(藤原 修平:在韓ジャーナリスト)

 ドイツの首都ベルリンのミッテ区に、慰安婦像が建てられた。ドイツ語で「平和の像」(Friedensstatue)と称されており、グーグルマップで検索すると、すでに写真付きで掲載されている。

 

 連邦議会議事堂やブランデンブルク門を擁するミッテ区は東京で言えば中央区にあたり、政治経済の中心地である。そのなかでも閑静な住宅街が広がるモアビート地区の一角、連邦首相府から西北西に2キロほどの公共の場所に設置された。ドイツで活動し、ドイツでの慰安婦像設置を支援している韓国人団体「コリア協議会」(Korea Verband)のオフィスのすぐそばの場所である。

 これでドイツでは3体目の慰安婦像となる。これまでは私有地に設置されてきたが、今回は初めて公共の場所に設置されたということで、これまで以上に日韓の間で波紋が広がった。

 9月28日に除幕式が行われたが、これに対して茂木敏充外相は10月1日、ドイツのハイコ・マース外相とテレビ電話会談を行った際に、慰安婦像の撤去を求めた。そして10月7日には、ミッテ区がコリア協議会に対して14日までに撤去するよう命じ、それに応じない場合は市当局が強制的に撤去すると伝えた。「日韓の問題にドイツが関わることは好ましくない」というのがその理由だった。

 ところがこれに対し、ドイツや韓国だけでなく、オーストラリアや米国などの国々から反対意見が殺到した。韓国人を夫人とするゲアハルト・シュレーダー元首相は当局に、撤去反対を主張する手紙を送った。また、コリア協議会は「この像は戦時下における女性への性暴力をテーマとしたもので、日本に特化したものではない」と発表した。その結果、10月13日にミッテ区は「当面の間は、現状のままとする」として、撤去命令を保留した。その経緯は、日韓のメディアで盛んに報じられたので、ご存じの方も多いだろう。

ドイツ・ベルリンに設置された「平和の少女像」(2020年10月13日、写真:ddp/アフロ)