川塵録

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H7オウム高裁決定は事例判例ではない。

2024年09月06日 | 法律・海外法務
法曹向け投稿です。

H7オウム高裁決定は事例判例ではない。

これについて情報提供します。 参考投稿はこちら

H7オウム高裁決定は、宗教法人法81条1項1号の「法令に違反」につき、

 刑法等の禁止違反…

と判示しました。

これに従い、政府・岸田首相も、この「法令」には民法を含まないと解釈してきました。後に、岸田首相が小西議員に脅されて一夜で見解を変えたんですが。

今の家庭連合の過料事件(今後判断される解散命令請求)でも、この「法令」に民法を含むか、は争われます。

具体的には、このH7オウム高裁の「刑法等の」の4文字に意味があるか、先例的価値があるか、が問われます。

過料事件地裁・高裁決定は、いずれも「事例判例だから先例的価値ないよ、だから「刑法等の」の4文字は無視していいんだよ、って立場を取っています。

これはおかしい。

日本の法曹は5万人います。ロースクール生とか法学部生を合わせるともっといます。その、5,6万人の、判例を分析できる方が読めば、このH7オウム高裁決定の、以下の部分を読んで、「これは事例判例ですね」って判断する御仁は一人もいないはずである。

~~~以下引用~~~

一 解散命令の意義及び解散事由の存否

1 解散命令の意義

宗教法人法は、「宗教団体が、礼拝の施設その他の財産を所有し、これを維持運用し、その他その目的達成のための業務及び事業を運営することに資するため、宗教団体に法律上の能力を与えること」(1条1項)を主要な目的とし、それに必要な措置を講じるために制定されたものであるが、これとともに、同法が81条1項1号及び2号前段において宗教法人に対する解散命令制度を設けたのは、宗教団体が、国家又は他の宗教団体等と対立して武力抗争に及び、あるいは宗教の教義もしくは儀式行事の名の下に詐欺、一夫多妻、麻薬使用等の犯罪や反道徳的・反社会的行動を犯したことがあるという内外の数多くの歴史上明らかな事実に鑑み、同法が宗教団体に法人格を取得する道を開くときには、これにより法人格を取得した宗教団体が、法人格を利用して取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を濫用して、法の定める禁止規範もしくは命令規範に違反し、公共の福祉を害する行為に出る等の犯罪的、反道徳的・反社会的存在に化することがありうるところから、これを防止するための措置及び宗教法人がかかる存在となったときにこれに対処するための措置を設ける必要があるとされ、かかる措置の一つとして、右のような存在となった宗教法人の法人格を剥奪し、その世俗的な財産関係を清算するための制度を設けることが必要不可欠であるとされたからにほかならない。

右のような同法81条1項1号及び2号前段所定の宗教法人に対する解散命令制度が設けられた理由及びその目的に照らすと、右規定にいう「宗教法人について」の「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」(1号)、「2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」(2号前段)とは、宗教法人の代表役員等が法人の名の下において取得・集積した財産及びこれを基礎に築いた人的・物的組織等を利用してした行為であって、社会通念に照らして、当該宗教法人の行為であるといえるうえ、刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するものであって、しかもそれが著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為、又は宗教法人法2条に規定する宗教団体の目的を著しく逸脱したと認められる行為をいうものと解するのが相当である。

~~~引用終わり~~~

メチャ1文が長いですね。 判決全文は こちら

上記の書き方は、「オウム事件だから」「たくさん人が殺されたから」という、事例ごとの判断をしているのではありません。

宗教法人法の一般の話をしているのです。「オウム」の文字は一つもありません。

ですから、これは「事例判例」ではないのです。

それなのに、今の、家庭連合の過料事件において、地裁も高裁も、「これは事例判例である」って立場を取っているのです。

この裁判所の判断は誤っています。ということを、きっちり歴史に刻んでおきます。


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