舞い上がる。

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ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

映画「めぐみへの誓い」観てきました。

2021-07-23 23:31:33 | Weblog


7/23(金)、シネ・ウインドで「めぐみへの誓い」を観てきました。





予告編はこちら。



拉致被害者の横田めぐみさんを描いた映画です。
実話を元にしたフィクションということで、実際の映像を使ったドキュメンタリーとかではなく、ドラマとして役者さんが演じています。

映画の感想を書いていく前に、大前提として、僕は北朝鮮の拉致事件は決して許されない犯罪であり、最低最悪の人権侵害だと思います。
被害者の方々は一日も早く帰国してほしいし、一人でも多くの方にこの問題を真剣に考えてほしいとも思います。

だから、この映画によって拉致事件のことを考えてくれる人が増えれば…という気持ちで観に行きました。
実際、シネ・ウインドで5月から8月まで異例のロングラン上映をしているし、こういう映画が横田めぐみさんの出身地である新潟で上映されることも意味があるのではないかと思いました。

しかし、実際に観た感想として、拉致事件という重くて複雑なテーマを扱っているのに描き方が浅いし雑すぎるし、拉致事件を描くという意味でも映画としても良くないし、この事件を扱うのであればもっとちゃんと映画化するべきだったと思いました。
テーマがテーマだけに批判的な感想を言いにくい映画なんだけど、書いていくことにします。

まず冒頭、横田夫妻がめぐみさんのチラシを配る場面で、嫌な絡み方をする人達が登場します。
実際、こういう失礼な人達はいたのだと思うし、それは本当に気の毒だと思うのですが、この映画での描き方が、「絶対そんな奴いないだろ」という不自然さがすごいんですよね。

映画だから誇張しているのかも知れませんが、現実にあった問題を描くのであれば出来るだけリアリティは大事にしてほしかったし、これでは横田夫妻を可哀想な人達に過剰に演出しているように見えて、かえって不謹慎に思えてしまいました。
もし描くのであれば、例えば遠くから勝手に携帯で撮るとか、もっとリアルな失礼な描写が絶対あったはずだと思うんですよ。

そのあと、めぐみさんの幼少期&高校時代が描かれるんだけど、ここで登場するめぐみさんとその弟達を演じた子役達の方が、さっきの変な絡み方する人達よりもよっぽど演技上手いんですよ。
だからこの場面は映画で唯一ちゃんとしていたと思いました。

いや、クラウドファンディングで作られた低予算な映画だと思うし、有名な俳優をあまり使えなかったという事情は分かるんですよ。
でも、低予算でも、役者が無名でも、いい映画なんてたくさんあるし、それだけにもっとやり方なかったのかよと思ってしまいました。

そのあと、北朝鮮の工作員が日本でのスパイ活動や拉致をする場面が登場します。
これも調査に基づくものということにはなっていますが、映画を見ただけだとどこまでが事実でどこまでが創作なのか分からないんですよね。

だから、何も知らない人が見て、これが真実だと信じてしまってはかえって良くないんじゃないか…という危険も感じました。
さっきも書いたようにこれは事実に基づくフィクションということですが、こういう映画こそ、その境目をちゃんと描く必要があるのかなと思いました。

ただ、めぐみさんが拉致される場面や、それ以降の北朝鮮に拘束される場面は、本当に見ているだけでつらくなってしまうものだったし、たとえ想像でもこういう映画があることでめぐみさんのことを考えてくれる人がいれば…と思う部分がないわけではありません。
「北朝鮮ならやりそう」と思う部分もありましたが…ただ、ここでもやっぱり、現実に基づく部分とフィクションの部分の境界が曖昧であるが故に、過剰な演出によって不必要な差別意識を煽ってしまうのではないかと危険を感じる部分もありました。

一番良くないと思ったのは、拉致事件の背景にある日本と南北朝鮮との関係悪化やその歴史の描き方が物凄く雑だったこと。
事実として、日本は朝鮮半島を侵略していた歴史があり、その歴史とどう向き合いどう国交を正常化していくかは、国際的にはもちろん、日本国内だけでも色んな考えのある難しくて複雑な問題ですよね。

でもこの映画は、その問題(日本の加害性の歴史)を北朝鮮の工作員にめぐみさんを暴行しながら言わせてしまうわけです。
これでは、北朝鮮が全部悪い!日本は被害者!という単純な構図に落とし込んでしまう危険があると思うんですよ。

いや実際、拉致は絶対悪いんだけど、そこには複雑な背景があるはずなんですよ。
現実社会は単純に正義と悪に分けられるものではなく、娯楽映画なら単純化した勧善懲悪でもいいけど、こういう社会的に重いテーマを扱っている映画であるなら、その複雑で多面的な現実こそ目を逸らさずに描く必要があると思うのです。

だからこそ、こんな雑な描き方は絶対良くないと思いました。
仮に日本側の問題を描くなら、日本人側の台詞として描くべきだったとも思いました。

そしてこの映画はクラウドファンディングで作られています。
出資した人達は、横田めぐみさんに早く日本に帰ってきてほしい、この問題を真剣に考える人が増えればいい、という気持ちから出資してると思うんですよ、その結果が、こんな雑な映画でいいんでしょうか…そういう意味でも良くないと思いました。
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