試写にて、アラン・レネの新作『風にそよぐ草』を見たのだが、これがあっけにとられずにはいられない傑作(奇作)であった。
冒頭のアスファルトからはみ出るぺんぺん草をとらえた移動ショットから、いきなり形容しがたいムードが垂れ込めて、女性歯科医のショッピング、バッグ引ったくり、熟年男の腕時計の電池交換など、じつにどうでもいい事柄の数々が、嘘のようななめらかさで連綿と接合されていく。しかもこのどうでもいい事柄が、あたかも人類の生存にとって重要な一擲であるかのような、過剰なるサスペンス性を帯びてくるのである。引ったくりに遭ったバッグが宙を舞うスローモーションがリフレインされる。わざわざ反復しなくても、とも思うのだが、何か厳格なる理由がありそうなので、笑ってはいけない…
ストーカー行為まで発展していくあたりから、物語がようやく形を取り始めるが、このなつかしいような、見たこともないような感触は、いったい何なのだろうか。私が最初に見たレネ映画『去年マリエンバートで』(1961)に感じた最初の、あの奇妙に鋭い感覚を思い出した。
皆様、見てのお楽しみであります。かなりたまげますぞ。
本作は、フランス映画祭2010関連企画《アラン・レネ全作上映》の枠内で上映予定(一般公開は未定)
東京日仏学院(市谷船河原町) http://www.institut.jp
ユーロスペース(渋谷円山町) http://www.eurospace.co.jp
冒頭のアスファルトからはみ出るぺんぺん草をとらえた移動ショットから、いきなり形容しがたいムードが垂れ込めて、女性歯科医のショッピング、バッグ引ったくり、熟年男の腕時計の電池交換など、じつにどうでもいい事柄の数々が、嘘のようななめらかさで連綿と接合されていく。しかもこのどうでもいい事柄が、あたかも人類の生存にとって重要な一擲であるかのような、過剰なるサスペンス性を帯びてくるのである。引ったくりに遭ったバッグが宙を舞うスローモーションがリフレインされる。わざわざ反復しなくても、とも思うのだが、何か厳格なる理由がありそうなので、笑ってはいけない…
ストーカー行為まで発展していくあたりから、物語がようやく形を取り始めるが、このなつかしいような、見たこともないような感触は、いったい何なのだろうか。私が最初に見たレネ映画『去年マリエンバートで』(1961)に感じた最初の、あの奇妙に鋭い感覚を思い出した。
皆様、見てのお楽しみであります。かなりたまげますぞ。
本作は、フランス映画祭2010関連企画《アラン・レネ全作上映》の枠内で上映予定(一般公開は未定)
東京日仏学院(市谷船河原町) http://www.institut.jp
ユーロスペース(渋谷円山町) http://www.eurospace.co.jp