「戦後日本」は、じつはアメリカの軍部によって「植民地支配」されているという「ヤバすぎる現実」
日本には、国民はもちろん、首相や官僚でさえもよくわかっていない「ウラの掟」が存在し、社会全体の構造を歪めている。
そうした「ウラの掟」のほとんどは、アメリカ政府そのものと日本とのあいだではなく、じつは米軍と日本のエリート官僚とのあいだで直接結ばれた、占領期以来の軍事上の密約を起源としている。
『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』では、最高裁・検察・外務省の「裏マニュアル」を参照しながら、日米合同委員会の実態に迫り、日本の権力構造を徹底解明する。
*本記事は矢部 宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)から抜粋・再編集したものです。
「無責任な軍国主義」を支持する日本
私たち日本人が生きていたのは、実は「戦後レジーム」ではなく、「朝鮮戦争レジーム」だった。そしてそれは「占領体制の継続」よりもさらに悪い、「占領下の戦時体制」または「占領下の戦争協力体制」の継続だったのだ。
そのことがわかると、いろんな謎がスッキリ整理されてきます。
私が日本の戦後史を調べ始めてから、ずっと不思議で仕方がなかったふたつの問題。
なぜ多くの心ある、しかも頭脳明晰なリベラル派の先人たちが、自国の憲法に対して、「指一本触れるな」としか、いうことができなかったのか。
同じく、なぜ「占領軍による憲法草案の執筆」という、疑問の余地のない歴史的事実について、「その話は、いまはまだするな」と60年以上、いいつづけることしかできなかったのか。
それは「占領下の戦時体制」が法的に継続するなか、憲法9条に少しでも手をふれてしまえば、米軍の世界戦略のもとで、自衛隊が世界中の戦争で使われてしまうことが、本能的によくわかっていたからでしょう。
けれども、よく考えてみましょう。冷戦の終結からすでに30年近くが経ち、世界の状況は大きく変わりました。
もともとは、「無責任な軍国主義が世界から駆逐されるまで」(「ポツダム宣言第6項」)
という大義名分のもと、大日本帝国を占領し、日本の独立後は、その「世界から駆逐すべき無責任な軍国主義」の対象を共産主義国に切り替えて(「旧安保条約前文」)、アジア全域に居座りつづけた米軍。そしてその国際法違反の軍事行動を、60年以上、無条件で支持し続けてきた日本。
皮肉なことに現在、私たちが世界から駆逐すべき「無責任な軍国主義」とは、このあまりに従属的な二国間関係のなかにこそ、存在している。その問題を私たち自身の手で、清算すべきときがきているのです。
世界史的なスケールを持った対立
マッカーサーがどれほど自覚していたかはわかりませんが、日本の独立モデルをめぐるマッカーサーと軍部の対立は、
「新しい時代の集団安全保障構想(国連軍+憲法9条)」と、
「従来型の軍事同盟(東西冷戦構造)」
の対立という、世界史的なスケールをもった対立でもありました。
しかし朝鮮戦争の突然の開戦によって、マッカーサー・モデルはその砲煙のなかに消えさり、ダレスの考案した「疑似国連軍」としての米軍が、世界中に軍事同盟の網の目を張りめぐらしていくことになりました。
なかでも日本は、国連憲章の暫定条項(例外条項)を駆使したダレスのさまざまな法的トリックに完敗し、国連の名のもとに米軍に無制限の自由を与える、徹底した軍事的従属関係を認めることになってしまったのです。
それがサンフランシスコ・システムです。
そのあまりに歪んだ二国間関係が、冷戦の終結後、アメリカの軍部に「世界の単独支配」という「狂人の夢」を見させ、アメリカ自身を、みずからがつくった国連憲章の最大の破壊者へと変貌させてしまった。
日本と世界のためにできること
私もこれを知ったときは驚いたのですが、じつはあのブッシュ政権の国務長官だったコンドリーザ・ライスでさえ、日本と韓国に軍をおくアメリカ太平洋軍について、次のように述べているのです。
「太平洋軍司令官は昔から植民地総督のような存在で(略)最もましなときでも外交政策と軍事政策の境界線を曖昧にしてしまい、最悪の場合は両方の政策をぶち壊しにしてしまう傾向があった。誰が軍司令官になろうが、それは変わらなかった。これは太平洋軍司令官という役職にずっとつきまとっている問題だろう」(『ライス回顧録』集英社)
つまり「戦後日本」という国は、じつはアメリカ政府ではなく、アメリカの軍部(とくにかつて日本を占領した米極東軍を編入した米太平洋軍)によって植民地支配されている。
そしてアメリカ外交のトップである国務長官でさえ、日本がなぜそんな状態になっているのか、その歴史的経緯や法的構造が、さっぱりわかっていないということです。
けれどもこの本をお読みになってわかるとおり、謎はすべて解けました。
あとは、いつになるかわかりませんが、きちんとした政権をつくって日本国内の既得権益層(いわゆる「安保村」の面々)を退場させ、アメリカの大統領や国務長官に対して、
「現在の日米関係は、朝鮮戦争の混乱のなかでできた、あきらかに違法な条約や協定にもとづくものです。こうした極端な不平等条約だけは、さすがに改正させてほしい」
といって交渉すればいいだけです。
なにしろ日本人の人権は、アメリカのコウモリや遺跡よりも、米軍から圧倒的に低く扱われているのです(第6章)。真正面からその事実を示して堂々と交渉すれば、
「いや、それは今後も続ける」
といえる大統領も国務長官も、さすがにいないでしょう。
日本人が、この歪んだ従属関係であるサンフランシスコ・システムから脱却することは、日本はもちろん世界の歴史にとっても、非常に大きなプラスをもたらすことになるのです。
さらに連載記事<なぜアメリカ軍は「日本人」だけ軽視するのか…その「衝撃的な理由」>では、コウモリや遺跡よりも日本人を軽視する在日米軍の実態について、詳しく解説します。
本記事の抜粋元『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』(講談社現代新書)では、私たちの未来を脅かす「9つの掟」の正体、最高裁・検察・外務省の「裏マニュアル」など、日本と米国の知られざる関係について解説しています。ぜひ、お手に取ってみてください
(管理人注:wikipedeia
矢部 宏治 | |
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誕生 | 1960年(63 - 64歳) 日本・兵庫県 |
職業 | ノンフィクション作家 |
最終学歴 | 慶應義塾大学文学部卒業[1] |
ジャンル | 評論 |
代表作 | 知ってはいけない ―隠された日本支配の構造― |
主な受賞歴 | Book of the Year 2014(Web版ダカーポ)(『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』) |
兵庫県出身。慶應義塾大学文学部を卒業[3]。博報堂マーケティング部を経て、1987年より書籍情報社の代表になる。
小林よしのりと天皇をめぐって対談したこともある。
「終戦宣言」へと向かう朝鮮半島と、中距離核ミサイル(INF)の全廃条約破棄を宣言したアメリカは、日本に米軍の核ミサイルが配備されてしまう可能性が非常に高いと発言している