1/6(土)、シネ・ウインドで『いぬむこいり』を観て来ました。
ひとまず予告編はこんな感じです。
で、感想なんですが、まず上映時間が4時間!という時点で、相当ぶっ飛んでいる映画だと思うのですが、その内容も非常にカオスでぶっ飛んだものでした。
何しろ4時間もあって、一言で説明できないあらすじなので、あらすじをざっと書いてみようと思います。(ネタバレを含みますが、多分読んでも意味が分からないと思うのでネタバレにはならないだろうという気持ちで書いていきます。)
第1章
映画冒頭、いきなり始まる、この映画の元ネタとなった「犬婿伝説」の人形劇。
すると舞台は小学校の教室に移り、この映画の主人公、小学校の担任の梓が、家に代々伝わる「犬婿伝説」の話を子供たちにしている。
いきなり一人の子供に浣腸され、そこで死んだフリをしたことを保護者と校長にこっぴどく叱られ、さらに恋人からもフラれ、仕事もプライベートも何もかも上手くいかなくなった梓。
そんな梓だったが、突然「イモレ島へ行けば宝物が見付かる」という神のお告げを聞き、何もかもを捨てて旅立つ。
第2章
イモレ島への直行便がなかったので、船で近くの沖之大島に向かう梓。
上陸早々、いきなり謎の男に襲われるが、アキラという男に助けられる。しかし、アキラは実は詐欺師で、何もかもを盗まれ梓は一文無しに。
仕方なく、たまたま見付けた三線屋に転がり込み、頑固者の店主の奥本健吉の反対も聞かず、一方的に住み込みで働き始め、徐々に仲良くなっていく。
いじめられっこの小学生を助けたり、熱血パンクロッカーの賢と出会ったり楽しく過ごしている梓は、賢のバンドを騙そうとしてきた詐欺師のアキラと再会。
さらに、賢の父親であり、実は健吉の昔のバンド仲間でもある、沢村芳雄というチェ・ゲバラを崇拝する怪しい男に出会う。
実は沖之大島は悪徳市長、鈴木海老蔵の支配下にあり、戦争中のイモレ島に武器を密輸していた。
沢村は市長選に勝利し島に島に革命を起こすために、なんと梓を市長候補に立候補させてしまう。
金目当てで梓に接近する詐欺師のアキラ、なんと梓の夫を自称し、選挙活動を手伝い始める。
だが市長は、謎の武器商人たちを使って、梓の当選を阻止。
市長と武器商人の暗躍により、次々と梓の仲間たちは失われていく中、梓は詐欺師のアキラとともに島を脱出、イモレ島へ向かう。
第3章
イモレ島へ向かう途中の船が台風で難破(ここが何故か演劇風の演出になっている)、梓はアキラと離れ離れになり、無人島に漂着。
そこには翔太という男が何年も一人で暮らしており、翔太に助けられた梓は、そこで何ヶ月も生活をともにする。
実は翔太はイモレ島から逃げ出してきた王子であり、さらに翔太は犬に変身する犬男だったという驚愕の事実が判明。
犬に変身した翔太は梓を凌辱するが、やがてそんな翔太のことも受け入れていく梓。
そんな時、イモレ島から翔太の許嫁である姫、花子が船でやってくる。
謎の三角関係を築きながら3人での生活が始まるが、そんな中、島に米軍のオスプレイが墜落。
何故か米軍パイロットと花子は結ばれ、梓は翔太を残して船でイモレ島へ。
第4章
イモレ島では、ナマ族とキョラ族の戦争が何年も続いていた。
戦争の中、梓は死んだと思っていたアキラと再会。
ナマ族とキョラ族の島の聖地を巡る戦争に巻き込まれた、梓とアキラの運命は!?
…っていう話なんですけど、あの、意味分からないですよね!?
映画を観ていても、本当に意味が分からないんです。(このあらすじを読んでから映画を観ても、やっぱり意味が分からないと思います。)
とにかく、梓が出会う登場人物たちが全員ぶっ飛んでいれば、エピソードもぶっ飛んだものばかりで、一言で言えば超カオスな物語なんです。
しかし、そんな予測不能な映画だからこそ「このカオスな物語は一体どこに向かうんだ!?」「次は一体どんなとんでもないことが起こるんだ!?」とどんどん次の展開が気になる上に、起こる展開がすべて予想の斜め上なので、飽きることがないのです。
そんな何一つとして予測の出来ないカオスな物語に翻弄され続ける4時間は、意外にもあっという間に過ぎてしまうから驚きです。
神のお告げ、伝説、パンクロック、ギャグ、政治、革命、陰謀、暴力、エロス、恋愛、戦争、何でもアリのカオス物語に「何だこの映画はー!」と心の中でツッコミを入れながら4時間も翻弄され続けているうちに、だんだんその常軌を逸した映画のノリが段々クセになってきます。
とにかく、上映時間が長いだけでなく、その上映時間にありとあらゆる面白くなりそうな要素を何でもかんでも詰め込んでいる感じなんです。
また、ストーリーだけでなく、例えば冒頭の人形劇や、第3章の冒頭の海に溺れるシーンが突然布で海を表現した演劇になったりと、映画の演出そのものが、普通の劇映画だけではない多用な表現を用いているところが、本当に面白かったと思います。
そんなカオスでぶっ飛んだ映画ですが、良かったところは登場人物の一人一人を人間として魅力的にしっかり描いていたことです。
常識から逸脱した登場人物ばかりにもかかわらず、ステレオタイプの薄っぺらな人物ではなく、全員が非常に人間臭く、ちゃんと彼らなりの考え方を持って生きていることが強く伝わってくるのです。
特に第2章ですよね、あれだけのわけの分からない人物が次から次に現れては、様々なエピソードでお互いに密接に関わりあうカオスな群像劇なんですけど、ただカオスなだけではなく、登場人物の一人一人のキャラクターの存在感、そして彼らのとる行動や彼らの迎える結末の一つ一つが非常に味わい深く見応えがありました。
また、ストーリーの進行による登場人物たちの成長や心境の変化などもしっかり描き、特に個人的には、最初はただの詐欺師だったアキラが、最終的には梓と本当の意味での絆で結ばれ助け合う存在になっていったことには、思わず感動してしまいました。
また、映画に込められたメッセージ性という面で見ても、政治や戦争などの、様々な社会問題をこれでもか!と次々とガンガンぶっ込むという、パンクの精神もかなり濃厚に詰まった映画だったなあと思います。
そもそも考えてみれば、映画を見る人口が減ったり、かと思えば人気漫画や小説やドラマの映画化ばかりが増えたりと、邦画にあまり勢いがないと思われがちなこの時代に、こんなわけの分からない、しかも4時間もあるような、「誰が観るんだよ!」って思わず突っ込んでしまいたくなるような映画を上映してしまう時点で、この映画は相当パンクだと思います。
あと、多分これ4時間もあるわりに日本映画の中では比較的低予算で作られていると思うんですが、そういう低予算ながら異様なまでのこだわりと熱量で作られているという、何と言うか、思わず応援したくなってしまう、愛したくなってしまうような映画でした!
つまり、まとめると、物凄くぶっ飛んだ物凄くカオスな面白さに満ち溢れて、4時間があっと言う間に終わってしまうという驚きの映画、観られて良かったです!
上映後には、主演女優の有森也実さん、監督の片嶋一貴さん、脚本家の中野太さん(新潟出身)の舞台挨拶もありました!
一体どんな話が聞けるんだ?と思ったのですが、いきなり映画とまったく関係ないアルビレックス新潟の話を始める片嶋監督!
さらに、中野さんはなんとワンカップを飲みながら泥酔しての舞台挨拶で、「俺は新潟なんて嫌いだったんだ!」とクダを巻き始めたではないか!
そんな二人にツッコミを入れながらも、この映画への思い入れを丁寧に語る有森さんは、とても穏やかで素敵な方でした。
その後、監督が中心となって撮影のエピソードを語ってくれたんですが、撮影はすべてのシーンを鹿児島県内で行っており、物語の舞台が次々と変わっていく映画を同じ鹿児島県で撮るために色んなアイディアで工夫していた様子が面白かったです。
ただ、なかなか撮影は簡単ではなく、映画内での時系列に関係なくバラバラに撮影したため、梓の変化を表現するのが大変だったらしいですが、それを編集によって一つの物語を作り上げられるのが、まさに映画の魔法という話も興味深かったです。
と、そんな映画の撮影裏話をしているにも関わらず、途中で何度も「俺は新潟が嫌いだったんだ!」と酔っ払ってぶっこんでくる中野さん!
正直、そういう新潟ならではのエピソード、僕は大好きなので超楽しかったんですが、映画同様にまさしくカオスな舞台挨拶だったなあと思います。
パンフレットを購入すると、三人からサインをしていただいたのですが、サイン中にも酔っ払う中野さん!
めちゃくちゃ目立ってる!
サイン会後に、有森さん、片嶋監督を撮影させていただきました!
監督、さっそくビールを飲もうとしているじゃないか!
そして最後に、有森さんとも記念撮影させていただきました!
本当にありがとうございました!