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岩田健太郎医師 五輪の感染対策「言語道断」の3つの問題といま必要な対策とは? 大岩ゆり2021.8.7 17:00

2021年08月08日 09時24分13秒 | オリンピック

岩田健太郎医師 五輪の感染対策「言語道断」の3つの問題といま必要な対策とは?

大岩ゆりAERA#AERAオンライン限定
 
岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)

岩田健太郎(いわた・けんたろう)/1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科教授。島根医科大学(現・島根大学)卒業。ニューヨーク、北京で医療勤務後、2004年帰国。08年から現職(撮影/楠本涼)

(朱字は管理人)

 開催中の東京五輪では、選手や関係者らにも感染が起きている。五輪の感染対策に問題はなかったのか。神戸大学の岩田健太郎教授(感染治療学)が、「言語道断」と指摘する問題がある。

【図】五輪の経費は3兆円を超す?

*  *  *
――五輪では、8月6日時点で選手や関係者ら計382人が感染し、選手村でクラスターも発生した。この人数は、国際オリンピック委員会(IOC)の資格認定証(アクレディテーション)を持つ人だけで、警備のために都外から応援に来ている地方自治体の警備隊員ら、広い意味での関係者の感染者数はもっと多い。

 五輪の感染対策があまりうまくいかなかったということです。

 IOCは、選手や関係者には毎日3万件ほどの新型コロナウイルス検査を実施しており、陽性率は0.02%と低いので、感染対策は万全だと主張しているようですが、これは誤解に基づいた考え方です。検査数が多くなる、つまり分母が大きくなればなるほど、陽性率は低くなります。陽性率ではなく、約400人が感染した、という実数が問題です。

 五輪ほどの巨大スポーツイベントだから400人程度なら問題ない、という考え方も間違っています。そんな考え方では、そもそも、このような感染状況の中で、なぜこんな巨大イベントを開くのかが説明できません。

■規模と影響が違う

 また、プロ野球やJリーグは観客を入れて試合をしているのだから、オリンピックだって有観客でいいではないかと言った自治体の首長がいましたが、それも誤解です。一つの会場だけで考えればその論理は成り立つかもしれませんが、オリンピックは、何十もの会場で同時に競技をしているのです。規模が違い、感染状況への影響が違います。

 これだけ巨大なスポーツ大会を強行する以上、慎重に、徹底的な感染対策をして開くべきでした。しかし、感染者数をみると、決して感染対策は十分ではなかった可能性が高いです。

――男子サッカーで日本が1次リーグ初戦で対戦した南アフリカのチームでは、来日直後に選手2人と関係者1人の感染が判明。21人が濃厚接触者となった。国内の規則では濃厚接触者は感染を広げないために14日間、外出せず、他の人と接触しない「隔離」が求められる。しかし、IOCと大会組織委員会は急きょ、試合6時間前のPCR検査で陰性なら試合に出場できるというルールを作った。

 言語道断の対応です。問題は3点あります。

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■科学的に根拠ない判断

 まず、6時間前にPCR検査をして陰性なら試合に出てもいい、という判断が、科学的には根拠がない、という点です。

 感染初期は体内のウイルス量が少ないため、PCR検査をしても陰性になることがあります。南ア選手が万が一感染していても、感染時期がわからなければ、いつPCR検査で陽性になり始めるのかはわからず、6時間前に陰性だったからといって、感染していないという証明には科学的にはなりません。

 一方、国内の濃厚接触者は14日間隔離、という規則は科学的な根拠に基づいています。14日間ずっと陰性で、その後に感染が判明することはほぼないからです。

 2点目の問題は、IOCや大会組織委員会が、日本の規則とは異なる、「五輪特例」ルールをなし崩し的に作ったという点です。こんなことをしたら、国内の濃厚接触者の中で、「14日間の隔離」を無視する人が増えても仕方ないです。

 非科学的な判断をし、科学的な判断に基づく規則が守られなくなる。これはまさに、「無理を通せば道理がひっこむ」という状況にほかなりません。

 3点目の問題は、濃厚接触者のルールが事前に作ってあったのではなく、南アのチームで大勢の濃厚接触者が出た後に作られたという点です。物事の途中でルールを自分に有利になるよう変更する行動を、「ゴールポストを動かす」と言いますが、まさにそんな対応です。

 いくら選手をなるべく大勢出場させたいとは言え、感染対策でもスポーツでも許される行為ではありません。

■DPと同じ過ちを繰り返さない

――五輪の選手や関係者らの感染が、いつ、どのような経路で起きたのか、「バブル」と呼ばれる、五輪関係者の内部だけにとどまっているのか、実態は不明だ。

 大会組織委員会は感染の詳細を公表せず、感染者数しか発表していません。これは、感染対策に問題があり、乗船客の間でアウトブレークが起きた大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス(DP)号の時と同じです。

 大会開催期間中に起きた感染の根本原因の調査が必要です。どこでどのような状況で感染が起き、それは防ぎ得たのか、といった分析です。不可避な感染はあるので、感染をゼロにしろと言っているのではありません。約400人の感染は、不可避で、許容できる感染なのか。それとも、対策に漏れがあったのか。

 そういった分析を、DP号の時のように関係者で行って「それなりにうまくいっていた」でしゃんしゃんで終わらせてはだめです。第三者により、客観的に行うべきです。

 ただし、スピードも大切です。パラリンピックを開くならその前に分析し、その結果をパラリンピックの感染対策にいかすべきです。

 また、解析結果をきちんと公表することも大切です。そうしないと、五輪・パラリンピック開催にますます反感が強まるだけです。

※インタビューは8月2日に行い、その後、感染状況などをアップデートしています

(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

※AERAオンライン限定記事

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