
1/9(木)、「屍人荘の殺人」を観てきました。
昨年から公開されていましたが、年が明けてから観てきました。
そして、原作小説をしっかり楽しんでから、読み終わった直後に映画館に駆け込み、今度は映画も楽しむぞ!という気持ちで観てきました。
「映画を観る前に原作を!今村昌弘「屍人荘の殺人」を読みました。」
先程リンクを張った一つ前の記事に書いたように、原作小説がかなり面白くて、読み終わった直後の興奮冷めやらぬ状態での鑑賞というかなりハードルが上がり切った状態だったのですが、結果的には最高に楽しめました。
というのも、小説を映画化するに当たり、原作のどこをどう変えるのか、どこを端折ってどこを残すかの匙加減が本当に絶妙な映画だったと思ったからです。
色んな意味で非常に情報量の多い原作小説をすべて2時間の映画にまとめるのは不可能なわけで、謎解きの面白さはある程度削っても肝となる部分はしっかり残しつつ、主人公たちの魅力やコミカルな部分や青春小説としての面白さは最大限に前面に出すというやり方が本当に大正解だったと思うんですよね。
そもそも原作小説がラノベ的な一人称語りや時折挟まれるギャグなど、陰惨な殺人事件が起こるミステリーでありながらも実はいい意味でノリ軽さやテンポの良さが魅力の作品で、そういう面白さを最大限に際立たせた映画になっていたのは、小説の映画化としてかなり完成度が高ったのではないでしょうか。
もちろん、原作からストーリーそのものを変えている部分もかなりあるのですが、例えば冒頭のエピソードは、寧ろ原作小説よりも笑いという意味でも、伏線という意味でも面白くなっていたんじゃないかと思います。
それから、物語上、かなりの重要人物の設定や、その人物にまつわるストーリーをかなり大幅に変えたりもしているのですが、そこも原作小説とはまた別のアプローチでしっかり物語的な意味があるものになっていたし、「事件が起こる前から犯人が分かった」という原作小説にはない台詞によるミステリー的な面白さを表現していたり、かなりナイスな改変だったんじゃないかと思います。
また、それ以外にも原作小説はアクションシーンも満載で、そもそもかなり映像映えしそうな物語だし、しかも国内のミステリー賞4冠に輝くという大ベストセラーでもあるわけで、映画化は必然だったのかなと思いますが、それだけに作り手の皆さん、かなりハードルが高い挑戦だったんじゃないでしょうか。
木村ひさし監督、脚本の蒔田光治さんは、堤幸彦監督とともにドラマ「トリック」を手掛けてきたコンビなのですが、このコンビの得意とするギャグ満載でいい意味でノリが軽いミステリーという作風が、完全にプラスに作用したと思うんですよね。
だから、このやり方で映画館して本当に大正解だと思うし、特にキャスティングは完璧だったんじゃないでしょうか。
物語の主人公、ミステリーマニアなのに推理は苦手で、好青年なのにちょっと情けなくて、かと思えばここぞという時にカッコよく活躍したりもする、そんな葉村くんがこんなに似合う俳優、神木隆之介くんしかいないんじゃないでしょうか。
そして謎の天才美少女探偵である比留子役の浜辺美波さんはびっくりするくらい可愛いくて、これはミステリーでありながらもちょっと胸キュンな展開が起こるのも必然だわ…と思いました。
前代未聞の本格ミステリーであると同時に、登場人物たちの絶妙な関係を描いた青春映画としての魅力は、この二人だからこそ表現できたものだと思います。
さらに、自称天才探偵でありながらとぼけたところもあり、さらに劇中かなりびっくりな役回りをするハメになる、明智役の中村倫也さんも、笑わせてきたり泣かせてきたり、すごくいいキャラになっていました。
何度も言うけど、ミステリーであると同時にコメディや青春映画の要素もあるわけで、役者同士のアンサンブルで物語が何倍も面白くなってるタイプの映画になっていたと思います。
ちなみに、予告編はこんな感じなのですが…
ミステリーだし、特に途中のある展開は絶対にネタバレ厳禁な映画なんだけど、そこをちゃんと隠していい意味でミスリードしていた予告編になっていて、本当にすごいと思いました。
しかも映画を観てから見返すと「そういうことだったのか!」といい意味で騙された感動が味わえるというか、予告編にもちゃんと伏線が張られているというか、本当に脱帽ですね。
そして、まさか、主題歌であるPerfumeの「再生」の歌詞やダンスにまで秘密が隠されていたとは、一体誰が想像しただろうか…
この、Perfumeの総集編のようなMVは、Perfumeのファンとしてはそれだけで感涙ものだし(「エレクトロ・ワールド」の消える世界で「君に手紙残すよ」と残された手紙が、「再生」の「いつか一人の国から便りが届いて」に繋がってるって解釈をネットで見た時は鳥肌が立ちました)、これまでのPerfumeの感動が「再生」されるという意味合いにももちろん取れるのですが…
映画を観終わってから聞くと、ああ、これ完全に「屍人荘の殺人」の歌だわ…としか思えなくなり、エンドロールを見ながらちょっと鳥肌が立ったくらいでした。
歌詞が、映画に登場する葉村や比留子や明智や犯人や被害者の物語を歌っているように聞こえてくるし、Perfumeのダンスも全然違うものに見えるし、中田ヤスタカはじめチームPerfumeって本当に天才集団ですね…