フランク・ガードナー安全保障担当編集委員、ハフサ・ハリル(BBCニュース)
サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は11日、パレスチナ・ガザ地区におけるイスラエルの行動を「ジェノサイド(大量虐殺)」と非難した。ガザでの戦争開始以来、サウジアラビア政府高官によるイスラエル批判としては、最も厳しい発言の一つとなった。
同皇太子はまた、レバノンとイランに対するイスラエルの攻撃も批判した。ライバル関係にあるサウジアラビアとイランの関係改善の兆候とみられている。
アラブ連盟とイスラム協力機構(OIC)加盟国はこの日、首脳会議を開き、サウジアラビアを事実上支配するムハンマド皇太子も参加した。サミットではイスラエルに対し、ヨルダン川西岸地区とガザ地区からの完全撤退を求める共同声明が発表された。
イスラエル議会は先月、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がハマスと共謀しているを非難し、イスラエルおよび占領下の東エルサレムでの活動を禁止する法案を可決した。
アメリカやイギリスを含む各国は、ガザ地区への支援物資の移送を制限するこの動きについて、深刻な懸念を表明している。
サウジアラビアの外相は、ガザ地区での戦争が止まらなかったのは「国際社会の失敗」であり、イスラエルがその地域で飢餓を引き起こしていると非難した。
ファイサル・ビン・ファルハン・アル・サウード王子は、「国際社会は、目下の紛争を終結させることに失敗し、イスラエルの侵略を終わらせることに失敗した」と指摘した。
ガザ地区のイスラム組織ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、251人を人質として連れ去った。これを受けてイスラエルはハマス殲滅に向けた軍事作戦を開始。ハマスが運営する保健省によるとこれまでに4万3400人以上が殺された。
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の報告書によると、ガザ地区で昨年11月1日から今年4月30日にかけて確認された戦闘の犠牲者のうち、7割近くが女性と子供だった。
トランプ次期米大統領への期待
このサミットに多くの加盟国が集まった背景には、ドナルド・トランプ氏が次期米大統領に決定したことがある。
湾岸諸国の指導者らは、次期大統領と良好な関係にある一方で、同氏がイスラエルと親密な関係にあることも認識している。そのため、中東での紛争終結に向けて、次期大統領の影響力と取引好きを、活かしてほしいと考えている。
サウジアラビアでは、トランプ氏はジョー・バイデン大統領よりもはるかに好意的に受け止められているが、中東における実績はまちまちだ。
第1次トランプ政権は、エルサレムをイスラエルの首都と承認したほか、占領下にあるゴラン高原の併合を認めたことで、イスラエルを喜ばせ、イスラム世界を怒らせた。2020年には「アブラハム合意」を仲介。これによってアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、モロッコがイスラエルと国交を樹立し、スーダンも国交回復に同意した。
サウジアラビアの有力紙は11日、「希望の新時代。トランプの帰還と安定の約束」という見出しの社説を掲載した。