羊日記

大石次郎のさすらい雑記 #このブログはコメントできません

アルスラーン戦記 6

2015-05-27 21:54:25 | 日記
積み上げた岩を崩し、崖下に転がし落とした!「ダリューンだ! マルズバーン(万騎長)ダリューンが突っ込んで来るぞッ!!!」エラムが叫んで煽ると、転がり落ちる岩の音と振動も合わさり、大軍の進行とカーラーン隊に錯覚させた!!「ダリューンだとぉ?!」「ダリューン!!」「来たぁッ!!!」元々混乱していたカーラーン隊は勝手に退散し始めた!!「こらぁッ! お前達逃げるなッ!!」士官達が制止してももはや隊の離脱の流れは止められなかった!「あやつの悪名を利用したらこうも効果覿面とはな。後は頼んだぞ、ダリューン!」斬り込みから早々に引き上げ、高所で事態を見ていたナルサスは言った。
「凄い、兵が引いてゆく! 千人からの兵をたった数人で!」アルスラーンも崖の上から混乱し、撤退するカーラーン隊を見ていた。「おのれぇ、どけぇッ!!」逃げる兵に構わず、カーラーンはアルスラーンに向かって崖を駆け上がった! 兜を被ったダリューンはやや離れた場所でそれに気付いた。アルスラーンは矢を放ったが、カーラーンはそれを槍で弾いた! 矢も、尽きた! カーラーンは馬の嘶きと共に崖を駆け上がり切った! 対峙するアルスラーンとカーラーン!
「カーラーン、お主に尋ねたい。マルズバーンとして、いやそれ以前からパルスの騎士として! 誰にも後ろ指を指されることが無いお主がッ! なぜルシタニア等に膝を屈したのか?! 欲に釣られたとも思えぬ。理由が有るなら、是非教えてくれ!」「知らぬがお主の為だ」カーラーンは槍を構えた!「このカーラーン、醜悪な裏切り者と信じて死んでゆくがいい! アンドラゴラスの呪われた子よッ!」カーラーンが突き掛かろうとしたその時! アルスラーンはわかっていた! 騎乗の黒衣のダリューンが間に押し入る!!「ダリューン!」
     7に続く

アルスラーン戦記 7

2015-05-27 21:54:18 | 日記
「殿下、よくぞここまで我慢なされた! 後はこのダリューンに任せて御下がり下さい!」「ああ!」槍を構えるダリューン!「貴様の相手はこの俺だ! カーラーン!!」「ダリューン!」激しく槍で撃ち合うダリューンとカーラーン! 数歩馬を下がらせるアルスラーン。「でぇああッ!」槍を突き出すカーラーン! ダリューンがこれを避け、槍で払うと、カーラーンは片手で槍を旋回させ、刃先で斬り付け、避けられ撃ち返されるとこれを受けた! さらに一撃受けると、カーラーンは馬を駆けさせた。追うダリューン!
「ダリューン」二騎の行方に気を取られていると、まだ諦めていないカーラーン隊兵の一騎が崖を駆け上がり、アルスラーンに斬り掛かって来た!「ヤアァッ!」驚き剣を構えるアルスラーンだったが、兵は首に矢を受けて仕止められた! 矢は、覆面を付けた薄着の騎乗の女、ファランギースの物だった。ファランギースは無言で礼をした。
崖の道でダリューンに追い抜かれたカーラーンは馬上で槍を突き出した!「うぇあッ!」弾くダリューン!「ユゥアッ!!」両手で槍の強力な突きを撃つダリューン! カーラーンは受け切れず槍先が兜を掠め、火花が散る! 横薙ぎにもう一撃! 体勢を崩され、馬まで反動で後退させられるカーラーン! 崖の端まで追い込まれた! 崖下の混乱する自分の隊を見下ろすカーラーン。「もはや、隊列の立て直しようもないか」部下を気にしてる場合じゃないカーラーン! 下がる構えを見せるカーラーン!「逃げるかカーラーン! 年端もゆかぬ相手取るだけが、貴様の武勇か?!」「青二才がッ! ヤオアアァッ!!」互いに突進し、槍先の辺りをかち合わせ、交錯するダリューンとカーラーン! カーラーンは黒の外套をはためかすダリューンの後ろを取った!(背中! 取った!!)カーラーンが勝利を確信し、追い撃ちしようとすると、
     8に続く

アルスラーン戦記 8

2015-05-27 21:54:10 | 日記
「ぬんッ!!」ダリューンは外套越しに槍の石突きをカーラーンの胴に打ち出した!!「かぁッ?!」馬上で仰け反るカーラーン! 息を呑む見物中のアルスラーン!「うぐぅッ」カーラーンは馬から落ちそうになるが槍先で岩の間を突いて体重と反動を支えようとした! ギチィィッ! 槍の柄がしなる!「しぶとい」呟くダリューン。「まだだ、まだ!」バキィッ! カーラーンを支える槍先の柄が折れた!!「どぅあッ?!」落馬するカーラーン! 崖の段差部分に滑り落ちた!!
「んんッ!」兜を落としても起き上がろうとするカーラーンだったが、胸元から大量の出血が! 折れた槍先が突き刺さっていた!! アルスラーンは馬をカーラーンの元へ走らせた!「グバァッ!」カーラーンは血を吹いた!「カーラーン!」ダリューンは馬を降り、カーラーンの元へ駆け寄った。ナルサスもどこからともなく駆け寄って来た。「王はどこにおられる?!」血を吐くカーラーンに問うダリューン。「アンドラゴラス王は生きておる。だが、王位は既に奴のモノでは無い! 正統な王が即位なされる」「正統な王だと?」ダリューンとナルサスは顔を見合せた。
アルスラーンも馬を降り、駆け寄って来た。「カーラーン! 死ぬな、カーラーン! 死んではならん!!」叫ぶアルスラーン。カーラーンは周囲を見回した。ファランギースやエラムやギーヴも遠巻きにしている。(女、子供に、こやつ、地下道の。偏屈で宮廷希代のこやつも付くとは、全く、この王子)「死ぬな、カーラーン! 生きよ!!」叫ぶアルスラーンにカーラーンは微笑み、王子の膝に手を置いた。「お主の、命令は、聞けぬッ!」さらに血を吐き、カーラーンは息絶えた。「殿下」「アンドラゴラス王は生きておられるそうです」「父上が?!」「それ以外、聞き出せませんでした」「父上が生きておられた」
     9に続く

アルスラーン戦記 9

2015-05-27 21:54:01 | 日記
「殿下、生きておられればいつか御会いできましょう。ルシタニア軍が今日まで王を生かしているとすれば、相応の理由が有るはず! この先も無下に害を加えることはございますまい」「うむ」立ち上がったアルスラーンの元へファランギースが歩み寄って来て、覆面を下げた。「アルスラーン王太子殿下、先程は馬上から失礼して致しました」膝を突くファランギース。「我が名はファランギース。クゼスターンのミスラ神殿に仕えていた者です。先代のカーヒーナ長の遺言により、参上致しました」「礼を言うファランギース。先程は危ういところを助けてくれた」ギーヴも前に出てきて膝を突いた。「お主は?」「王都エクバターナより、殿下にお仕えする為に脱出して参りました」冷ややかなファランギースの視線!「殿下、タハミーネ王妃様は私が脱出するまでは御健在でした」「本当か?! 詳しく聞かせてくれ!」「カーラーン隊の残党が戻って来ては面倒です。場所を変えましょう」ナルサスは落ちておた松明を広いながら言った。
「少し待ってくれナルサス。ファランギースに頼みが有る。カーラーンとその部下達の死に、弔いの歌を捧げてくれないか?」驚くファランギースとギーヴ、エラム。「エクバターナに家族がおるものも有ったてであろう。それでも裏切りに加担せねばならぬだけの理由が有ったのだと思う。ミスラ神は契約と神記? の神だが軍神でも有る。どうか、戦士を弔う神の歌を」「承知しました」ファランギースは崖の端まで来ると両膝を突き死屍累々の谷底へ向かい弔いの歌を歌った。空が朝日で白染み始める(裏切り者に弔いとは、本当に甘っちょろい王子だ。今の王宮にはロクなのがおらんなぁ)ギーヴは内心呆れていた。(差し当たり、ファランギース殿の側にも居られるし、窮屈になったら逃げ出せばいい、か)「よろしくな」睨むエラムに
    10に続く

アルスラーン戦記 10

2015-05-27 21:53:52 | 日記
軽く言って益々苛立たせるギーヴ。
「四人が六人だ。ま、戦力が五割増大した訳ではあるが、果たして信頼を寄せていいものか? 特にあの男」「腕は確かだったぞ? ルシタニア軍30万いるとして、一人で五万人片付ければいい訳だ。随分楽になったではないか」「確かに、五万なら俺一人でなんとか」(ほんとにやりそうだなこの男)「さて、本格的に王と王妃の所在を確かめねばならない。行くか、エクバターナへ!」朝日の中でファランギースは歌っていた。
エクバターナの地下牢には、アンドラゴラス王が繋がれていた。全身に拷問の痕が有る。「アンドラゴラスよ、俺が誰だかわかるか?」銀仮面が牢の前に来ていた。「教えてやろう。聞き覚えの無い名ではないはずだ。俺の名はヒルメス! 父はオスロエスだ」「ヒルメス」「そうだ、ヒルメスだ。先王オスロエスの嫡子で貴様の甥だ。そして、パルスの真の国王だ!」仮面を取るヒルメス。「よく見ろ、顔を背けずに! 16年前に貴様が犯し大罪の証をよく見てみろ! 俺こそがパルスの、正統な王だ!!」ヒルメスは仮面を付け直し、去って行った。「フフフッ、ハハハハ! アハハハッ!!!」アンドラゴラス王の哄笑が地下牢に響いた。
・・・いくつか抜くと、カーラーン隊のお間抜けぶりが目立つね。ファランギースが歌い出すと急に少女風だったり、アンドラゴラスの笑い方が、ちょっとアレ? ってのもあったな。しかしカーラーンの思わず笑って膝に手を置いてしまう人情なんかはいい描写だった。合掌ッ!