水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

シナリオ 夏の風景 特別編(上) 平和と温もり(2)

2009年12月10日 00時00分01秒 | #小説

 ≪脚色≫

      夏の風景
      特別編
(上)平和と温もり(2)

    登場人物
   湧水(わきみず)恭之介・・祖父(ご隠居)[70]
   湧水恭一  ・・父 (会社員)[38]
   湧水未知子・・母 (主  婦)[32]
   湧水正也  ・・長男(小学生)[8]

   N      ・・湧水正也
   その他   ・・恭一の上司と同僚社員、猫のタマ、犬のポチ

8.洗い場  昼
   空に広がる入道雲。日蔭で涼んで寛ぐタマとポチ。水浴びを終え、衣類をつける正也。滾々と
湧く水。蝉しぐれ。
  N   「入道雲が俄かに湧き起こり、青空にその威容を現すと、もう夏本番である」

9.離れ 昼
   恭之介の部屋の定位置で横になる正也。蝉しぐれ。
  N   「恒例となってしまった湧き水の洗い場で水浴びを済ませ、昼寝をした。恒例になって
しまったのは二年前のリフォーム工事から
       のことで、母屋では工事音が五月蠅く
て寝られず、じいちゃんの離れで寝る破目に陥ったせいだ。リフォーム工事が済んだ

       年の夏も、僕は水浴びを終えてから母屋で昼寝をした。…その訳は、味をしめたか
らである(最後の一節は可愛く)」
   片手で団扇を扇ぎながら部屋へ入る恭一。もう片方の手に持つラジコンの模型セットを枕元
へ置く恭一。
  恭一  「よく寝てるな…(小声で呟いて)」
  N   「未だ眠っていないとも知らず、父さんは約束したラジコンの鉄道模型セットを僕の枕元
へ置いた。冬のサンタじゃあるまいし、シ
       ャイで直接、手渡せない性格が父さんを未だ
に安定したヒラとして存続させている原動力なのだろう。出世、出世と人は云うけ
       れ
ど、そんな人ばかりじゃ、偉い人だけになってしまうから、父さんは貴重な存在だと僕は
思っている。それに…(◎に続けて
       読む)」

10.(フラッシュ 
料亭 夜
   頭へネクタイを巻き、得意の踊りを披露する、赤ら顔の恭一。その芸に浮かれる膳を囲む同
僚社員や上司。
  N   「(◎)自分の父親を弁護する訳ではないが、適度に優しい上に宴会部長だし…、(◇
に続けて読む)」

11.(フラッシュ 
台所 昼
   勢いよく、包丁で西瓜を一刀両断する恭之介。それを怖々と見る恭一。
  N   「(◇)今一、じいちゃんのように度胸がない点を除けば素晴らしい父親なのだ(△に続
けて読む)」
   隣で小皿をテーブルへ置く道子。
  N   「(△)勿論、母さんは、その父さんを管理しているのだから、文句なくそれ以上に
素晴らしい」
   西瓜を見事に切り割った恭之介。恭之介の光る頭。
  N   「更には、光を発する禿げ頭のじいちゃんに至っては、失われた日本古来の精神を重
んじる抜きん出た逸材で、そうはいないと
       思える」

12.もとの離れ 昼
   恭之介の部屋の定位置で熟睡する正也。蝉しぐれ。目覚める正也。枕元に置かれた鉄道模
型セットの箱に気づく正也。手に取り、喜
   ぶ正也。駆けだす正也。
  N   「気にはなったが、枕元の箱はそのままにして寝入ってしまい、起きると欲しかった鉄
道模型セットの箱が存在した。ここはひと
       言、愛想を振り撒かねば…と思えた」

13.居間 昼
   長椅子に座り、本を読みながらカルピス・ソーダを飲む恭一。喜び勇んで駆け入る正也。
  正也  「父さん…有難う!(笑顔で、可愛く)」
  恭一  「ん? ああ…(シャイに)」
   離れから着替えを持って現れた恭之介。正也が持つ箱に気づく恭之介。足を止める恭之
介。   
  恭之介「正也、買って貰えたようだな。・・よかったな(弱々しく)」
   ふたたび歩き出し、洗い場へ向かう恭之介。
  N   「じいちゃんは、洗い場で身体を拭く為に来たのだが、それだけを流れる汗で弱々しく
云うと、父さんには何も云わず、通り過ぎ
       た」
   台所から声を投げる未知子。
  [未知子] 「お父様、お身体をお拭きになったら、西瓜をお願いしますわ」
  恭之介「オッ! 未知子さん。それを待っていました(元気な声に戻り)」
  N   「俄かに、じいちゃんの声が元気さを取り戻した。やはり、達人はどこか違う…と思っ
た。平和と温もりを感じる我が家の一コマ
       である」
   テーマ音楽
   キャスト、スタッフなど

   F.O
   タイトル「夏の風景 特別編(上) 平和と温もり 終」

※ 短編小説を脚色したものです。小説は、「夏の風景 特別編(上) 平和と温もり」 をお読み下さい。


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残月剣 -秘抄- 《剣聖②》第八回

2009年12月10日 00時00分00秒 | #小説

         残月剣 -秘抄-   水本爽涼

          《剣聖②》第八回
「そうでしたか…。何か委細でも分かりましたら…」
「はあ…。そういや、私が振り向いた時、幻妙斎先生がフワリと舞い降りられたのは記憶しておりますだ。そのことは鴨下様にも、お
話したと、ぞんじますだが…」
「はい、それは私も鴨下さんから訊き及んでおります。…他には?」
 左馬介は、なおも、しつこく食い下がる。
「……仕草だけだども、幻妙斎先生がお持ちの杖を一、二度、刀の
ように振られ、何やら蟹谷様に仰せでしただ…」
「一、二度、杖を振られた…。これは面妖な…」
「蟹谷様は、その振りを見られて、頷いておいででしただ。恐らくは
何かの教えをされたんでござんしょう」
 これ以上は訊いても分かりそうにない。自分が見ていたのなら多少は分かるだろうが…とは思う左馬介だったが、見ていないも
のは仕方がない。ひとまずは諦め、撤収することにした。
 次の朝、ふと閃いて、左馬介は月に二度ある道場の門が閉ざされる閉門日に外出し、蟹谷から直接、訊いてみようと思った。三日後が、その十五日だった。その為には、出入届を管理番に出さねばならない決めがある。上手くしたもので、新入りの鴨下が入門した時から、この管理番は一馬から左馬介に引き継がれていた。


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