◆セキュリティ・クリアランス(適性評価)って、なに?
政府が機密情報と指定した情報を取り扱う人は、セキュリティ・クリアランスを受け、漏洩の惧れなしと判定されたものに限る――驚くべきことには、本人のみならず、家族、同居人もセキュリティ・クリアランスの対象になる。
調査内容は、「特定秘密保護法」と同じ7項目。
薬物は、違法薬物だけではなく、医師からの処方薬も入るとの説明もある。
精神疾患の病歴等、秘めておきたい過去をさらけ出させる、プライバシー侵害のとんでもない身辺調査。
さらには、集めた膨大な量の個人情報は、総理大臣のもとに創設される日本版CIAが集積し、一元管理する話も浮上している。
確かに「特定秘密保護法」で、このセキュリティ・クリアランス(S・C)は、実行されている。
しかし、対象になった人の9割は、自衛隊員、公安警察官で公務員、政府機関に出向者、軍事産業関係者、それなりの覚悟を持ってその職業に従事している人たち。
今回の「経済安保情報保護法」では、国家機密とは全く関係なかった基幹インフラで働く広範な民間企業の従業者が対象に入る、大学や研究所の研究者も対象にされる。
S・Cは任意だという。
しかし拒否したら、その研究から外される、その職場、チーム、ポストにはいられない、退職勧告されるかもしれない。
研究者の場合、研究内容が、機密と指定されれば、論文を公表できなくなる。
研究は公開され、自由な検討が命でしょう。
「この法案が成立したら、軍産学共同体の軍事国家が出現します。産業の自由な発展、学問の自由、表現、言論の自由が、窒息させられます、監視社会が現実化します」と海渡雄一弁護士は警鐘を鳴らします。
◆大川原化工機冤罪事件は、「経済安保情報秘密法」の先取り事件
細菌兵器など軍事に転用可能な乾燥噴霧器を中国に不正輸出したと大川原化工機の社長を含む3人の幹部が逮捕、11カ月も拘束された。
この間Aさんは末期の胃がんが見つかり、十分な治療を受けられず死去。
そもそも乾燥噴霧器内の温度が細菌を滅菌するほど上昇しないことは分かっていて、軍事転用はあり得なかった。
都合の悪い証言は無視、曲解し、捏造し、公判直前までいったが、検察は2021年7月公判4日前、起訴を取り下げた。
9月、大川原化工機が、国賠訴訟を東京地裁に提訴。
2023年12月民事裁判で、裁判所は、公安と検察の捜査の違法性を認め、1億6千万の賠償金を命じた。
ところが、2024年1月、国と東京都は控訴した!!
この大川原化工機事件を立件捜査した公安警察官、「渦中の人びとの今」を東洋経済デジタル版(4月18日号)に、山田雄一郎記者が書いている。
「(この件で)公安部外事1課は、警視庁長官賞、警視総監賞を受賞した。(さすが、2023年7月に自主返納)。しかし捜査を主導したM警部は警視に、A警部補は警部に昇進。『従業員は温度が上がらないといっているのだから、もう一度測ったほうがいい』と進言したT警部補、法廷で 『捏造だった』と証言したH警部補は、昇進がとまったままだ」
つまり、公安警察が、政府が軍事的にも経済的にも敵国とみなした中国にたいして、今まで通り取引をしている企業を狙い定めて、陥れた冤罪事件です。
東京地裁でも違法性が確定したのに、担当の公安警察官、上司たちは罪に問われていない。それどころか、彼らを出世させている。
ということは、この経済安保秘密保護法の下、公安警察により、とんでもなく恐ろしい冤罪事件が起こる!
あの治安維持法での沢山の人びとが、身の覚えもないままに、特高警察の理屈で投獄された歴史をくりかえすのでしょうか?
また再び、公安警察は「横浜事件」を起こすかもしれません。
―Ka.M-