「帰朝記念 田中希代子 ピアノ独奏会 〔昭和三十年:一九五五年〕 9月9日 (金)6時半 名古屋市公会堂 主催 名古屋中央放送局、ラジオサービスセンター 後援 毎日新聞中部本社」とある。18.5センチ、二つ折れ。
国際コンクールの檜舞台で華々しい活躍をみせた田中希代子嬢は去る6月、5年ぶりに故国へ帰つた。そして今秋再びフランスにのぼる彼女の滞在は、まことに短い期間ではあるが、日本の楽壇に与えた影響は計り知れないものがある。今やヴァイオリンの江藤俊哉氏と並んで彼女の活躍は我々日本人の最も大きな期待であり、誇りでもあろう。
ターゲ・ブラット紙アルベルト・マース記
希代子はベートーヴエンを魅力的な輝きを以つて弾き、そのピアニシモのパッセージは、まるで真珠のつながりのようであつた。印象派ドビュッシーの曲に至つては素晴らしいものであつたが、ショパンのものに於ては、この、もの静かな年若い日本のピアニストは絶頂に達した。このような演奏は近来に稀なもので全く魅力的であつた。
田中希代子略歴
昭和19年 井口基成氏に師事
20年 クロイツアー氏に師事
23年 安川加寿子さんに師事
24年 第18回音楽コンクール入賞、特賞を受く
25年8月 フランス政府給費留学生として渡仏
同年9月 国立パリ音楽院に入学、ラザール・レヴィ教授に師事
26年7月 プリミエル・ノンメ(特賞)を得て卒業
27年秋 第八回ジュネーブ国際音楽コンクール女子部第二位(第一位空席)に入賞
28年2月 パリ・ザール・カボウに於て、第一回独奏会を開催絶大なる好評を受く
28年5月 ジュネーブに於ける世界的なロン・テイボー国際コンクールに於て第四位(女子第一位)に入賞
30年3月 ポーランド、ワルソーに於けるショパン・コンクールに於て第十位入賞、日本人は初めての入賞であつた。
プログラム
Ⅰ a) ロンド ハ長調 作品51 ‥‥ ベートーヴェン
b) 奏鳴曲「ワルドシュタイン」 ‥‥ ベートーヴェン
Ⅱ a) ノクターン ヘ長調 ‥‥ シヨパン
b) 三つの練習曲 作品25の6.2.8番 ‥‥ 〃
c) バラード第4番 ‥‥ 〃
Ⅲ a) 西風のみたもの ‥‥ ドビュツシー
b) 雲の上の足跡 ‥‥ 〃
c) パツクの踊り ‥‥ 〃
d) 霧 ‥‥ 〃
e) 花火 ‥‥ 〃
Ⅳ a) 演奏会用練習曲 第2番 「軽快」 ‥‥ リスト
b) メフィスト・ワルツ ‥‥ 〃