水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

世相ユーモア短編集 -30- 夢

2024年12月21日 00時00分00秒 | #小説

 夢といえば、大まかに言っていい場合を思わせるが、悪夢となる場合もある。最近の世相はどうも暗く、夢であって欲しいような出来事が多い。国と国との戦いが現実に起きているが、これなどはもう、夢であって欲しいと願う今の世相に他ならない。
 疣川(いぼかわ)は夢を見ていた。自分が総理大臣になったもの凄く厚かましい夢である。^^
『財政再建法案を成立させる第一段階として必要な二兆五千億円の財源を、どう捻出するかだが…』
『総理、それは私にお任せを…』
 黒子(ほくろ)官房長官が、どこからともなくスゥ~~っと幽霊のように疣川の傍(かたわ)らに現れ、話に加わった。夢の中だから、スゥ~~っと幽霊のように現れ、スゥ~~っと消えられる訳である。^^
『そうか、君がね…。では、そうしてくれるか…。当分は官房機密費で、と私は思っておったんだが…』
『なんだ、そうでしたか…。それじゃ、当分の間は官房機密費で…』
『んっ!? ああ、そうか…』
『はあ…』
 黒子は、やれやれ…と内心で思った。口では意見を具申したものの、目星の財源の充(あ)ては皆目、立ってなかったのである。そのとき、疣川は閣議室のソファー椅子からフロアへ滑り落ちた。椅子から滑り落ちるなどね現実には到底、有り得ないのだが、夢だから有り得る訳である。疣川はその瞬間、ベッドから落ち、目覚めた。
『夢か…』
 このように、夢は世相が暗いとき、希望的にデフォルメ[誇張]して見るものなのです。^^

                   完


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