いつものことが変化し、いつものことでなくなったら、あなたはどうしますか?^^ ある人は、おやっ? 変わったのかな…と、変化したことを認識した上で、その変わった内容に追随(ついずい)したり、その後の対応を考えたりするだろう。また、ある人は、おやっ? 妙だなぁ…と思い、その日まで続いていた状況の回復を試(こころ)みるだろう。おやっ? 困ったな…と単純に右往左往する人だってあるに違いない。いつものことが変化したとき、人が取る行動は四方山(よもやま)なのである。今日の三話は、そんなお話だ。^^
店前に設置された自販機の前で一人の男が何やら買おうとしているが、いつものように機械が反応しない。
「弱ったな、誰もいないし…」
男はそう呟(つぶや)くと、自販機の前に手持ちのハンカチを一枚、敷くと。ドッペリと、その上へ腰を下ろした。対応する相手が来ないのに待っても仕方ないのだが、男はいつものことの繰り返しを維持しようとしたのである。よ~~く考えれば、維持出来る訳などないのだ。男は腰を下ろしたあと、考えた。[1]機会が故障している。[2]店の都合で機械を停止させている。と、男はまず考えた。ただ、いつものように電源が入った状態でランプが燈(とも)っているのも怪(おか)しいといえば怪しい。ということは、[2]は全否定され、店の都合で停止させた・・ということはない訳になる。だとすれば、やはり[1]か…と、男は思った。そのとき、別の男がスゥ~っと現れ、数枚の貨幣を機械へ投入した。ガチャン!! と音がし、缶が取り出し口へ落ちた。別の男は、さも当然のようにその缶を取り出すと、プルトップを開けてグビリ! と、ひと口飲み干した。
「…どうされたんです?」
訊(たず)ねられ、腰を下ろした男は罰悪くなった。
「いや…少し気分が…」
「それはいけませんねっ! 大丈夫ですかっ!?」
「は、はいっ!」
腰を下ろした男の頭は混乱していた。俺だけが、なぜ出ない? …である。男は考えながら、ジィ~っと自分の手を見た。硬貨と思って自販機へ投入したのは、昨日、ゲームセンターから持ち帰ったゲーム・コインの残りだった。
「チェッ! 出ないはずだっ! それにしてもコインの大きさが同じというのも、どうなんだろう!?」
男は妙なところで鬱憤(うっぷん)を晴らし、硬貨を投入した。ガチャン!! と音がし、缶が取り出し口へ落ちた。
「そら、そうだろう!」
男はふたたび、妙なところで得心(とくしん)した。
今日は、そんな、いつものことの四方山話でした。^^
完