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舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

遠藤麻理さんおすすめの本、ソン・ウォンピョン「アーモンド」読みました。

2020-07-13 23:08:55 | Weblog




ソン・ウォンピョン「アーモンド」



6/17(水)に北書店から配信された「エンマリ&ともちぃのブックトーク」で遠藤麻理さんがおすすめしていて、北書店で購入しました。
エンマリ&ともちぃのブックトーク 第二巻、配信で開催!



6/17(水)に北書店から配信された「エンマリ&ともちぃのブックトーク」で遠藤麻理さんがおすすめしていて、北書店で購入した本。

生まれた時から喜怒哀楽、恐怖や憎悪など、あらゆる感情を持たない男の子、ユンジュ。
タイトルの「アーモンド」とは感情を司る脳にある偏桃体のことで、彼の偏桃体は生まれつき人より小さいことが病院の検査で発覚する。

若くして妊娠してユンジュを生み、出産前に夫を事故で失っていたユンジュの母親は、泣きも笑いもせず、恐怖も感じない我が子に戸惑い、絶縁状態の母(つまりユンジュの祖母)を頼る。
ユンジュは、再会した祖母と母と共に暮らし始め、祖母と母は常に衝突し喧嘩の絶えない家庭ではあるが、それでも二人はユンジュのことを大切に育てる。

母は、感情のないユンジュが社会でうまくやっていけるようにと、対人関係において身につけておくべきスキルを教え込もうとするが、ユンジュはそもそも感情がなく、人の気持ちを察するという発想がそもそもないために戸惑う。
祖母はそんな母の教育をバカにしながらも協力し、感情を持たないユンジュを「怪物」と呼びながらも愛する。

ユンジュが15歳の誕生日、3人が食事をした帰り道、通り魔に襲われて祖母が亡くなり、母が植物状態になってしまうが、それでも、ユンジュは何の感情も抱くことはなかった。
…と、ここまでが第一章。

第二章では高校に進学したユンジュが、少年院上がりの不良で問題児のゴニに目を付けられいじめられるが、やがてゴニはユンジュをおじめることよりも興味を抱き始め、不思議な関係が生まれていく。
そして第三章では、誰とも馴染まずに好きな陸上ばかりをしているクラスメイトの女の子、ドラと出会ったユンジュの中で、自分でも理解できない何かが芽生える。

これ以上あらすじを書くと本の内容を全部書いちゃいそうなので止めますが、めちゃくちゃ面白かったです。
まず、感情を持たない人間が主人公で、彼の一人称によって物語が進行するという設定からして、普通に感情のある自分(というか、大半の人達)とは全然違う人間の頭の中を疑似体験するという、本当に読書でしか味わえない体験を味わうことができました。

でも読んでいると、自分にとっての「普通」が、世間一般の「普通」とかけ離れているために、理解できないルールを覚えないといけなくて、そうしないと世間から変な目で見られる生きづらさは、自分も理解できるなと思いました。
また、ユンジュには普通の人のような感情はないとは言え、毎日意識のない母の病床に通い、亡くなった祖母を想い、自分や家族を支えてくれた人に感謝し、彼なりのやり方で自分の家族や出会った人達を大切にして生きていることが伝わるのです。

第二章から登場するゴニが、手の付けられない不良に見えて実は自分でもコントロールできないほど感情の起伏が激しい人間であるというユンジュと対照的な人間として描かれているのも面白かったです。
最初はユンジュをいじめていたゴニが次第にユンジュに対していじめるよりも興味を持ち始め、自分を嫌わないユンジュに好意を抱いていく、正反対の2人が妙に仲良くなっていく下りも面白さと感動がありました。

第三賞では、感情を持たなかったユンジュが、生まれて初めて恋愛にも似た何かを抱き、さらに第四章では、自分の身を犠牲にして大切な人を守ろうとする行動に出ます。
この物語では、人と人は簡単に分かり合えたりしませんが(何しろ、主人公に感情がなく、相手の感情を理解できないのでだから)、それでも、たとえ分かり合えなくても、誰かを大切に想ったり、誰かのために行動したりすることはできるのだと考えさせられ、深く感動しました。

そもそも文章が非常に読みやすく、物語もテンポよく進むので、ユンジュンの身の回りに色々な出来事が次々と起こり、それによって彼の中に新しい発見が生まれ、少しずつ見える世界が変わっていく、つまりは成長していく、という物語の面白さがストレートに伝わってきて、楽しく一気に読んでしまいました。
物語の中では人の死などの悲しい出来事も起こるのですが、寧ろ世の中の残酷さから目を逸らさないことでこの物語の世界がより深くなっていたと思うし、最後まで読むと人が成長すること、もっと言えば生きていることそのものをとても前向きに描いているところに、強く感動しました。
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