お茶の水女子大学は明治七(一八七四)年の創立以来、中村敬宇・倉橋惣三・及川ふみ・周郷博らから、幼い子どもの教育についての先進的な発言がなされてきましたが、最近、江戸時代の育児を省みることを通して現代の子育てについて優れた示唆を与えてくれる研究者が出てきています。
かつて江戸の昔、医療の未発達のために子どもたちが幼くして命を失う中、人々は「七歳までは神のうち」と、子どもを「神」ととらえることによりその死をあきらめて来、さらに大人にはとらえきれないさまざまな子ども独自の性癖を温かく見守ってきたこと。
また、子どもが疱瘡や胎毒にかかった時の対応や看護を通して子どもとのかかわりを深めていったことなどを、当時の文献を解き明かすことにより紹介するという注目すべき仕事が生まれてきています。
そしてわたしたちに、子どもの心をとらえる際の姿勢を問いただすとともに、現代の子どもたちの心のひ弱さの原因のひとつが、江戸の子どもたちのように、幼い時「生」と「死」をかけて闘うことをしなくてもよくさせられている現状にあるのではないかと提起し、現代の子育ての困難さと課題を示唆してくれています・・・。
参考文献
◇異文化としての子ども:本田和子著
◇私たちの「江戸」:本田和子・皆川美恵子・森下みさ子共著
-中村 光夫-