでもないということだ。これについては「生活保護問題対策全国会議」の見解を見れば明らかなのでぜひ一読してほしい。「強い扶養義務」があるのは、夫婦間と未成熟の子に対する親だけだからだ。

 が、片山さつき氏らが煽った生活保護バッシングは、メディアにも飛び火していく。多くのメディアで生活保護利用者を叩くような報道がなされ、その中には、「生活保護受給者の監視」を呼びかけるテレビ番組まであった。

 その果てに起きたことは何か。

 生活保護を利用する人はスーパーなど買い物にも行けなくなり、精神的な病気を抱える人は病状が悪化。私のもとにも当事者から「生きていてはいけないと言われてる気がする」「生活保護受給者は死ねということでしょうか」など悲鳴のようなメールがいくつも届いた。実際に、自殺者も出ている。自らが支援してきた人を自殺で失った埼玉の男性は、「自死したという一報を聞いた時、頭に浮かんだのは、ある自民党議員の顔でした」と述べている。

 そんな中、片山さつき氏は「生活保護を恥と思わないことが問題」というような発言を繰り返した。また、自民党の生活保護に関するプロジェクトチームのリーダーをつとめていた世耕弘成議員は、12年7月、インタビュー記事で生活保護利用者の「人権」を制限すべきという内容の発言をしている。それだけではない。やはり12年9月には、自民党・石原伸晃氏が報道ステーションにて生活保護を「ナマポ」と揶揄する発言をし、社会保障費の抑制などについて述べたあと、「尊厳死協会に入ろうと思うんです」などと述べた。

 さて、ここでつい最近、6月15日の国会を思い出してほしい。

 安倍首相は田村智子議員の生活保護に関する質問に答え、「生活保護バッシングをしたのは自民党ではない」という主旨の発言をしたわけだが、ここまで読めば誰もがわかる通り、生活保護バッシングを率先してやっていたのは思い切り自民党議員である。特に片山さつき議員がそれを主導していたことは誰もが知る通りだ。それを「自民党ではない」など、誰もがわかるような嘘をつく人物が首相にふさわしいか甚だ疑問だが、もし、わずか数年前のこの事実を本気で「忘れている」ならば、それはそれでやはり首相にふさわしくないだろう。なぜなら、生活保護削減は、自民党が政権に返り咲いた際の選挙公約だったのだから。

 ちなみに片山さつき議員は16年、高校生に対しても「貧困バッシング」を繰り広げている。8月、NHKのニュースで放送された「子どもの貧困」特集に出演した高校生の女子生徒が、部屋にアニメや漫画関連のグッズがあったなどの理由からネット上でバッシングを受けた際のことだ。これに便乗した片山氏は、Twitterで以下のように述べている。

 「拝見した限り自宅の暮らし向きはつましい御様子ではありましたが、チケットやグッズ、ランチ節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょうからあれっと思い方(※原文ママ)も当然いらっしゃるでしょう。経済的理由で進学できないなら奨学金等各種政策で支援可能!」

 「追加の情報とご意見多数頂きましたので、週明けにNHKに説明をもとめ、皆さんにフィードバックさせて頂きます!」

 国会議員が、女子高生に対する集団リンチのようなバッシングを利用しようとする光景には、ただただ言葉を失ったものである。

 貧困当事者としてメディアに登場した人物が、「本当に貧困なのか」と責められる――。格差と貧困が深刻化すればするほど、そのような「貧困バッシング」をあちこちで目にするようになった。が、こういった現象には「犠牲の累進性」という名前がついている。例えば正社員が「安月給でつらい」と言えば「派遣よりマシだろ」と言われ、派遣社員が同じことを言うと「ホームレスよりマシ」と言われ、ホームレスが「貧困で大変」と言うと「難民よりマシだからありがたく思え」と言われる、というようなやり方だ。「お前よりもっと大変な人がいる」と黙らせる作法を「犠牲の累進性」というのだが、このような貧困バッシングは枚挙にいとまがない。

 話を戻そう。

 12年、自民党議員が煽った生活保護バッシングは、メディアを巻き込みながら広がっていった。

 特筆しておきたいのは、多くの人があのバッシングを、手軽なガス抜きの娯楽として消費したという事実だ。大勢の人の、おそらく「悪意ですらない暇つぶし行為」によって、多くの人が追い詰められ、中には命を奪われる人まで出た。そんな「国民感情」を大いに利用する形で、生活保護引き下げは強行されてしまった。13年から3年かけて、基準は随時、引き下げられていった。

 私はこの頃のことをよく覚えている。特定秘密保護法や安保法制反対運動が大いに盛り上がる中、生活保護引き下げ反対運動は、それらと比較すると悲しいほどに注目されなかった。そうして多くの人の「バッシング」が最後のセーフティネットを切り崩したのに、切り崩される頃には「祭り」はすでに下火になっていて、参加した人たちでさえ、そんな祭りがあったことを忘れていた。

 そうして、3年かけて200万人以上の命を支える制度が切り崩されていった。平均6.5%、最大10%の引き下げは総額670億円にのぼり、利用者たちの生活を直撃した。

 「1日3食はとても食べられないので1日2食にした」「交通費などが捻出できず、結婚式や葬式やお見舞いにも行けないので人間関係が維持できなくなった」「真夏でもエアコンをつけないで我慢している」等、ただでさえ切り詰めた生活をしている人々が、より切り詰めざるを得なくなった。

 「これ以上、何を切り詰めればいいのか」という問いは、「生きていてはいけないと国から言われている気がする」「死ね、というメッセージに思える」という絶望の言葉に変わっていった。

 「だけど、生活保護を受ける中には働けるのに働かない人もいるんでしょ?」という人もいるかもしれない。しかし、19年のデータでは、利用者でもっとも多いのは高齢者世帯で54.1%。続いて多いのは病気や怪我で働けない世帯で25.4%。高齢者と障害、病気がある人で実に利用者の8割を占めるのである。

 それでも生活保護を受けるなんて贅沢だ、国の金なのだから文句を言うなという人は、一度、一ヶ月でいいから生活保護基準で生活をしてみてほしい。また、働いている自分より生活保護の方がもらっているじゃないかという人は、すぐさま福祉事務所を訪れてほしい。生活保護は働いて収入があっても利用できる。国が定める最低生活費に満たない分の差額が支給されるのだ。利用している人をバッシングする前に、自分が制度を利用しよう。

 それにしても、なぜ、このような生活保護バッシングが起きたのだろう。今思うと、政治家にとって「叩きやすい」ということもあったのだろう。生活保護は、当事者団体があるわけでもない。「労働組合」的なものがあるわけでもない。いくら叩いても、生活保護を利用する人は滅多に声など上げられない。政治家にとって、「なんらかの政策を達成する」のは難しいことだが、生活保護バッシングは、それをしているだけで支援者たちに「何かやってるアピール」ができる。叩いてもリスクがなく、「仕事してる感」が出せる。バッシングは、政治家にとって非常に「コスパがいい」のだろう。が、そんなふうに政治利用された果てに、自殺者までが出た。そして、引き下げによる苦しい生活が今も続いている。

 そんな状況に対して、「生活保護引き下げは憲法25条の侵害」として、全国で違憲訴訟が始まっていた。そうして6月25日、初めて名古屋地裁で判決が下されたのだ。

 名古屋地裁は、原告の訴えを棄却した。

 判決文にいろいろツッコミどころはあるが、名古屋地裁は、引き下げは「国の財政事情」や「国民感情」をふまえたものであり、原告の主張は採用できないとしている。

 これが通るなら、一政党が政治的な目的をもって国民感情を煽ったら、最後のセーフティネットを切り崩せてしまうことになる。「法律も憲法も無視している」。「いのちのとりで裁判全国アクション」共同代表の尾藤弁護士はそう憤り、同じく共同代表の稲葉剛氏も、「生活保護への敵視政策を司法が正して欲しかったが、現状を追認するような判決」と述べた。

 前述したように、生活保護基準が引き下げられる時、多くの人は無関心だった。

 しかし、無関心だった人の中には、コロナ禍の今、生活に困窮してる人もいるはずだ。コロナ危機によって、東京23区では生活保護の申請が4割増になっている。世界的な感染拡大によって経済が逼迫し、特に日本では「給付なき自粛」で収入が絶たれた人が続出したからこそ、生活保護制度は平時よりも重要性を増している。そんな状況の中で出た、「棄却」という判決。

 この国が「弱者を見捨てる社会」になるのか、それとも「助け合い」を復権させる社会を目指すのか。私はコロナ禍の今が、大きな分岐点だと思っている。全国の裁判はまだまだ続いている。「いのちのとりで裁判」、ぜひ注目してほしい。


今日も1日雨模様。

明日はしばらくぶりに晴れの予報だ。
スイレンの白い花も咲きだした。

ミニトマトも収穫時期を迎えたが、まだ少ない。


雨宮処凛 生きづらい女子たちへ ネット嫌がらせをする人に責任を取らせよう〜「SNSOS」立ち上げ

2020年07月01日 | 社会・経済

Imidas連載コラム 2020/07/01

  雨宮処凛 (作家、活動家)

 

  恋愛リアリティー番組『テラスハウス』 に出演していたプロレスラー・木村花さんの訃報が伝えられてからしばらくのSNSの「静けさ」を、私は決して忘れない。

 誹謗中傷や罵詈雑言が消え去り、私は初めて、これまでSNSを開く瞬間に「かなりの緊張を強いられていた」ことに気が付いた。何が書かれていても傷付かないよう、あらかじめ「心に蓋をして」見るようにしていたのだ、と。そんな「SNSの平穏」が、一人の女性の死によってもたらされたものであることが、ただただ悔しく、悲しかった。

 だけど1週間も経つ頃には、再び「反日」などの言葉 が私に投げかけられるようになっていた。「平穏」は、すぐに終わった。

 木村花さんの訃報が届く少し前、私は自身がTwitterに上げた1枚の写真を削除していた。

 政治や社会問題に対して「物言う女性」たちとあるパーティーで撮影したものだった。数年前にアップして、アップしたことさえ忘れていたその写真が、その数日前から「反日オバハンの集合写真」などとして見知らぬ人たちに突然リツイートされ始めたのだ。

 時間を経るごとに見るに堪えないコメントとともにリツイートされる数は増えていき、コメントの言葉はエスカレートしていった。半分パニックになりながら、私はその様子を見ていた。自分一人だけが写った写真であればまだ耐えられる。しかし、私が数年前、みんなとの写真をアップしたことによって、私以外の女性たちがネット上で罵詈雑言に晒されているのだ。そのことが耐え難く、申し訳なさすぎた。

 数時間、リツイートされ続けていく様子を見ながら、私はその写真をそっと削除した。その途端、ぴたりと嫌がらせは終わった。胸を撫で下ろしたのも束の間、「なぜ、このようなことに屈しなければならないのか」と猛烈にモヤモヤした。そのモヤモヤは、今も私の中にある。

 2020年2月の本連載「20年以上前の言動を『徹底総括しろ』と言われたら」でも書いたが、ネット上での嫌がらせにはもう何年も悩まされてきた。

「20年以上前に一般人として受けたインタビューの発言を切り取られ、『責任をとれ』『徹底総括しろ』と言われる」ようになったのが2年前。だけどそのずーっと前から「反日」「非国民」なんかの言葉はもう「挨拶代わり」のように投げつけられてきた。そしてやはり2年ほど前には、日時を決めて多くの人が私に大量リプを送るという「悪夢狩り」なるものにも遭った 。

 ある日突然、リプライが怒涛の勢いで押し寄せるのだ。通知が秒単位で恐ろしいほど増えていくスマホ画面を見ながら、私はパニックになっていた。自分が自覚のないままに、何かトンデモないことをやらかし、「大炎上」してしまったのだと思った。いったいなんなの? と考える間もないままに、次から次へと大量リプの嵐。それが終わる気配はない。

「ああもうダメだ」と思った。その時、駅のホームなんかにいたら、自分がどうなっていたか分わからない。日常でのちょっとしたトラブルが積み重なっていて心が疲弊していた時だとしたら、それが「最後の一押し」になっていたかもしれない。

 今でもあの瞬間のことを思うと、スマホをどこか遠くにブン投げたくなる。結局、大量リプの送り付けは1時間程度で終わった。対象と日時を決めてやるそういう「遊び」「からかい」のようである。しかし、場合によっては対象者の命を奪うだろう。

 リプライの内容はというと、「質問攻め」だ。誹謗中傷ではないので、法的に問題にならないよう 考えられているのだろう。

 SNSでの誹謗中傷が問題になるにつれ、このように「巧妙に誹謗中傷にならないよう配慮された嫌がらせ」が増えたのも特徴だ。執拗な、こちらに非があると思わせるような文章からの質問。悪意ある切り取り。また、私の知人などに対して、私に関する「悪意ある切り取り」を示しながら、「こんな人間(私のこと)と関わってるんですか?」と尋ねるようなものもある。

 人間関係を破壊する行為だが、「死ね」などと違って法的に問題があるのか判断しづらい。

 ずっとずっと、これらのことに悩み続けてきた。人に相談すること自体、できなかった。なぜなら、親しい人に軽い感じで言ってみても大抵「気にすることないよ」と言われるだけだったし、何よりそんな「被害」に遭っていること、それを「気にしている」こと自体が恥ずかしく、情けないと思っていたからである。ネットでの嫌がらせはリアルでのいじめと同じく、なぜかされて いる方に激しい「恥辱感」を抱かせる。

 だけど、嫌なものは嫌だし、自分がされていることは嫌がらせだし、「気にするな」と言われたって気になるし、実際、過去の発言という「発掘切り取り系」の嫌がらせツイートが拡散されまくることによって、「こんな奴の講演会は中止しろ」と主催団体に抗議が寄せられたりしている。思い切り実害が発生しているのだ。

 これ、黙って我慢するようなものじゃないんじゃないのか ? 苦しいのは、私だけじゃないんじゃない のか?

 そんなことを思い始めた頃、ある活動への参加を誘われた。それは「SNSOS」。正式名称は「SNSにおける労働運動・社会運動に対抗するヘイト攻撃に対するネットワーク」。

 さまざまなジャンルの著名人に対するSNSでの中傷があるが、とりわけ「社会に物言う」ような「女性活動家」への攻撃はすさまじいものがある。

 例えば15年、安保法制反対運動が盛り上がった際には、大学生で結成された「SEALDs」(自由と民主主義のための学生緊急行動)の女性メンバーらにSNS上で執拗な嫌がらせがなされた。卑猥な言葉を投げつけられたり、容姿についてとやかく言われたりするだけでなく、死体写真を送り付けられるなどの被害を耳にしたこともある。

 私は5年前のこの時のことを、非常に後悔している。10年以上、社会に物言う活動をしてきた大人の一人として、彼女たちにできることがあったのではないかという後悔だ。

 少なくとも私は、この日本社会において「物言う女」がどれほど叩かれるかを知っている。そして大学生という立場であれば、40代の自分とは比較にならないほどに徹底的な攻撃を受けるだろうことも分かっていたし、そんな被害を見聞きしてもいた。だけど、どうしていいか分からなかった。他ならぬ自分自身が自分の被害に対して手立てがないように感じ、立ち尽くしていた頃だった。

だけど、今思う。何もしなかったこと自体が、彼女たちに我慢を強いたも同然ではなかったかと。5年前のあの時、弁護士さんたちとも連携して徹底的に中傷と戦い、ネット上でのルールを作れていたら。悪質な書き込みをしたら本人が特定され、法的な責任を問われるということが常識の社会になっていたら。そうすれば、SNSは今よりもずっと平和で、心がえぐられるような思いをする人なんていなくて、そんな中では木村花さんが亡くなるようなこともなかったのではないかと。

 そんな思いから、私も「SNSOS」の賛同人の一人となり、6月9日、議員会館で立ち上げの記者会見をした。

「SNSOS」では、悪質な書き込みをした発信者を特定しやすくすること、プロバイダー事業者に対する罰則や説明責任の強化、公益通報者保護の強化を求めている。ネットで署名キャンペーンもしているので、ぜひサイトだけでも見てほしい。

「SNSOS」立ち上げ記者会見の前日には、性被害を受けたと告発したジャーナリストの伊藤詩織さんが、漫画家のはすみとしこ氏を含めた3人を、名誉を傷付けられたとして提訴している。「SNSOS」の賛同人には、伊藤詩織さんも名前を連ねている。

 ということで、無法地帯だったSNSに、今、やっとルールが作られようとしている。だけどそれまでには、あまりにも多くの犠牲があったのも事実だ。

「日本から出ていけ」と執拗に書き込まれ、悪意に満ちた中傷に晒されて、本当に日本から出て行かざるを得なくなった人を何人か知っている。最近では、検察庁法改正案に抗議の声を上げたきゃりーぱみゅぱみゅさんや小泉今日子さんといった女性著名人への嫌がらせの書き込みも目立つ。

 一方、19年には、社会問題に対して積極的に発言している女性たち7人がある記者会見を開いている。7人はネットで中傷を受けるだけでなく、それぞれ17年頃から「注文していない下着を送り付けられる」などの被害を受けていた。通信販売の代金引換を悪用し、自宅や事務所に注文していないブラジャーや健康食品などが送り付けられていたのだという。注文ハガキはいずれも山口の消印のもの。性被害に関する発言をする太田啓子弁護士や、子連れで議場に入り、注目された熊本の緒方夕佳市議、「フェミニズム」についての著書が多い作家の北原みのりさんなどに送り付けられていた。彼女たちが記者会見を開いたことによって、送り付け被害はピタッと止んだという。

 もともとこの国には、「物言う女は叩いていい」というような空気が濃厚にあった。それがさらに「若い女」だったりしたら、何をしてもいいとばかりに言葉でボコボコにするような風潮が放置されていた。しかし、それは集団リンチだ。

 ある時期まで、私は「自分は物を書くという“力”を持っているわけだから、SNSで何を言われても書かれても“力の非対称性”がある限り、言い返してはいけないのではないか」と思い込んでいた。物書きとして、常に自らの「加害」の可能性ばかりを考えていたのだ。物書きではない多くの著名人もそうだと思う。自らの有名性が「力」を持っていると自覚しているからこそ、やり返してこなかった。

 しかし、そのような時代はもうすぐ終わる。物書きだから、有名性を手にしているからと言って、集団リンチをされていい理由はどこにもない。そんな「当たり前」が取り戻せるまで、黙らないでいたいと思っている。


 午前中だけ、とてもいい天気になった。予報では☁、夕方から☂だったので儲けもの。久しぶりに葉面散布ができた。明日はまた☂のよう。

桑の実