野中や木陰を流れる、誰にも気づかれないような水の流れを忘れ水といいます。
草陰に見え隠れして、
途切れ途切れに流れているささやかな流れ。
和歌の世界では今にも「途切れそうな恋」のたとえに使われている。
存在すらも知られてはいないけれど、心のよりどころになったりもする。
このような人がきっとどこかにいるのでしょう。
「あづま路の
道の冬草
茂りあひて
あとだに見えぬ
忘れ水かな」
(新古今集)
「はるばると
野中に見ゆる
忘れ水
絶え間絶え間を
嘆くころかな」
(後拾遺集)
野中にはるかに見える
忘れ水のように、あなたの訪れが絶え間がちなのを嘆いています。
途切れそうな恋の忘れ水。素敵な言葉です。