先月の、家庭連合に対する過料事件(田中会長に対する10万円の過料)の高裁の決定が出ました。
私が主要紙記者に説明した内容をここに転記しますと、、
高裁決定:宗教法人法81条1項「法令に違反」(1号前段)に民法不法行為も含む。
一方、家庭連合の立場は:
1 適正手続の保障(憲法31条)は、行政手続に及ぶ(最高裁平成4年成田新法事件)
…不意打ち、予測困難性、構成要件の自由保障機能
2 適正手続保障が行政手続に及ぶとして、判例は、、、
憲法31条違反は、「通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読みとれるか」で判断される。
これは有名な最高裁昭和50年徳島市公安条例事件。「交通秩序を維持」につき、上記基準が読み取れないとした。
…「交通秩序を維持」について不明瞭だから基準読み取れないなら、なおさら「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」から、上記基準が読み取れないのではないか?
3 高裁決定は、 「著しく」「明らかに」公共の福祉を害するという要件(1号後段)があるから、予測困難ではないと言うが、、、
…「法令」に違反(前段)とは別の、後段の要件を挙げて、「逃げて」いる。
こういう姑息で卑怯な「逃げ」を東京高裁がした、というところに、法曹としてガッカリしました。
4 高裁決定は、不法行為成立(民709条適用)の場合に、「法令(民709条)に違反」というロジックを組んでいますが、、、
…現行民法施行後126年、どの法曹も取ってこなかった立場。
3万件を検索しても、不法行為を「709条違反」と表現した裁判例はヒットしません。
5 民709条(通常不法行為)のみならず、民715条(使用者責任)も同様に禁止規範違反だと高裁決定は考えている⁉️
…民715条使用者責任は「報償責任(利益の損するところに損失も帰する)」。だから、これが「禁止規範」であることはさすがにあり得ないだろう、、
6 世界主要国の宗教法人の解散要件に、不法行為は1つもない
…それなのに日本だけ不法行為も解散原因になる。それでいいのでしょうか。
7 H7オウム高裁「刑法等の(禁止規範等)」は死文化?
…これは今回の高裁決定というよりは、この過料の地裁決定からなんですが、H7オウム高裁が「刑法等の禁止違反…」と書いた。
でも、過料地裁決定も、高裁決定も、この「オウム事件は事例判例だし」って立場を取っている。
H7オウム高裁の「刑法等の…」の部分は、誰が読んでも「事例判例」とは読めない。
日本に法曹5万人いますが、このH7オウム高裁の「刑法等の禁止違反…」の部分を読んで、「これは事例判例です」って立場を取る人はいないはずです。
判決文はこちら
法曹諸氏の方はご確認いただきたいです!