羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

俺物語!! 1

2015-05-21 21:48:18 | 日記
「猛男く~ん!」「大和ぉッ!」ある日、例にして猛男と大和が会っただけで喜んでいると、ザザッ! 茂みから屈強な柔道着姿の男二人が突然現れた!! 二人とも靴は履いており、一人は右足に包帯を巻いていた。「お前が一年の剛田猛男だな」「ちょっと話が有る」風が吹きすさび、猛男は大和を庇うように構えた。後ろには一応砂川もいた。(心配するな、大和。お前は俺が守る。お前を守る盾となるッ)柔道着の男達は姿勢を低くした! 1歩、踏み込む猛男! 柔道着男達は、土下座したッ!!
「頼む剛田ぁッ!」「助けてくれぇ!」「わかったッ!!」即答する猛男!「まだ何も話、聞いてねーよ」砂川が突っ込んだ。「男が頭下げてんだ。断れねーだろ? しかも二年が一年の俺に」「猛男くん、格好いい!」猛男なら、もうなんでも格好いい大和。「で、頼みってなんスか?」柔道部の二年生達はペラペラと事情を解説し出した。曰く、一ヶ月でいいから柔道部に入ってほしいという。今月末、ライバルの尾安化高校との試合が有るが、今、頼みにも来ている代表の一人が怪我をしてしまい、圧倒的に不利ッ! 尾安化とは9勝9敗。10勝勝ち越しを先に取りたい、猛男の力を借りたい。と、いうことだった。
長い説明にフンワリしていた猛男だったが、「俺は一ヶ月後の試合に勝てるよう、努力すればいいんスね!」大体は伝わってた。「ありがとう剛田!」「俺、やるっスッ!」「じゃあ早速明日の朝練から」「ウスッ!」シンプルな猛男。「頼んだぞぉ~!」柔道部の二人は一人が怪我してる方を担いで駆け去って行った。
「助っ人頼まれるなんて凄いねぇ! 猛男くん、柔道やってたのぉ?」「中学までな」「全国大会とか、出てたよなぁ」「え? 凄ぉい! 格好いい!」柔道部達が去った後、3人は連れ立って帰っていた。
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俺物語!! 2

2015-05-21 21:48:10 | 日記
「どおして高校ではやらないのぉ?」「入り忘れたんだ」ざっくりした理由。「いいんじゃない? お前もう十分強いし」なぜか女子的発想の砂川。「いや、まだまだ強い奴はこの世に一杯いる!」「人類の強い順に並べたら、かなり上位に入るのは間違いないけどね」「何位くらいかなぁ?」大和が乗ってきた。「まだまだだなぁ、カレリンとかいるしなぁ」まず、競技者にならんとね。「それはいいけどさ。お前試合の稽古するんだったら、しばらく大和さんに会えなくなっちゃうんじゃない?」女友達みたいな砂川! 猛男と大和は顔面蒼白になった。
「そっかぁ。済まない、大和」「猛男くん、ウチ平気!」中の人の声がひっくり返りそうな大和!「協力してあげて! 頼まれるなんて凄いもん! それにウチ、猛男くんが柔道しているところ見たい」衝撃を受ける猛男!(好きだぁッ!)「どうしても会いたい時はすぐ言ってくれ。すぐ行くから!」「来てくれるんだぁ。うん! ウチ、応援してるからさ、大丈夫だよ。がんばって、猛男君!」「うん」猛男は力強く頷いた!
翌日から、猛男は学校の柔道場で稽古を始めた! 受け身! 腕と足の指だけで這いずって進む初心者は腕の皮がズルズルになる例のアレ! 部員相手の打ち込み!「始めッ!」乱取りでは背負いで綺麗に相手を投げた!「おお~ッ!」感心する部員達。「よし、次は俺だ!」続いて挑戦してくる部員! 結構自由に相手を選べる乱取り!(俺は! やるぞ! 大和ぉッ!!)挑む部員達を投げる! 投げる! 絞める!!「剛田ぁ~ッ!」「俺達の為にッ」猛男の奮闘に部員達は男泣きした!「俺達もやるぞ!」「おうッ!!」気合いを入れる部員達だった。
「ありがとうございましたぁッ!!」全員で挨拶し、夜まで続いたその日の稽古は終わった。久し振りぶりの鍛練にまだ収まりが着かず、軽く腕を回しながら猛男が帰っていると、電柱の
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俺物語!! 3

2015-05-21 21:48:03 | 日記
街灯の下でポツンと大和が待っていた。「大和?!」「猛男君! お疲れさま」猛男は慌てて駆け寄った。「急に来てごめんね」「何か付いてるぞ?」猛男は大和の髪に付いていた小さな花を取った。「さっき、内緒にしようと思ってたんだけど、練習覗いちゃった」柔道場の床近くの窓から練習を見て、見とれていた大和。花がどこで付いたかは不明。
「格好よかったぁ。あ、これ差し入れ。おにぎりだよぉ、お菓子以外も作れるんだよぉ」(大和ぉ)感動していると、「ワオーンッ!」犬の鳴き声! 振り返る猛男、道の暗がり!「朝から一杯作っちゃった」呑気な大和! 痴漢出没注意の看板! 心配になる猛男!「ん? 猛男君?」「ありがとう大和」猛男は大和の差し入れの入った手提げ鞄を受け取った。「だが、ここへは来るな」「え?」「行こう、家まで送る」デカ過ぎる猛男は画面からハミ出したまま歩き出した。(暗くて危ないからな。もしここで大和に何かあったら、俺は一生後悔するだろう)口には出さない猛男。大和は気落ちした顔で猛男に続いた。
木編みの弁当籠を開けると、おにぎりが12個入っていた。箱の底と側面には野菜柄の紙? の仕切りが入れられて米粒が籠に付かないようになっている。おにぎりの海苔は下から一枚ぺろんっと軽く巻いてあった。ジャージの部屋着の猛男は手を合わせた。「頂きます!」かぶり付いてく猛男。「鮭だ。こっちは梅だ。タラコだ。筋子だ。焼き肉だ。ツナマヨだ! こんなにたくさん、小さな手で、ホカホカ御飯は熱いのに」具だくさんで種類豊富なおにぎりに泣けてくる猛男。(旨い! 大和ぉッ)涙を拭う猛男。「うおぉぉッ!!!」猛男は高まる感情を叫んだ。
その夜、猛男はタイヤを引いて走っていた。大和へのメールは『おにぎり、最高だな。ありがとう、ごちそうさま』返事は『よかった~。おなか減るよね。
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俺物語!! 4

2015-05-21 21:47:56 | 日記
いっぱい食べてがんばってね』(俺は全力でやるぞぉッ!)猛男は走った!! 翌日からも稽古に励む猛男! 大和からのメールは『たけおくん、がんばってる? 今日学校の花がたくさん咲いてて、チューリップしか名前わかんなかったけど、今度植物園とか行きたいね』返事は『行こう』
猛男の稽古は家でも行われた! 例の謎柄の緑のパジャマの猛男はブリッジをし、その腹に母がアイロン台を置き衣類にアイロンを掛けた!「猛、あんたコレ、ちょうどいいわ」元アスリートの母! 心得てる!! 夜は夜で、タイヤの数を増やし、走り続ける猛男! 大和からのメールは『今日は星みえない。明日は雨かなぁ。たけおくん、傘持っていったほうがいいよ。たけおくんの傘、どんな傘?』猛男の返事は『黒くででかい』実際雨が降ると大き過ぎるコウモリ傘を差している猛男。「お前、それビーチパラソルだよね」突っ込む砂川!
また別の日、柔道場で天井から吊るしたロープを昇る猛男! 大和からのメールは『たけおくん、ケガしないでね。今から念を送るよ。ケガしない、ケガしない~』返事は『届いたぞ! ありがとう!』さらにフィジカルが高まった猛男! タイヤを引きながら階段を駆け上がる!!大和からのメールは『ガンバレガンバレ、たけおくん~。凛子、24時間応援中』返事は『おう!』
そんなある日の夜。砂川の家に大和が訪ねてきた。「何それ?」大和は大きな紙袋を二つ抱えている。「スコーンです」袋の中身はハート型のプレーン?スコーンで一杯だった。「猛男君のこと考えてたら、無心で作っちゃってて」若干引く砂川。「よかったらどうぞ」渡してしまう大和。「あ、ごめん! 余り物みたいで、そうなんだけど」「普通に猛男に上げればいいじゃん? 全部食うでしょ、あいつ」「う、ウチ」泣き出す大和。「猛男君に嫌われたかも!」
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俺物語!! 5

2015-05-21 21:47:48 | 日記
「ないでしょそれは」呆れる砂川。「でも、来るなって言われて、調子に乗って差し入れとかしたからかなぁ、よっぽどだったのかなぁ」「いや、それ絶対大和さんの誤解か考え過ぎ。100%そんなことで怒る男じゃない」「そっかぁ、そうだよね!」泣き止む大和。「猛男君はそうだよね。落ち着いて考えたらそうだ。砂川君、ありがとう」「思い詰めなくていいと思う」「ウチねぇ、恋したの、初めてなんだぁ」マンションの廊下の手摺に手を掛ける大和。「猛男君に会って、初めて奥の方から気持ちが、わあって湧いてきてね。そっか、これが恋なんだって。毎日ドキドキしてニヤニヤして、会う度やっぱり好きだなって思って」「俺も初めての友達ってことで、お互いアレが初めてって強烈だよね」「もうウチ、猛男君が好き過ぎて自分が気持ち悪い! 早く落ち着きたいよぉ」「10年以上一緒にいるけど、まぁまだ飽きないよね」砂川、『彼女』に同調し過ぎ!
「どうしよう、ウチ、一生ドキドキしてるかも」「猛男なら、一生一緒にドキドキしてくれるんじゃない?」猛男の家のドアを見る大和。猛男の家の表札は『剛田!!』。「会いたいなぁ、猛男君」「会ってけば?」「ううん! 1回会ったらまた会いたくなっちゃうし、我慢する! 邪魔したくない!」「邪魔だとか、思う奴じゃないと思うけどね」「練習してる猛男君、格好よかったなぁ」「試合になったらもっと格好いいよ」「え? あれよりも?!」「集中力の塊になってる」「ふぁ~ッ! どうしよう、ウチ大丈夫かなぁ。あ、あの星! 猛男君みたい!!」手摺越しの夜空、大和があの星の並びが猛男に似ている、この星の並びが似ていると指差すと、最初は「猛男座」等と冷やかしていた砂川も「星座って、みたいモノが見えるんだよね」と呟き、大和の差す星の並びが砂川にも猛男に見えてくるのだった。
     6に続く