『きりのなかの はりねずみ』は、すべてが美しいが、特にきりのなかの白いうまが、格別に美しい。白い馬といえば、モンゴル民謡『スーホーの白い馬』の赤羽末吉氏の絵が思いうかぶ。赤羽氏の絵は、1980年国際アンデルセン賞(画家賞)をとっていたと思う。(これも福音館書店から刊行されていますね。さすがです)
『スーホーの白い馬』の絵も、すばらしいモンゴル民謡によくマッチしたモンゴル調の独特の味をだしていると思う。勝手知ったる蒙古斑。
しかし、『きりのなかの はりねずみ』の、きりのなかの白い馬のなんという美しさ。夢のなかのような、幻想的、詩的、叙情的......なんといっていいか分からない。女神のような、美と優しさを感じる。マンハッタン島のそばを流れる川に突っ立つ「自由の女神」とはちがうことだけは、わかる。
そして、すべての登場人物たちが(すべて動物だが)すべて生きている。生きていて、森の動物達は、極自然にはりねずみに優しく助力をする。みな、仲間という感じがほっとする。その魅力を何と言っていいか分からない。主人公のはりねずみが、のいちごの はちみつにを,白地に赤い水玉のハンカチでくるんだ小さな荷物をもって、こぐまをさがしにいく、その例えようのない 愛らしさ。ハンカチでくるんだ赤い水玉模様の小さな荷物は、繊細でしゃれていて、非常に効果的だと思った。そしてきりのなかを迷いながら こぐまのところに、やっと、たどりつく「はりねずみ」。こぐまは、来るのが遅い「はりねずみ」を心配しながら、一緒にお茶を飲もうとお湯を沸かして待っている。再会したこぐまと「はりねずみ」は、ほっとして並んですわる。そして一緒に星を数える。ひとりっきりでは、星は数えられないから。
この本のテーマは、うかつには言えないが、あたたかな連帯、友情、ぬくもり,
ほのぼのとした楽しさ....そんな言葉が頭をよぎる。 はずれているかもしれない。自信がない。言わなければ、よかった。
さて、これからが本当に言いたいことです。
わたしは、ずっと気づかなかった。この本のもとが、ロシアのアニメーション映画であることを。
昨日知って、ショックのあまり、わたしは『きりのなかの はりねずみ』をかかえて、倒れこんでしまった。グーの音もでない状態のなかにいる。
せめてもの抵抗として、偕成社出版のアンデルセン『雪の女王』のアニメ調の挿絵は、物語とあわない、認めないぞ、と八つ当たりをして、《きりのなかの はりねずみ》のアニメーション映画製作にかかわったスタッフの方々の紹介を裏表紙から書き写して終わりとします。(知らないのは、わたしだけかもしれないけれど.....)
ユーリー・ノルシュテイン Yuri Norshteyn
1941年、ロシア、ベンザ州アンドレーエフカ村(疎開先)で生まれる。1943年からモスクワ在住。1961年にアニメーション美術上級コースを卒業し、アニメーション連盟に就職。絵画に転向しようと美術学校入学の試験準備を始めるが、セルゲイ・エイゼンシュテイン全集に触発され、アニメーション監督の道を選ぶ。(エイゼンシュテインはソ連映画の開拓者で、モンタージュ理論により映画芸術に大きな功績を残した人物。)アニメーション作品としては《きつね と うさぎ》、《あおさぎとつる》、《話の話》、それと本書のもととなった《きりのなかの はりねずみ》などがある。現在、ゴーゴリ原作の《外套》のアニメーションを製作中。
セルゲイ・コズロフ Sergey Kozlof
1939年、モスクワ生まれ。現代ロシアを代表する児童文学作家。1962年に最初の本『おひさまがこわれた』を発表して以来、子供のためのお話、詩、自然や動物についての短編など30冊以上の本を執筆し、世界各国で翻訳出版されている。日本で翻訳出版されたものに『ハリネズミくんと森のともだち』(岩波書店)がある。
フランチェスカ・ヤルブーソヴァ Franchesuka Yarbusova
1942年、アルマーダ(カザフスタン)で生まれ、モスクワで育つ。普通の学校に通うかたわら12歳から美術学校に通う。1967年にモスクワ映画大学美術学科を卒業。アニメーション連盟に就職し、アニメーションの美術監督として働く。ノルシュテイン監督による作品《きりのなかの はりねずみ》、《話の話》の美術監督として繊細で美しい映像を実現する。ノルシュテインとは、私生活でもパートナーである。
こじま ひろこ(児島 宏子)
東京都出身。1972年に日ソ学院(現、東京ロシア語学院)本科卒業後、モスクワ大学ロシア語教師養成セミナーで研鑽を積む。以後、映画、音楽分野で通訳、翻訳、執筆などに従事。訳書に『ソクーロフとの対話』(河出書房新社)、『チェーホフは蘇る』(書肆山田)などがある。
2000年10月 発行 2001年12月 第4刷 所蔵
『スーホーの白い馬』の絵も、すばらしいモンゴル民謡によくマッチしたモンゴル調の独特の味をだしていると思う。勝手知ったる蒙古斑。
しかし、『きりのなかの はりねずみ』の、きりのなかの白い馬のなんという美しさ。夢のなかのような、幻想的、詩的、叙情的......なんといっていいか分からない。女神のような、美と優しさを感じる。マンハッタン島のそばを流れる川に突っ立つ「自由の女神」とはちがうことだけは、わかる。
そして、すべての登場人物たちが(すべて動物だが)すべて生きている。生きていて、森の動物達は、極自然にはりねずみに優しく助力をする。みな、仲間という感じがほっとする。その魅力を何と言っていいか分からない。主人公のはりねずみが、のいちごの はちみつにを,白地に赤い水玉のハンカチでくるんだ小さな荷物をもって、こぐまをさがしにいく、その例えようのない 愛らしさ。ハンカチでくるんだ赤い水玉模様の小さな荷物は、繊細でしゃれていて、非常に効果的だと思った。そしてきりのなかを迷いながら こぐまのところに、やっと、たどりつく「はりねずみ」。こぐまは、来るのが遅い「はりねずみ」を心配しながら、一緒にお茶を飲もうとお湯を沸かして待っている。再会したこぐまと「はりねずみ」は、ほっとして並んですわる。そして一緒に星を数える。ひとりっきりでは、星は数えられないから。
この本のテーマは、うかつには言えないが、あたたかな連帯、友情、ぬくもり,
ほのぼのとした楽しさ....そんな言葉が頭をよぎる。 はずれているかもしれない。自信がない。言わなければ、よかった。
さて、これからが本当に言いたいことです。
わたしは、ずっと気づかなかった。この本のもとが、ロシアのアニメーション映画であることを。
昨日知って、ショックのあまり、わたしは『きりのなかの はりねずみ』をかかえて、倒れこんでしまった。グーの音もでない状態のなかにいる。
せめてもの抵抗として、偕成社出版のアンデルセン『雪の女王』のアニメ調の挿絵は、物語とあわない、認めないぞ、と八つ当たりをして、《きりのなかの はりねずみ》のアニメーション映画製作にかかわったスタッフの方々の紹介を裏表紙から書き写して終わりとします。(知らないのは、わたしだけかもしれないけれど.....)
ユーリー・ノルシュテイン Yuri Norshteyn
1941年、ロシア、ベンザ州アンドレーエフカ村(疎開先)で生まれる。1943年からモスクワ在住。1961年にアニメーション美術上級コースを卒業し、アニメーション連盟に就職。絵画に転向しようと美術学校入学の試験準備を始めるが、セルゲイ・エイゼンシュテイン全集に触発され、アニメーション監督の道を選ぶ。(エイゼンシュテインはソ連映画の開拓者で、モンタージュ理論により映画芸術に大きな功績を残した人物。)アニメーション作品としては《きつね と うさぎ》、《あおさぎとつる》、《話の話》、それと本書のもととなった《きりのなかの はりねずみ》などがある。現在、ゴーゴリ原作の《外套》のアニメーションを製作中。
セルゲイ・コズロフ Sergey Kozlof
1939年、モスクワ生まれ。現代ロシアを代表する児童文学作家。1962年に最初の本『おひさまがこわれた』を発表して以来、子供のためのお話、詩、自然や動物についての短編など30冊以上の本を執筆し、世界各国で翻訳出版されている。日本で翻訳出版されたものに『ハリネズミくんと森のともだち』(岩波書店)がある。
フランチェスカ・ヤルブーソヴァ Franchesuka Yarbusova
1942年、アルマーダ(カザフスタン)で生まれ、モスクワで育つ。普通の学校に通うかたわら12歳から美術学校に通う。1967年にモスクワ映画大学美術学科を卒業。アニメーション連盟に就職し、アニメーションの美術監督として働く。ノルシュテイン監督による作品《きりのなかの はりねずみ》、《話の話》の美術監督として繊細で美しい映像を実現する。ノルシュテインとは、私生活でもパートナーである。
こじま ひろこ(児島 宏子)
東京都出身。1972年に日ソ学院(現、東京ロシア語学院)本科卒業後、モスクワ大学ロシア語教師養成セミナーで研鑽を積む。以後、映画、音楽分野で通訳、翻訳、執筆などに従事。訳書に『ソクーロフとの対話』(河出書房新社)、『チェーホフは蘇る』(書肆山田)などがある。
2000年10月 発行 2001年12月 第4刷 所蔵